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<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>


想人鏡

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0.オープニング

想い人を映す鏡。
何の為に、そんな効果をもたらしたのか。
さっぱりわからないが…。
いつも店に来る常連に。
事の真相は告げずに鏡を覗かせてみよう。

面白いものが見れそうだ。

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1.

カランカラン―
「こんにちは〜」
店内に入り、挨拶。
特に何の用もなく、訪れた蓮さんの店。
「いらっしゃい」
蓮さんはカウンターで微笑み言った。
この遣り取りも、もう何度目になるかしら。
「暇そうね」
カウンターに歩み寄りつつ笑って言うと、
蓮さんは肩を竦めて苦笑した。
まぁ、蓮さんの店は夜の方が忙しいものね。
日中、頻繁に訪ねてくるのって。私くらいかも。
カウンターに凭れて、店内を見回す私。
すると、目の前の棚に見慣れぬ鏡が。
頻繁に足を運ぶものだから、置いてある商品にも自然と詳しくなっちゃうのよね。
「綺麗な鏡ね。新商品?」
私が問うと、蓮さんは妖しく微笑んで。
「ちょっと、覗いてみなよ」
そう言った。
その言い方、その笑い方。
相変わらずよねぇ。わかりやすいにも程があると思うわ。
でもまぁ、やぶからぼうに”覗いてみな”って言ったって事は、
危険を伴うものではないって事よね。
そういう危ないものだったら、忠告してくれるもの。いつも。
いいわよ。覗いてあげようじゃない。
何が起こるのか、わからないけれど。
付き合ってあげましょ。退屈凌ぎに。
ほんと。私って、優しいんだから。
クスクス笑いつつ、ヒョイッと鏡の覗き込む私。
すると、ボワッと鏡に武彦さんの姿が映し出された。
「あら。武彦さんが映ったわ。なぁに、これ」
振り返って言うと、蓮さんは苦笑して。
「つまらないねぇ」
そう言って鏡の説明をしてくれた。
この鏡は”想人鏡”とう代物で。
覗き込んだ人物の想い人が映し出されるらしい。
蓮さんが”つまらない”と言ったのは、予想どおりの人物が映し出されたからで。
予想外の男が映し出されたら、面白かったのにと、ほんの僅かに期待していたそうだ。
そんな事、あるわけないじゃない。
私の心は、いつだって武彦さんで一杯だもの。
どこにいても、何をしてても、武彦さんの事 気に掛けてるもの。
他の男の人が映ったりしたら、間違いなく、こう言うわ。
これ、不良品よ。って。


持ってきたロールケーキを食しつつ、
鏡に映る武彦さんを見やって二人で恋愛談議。
とは言え、話題に上がるのは私の恋愛ばかり。
根掘り葉掘り聞かれて、悪い気はしないけれど。
蓮さん。自分は、どうなの。自分は。

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2.

「しかしまぁ、これだけ想われて、幸せ者だね。あいつは」
紅茶をカップに注ぎながら微笑み言う蓮さん。
「私ばっかり想ってるわけじゃないわ。ちゃんと想い返しも頂いてるもの」
クスクス笑って返すと、蓮さんは紅茶を差し出しつつ苦笑して言った。
「ノロけてんじゃないよ」
「最近、いつにもまして煙草、吸いすぎだからビタミン補給考えないとねー…」
紅茶を受け取り、鏡に映る武彦さんに見やりつつ幸せそうに言う私。
蓮さんは”良い妻だねぇ”と半ば呆れつつ紅茶を飲んだ。
ロールケーキと紅茶でブレイクを入れつつ、以降も続く続く恋愛談議。
今までで、印象に残ってる喧嘩は?と問われて、
きっかけは、とても些細な事だったんだけど、
口調とか態度とか、ものすごくムカッときた事があって。
その時、オデコの生え際にガブッと かぶりついて歯型つけた事あるわ、とか。
ファーストキスは、いつ、どこで?と問われて、
興信所に通いだして間もない頃、
料理してたら、不意打ちで…とか。
何だか、武彦さんに見られてるみたいで恥ずかしい感じの中。
そんな話は、続いた。


「香水は?」
「香水?」
「そう。あたしがあげたやつ」
「あぁ、あれね。まだ未使用です」
「何だい。もったいない」
「あはは。いまいち、使うタイミングがね」
「馬鹿だね。そんなの、自分で作っていかないと駄目さ」
「ん〜…」
「レクチャーが必要だね」
「あはは。お願いしようかしら」
他愛ない話で盛り上がる最中。
それは、突然に。
『私は、この人を愛してる』
「っぷー」
思わず、紅茶を吹きだしてしまう私。
武彦さんを映す鏡が、突然一人でに喋ったのだ。
私と、まったく同じ声で。
「な、何なの。今の」
笑って言うと、蓮さんはハンカチを取り出し、
それを私に差し出しながら満足そうに言った。
「話してる内に、抑えきれなくなったんじゃないのかい」
何よ、それ。
まるで、私の気持ちを鏡が代弁したみたいな。
でもまぁ、間違ってはいないかな。
いつもそうだけど、武彦さんの話をしてると、実感するのよね。
好きなんだなぁって。
でも、突然代弁しなくたっていいじゃない。
ビックリしちゃったわ。もう。
何か、恥ずかしいし…。
ハンカチで口元を拭いつつ照れ笑いしていると。
これまた、突然。
RRRRR―
携帯が鳴り響いた。
ハンカチを蓮さんに返し、懐を漁って。
見やればディスプレイに表示される”武彦さん”の文字。
…何てタイミングで電話してくるのよ。
もしかして、どっかで見てる?
そんな事を思いつつ私はクスクス笑い。
電話をとった。

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3.

ピッ―
「もしもし?」
『今、どこだ?』
眠そうな武彦さんの声。
私は目を伏せ微笑み、返す。
「蓮さんの店。起きたの?」
『おぅ。起きたらお前も零もいねぇからさ。腹へったし』
「零ちゃんは買い物じゃないかしら。冷蔵庫にサラダとパスタ入ってるわよ」
『あ、マジで?』
「うん。食べて」
『帰り、遅くなんのか?』
「ううん。武彦さん起きたのなら、そろそろ帰るわ」
私と武彦さんの、何の変哲もない会話。
それに満足そうに微笑んで”夫婦だ”と茶化す蓮さん。
私は蓮さんを指で突付きつつ笑う。
すると。
『私、あなたを愛してる!』
突然、叫ぶ鏡。
「わっ」
驚き、ビクッと肩を揺らす私。
チラリと見やると、鏡には武彦さんの顔がドアップで。
堪え、苦しそうに笑う蓮さん。
私は少し慌てて、武彦さんに説明を試みる。
「た、武彦さん。今のは、蓮さんの商品が…」
『あっはははははは』
大笑いする武彦さん。
「ち、ちょっと武彦さん」
『くくくくくくく……』
「き、聞いてる?ねぇっ」
何度声をかけても、武彦さんは笑うばかり。
「嬉しそうじゃないか」
クックッと未だに笑いを堪えつつ、鏡に映る武彦さんを指差して言う蓮さん。
うん、確かに嬉しそうよ。
馬鹿にしてる笑い方じゃないもの。
その位は、理解るわ。
でも…でもね。
「…んもぅ。声が同じなら誰でもいいのね。もう知らないっ」
プツッ―
一方的に電話を切る私。
「あーあ…いいのかい。そんな意地悪して」
苦笑して言う蓮さん。
私はプゥと頬を膨らませて、携帯を懐にしまう。
話を聞いてくれなかったのも、ちょっと悲しかったけど。
それ以上に、何だか嫌だったんだもの。
私の声なんだけど、私が言ったんじゃない言葉に、
嬉しそうに笑う武彦さんが…。
「ごちそうさまっ」
カタンと席を立ち、いそいそと店を去る私。
「くだらない事で喧嘩すんじゃないよ」
蓮さんの、忠告を背に。


そんなにね、怒ってないの。
そんなにっていうか、全然。まったく怒ってない。
声が同じなら誰でもいいんでしょ、なんて言ったけど、
ほんとは、そんな事思ってないわ。
ちょっとした、悪戯よ。
思いがけず、武彦さんの心を擽る事ができちゃったわね。ふふ。
さぁて、帰ったら。武彦さん、どんな態度とるかしら。
ごめん、って素直に謝る?
それとも、ふてくされちゃう?
態度によっては、私が深々と謝らなきゃだけど。
おそらく、ふてくされてる確率が高いと思うのよね。
だから、言うの。
私が、私の意志で。私の本当の声で。
あなたが好きよ、って。
そしたら、機嫌なんて。すぐ直るわ。でしょ?

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

NPC / 碧摩・蓮 (へきま・れん) / ♀ / 26歳 / アンティークショップ・レンの店主

NPC / 草間・武彦 (くさま・たけひこ) / ♂ / 30歳 / 草間興信所所長、探偵


■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは。いつも、発注ありがとうございます。
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします^^

2007/08/17 椎葉 あずま