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【江戸艇】きつね小僧 捕物帖・其の壱
■Opening■
時間と空間の狭間をうつろう謎の時空艇−江戸。
彼らの行く先はわからない。
彼らの目的もわからない。
彼らの存在理由どころか存在価値さえわからない。
だけど彼らは時間も空間も越えて放浪する。
■板場稼ぎ■
ポカーン。
天波慎霰は現状を把握することも出来ないくらい呆然とそこに立ち尽くしていた。
開いた口の塞ぎ方も皿になってしまった目の戻し方も忘れてしまった。
脳が完全にその動きを止めてしまったかのようだった。
カポーン。
ここがどこであるのか説明を必要としない擬音が彼の背景を素通りしていく。
やがて。
「お、慎霰も来てたのか」
聞き知った声と共に肩を叩かれた時、カッと頭に血が昇り彼の中でだけ停止していた時間が動き出し、脳も回り始めた。
殆ど条件反射みたいにして慎霰はしゃがみこむと湯の中にまで頭をつからせた。
「げぼごぼごぼ……」
まるで逃げる場所を探すみたいに湯の中で足掻く。
「何やってんだ?」
怪訝そうに柊はそれを覗き込んだ。
それはそうだろう。声をかけたらいきなり顔を真っ赤にして湯船に頭までつかったのだ。呆気に取られるのも無理はない。
しかし慎霰は顔をあげると柊を怒鳴りつけた。
「何で、そんな暢気なんだ!」
これは八つ当たりである。
広い視界。柊に合った焦点。だがその背景に動く裸、裸、裸。それが男のものならこうも動揺するまい。
落ち着いたと思った頭に再び血が昇る。
そうして世界はゆっくりと遠退いていった。
「お…おい!? 慎霰!?」
やっぱりこれは後から知った事だった。
江戸時代の湯屋は、寛政3年――風紀が乱れるとして禁止されるまで入込湯と呼ばれる混浴が主流であり、更には、その後も何度か禁止令は出されたものの、完全に守られることはなかったのだという。
―――ちゃんと取り締まっとけよ!!
慎霰は内心で忌々しげに吐き捨てた。やっぱり八つ当たりである。
それでなくても女性は苦手な慎霰なのだ。母の記憶だって曖昧である彼に、いきなり女性の裸というのは、老若問わず刺激的過ぎる、などと生易しいものではない。皺皺の垂れ下がった胸も、ぱっつんぱっつんに弾け切った胸も―――いや、老若は問われるかもしれない。
それはさておき。
「大丈夫か?」
脱衣所の片隅に寝かされ、完全にのぼせ上がってしまった慎霰に、手ぬぐいで仰いで風を送りながら平太が聞いた。
「……うー……」
濡れ手ぬぐいを目の上にのせ、顔を冷やしながら慎霰は唸り声を返す。情けないったらない。天下のきつね小僧がこの体たらくなのである。唯一の救いは鼻血を噴かなかったことだ。
「何、のぼせてんだ?」
傍らで柊の声がした。手ぬぐいをのせているので見えるわけではなかったが、呆れたように笑っているのがはっきりわかって慎霰は不機嫌に上体を起こした。
「うるせェ」
言いながら、柊が差し出す湯飲みを取る。中身は冷たい水だった。
それを飲み干して湯飲みを突っ返すと、脱衣所で着替える女たちに目がいった。女達が、慎霰の視線に気付いて何事か囁きあう。
慎霰は慌てて視線をはずして顔を赤らめた。
「へぇ〜、意外とウブなんだな」
得たり顔の柊が揶揄するように小突くのに、慎霰はそっぽを向く。ちょっと不慣れなだけだ、と内心で言い返した。
「ほら、落ち着いたんならさっさと着替えて行くぞ」
促すように肩を叩いて柊が立ち上がる。慎霰とて、こんなところに長居は無用だった。
何か大事な事を忘れているような気がしつつも、慎霰は柊に続いて立ちあがった。
その時だった。
「ない? ないっ……! 財布がねぇ」
一人の30代くらいの男が自分の荷物を漁りながら言った。すると反対側から別の声があがる。
「何? あ……俺もだ!」
「私もよ」
女が悲鳴混じりに言った。
「何だと!?」
目を見張った慎霰に柊が低く呟く。
「……板場稼ぎか……」
「板場稼ぎ?」
聞きなれない言葉をおうむ返すと柊が答えた。
「ああ、時々あるんだよ。人がゆっくり風呂に浸かってる間に、盗みを働く奴」
脱衣所の板場で荒稼ぎをするから板場稼ぎ、つまりは風呂場泥棒というやつである。
「そりゃ、許せねェな」
そんなのが出たんじゃ、のんびり風呂にも浸かってられやしない。
「お。きつね小僧出陣か?」
煽るような柊の言に慎霰はゆっくり脱衣所を見渡した。
女性も見慣れれば大した事はない。と思う。きっと。たぶん。おそらく。
「……やっぱり、無理かも」
「ま、いいけどな。それよりお前さん、何か盗まれてないか?」
柊が肩を竦めつつ聞いた。
そういえば、先ほどから何かとても大事なことを忘れているような気がする。
「え……?」
そうなのだ。
盗まれるも何も、風呂に入っている最中にこの世界に召喚されたのであった。
湯屋の2階は風呂上りの休息所になっている。菓子やにぎり寿司などが売られ、碁盤や将棋盤を囲む人々で賑わっていた。
うちわを片手に涼みながら談笑する人々の間では、ちらほらと最近巷を騒がせているきつね小僧の話題ものぼっている。
なかなかの好評に、しかし慎霰は素直に有頂天になれる気分ではなかった。そのきつね小僧が、湯屋でのぼせてぶっ倒れたのである。
しかも。
「しかし身包み全部たぁ、災難だったな」
柊が気の毒そうに言うのに、慎霰は何とも複雑そうに俯いて、「まぁな」と答えた。
彼の着物は板場稼ぎの仕業になっている。
本当のところは身包み全部盗まれたのではなく、言うなれば、身包み全部忘れてきただけの事である。だから最初はちゃんと正直に言おうとしたのだ。しかし周囲の雰囲気がそうさせてはくれなかった。
許すまじ板場稼ぎ。何故だか全員が一致団結。
慎霰としては、盗人に罪状の1つや2つ増やしたところで気は咎めたりなどしないが、盗まれた本人ではないのでそこまで憎くもなれない。ついでに言えば、犯人が捕まって盗品の中から自分の物が1つも出て来なかった時の方が憂鬱である。たとえば、いつも身につけているはずの柊に作って貰った根付だとか。
ともすれば、我先に犯人探し、という気分にもなれなくて。おまけに入込湯ときたものだ。
しかし平太の目も、柊の目も、間違いなく慎霰が犯人を吊るし上げる事を期待している目だった。
柊に借りた着物は質のいいものだったが、何だか心に寒くていけない。
「まぁ、そう気を落とすなって」
そう言って柊が元気付けるように慎霰の肩を叩いた。
「それとも何か大切なものでもあったのか?」
普段なら自分から率先して犯人探しに突っ走るであろう慎霰が、しかも被害者である―――と思っている柊にとっては、この慎霰のあまりのテンションの低さが腑に落ちなかったらしい。
「いや……」
慎霰は顔をあげて笑みを作った。
「悪い奴は懲らしめねェとな」
慎霰は握り拳を作って自分に言い聞かせるみたいにして言った。
「そうこなくちゃ」
平太が笑みを返す。
だが、この時3人はまだ、この板場稼ぎが3人を巻き込む大事件になるとは微塵も考えていなかったのである。
◆
翌日。
湯屋の前で張り込み、聞き込みをすべく立っていると、2本差しの見るからに役人っぽい――時代劇でよく聞く八丁堀の旦那と思しき――男が、2人の岡っ引きを連れて、十手をチラつかせながら慎霰に声をかけてきた。どうでもいい話しだが、与力や同心が八丁堀と呼ばれるのは、彼らの組屋敷が八丁堀にあるからである。ともすれば、慎霰に声をかけた同心もご多分にもれず八丁堀の旦那であった。
「――で、何を盗まれたんだ?」
大上段から尋ねてくる八丁堀の旦那に慎霰が不快そうな顔をしていると、傍らの平太が答えた。
「身包み全部だよ」
反射的に平太の口を押さえたが間に合わなかった。出来ればこういう虎の威を借りたきつねみたいな連中とはあまり関わりたくない慎霰である。
「身包みってーのは?」
罪人あがりのくせに、岡っ引きも偉そうに聞いてきた。人を見下す雰囲気がいけすかない。
「着物とか、帯とか?」
慎霰はとぼけたような口調で曖昧に答えた。
「着物? 帯?」
岡っ引きはしげしげと慎霰を頭のてっぺんからつま先まで見やる。何でそんなものを、と言いたげな顔つきだ。今の慎霰の佇まいからは上等な着物帯など全く想像も出来ないのだろう。大きなお世話である。
「他には?」
「えぇっと……」
首を傾げる慎霰の代わりに、やっぱり平太が口を挟んだ。
「根付! だよね。柊兄ちゃんに貰ってた、きつねとねずみの根付」
「あ…ああ……」
慎霰は曖昧に頷いた。それはきっと、今頃東京の自宅の机の上だ。
「根付ねぇ……」
「いや、まぁ……そんなとこです」
慎霰はそこで話を切り上げるように言って愛想笑いを返した。しかし八丁堀の旦那はそれで解放してくれるつもりはないらしい。
「金品のたぐいはねぇのか?」
面倒くさいことこの上ない。
いっそ自分は何も盗まれていない、と答えるべきだろうか。しかしそうすると真っ裸で湯屋に来た事になってしまう。それをうまく説明できる自信もない。
でっちあげの板場稼ぎなら、ある事ない事適当に空吹くことも出来るが、如何せん本物がいるのがまた何ともしがたいところである。
そんな端切れの悪い慎霰に、八丁堀の旦那は何かを感じ取ったのか、眉間に皺を寄せて慎霰の顔を覗き込んだ。
「怪しいな。実はお前が板場稼ぎか? ちょっと番屋まで来てもらおうか」
「……はぁ?」
思わず慎霰は目を見開く。
ちょっと待て、だった。
着物どころか何1つ自分の持ち物がない慎霰が、どこに盗品を隠し持って逃げられようか。慎霰が板場稼ぎで無い事など、ちょっと考えればわかる事である。
しかし。
「おら」
などと、岡っ引きが慎霰の腕を荒々しく掴んできた。それはどう贔屓目に見ても被害者に事情を聞くというよりは、犯人を連行するそれであった。
「断る」
慎霰が岡っ引きの腕を振り払った。
「何だと?」
いきり立つ岡っ引きに慎霰は一歩退いて間合いを開けた。
「いい加減にしてくれよ」
着物の崩れをなおして息を吐く。
「逃げるなら、犯人としてしょっぴくまでだ」
「何の犯人だよ。冗談じゃねェ」
十手を振り上げてかかってくる岡っ引き2人に慎霰は地面を蹴った。
複数を相手にした時の効率的な戦い方は、一番強そうな奴をボコる。これに限る。それで残りの連中は怖気づくものだ。
「覚えておけよ! 上にたてついた事、後悔するぞ」
そんなありきたりな捨て台詞と共に去っていく同心らを見送って、慎霰は両手で埃を払うと一息吐いた。
それから振り返る。
「平太。始めよ……」
言いかけた言葉がそこで止まる。
慎霰は辺りを見渡した。
「平太? 平太!」
大声を張り上げたが、どこからも返事は返ってこなかった。
「……平太?」
「おっかしいなァ……先に帰ったのかなァ?」
暫く探してみたが、全く見つからない平太に首を傾げていると、通りの向こうから柊が走ってくるのが見えた。
「おい、慎霰!」
ただならぬ様子の柊を訝しむ。
「どうした?」
「平太はどうした?」
辺りを見回しながら柊が聞いた。慎霰は困ったように頭を掻く。
「あ、いや。ちょっとはぐれちまって……帰ってねェのか?」
「はぐれたって、ずっと一緒じゃなかったのか?」
詰め寄る柊にたじろぎつつ、慎霰が答える。
「あーいや、ちょっといろいろあって目を離した。なんだ、迷子か?」
「さっき、こんなものが……」
そう言って柊が石を包んだ投げ文の皺を伸ばしながら慎霰に差し出した。走り書きの草書体に軽い眩暈を覚えていると柊が言った。
「子どもは預かった。返して欲しければれいの物と交換だ」
その他に、場所と時間が書かれている。
「子ども……って、まさか」
嫌な予感に文を握りつぶした慎霰に、柊が重ねて尋ねた。
「目を離したって、何かあったのか?」
「いや、同心に因縁吹っかけられたんだ、くそっ……」
「同心? 町方のか?」
少し驚いたように柊が聞く。
「あーくそっ。また腹立ってきた。何で俺が犯人なんだよ」
「犯人って、昨日の板場稼ぎのか?」
「ああ。番屋に来いって言いやがるから、追い返してやったんだ。たぶん、その時」
目を離した。岡っ引きとの乱闘で。
「番屋だって? ちょっと待て。何で……」
「俺が聞きたい」
慎霰は、思い出しただけで腸が煮えくり返るのを抑えるように地面を蹴りつけた。
後でゆっくり考えてみれば、それはおかしな事だった。入込湯が禁止されているとしたら、湯屋が町方に届け出るわけがない。それは客の方とて同じ立場だろう。湯屋がつぶれて困るのは、それを利用している者達も同じなのだ。だとするなら、町方が知り動いていた上に、被害者まで知っていた理由を、もう少し考えるべきだったのかもしれない。
しかし今はそれどころではなかった。
「それより、とにかく平太だろ」
考え込む柊に慎霰が言った。
「あ…ああ」
「この、れいの物ってなんだろ?」
慎霰は腕を組んで考えてみた。しかしいくら考えても。
「心当たりが全くないな」
「俺もだ」
柊が困ったとばかりに首を振る。
「しゃァねェな。風呂敷にでも包んでいくか」
「何かわかったのか?」
「いや、さっぱり」
慎霰が肩を竦めて言った。
◆
申の刻――七つ時。東京でいうならば午後4時過ぎ。投げ文に記されていた場所は人気のない寺の裏手だった。おあつらえ向きのような場所は、雑木林になっている。
「平太を返してもらおうか」
慎霰が言った。距離にして10歩分くらい先にならず者風の男が3人立っていた。内1人は猿轡をかませた平太を腕に抱きかかえている。
「れいの物は持ってきたんだろうな」
無精髭の男が1人、1歩前へ出た。
「ここに」
慎霰は風呂敷包みを掲げてみせる。
「よし、こっちに渡せ」
無精髭の男が顎をしゃくった。
「その前に平太だ」
「このガキがどうなってもいいのか?」
平太を抱き抱えていた男が短刀を抜いて平太に突きつけた。
「なら、お前らはこれがどうなってもいいんだな」
慎霰は風呂敷包みをぞんざいに振り回してみせる。
「そうだな。そろそろ潜る頃合だと思っていたところだ」
男が笑って言った。自分がこの場を仕切っている事を誇示するかのように。
「何?」
慎霰の眉尻が上がる。
「どうする?」
あくまで、こちらには選択権などないといった風情だ。
「…………」
慎霰は相手の出方を推し量るように男を睨みつけた。
「…………」
男も慎霰を睨み返す。
慎霰はゆっくり息を吐き出した。
「じゃ、いいや」
「何!?」
「好きにすれば?」
笑顔を返す。
「何だと、貴様!!」
男が二人、それぞれに得物を取って威圧した。匕首の刃が鈍く光っている。
しかし慎霰は大して臆した風もない。
「なんちゃって」
ペロリと舌を出して風呂敷包みの結びを解くと広げた。中身の枯葉が地面に散らばる。
「悪い奴らは成敗するしかないだろ」
一枚の普通の風呂敷が投げ上げられた途端、その面積を増した。空を覆うようにふわりと彼らの頭上に広がり落ちる。
「平太!!」
柊が滑り込むようにして男どもの間に踊りこむと、風呂敷に目を奪われている奴らから平太を奪い返し、抱きかかえるようにして風呂敷の下を駆け抜けた。
間髪入れず風呂敷が、男どもを包み込む。
まるで酒瓶を包んだような前結びだ。
風呂敷に包まれ顔だけ出した男ども。もがいたが風呂敷から出る事も出来ない。
「さ て と」
慎霰は男どもにゆっくり近づいた。
「洗いざらい、喋ってもらおうかな。まずは、れいの物って何だ?」
「…………」
尋ねた慎霰に、しかし奴らは口を割る気はないようだ。
「いっやぁ、喋ってくれないの? いいよ、いいよ。たっぷり時間はあるからね。じーっくりと時間をかけて聞いちゃおっかなァ」
なんて、満面の笑みを浮かべている慎霰の、お楽しみに水を差すように柊が肩を叩いた。
「おい、慎霰」
「うん?」
「囲まれてる」
「…………」
程なくして、火事羽織に野袴を穿き、陣笠を被った与力どもを先頭に楔帷子に鉢巻をして、手にさすまたなどを持った同心らが大挙して駆けてきた。
「御用だ! 御用だ、御用だ、御用だ!!」
「ちぇッ…いいとこだったのに」
慎霰は懐からきつね面を取り出すとそれを被り、背に黒い翼を纏ってひらりと木の枝に飛び上がった。
柊が平太を連れて逃げていく。その時間稼ぎをするためだ。
さすまたを持った同心らが風呂敷に包まれた男どもを取り囲んだ。
与力が柊と平太に気付く。
「逃げたぞ! 追えー!!」
という号令に同心が3人そちらへ走りだした。その行く手を阻むように慎霰が舞い降りる。
「ねェねェ、おじさん。僕と遊んでよ」
まるでいたずらっ子のような口調で、それでも愛くるしさを装う。
しかし同心は、天下のきつね小僧に別段動じるでもなく、或いは本当にその辺の子どもとでも思っているのか。
「どけっ!」
と怒鳴りつけただけだった。
そして慎霰を無視して行こうとする。慎霰は「むっ……」と呟いて扇子を開いた。
それを振るうと風が舞い、枯葉が彼らを翻弄する。
ほどなくして柊と平太が完全に逃げ切ったのを風の気配に感じ取ると、慎霰は慌てふためく同心たちに優雅に一礼してみせた。
「では、ごきげんよう」
風呂敷に包まれた者どもがお縄になっていくのを視界の片隅に、明日の瓦版のタイトルなど想像しながら、慎霰は天狗の跳躍をみせる。
先を行く柊たちに追いついて慎霰は平太に声をかけた。
「大丈夫だったか?」
「うん! ありがとう兄ちゃん」
元気な笑顔を見せる平太に安堵して、慎霰はその頭を撫でてやる。
「しかし、本当、何だったんだろうな……」
柊が腑に落ちない顔で呟いた。
果たして奴らの罪状は何であったのか。
何の変哲もない風呂敷が、3人の男たちを包んでいたのだ。きっときつね小僧の仕業と判じるだろう。
ならば、きつね小僧またまた大活躍の報と共に、誘拐犯の全貌が、明日の瓦版で明らかになるに違いない。
ただ、どうにも落ち着かないのは、町方の連中はどうしてあの場所がわかってあのタイミングで訪れたのか。まさか慎霰を尾行していたわけでもあるまい。
だが翌日、昨日の捕物が瓦版を賑わすことはなかった。
そしてきつね小僧が現れたことも、人の口の端にのぼることはなかったのである。
誘拐犯の全貌どころか、れいの物がなんであったのかさえわからず。
板場稼ぎの犯人も、まだ掴まっていない。
「…………」
■■End or to be continued■■
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【1928/天波・慎霰/男/15/天狗・高校生】
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■ ライター通信 ■
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ありがとうございました、斎藤晃です。
楽しんでいただけていれば幸いです。
この後は。
平太を救出して、ここで身を引くもよし。
板場稼ぎを追いかけるもよし。
誘拐犯の謎と自分たちが狙われる理由を追いかけるもよし。
望むと望まざるとに関わらず事件に巻き込まれていくもよし。
ご意見、ご感想などあればお聞かせ下さい。
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