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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


ヴァーチャル・バトル VS 草間 武彦

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0.オープニング

「お前なぁ…変なモン拾ってくんなよ」
呆れて、もう笑う事しかできない俺。
そんな俺を見て、零はプゥと頬を膨らませる。
「楽しそうじゃないですか」
「ちっともだ」
「楽しもうとしてないからです。よくないですよ、それ」
「…大きなお世話だよ」

零が、変なモンを拾ってきた。
キャリーケース程の大きさの、妙な機械だ。
無数のスイッチとレバー、モニターまでついてる。
機械には、あんまり詳しい方じゃないが、理解る。
触るべきじゃない。
そんな雰囲気を、こいつはバシバシ かもしだしてる。
こんなモン、一体どこから拾ってきたんだか…。
「とにかく戻して…」
呆れつつ言いかけた時。
カチ―
響く、スイッチの音。
「おぃぃぃぃ!!」
すかさず、零に駆け寄る俺。
「何で押すの!?」
声を張って言うと、零はキョトンとして。
「そこにスイッチがあったので」
某登山家のような事を言い出した。
あからさまに怪しいだろうがよ。
むやみやたらと触っちゃ駄目だろうがよ。
けれど、押してしまったのは事実。
今更焦っても悔やんでも。
時、既に遅し。

スイッチを押されて目覚めるように。
機械は独特の鳴き声を上げつつ、白い煙を吐いた。
…やべぇんじゃねぇの。これ。
…なぁ。やべぇんじゃねぇの。これ。

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1.

いつものように踏み入ったリビングは、真っ白な煙に包まれていた。
「何だ。魚でも焦がしたか?」
煙の中歩みつつ言う私。
次第に晴れていく煙。
煙の中から、見慣れた二人が姿を現す。
「けほけほっ…けほっ…」
「ごほっ…ごほ」
むせている草間と零。
二人は私の姿を確認すると、声を揃えて言った。
「いらっしゃいませ〜…」
やれやれ…何をやってるんだか。
呆れつつ見やれば、二人の前に妙な機械が。
どうやら、煙は、この機械から吐き出されたもののようだ。
「…何だ。それは」
顔をしかめて問うと、草間は呆れ笑顔で零を小突きつつ言う。
「拾ってきやがってよ」
小突かれ、零は頬を膨らませて。
「だって楽しそうじゃないですかぁ。ね?冥月さん?」
そう言って私に期待の眼差しを向ける。
楽しそうでしょ?と言われてもな。
それが、どういうものなのか理解らないし。
コメントのしようが…。
苦笑していると、突然。
機械がピカピカと光りだす。
「お?何だ…?動いたぞ」
興味深そうに、機械にあるパネルを覗き込む草間。
すると機械はカタカタと音をたてる。
ピーーーーッ―
耳障りな甲高い音を最後に。
シンと静まり返るリビング。
「…やっぱ、壊れてんだろ。これ。戻して来い…」
立ち上がりつつ草間が言った時だった。
ブゥン―
機械から、3D草間が出現。
「うぉぉ!?」
驚き、退く草間。
出現した3D草間は、スッと構える。
戦闘体勢…?
構えるだけで、何もしてこない3D草間を見て、
零はポンと手を叩いて言った。
「なるほど!そういう機械だったんですね」
「わかんねぇって。どういう事だよ」
すかさずツッこむ草間。
零は少し偉そうに。学者のように。
まるで、機械を造ったのが自分かのような口調で言った。
擬似戦闘マシーン。
わかりやすくいえば、そういうもの。
モニターを覗き込んだ人物のデータをインプットし、
その人物を3D化して排出する。
何の為に、こんなものを作ったのか…。
かなりの技師が手がけたんだろうけれど…。
意図・目的が、さっぱり理解らない。
ただの、お遊びで作ったのなら…才能の無駄使い極まりないな。


「なるほどな。まぁ、理屈は理解った」
ソファに座り、煙草に火をつけて言う草間。
草間は煙を吐きつつ、私を見やる。
「…何だ?」
首を傾げると、草間はヘラッと笑って。
「戦ってみれば?俺と」
そう言って、3D化した自身を指差した。
「わー。楽しそうっ!やってみてくださいよ」
草間の提案に、ノリノリの零。
草間と、私が戦う…?
それは…ちょっと面白そうだな。
私はツカツカと歩み寄り、
ギュッと、3D草間の腕を抓って問う。
「痛みは?」
「な〜んも」
笑って、返す草間。
なるほど。確認したかったんだ。
こっちにダメージを与えた場合、本物に何か跳ね返りはあるのか、とな。
確認した結果、それはないようだ。
うん…よし。
私は上着を脱ぎ、スッと構えて言う。
「お望みどおり、ボコボコにしてやる」
「…そんなん望んでないんですけど」

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2.

草間の戦闘趣向。
それは、不良の喧嘩のようなもの。
私は蹴りやパンチを受け流したり、防御したりしつつ思う。
…喧嘩慣れしてるなぁ、こいつ。
リビングで行われる、私と3D草間の戦闘。
草間と零はソファに座り、楽しそうにその光景を見やっている。
何をやってるんだかな…私は。
呆れつつ息を吐いた時。
ガバッ―
突然、3D草間が抱きついてくる。
「うわぁっ!」
驚き、全力で3D草間を突き飛ばす私。
そこへ、零の実況が飛ぶ。
「これは…さすがですねぇ。冥月さん、動揺を隠せない模様です」
「う、うるさいっ!!」
大声で叫ぶと、草間は拍手しつつ言った。
「我ながら有効的な攻めに感服ですわ。まぁ、正直ムカッとしましたけどね」
「落ち着いてください、草間氏」
アホな兄妹が繰り広げる茶番。
苛立って仕方のない私は、鬱憤を晴らすかのように怒涛のラッシュ。
次々とヒットしていく、私の攻めに、
3D草間は、どんどん後退していく。
一つ、また一つと攻撃がキマッていく度に。
私は、心の中で不満をぶちまけていった。
ドカッ―
何なんだ。
最近の、貴様の率直で意味深な物言いは。
バコッ―
からかってるのか?
ほ…本気なのか?
ドカッ―
たまぁに良いところを見せて…調子に乗りやがって。
バキッ―
ドキドキさせるな。
ドコッ―
手料理を幸せそうに食うな。
バキッ―
な、何度もキスしやがって。許可もなしにっ。
ドカッ―
何で、私がお前の胸で泣かねばならないんだ。いつも、いつも、いつもっ。
バキッ―
誰の所為で弱くなったと思ってるっ。
ドカッ―
優しくするなっ。
バキッ―
何度も赤い顔を見られる方の身にもなれっ。
ドコッ―
煙草を止めろっ。
ドカッ―
ふ、太股の痣っ…どうやって見たのか白状しやがれっ。
言っておくがな。私がっ。私が好きなのは、貴様なんかじゃない。
あんたなんか…あんたなんかっ。
大嫌いだっ!
スゥと息を吸い込み、吸い込んだ息をフッと吐き出しつつ、とどめの一撃。
ドゴッ―
炸裂する、強烈な蹴り。
我を忘れて攻め詰めていて。
3D草間が、本物の草間の前に立っていた事なんぞ、私は知らず。
強烈な蹴りは、本物まで射抜いてしまった。
「げふぁっ」
みぞおちに蹴りをくらい、ソファから落ちて痛みにのた打ち回る草間。
それと同時に、フッと消える3D草間。
「だ、大丈夫ですか。お兄さんっ!?」
慌てて草間に駆け寄る零。
私は呼吸を整えつつ、小さな声で呟く。
「…事故だ」

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3.

これ…良いかもしれんな。ストレス解消に。
売り出したら、結構儲かるんじゃないだろうか。
私は目を伏せ、乱れた服を戻しつつ言う。
「…スッキリした」
私の言葉に、零に支えられてフラフラと立ち上がった草間が言う。
「ショックですよ。俺ぁ…」
「…ん?」
首を傾げて見やる私。
すると草間は、わざとらしく泣き真似をして言った。
「そんなに俺の事が嫌いか…」
「ほら。すごいラッシュでしたから…」
嘆く草間の背中を撫でやり、苦笑して説明を付加する零。
私はフイッと目を逸らし。
「べ、別に…」
そう言って、逃げるように飲み物を取りにキッチンへ向かう。
そうか。端からみれば、そう見えるんだな。
そうだよな…。


だからといって、別にお前を恨んで攻撃していたわけじゃなく、
不満というか…そういうものを、心の中で吐き出していたんだと白状するわけにもいかない。
そんな事を言おうものなら、
何を思っていたんだと二人にツッこまれるからな。
ま、まぁ…一人勝手にとはいえ。
私はスッキリしたし。良いんだが。
我を忘れて気付いていなかったとはいえ、
本物にまで蹴りをかましてしまったのは、私の過失だ。
正直、その痛みを暫く味わっていやがれとも思うが。
それは、あんまりだからな…。
飲み物を取り、リビングに戻りつつ。
私は、草間に謝罪の言葉を述べようと息を吸い込む。
ところが。
「…いやぁ〜。しかし、ナイスバディだわ」
「羨ましいです…」
リビングに戻って、私は唖然。
3D化した私を、草間と零がマジマジと見やっていたのだ。
腕を組んで、3Dの私を見つめて満足そうに頷く草間と、
羨望の眼差しで3Dの私を見やる零。
私は持っていた缶コーヒーを二人に向けて投げやる。
「何やってんだ、貴様らはっ!!」
ガコッ―
「きゃあ!?」
「あぶっ…危ねぇだろぉがよぉ!!」

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

2778 / 黒・冥月 (ヘイ・ミンユェ) / ♀ / 20歳 / 元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒

NPC / 草間・武彦 (くさま・たけひこ) / ♂ / 30歳 / 草間興信所所長、探偵

NPC / 草間・零 (くさま・れい) / ♀ / --歳 / 草間興信所の探偵見習い


■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは。いつも、発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします^^

2007/08/24 椎葉 あずま