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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


ヴァーチャル・バトル VS 草間 武彦

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0.オープニング

「お前なぁ…変なモン拾ってくんなよ」
呆れて、もう笑う事しかできない俺。
そんな俺を見て、零はプゥと頬を膨らませる。
「楽しそうじゃないですか」
「ちっともだ」
「楽しもうとしてないからです。よくないですよ、それ」
「…大きなお世話だよ」

零が、変なモンを拾ってきた。
キャリーケース程の大きさの、妙な機械だ。
無数のスイッチとレバー、モニターまでついてる。
機械には、あんまり詳しい方じゃないが、理解る。
触るべきじゃない。
そんな雰囲気を、こいつはバシバシ かもしだしてる。
こんなモン、一体どこから拾ってきたんだか…。
「とにかく戻して…」
呆れつつ言いかけた時。
カチ―
響く、スイッチの音。
「おぃぃぃぃ!!」
すかさず、零に駆け寄る俺。
「何で押すの!?」
声を張って言うと、零はキョトンとして。
「そこにスイッチがあったので」
某登山家のような事を言い出した。
あからさまに怪しいだろうがよ。
むやみやたらと触っちゃ駄目だろうがよ。
けれど、押してしまったのは事実。
今更焦っても悔やんでも。
時、既に遅し。

スイッチを押されて目覚めるように。
機械は独特の鳴き声を上げつつ、白い煙を吐いた。
…やべぇんじゃねぇの。これ。
…なぁ。やべぇんじゃねぇの。これ。

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1.

「ただいまぁ…って。………?」
買い物から戻った私は、紙袋を手にしたままキョトン。
だって、おかしな光景なんだもの。
二人して、同じ体勢で何かを食い入るように見てる姿が。
何ていうか、こうしてみると。
二人の背中って、どことなく似てるのね。
って、こんな事言われても、零ちゃんは嬉しくないかな。
そんな事を考えつつ。
私は、食材の入った紙袋をテーブルに置き、二人に歩み寄る。
そうねぇ。有力なのは…。
また、零ちゃんがおかしなものを拾ってきた…とかかな?
私の、その予想は。見事に的中した。
「…なぁに、それ」
苦笑して言うと、武彦さんと零ちゃんは、揃って振り返り。
「わかんね」
「わからないです」
口を揃えて、そう言った。
わからない、かぁ。うん…まぁ、そうね。
パッと見ただけじゃあ、何とも。
精巧な造りなのは理解るけど。
どういう機械なのかしら。これ。
武彦さん達の話によると、
私が戻る数分前。
零ちゃんが興味本位でスイッチを押した途端、
機械は、モワッと白い煙を吐いたそうだ。
けれど、それ以降は何の音沙汰もなくて。
二人は若干、気落ちしつつジッと食い入るように様子を窺ってた…との事。
「やっぱ壊れてんだろ。ただのゴミだ、ゴミ。戻して来い」
パシンと、機械のモニター部分を叩いて言う武彦さん。
武彦さんの言葉に、零ちゃんはションボリ。
と、その時。
機械がカタカタと音を立てて揺れだした。
「おい、これ、爆発…」
引きつり笑いを浮かべつつ、機械からサササッと離れる武彦さん。
「まさかぁ…」
「で、ですよぉ…」
そう言いつつも、同じく機械から離れる私と零ちゃん。
ピーーーーッ―
バシュッ―
「うわっ」
「きゃ…」
「ひゃぁっ」
一際大きな音を立てる機械に、揃ってビクつく私達。
反射的に閉じた目をフッと開いて、私は驚愕。
機械の前に、武彦さんがもう一人…立っているのだから。


武彦さんが、もう一人といっても、
実際は、ちょっと違って。
3D化した武彦さんって言うのが…一番わかりやすいかな。
「わぁ…すごいですね」
3D武彦さんに近寄り、彼の腕をツンツンと突付く零ちゃん。
すると、3D武彦さんはスッと戦闘態勢を構えた。
「…!」
危ない。
直感で、そう思った私は零ちゃんの腕を引き、自身に引き寄せる。
けれど、それは要らぬ心配だったようで。
3D武彦さんは、構えるだけで何もしてこない。一向に。
「…どういう事かしら」
首を傾げて言うと、武彦さんは機械に歩み寄りモニターを見やって。
そこに表示されている文字に顔をしかめた。
「何だこりゃ…」
表示されているのは、数値。
攻撃力、防御力、回避力…などなど。
どうやら、武彦さんのデータらしい。

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2.

「シュライン」
突然、私の名前を呼ぶ武彦さん。
ん?と首を傾げると、武彦さんはニッコリ微笑んで言った。
「ちょっと対戦してみろよ。俺と」
「…え?」
「どんなもんか。色んな意味で見てみたいから」
「ちょ、ちょっと…」
グイグイと背中を押されつつ戸惑う私。
「興味ありますね、それ」
零ちゃんもノリノリで。武彦さんと一緒に私の背中を押す。
ちょ、ちょっと。二人とも、何を言い出すのよ。
私と武彦さんが対戦って、そんなの…。
3D化した武彦さんと向かい合う私。
バチリと合う視線に、私は咄嗟にペコリと御辞儀。
それが、3D武彦さんへの合図になったようで。
3D武彦さんは、構えを崩さずに一歩踏み込む。
「…!」
思わず防御体勢をとる私。
でも。
トンッ―
「…きゃ」
3D武彦さんに両肩を押されて、フラリとよろめく。
「ちょ、ちょっと待って。私…」
私の言い分なんて聞かず。
3D武彦さんは攻めたてる。
とはいえ、ものすごい戦いとか、そういう感じじゃなくって。
押されたり、小突かれたり。
コロンと転がされたり。
3D武彦さんは玩具で遊ぶ犬みたいに…って、私、玩具?
いいように遊ばれる私を見て、
武彦さんと零ちゃんはケラッケラと大笑いしている。
「うぅ…」
立ち上がり、妙な恥ずかしさに頬を染めて。
服の乱れを直したり、ストッキングの伝染を気にする私。
やだ、もう…。
何で、こんな事になっちゃってるの。


3D武彦さんと私のバトルは平行線を辿る。
そもそも、3D武彦さんは私を倒そうとしている感じじゃなくて。
弄んでるたけのような雰囲気だから。
平行線を辿るのも、当然の事。
これ、いつになったら終わるのかしら…。
3D武彦さんが、遊ぶのに飽きるまで?
それとも、ずっと?
私が、3D武彦さんを こらしめなきゃ駄目…とか?
そんなこと、できないわよぉ…。うう〜…。
どうしていいか理解らずに、ただただ対峙するだけの私。
そんな私を壁際に追い詰める3D武彦さん。
普通に見れば、絶体絶命のピンチ。ってな構図ね。
どうしよう…と思いつつチラリと顔を上げて見やる3D武彦さんの顔。
3D武彦さんは、ジッと私を見つめている。
本物じゃないからか、3Dだからか…。
その表情は、何だか、とっても味気なくて。
ちょっと、冷たい感じがして…。

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3.

壁際に追い詰められて数分。
何も仕掛けてこずに、ただ私をジッと見つめる3D武彦さん。
彼の視線が、妙に痛い。
まるで、怒られてるような…叱られてるような。
そんな気分になってしまう。
そう思い出すと止まらなくて。
ジワリと目に浮かぶ涙。
意味もわからず、心の中でごめんなさいって言ってみる…。
と、ふと顔を上げて。
「………?」
私はキョトンと首を傾げる。
3D武彦さんも、切ない表情をしていたから。
攻撃…といっても可愛いものだけど。
それを躊躇しているかのような表情と雰囲気に。
私は、恐る恐る…3D武彦さんの手をとってみる。
すると3D武彦さんは、私の手を引いて。
スタスタと歩き出した。
「???」
困惑しつつもついて行く私。
3D武彦さんは、私をリビングのソファに座らせて。
自身は、その向かいのソファにストンと腰を下ろした。
テーブルを挟んで、向かい合わせに座る私達。
何だろう…これ。
まるで、お見合いみたいで。変な感じ…。
もじもじしつつ、熱くなってる頬を両手で押さえる私。


「嫌になっちゃったんですかね。シュラインさんをイジめるのが」
ポツリと隣で呟く零。
俺はワシワシと頭を掻いて苦笑。
何だ、おい。終わりかよ。
散々、遊んだくせに。
飽きたわけじゃねぇんだろうな…。
零の言うとおり、嫌になったんだろ。
わけもなくシュラインをイジめてるみたいで。
そういうトコまでインプットされてんだな。
大したもんだ。誰だよ、この機械つくったやつ。
すげぇ出来じゃねぇか。何で棄ててあったんだ…。
そもそも、本当に棄てられてたのか?
置いてあっただけのモンを、
こいつ、零が棄ててあると勘違いして拾ってきたんじゃねぇか。
苦笑しつつ煙草に火をつける俺。
そんな俺に。
ソファで3D化した俺と向かい合うシュラインが、
頬を両手で押さえつつ言った。
「ど、どうしよっか。これ…?」
「知らねー」
俺はクックッと笑いつつ返す。

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

NPC / 草間・武彦 (くさま・たけひこ) / ♂ / 30歳 / 草間興信所所長、探偵

NPC / 草間・零 (くさま・れい) / ♀ / --歳 / 草間興信所の探偵見習い


■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは。いつも、発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします^^

2007/08/29 椎葉 あずま