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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


めずらしくまともなお客様
次々と送られてくる怪奇現象の問い合わせ。
黒い電話からは何度も聞こえる怪奇現象の話。
草間武彦はうんざりしていた。

「なんでウチを怪奇現象解決所と勘違いするのか」

少しイライラ気味になった武彦は、

「零、コーヒーを頼む」
「はい。お兄さん」

と、コーヒーを飲むことにした。
そう返事したのは草間零。本当の兄弟ではないのだが、
いまではすっかり妹分になってここ、「草間興信所」で働いている。

コーヒーは専用のポットに豆を入れて作る本格的なもの。
お客さんにも大変喜ばれてるひと品であった。

「はい、お兄さん」

武彦がコーヒーを口にした途端、

じりりりん

魔の黒電話が鳴った。

「また怪奇現象の仕事かぁ?」

と、ゆっくりする気分に水をさされた気分で電話を取った。

「はいこちら草間興信所……」
「私だ。黒・冥月 (ヘイ・ミンユェ)だ」
「で、何の用だよ?」
「今回は客としてお願いしたい。実はストーカーに追い回されてるんだ」
「はぁ?お前がか?」
「とにかくそっちにすぐ行く。じゃあな」

黒・冥月は時々ここ、「草間興信所」のバイトをしている。
といっても必要な時に呼ぶ不定期のバイトのはずが、
今日はお休み中の中、連絡が来たのだ。

「冥月がストーカーに会ってるとさ。零、どう思う?」

零はにこにこしながらこう言った。
「そういうこともあるんじゃないでしょうか?」

零も元を正せば人間のように感情を持つために生まれてきたのではない。
それが彼女の精一杯の答えなのだろう。

さほど時間もかからずにドアが開き、「上がるぞ」と言って冥月が乗り込んできた。

「はい。冥月さん。コーヒーをどうぞ」

と、零は気を利かせてコーヒーを持ってきた。

「ありがとう」
「零、アリガトな」

少し落ち着いたところで、冥月の話が始まった。冥月は眉を顰めて、

「とにかく電話で言った通りだ。何とかしろ」
「そう言われても困るんだよ。詳しく状況を聞かないと。それが仕事だからな」

冥月は少し恥ずかしそうに、

「まず、常に後ろで見られてる気がする。
 ひどい時は自宅の近くにリムジンが停まったまま、こちらをのぞいてる気がする。
 もちろん単独でどこかに隠れて見てる時もあったんだ」

草間はメモを取りながら、

「ふんふん。他にされてるストーカー行為はないのか?」
「時々切手のない手紙が届けられるんだ。
 そこで怖かったのが誕生日にプレゼントを貰った時だ。
 誕生日なんて知られるわけないのに」
「向こうも興信所を使って冥月のことを調べた可能性大だな」
「過去まで知られてないといいけどな」

その通りだ。冥月は元々中国の闇組織の暗殺者。
そんなことまで知れたら、逮捕はまぬがれない。
しかし警察の影が見れないので、日本での生活くらいしかわからなかったのだろう。

武彦は更に、
「で、他には?」

と聞いたところ、

「ストーカーしている子は大体想像がつく。相手は……」

と冥月が言おうとしたところでじりりりんと電話が鳴った。
武彦は反射的に黒電話の受話器を取った。

「はい、ここは草間興信所です」

すると女子高生くらいの若い女の子の声であった。

「そこに冥月さまがいるのはわかってますわ。代わってください」
「はい、わかりました」

そこで冥月

武彦は冥月に受話器を渡した。

「冥月お姉さま。その後はお元気でしょうか?
 私は元気です。お手紙ずっと書いてるのにどうして返事をしてくださらないのですか?
 私はあの日からずっと冥月お姉さまに心奪われたままです。冥月お姉さまは私の初恋と言えるほど
 美しく……そしてお強いお方。こんな格好よくて美人な冥月お姉さまのことだから、
 さぞ殿方も放っておけないでしょう。大丈夫ですわ。私がきっちり管理しますから
 だって冥月お姉さまは私のお姉さまですもの。近づく男は許しませんわ!」

はい、はいと冥月は相づちだけを打ち、再度武彦に受話器を渡した。

「冥月には用件伝えられましたか?」
と、聞くと、

「あなたは冥月お姉さまとどういうご関係で?」

といきなり質問をされた。

「ただの雇い主ですが……」
「冥月お姉さまに激務とかさせてたりしませんか?」
「そりゃさせる時もあるさ。冥月は強いからね」
「なんですって!女性であるお姉さまにそんなひどいことを!」
「いや、ひどいことって仕事だからそれなりに報酬もあげているわけですし」
「あなたみたいな非道な人は初めてです。冥月お姉さんから離れてください!いいですね」

がちゃん。電話はきれてしまった。

武彦は笑いながら、
「お前が男にストーカーされてるなら、殴って終わりなのに、
 何で手を出さないのかと思ってたんだよ。
 そうか、女のストーカーなわけだ」

冥月は図星で顔を背け、舌打すると更に武彦はからかってきた。

「さすが女にモテモテの男前だな」

という言葉と同時に鉄拳パンチが武彦の元へ飛んできた。
パンチの飛んだところをおさえながら、武彦は言った。

「結局どういう奴なんだ?その子は」
「お嬢様学校の生徒らしい。悪い子じゃないだろうと思う。
 始まりは先日のことだった。男に絡まれてるのをみつけて助けてやったんだ。
 それからかな。ストーカー行為がはじまったのは。
 ほら、あるだろ。年上の格好いい同性に憧れる女子って」

全く女子高育ちの純粋培養は……と冥月はため息をついた。
しかし、武彦にはお嬢様への逆襲を思いついた。

「なぁ。いい事思いついたんだ冥月。
 あのな、しばらく俺が冥月の恋人のフリをするのはどうだ?
 男がいるとわかればいずれ諦めるだろう」

ということで、冥月は武彦とデートするために渋谷ハチ公のところで待ち合わせした。
武彦が時計をチラチラ見ながら冥月を待っている。
お待たせと言いながら冥月はやってきた。
いつもの冥月と違って化粧の気合や洋服選びにも力が入っている。
武彦は冥月の女性らしさをかい間見たようで、少しドキドキした。
それも無理もない。元々冥月は美人の部類に入るからだ。

監視役に零が駆り出されていた。
零は違う場所に待機して、常に状況を把握しておくためだ。
武彦の耳につけた通信用イヤホンから、零の声が聞こえた。

「お兄さん、リムジンがお兄さんの近くにいます。お気をつけて」
「わかった」

それを聞いた後、武彦は冥月に、
「さぁ、どこへ行く?マル9でお前に似合った服でも買いに行くか?」
「それ、草間が買ってくれるのか?」
「そんなわけないだろう」
「じゃあ私はハンズの方がいい」
「じゃあそこにするか」

2人はハンズへと向かっていった。
かすかに右手と左手が重なる。
そんな時――

「わ、何するんだ草間」

武彦は冥月の肩に手をまわしたのだ。
冥月はなんだか恥ずかしいような気分になって、顔を赤くしていた。

「そこまでですわ!」

と言って現れたのは例の女子高生だった。

「やっぱり2人はただならぬ関係だったのですね。おいでなさい!」

するとリムジンからコワモテの男が3人ほど出てきて武彦の周りを囲んでしまった。

「さぁ、害虫退治ですわ!」

コワモテの男たちは武彦を襲ってきた。
パンチを受けとめたかと思うと、別の角度から蹴りを入れられる。
こうなったら攻撃こそ最大の防御だ。

一人の男のお腹にひじ打ちするとうずくまってくれた。
すると違うところからパンチが飛んできたのでそれを受け止め、
握力で拳を握りつぶした。相当痛かったらしく、すぐ攻撃にうつる様子がない。
最後の一人には蹴りを入れてそのまま倒れさせた。

武彦は見事1人で3人の男を退治した。

「全員弱すぎなんだよ」

それを見ていたお嬢様を見て、

「これでわかっただろ?冥月には恋人がいて……」

武彦の声をまともに聞こえている様子もなく、目を丸くしている。

「おい、どうした?」

すると再びお嬢様は口を開いた。

「たった1人で3人ものボディガードを倒してしまうその強さ。
 そして整った顔立ち。ケンカもお強いのに知性も高く見えてしまう
 メガネと落ち着いた物腰……」

それを聞いて武彦は激しく嫌な予感がした。

「わ、わたくしと結婚してください!!」

無理ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!

その後。

草間興信所には切手のない手紙が届くようになった。
武彦が事務所を閉めて帰る時には、あのお嬢様が待機しているので、
家に帰るのが少し怖くなった。

「なぁ、零」

にこにこしながら零は答えた。
「どうされました?」

「興信所の男がストーカーにあった時はどうすればいいと思う?」

零はにこにこしたまま、何も答えなかった。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【2778 / 黒・冥月  / 女 / 20歳 / 元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒】
【NPC / 草間・武彦  / 男 / 30歳 / 草間興信所所長、探偵】
【NPC / 草間・零  / 女 / ― / 草間興信所の探偵見習い】

他、オリジナルキャラクター数人。

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■         ライター通信          ■
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こんにちは。今回はいろいろ不備があって申し訳ありませんでした。
今回は若干ストーリーが前後している部分はあるものの、
できる限りお客様の意見を掘り出して忠実にするように気を付けましたが
どうでしょうか?不備がなければ良いのですが……。