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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


アトラス編集部の呪い
毎日があわただしい月刊アトラス編集部。それもそのはず。
人気雑誌であるにも関わらずスタッフが編集長含め3人。
暇なわけがない。

「三下くん」

そう呼んだのは月刊アトラスの編集長、碇・麗香である。
三下というのは三下・忠雄。編集員のことである。

「今日は〆切も終わって時間があるし、
 編集部の片づけでもしましょうか」

そうして碇編集長と三下で大掃除が始まった。
三下は相変わらず動きがとろく、

「あーーもう掃除機のかけ方がうっとおしい!あんたはあっちの書庫を片づけてよ」

と、女王碇様に言われては仕方がない。
三下は書庫をのぞいた。

そこへ編集部に藤田・あやこが遊びに来た。

「こんにちは碇さん」
「あやこ、悪いけど今大掃除中なのよ。だから相手なんてできないわよ」
「じゃあ私、お手伝いさせてください」
「そんなの悪いわ。また違う日に……」

そこで三下がか細い声で、

「お願い。帰らないで手伝って〜〜」

という声が聞こえてきたので、あやこは結局手伝うことにした。

書庫には今まで届いた反響の手紙、資料に使った本、月刊アトラスのバックナンバー。
いろいろなもので埋め尽くされていた。

「碇編集長、僕を一番きつい仕事を頼もうとしてたな〜」
「まぁ私もいますんで、なんとかなるでしょう」

そう言いながらも2人で本や手紙を棚にまとめていたところ、

『怪奇アトラス・フリーペーパー第1号』

というのを発見した。月刊アトラスの前身とも言えるペーパーを
三下は仕事を忘れて読みあさった。
しかし、あることに気づいた。編集長の名前が、「碇・作蔵」となっていた。
その後のアトラスもよく見ていると、編集長がコロコロ変わっている。

この意味は何なのだろう。

「三下さん、どうしたんですか?」
「いや、見てくださいよ。このアトラスの編集長の変貌ぶり」

それは初代編集長「碇・作蔵」の時代が長く続き、月刊化すると同時に
作蔵は編集長の身から他の社員に移行した途端、10人もの人間が
入れ替わり立ち替わり編集長になっている。

現在の作蔵の娘、碇・麗香になってからは5年続いてる。

「つまりアトラスは碇家によってもっているということね」
「というより碇家の呪いみたいだろ?他の奴に編集長はさせないっていう」

その証拠に碇・麗香が編集長になってからは5年も続いている。
あやこは早速碇編集長の元に話を聞きに行った。

「碇・作蔵?たしかに私の父だけど、もう亡くなっているわよ」
「えー。それじゃ碇家の時だけ長続きするアトラスの秘密がわからないわ」
「そんなの決まってるじゃない」

碇編集長はこう答えた。

「我が碇家の編集者能力が高いってことよ!!」

ぼうっとした顔で碇編集長をみているあやこにクスっと笑い

「じゃあ霊媒師にでも頼んで父と直接会話してみれば?」
「そうですね。じゃあそうしてみます」

あやこは携帯電話を取り出し、知り合いの霊媒師に連絡をとった。

「あいにく夏が終わったから休業してんのね。ごめんね」

電話はこと切れた。

「じゃあどうすればいいのよ〜〜もう!」

そこに三下が口をはさんできた。

「あのう……この前霊界ラジオの記事で取材した方に当たってみればどうでしょうか」
「三下さん、霊界ラジオって何ですか?」
「霊界に住んでる人の所にチューニングして霊界にいる人に会話するってやつですよ」
「それなら作蔵さんと会話ができるかも!」

というわけで、あやこはアポも取らずに
霊界ラジオを持っているという青年の家に押しかけた。
ピンポーンとチャイムを鳴らす。

「何なんですか。こんな夜更けに」

眠たそうな青年が出てきた。

「すみません。私、藤田あやこと申しますが……」
「それにその耳……エルフじゃないか」
「……確かに急に来たことは謝ります。けど、エルフであることは関係ないと思います」

そう。あやこは誇り高きエルフ。それを馬鹿にされるのは何よりも嫌だった。

「……わかったよ。で、用件は?」
「ここに霊界ラジオがあると聞いたのですが……」
「忙しいのにしょうがないな〜。まぁ上がっていけよ」

あやこはおじゃましまーすと言いながら、案内されるまま廊下を歩いた。

「これが霊界ラジオだよ。結構ちっちゃいだろ」

霊界ラジオは中学校の時間に手作りするような素朴なラジオだった。

「使っていいんですか?」
「使うどころかしばらく貸してやるよ。俺にはもう不要の産物だから」

そのラジオを持って、後日再び編集部に訪れた。

「碇さん、三下さん。霊界ラジオ借りてきました」
「あら、あの霊界ラジオなのね」
「皆さんで作蔵さんとお話しましょう」

あやこは一生懸命チューニングしてみた。
霊界ラジオということだけあって、変なうめき声が聞こえたり、
赤ちゃんの泣き声が聞こえたり。

ようやくじいさんのような声とチューニングできた。

「あなたは碇・作蔵さんですか?」

あやこは尋ねてみた。

「あぁ、作蔵ですが何じゃ?」

そこで碇編集長も三下もびっくりして、一瞬声が出なかった。

「私、麗香よ」
「おー麗香もいるのか」
「はい」

そこからあやこが出てきて、

「作蔵さん。碇家の人間以外が編集長をやるとすぐ新しい人になるのでしょう」

それを聞いた途端、作蔵の怒りケージが満タンになった。

「馬鹿もん!恥を知れ。謎解き雑誌の連中がボスもそろって訊いてくるんじゃない!」

そして、あとはざーっという雑音が入った。
あやこはふと、カレンダーを見た。

「明日は13日の金曜日よね」
「確かにそうですが……」

三下がそう答えた後、

「13日の金曜日の午前0時にね、合わせ鏡をのぞくと自分の死神に会えるそうですよ」
と言い出した。

するとあやこが、
「やだ!私、自分の死神に会いたくない!」

そこで碇編集長が口をはさんだ。

「編集長の交代はある意味雑誌の死でしょう。鏡の前に雑誌を置いて死神に聞いてみるのよ」
「じゃあ…やってみますか」

それにはあやこと碇編集長が立ち会うとして、
「三下くん」
「はい」
「ネタを仕入れてきなさい」
「わかりました!」

と言って三下は事務所からいなくなった。

9時、10時、11時……。そして運命の0時が来る。

「あの、私編集長なのにデスクの下に隠れてていいかしら?」
「編集長、大丈夫です。私も鏡の下のデスクに隠れてます」

そして13日の金曜日、午前0時になった。
あやこは怖々と雑誌を通して死神と話をした。

「死神さ〜ん。アトラスの編集長が次々と変わったのは何故でしょう?」

すると死神はこう答えた。

「雑誌にとって碇家は特別なのだ。他の編集長なんて許さない」
「では他の方はどうなったんですか?」
「職場移動で済めばいい方。中には死んだ者もいる」

それを聞いて、あやこと碇編集長は恐怖に震えた。

「それと予言しておこう。これから悪いことが起きる。じゃあな」

そして死神の姿が消えた。そこでガチャンという音がした。三下だった。

「ちょっとぉ、驚かさないでよ」
と碇編集長が意外と怖がりな一面を出した。

「とある喫茶店で販売してるという飲み物を仕入れてきたんですよ」

すると碇編集長は、

「ネタを仕入れてきなさい!って言ったでしょう!なんで缶ジュースなんて買ってくるのよ」

三下は言った。
「この飲み物にはワケがあって……」
「じゃあそんなワケありのもん買うな!」

と碇編集長が口にした途端、沈黙が走った。
ワケありの飲み物=アトラスのネタになるかもしれない。

まずはその飲み物をまじまじと見た。
くぬぎ=どんぐりのデザインをした缶ジュースらしきもので、
「くぬぎのネクター」と書かれていた。

「ネクターってあれよね。ピーチネクターとかのネクターよね」

その原料にくぬぎが使われてると思ったらぞっとした。

「私飲みたくないし、帰るね」
そう言ってあやこは電車も通ってない時間の中、一人で帰っていった。
家に帰ったあやこはずっとくぬぎのネクターについて考えていたし、ネットで情報収集もしてみた。

「ネクターは一定の条件を満たすと、どこの会社でも売れる……ふーん」

そう言いながらあること気づいた。

「くぬぎのネクターなんて普通飲みたくないよね?何でだろう?」

くぬぎのネクター、く抜ぎのネクター、く抜きのネクタ、ネタ?
それがわかった次の日、再びアトラス編集部へと向かった。

「わかりました!くぬぎのネクターの真実が!」
「やっとわかってくださったんですね〜藤田さん」
「さ、みんなで1缶ずつ飲むのよ」

くぬぎのネクターと書かれていたので、本当にくぬぎの味がするかと思ったら、
ピーチネクターの味がのどをうるおしていった。

「あぁ、全ての謎がわかってきたわ!」

と言って、あやこまでもが原稿用紙にネタを書いている。
そして後を追うように三下、碇編集長も一緒に原稿を書きまくった。

ルルルルルル。

電話がかかってきたので、碇編集長は取った。

「はい、こちら月刊アトラス編集部です」
「こちらは白王社の社長なんだけど、来月で廃刊にすることが決まったから」
「それを何とかすることはできないのですか?」
「今月号より2倍売れたら考えてやるよ」

ガチャン。電話は切れた。

でもネクタでハイになってる3人がここにいる。
そして霊界ラジオの作蔵じいさんもついている。

作蔵じいさんは、
「ヤラセは困るぞ。適当に真実に不思議を混ぜるんじゃ」
と素敵なアドバイスをいただけた。

結果、完成した月刊アトラスは素晴らしい出来となった。
人を引き付ける表紙にトレンディな特集。まさに完璧だった。

そしてアトラスは口コミを含めてどんどん売れていった。
そこで社長から電話があった。

「2倍とまではいかないが、かなりの収益アップだよ。ぜひこれからも続けてくれ」

「やったーーー!!」

編集部の中は感激ムードだ!碇編集長は涙目になっていた。
夜は缶ビールを買ってきて、3人でお祝いした。

しかし次の日からはまた忙しい日々だ。
碇編集長に頭の上がらない三下は、

「ネタ、もしくはネクターを集めて来なさい!」
「ネクターはなかなか売ってないんですよ〜。許してください編集長ぉ」



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【7061 / 藤田・あやこ / 女 / 24歳 / 女子高生セレブ】
【NPC / 碇・麗香 / 女 / 28歳 / 白王社・月刊アトラス編集部編集長】
【NPC / 三下忠雄 / 男 / 23歳 / 白王社・月刊アトラス編集部編集員】



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■         ライター通信          ■
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いつもご依頼ありがとうございます。
今回中身の濃いご依頼だったため、全て表現できたか少々不安ではあります。
いつもは字数足りずが多い中、今回は字数オーバーになるほど沢山書けて
嬉しかったです。