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<東京怪談ウェブゲーム あやかし荘>


お酒ください!

●オープニング
 古びた木造アパート「あやかし荘」。
 管理人の因幡・恵美が玄関掃除をしている時だった。

 ドォォォォォォン!

 二階の角の部屋に、何から落下した。
「な、何ですか!?」
 掃除を中断し、その部屋に向かうと……小型の円盤が墜落していた。
 そこから出てきたのは、タコのような宇宙人。
「コンニチハ、ココハ、ドコデスカ?」
 どうやら、地球の言葉は話せるらしい。
「どうしたのー?」
 柚葉が何事かと思い、駆けつけた。
「あらら〜こら、大惨事やな〜」
 天王寺・綾が呑気に言う。
「あなたはどこから来たのですか〜♪」
 歌姫が歌いながら訊ねる。

 墜落した円盤に乗っていた宇宙人は「ピポポ星」という小さな惑星に帰還する途中、燃料切れでここに辿り着いたという。
 燃料は……地球の「酒」である。
「オネガイシマス、オサケ、ワケテクダサイ」
 タコがお辞儀をする姿はどこか不気味だが……早々に立ち去ってもらうには、酒を用意するしかない。

「皆さん、お願いします。宇宙人さんに帰っていただくため、お酒を持ってきてください!」
 恵美は、心当たりのある人物にかたっぱなしに連絡した。

●恵美からの依頼
 藤田・あやこ(ふじた・あやこ)、24歳。
 彼女は、10代に見える外見とは裏腹にとある会社の社長である。
 本日も、スーツを着こなして社業業をこなしているが……ここ数日多忙を極めていたということもあり、ウトウトと居眠りしかけている。
(「眠〜い……」)
 居眠りしようと決め込んだ時、邪魔するかのように内線電話の呼び出し音がなった。
「社長、あやかし荘の因幡と仰る女性の方からお電話です」
 眠たさを堪え、あやこは渋々受話器を手にした。
「お電話代わりました、藤田ですが」
「あ、あやこさん、大変です! 大至急、あなたの力を貸してください!」
 因幡・恵美の依頼は、あやこに大量の酒を持ってきて欲しいというものだった。
 会社社長である彼女なら、大量に用意できると思ってだろう。
「どういうことか説明してくれない?」
「実は……」
 燃料切れで墜落した異星人が乗っていた円盤があやかし荘に墜落し、再発進させるのに大量の酒がいる、と恵美はまくし立てて説明した。
「わかったわ。用意がすんだら、すぐそちらに向かうから」
「お待ちしていますね!」

 電話を切った後、あやこは、含み笑いが止まらなかった。
 表の顔は若き女社長でもある彼女だが、裏の顔はIO2オカルティックサイエンティストである。
「未確認物体を心行くまでいぢり倒す……。コレぞIO2科学者の醍醐味よ!」
 ピポポ星人という未知の生物、墜落した円盤を弄くりまくることに胸躍らせ、科学者の血が沸く。
「タダ酒に味を占められると、他の宇宙人が殺到して地球経済が傾きかねないわね。そうねぇ……ここは一つ、友好と称した「制裁」と新酒の毒見を兼ねて……」
 社長としての商売意欲も、忘れていないご様子。
 数名の社員を引き連れ、リムジンに発明品のひとつである「四次元酒樽」を積み、あやこはあやかし荘に向かった。
「さあ、異星人を弄りに……もとい、救出に行くわよー!」
 弄るのが本来の目的なのでは……? と、口に出来ないお抱え運転手だった。

●怪しげな酒はいかが?
「藤田さん、お待ちしてました!」
 待ってました! と言わんばかりに、恵美があやこに駆け寄った。
「待たせたわね、恵美さん。私が来たからには、もう大丈夫よ。あなた達、お酒を用意して頂戴」
 社員に命じ、酒樽をリムジンから取り出すよう指示するあやこ。
 あやかし荘の前には、珍種の酒が入った樽が続々出てきた。酒だが、平行世界から来た銘柄という設定である。

「どうやって取り寄せたのか、ですって? それは企業秘密よ♪(あやこ談)」

「あ、紹介します。こちらが、お酒を用意するようお願いした宇宙人さんです」
 恵美の後ろに隠れ、タコのような足をクネクネさせながら照れているピポポ星人。
「ア……アリガトウゴザイマス……。コレデ、ヨウヤクコキョウニカエレマス」
 大きな頭をペコペコさせ、お礼を言うピポポ星人だったが、下げすぎたため、地面に頭突き!
「大丈夫?」
 柚葉がピポポ星人のツルツル頭を撫でる。
「その宇宙人の頭だけど……ヌルヌルしてないの?」
「柚葉、あんたよぅ触れるなぁ。ヌルヌルしとるんちゃうか?」
 天王寺・綾がブルブル震えて聞く。
「ツルツルだよー」
 よほど触り心地が良いのか、柚葉は撫でるのをやめない。
「私も撫でたい!」
 好奇心を抑えられないあやこは、ピポポ星人を撫でまくった。
「ん〜、見事な艶だわ〜! ツルッパゲな親父以上ね!」
 研究材料としてお持ち帰りしたい、という本音を隠し、あやこは酒の説明を始めた。

「ぎょうさん持って来たなぁ。酒の臭いはプンプン漂うとるわ。この樽には、何が入っとるん?」
 綾が指差した樽の中には、小判を咥えた三毛猫が漬けられていた。
「あ、あんた、これ動物虐待やないんか!?」
「大丈夫、それ、私が作ったクローンだから。それは『キャッ酒』。金運を呼び込むの」
 これには何が入っているのですか〜♪ と歌いながら訊ねる歌姫が触れた樽の中身は、大量のちり紙。
「それは『ティッ酒』よ」
 どれだけのテッシュペーパーを用意したのか? と、突っ込みたくなる。
「これは、プロ野球選手が一晩漬かった『捕酒』『野酒』で、こっちは、政治家が漬かった『党酒』。そっちの大きいのは、ダンプ運転手が漬かった『大型二酒』で、細い樽の中身は、少女が漬かった『コケティッ酒』」
 残りは長くなるが……
『セロ弾きの豪酒』
『あやかし荘の家酒』
『絶滅危惧酒』
『脂ギッ酒』
『イングリッ酒』
『エンゼルフィ酒』
『オペラ歌酒』
『おフランスムッ酒』
 がある。

●ヨウトラマン、登場!
「あら? あやこさんは?」
「社長でしたら、リムジンで着替え中です」
 お抱え運転手が、覗きはいけませんよ! と言わんばかりの表情で答えた。
「誰か〜背中のチャック閉めて〜!」
 リムジンのドアを少し開け、着替え中のあやこが頼む。
「男のあんたらに任せられへん、うちがやるわ」
 綾がリムジンに乗り込み、着替えを手伝った。
「あ、あんた、そのカッコ……」
「どう? 似合う?」
 似合う、似合わない以前の問題やないんやけど……と、心の中で呟く綾。

 着替えを終え、リムジンから出てきたあやこの姿は……
「SK48星雲からやって来た『ヨウトラマン』参上!」
 右手に一升瓶、左手にグラスを手にしたあやこは、ピポポ星人にグラスを手渡すとお酌を始め、自分も飲み始めた。
「あやこさん! 飲んでいる場合ではないですよ!」
 恵美に注意されるも、あやことピポポ星人の酒盛りは続いている。
「とどめはコレよ!」
 酒ワッチ! と決めセリフを口にした途端、腕から『スペ酒ウム光線』を発射!
 ……というと聞こえは良いが、ホースから水が出ている要領で酒が出ているだけである。
 ピポポ星人が酔いつぶれたのを見計らい、ヨウトラマンに扮したままのあやこは、社員に命じ、円盤の給油口に持ち込んだ酒を全て入れさせた。
「最後はコレ♪」
 あやこがとどめと言わんばかりに入れたのは『フィニッ酒』。
「それじゃ、私はこれで失礼するわ。仕事がまだ残っているから、宇宙人さんのお見送りが出来ないのが残念だわ……」
 良い研究材料も逃したわ、と残念がるあやこだったが、潔く諦めた。

 ピポポ星人の酔いが覚めたのは、酒盛りの翌朝だった。
「ミナサン、ゴメイワクヲオカケシマシタ……。ネンリョウマンタンニタッタヨウナノデ、ブジ、ホシニカエレマス」
 地面に頭を何度もぶつけながらも、ピポポ星人はお辞儀しまくった。
「お気をつけて」
「また、遊びに来てねー」
「もうこんでええで、気ぃつけて帰りや」
「さようなら〜♪」
 あやかし荘住人は、ピポポ星人出発を見届けた。

 円盤は順調に浮上し、無事帰還かと思われたが……あとわずかで帰郷というところで調子が悪くなった。
「ド、ドウイウコトデスカ!?」
 その後、どうなったかというと……翌日、あやこの会社に墜落した。
(「やりぃ! 研究材料ゲット♪」)
 あやこが飛んで大喜びした、というのは言うまでも無い。

 ピポポ星人の運命は如何に!? それは、酒の神のみぞ知る……。
 

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【7061 / 藤田・あやこ / 女性 / 24歳 /  IO2オカルティックサイエンティスト】

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■         ライター通信          ■
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>藤田・あやこ様

 氷邑 凍矢と申します。
 このたびは「お酒ください!」にご参加くださり、まことにありがとうございます。
 再びお会いできて嬉しいです。

 今回のあやこ様は、行動力溢れ、好奇心旺盛なサイエンティストとして描写させて
 いただきました。
 悪乗りさせてしまいましたが、大丈夫でしたでしょうか?
 
 リテイクはご遠慮なくお申し出ください。

 積極的なあやこ様の今後の活躍、楽しみにしております。

 氷邑 凍矢 拝