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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


剣を取り戻せ 最終章

 エクスカリバー
 グラム
 アスカロン
 デュランダル

「これであと1本だ……」
 如月竜矢は、草間の机の上に置いた手を拳に握る。
「あと、1本……」
「最後の1本は、何だ?」
 草間は煙草を灰皿に押し付けながら訊く。
 竜矢はふと草間の顔を見て、
「……驚くなよ?」
「あん?」
「ミストルテインだ」
 草間が取り出したばかりの煙草をぽろりと落とした。
「――はあ?」
「ミストルテイン」
「まさか、やどりぎの木か?」
 竜矢はうなずいた。
「5本目を作る時にはもう、姫は正常な状態じゃなくて――集中力を高めるので精一杯だった。何を作ろう、とか考えている余裕がなかったらしい」
「それで……作っちまったってのか? やどりぎの木を?」
「ああ」
 竜矢はポケットから何かを取り出した。
「これは、昨日改めて姫が作ってくれたやどり木の破片だ。これに元のやどり木をつなげると最初のミストルテインと同じになる」
 それから、と青年は続けた。
「本物のやどり木の場所は感知済みだが、周囲にびっしり魔の気配がするらしい。
「またか……」
 草間は落とした煙草を拾い、口にくわえてライターで火をつけた。
「ミストルテインは神剣には程遠いと思うが――」
「それでもそれ以上姫には作る精神力がなかった。期日も迫っていたしな。だからミストルテインをそのまま上納した」
 そしてその数日後に始まった、紛失騒ぎ――
「――俺は5本揃えて本家につきつけてやらないと気がすまない」
「その気持ちは分かるが」
「急いでくれ」
 竜矢は懇願した。

「姫のお父上が姫の家にいらっしゃるまで、時間がないんだ」

     +++ +++ +++ +++ +++

「やどりぎの木……武器でなく木そのものか。そんな物作って困った娘だ」
 葛織家でラグナロク起す気か、と黒冥月が苦笑した。
 やどり木と言えば、確かに神々の黄昏と呼ばれる戦、ラグナロクが起きた原因だ。
「何にせよ、これが最後。父親が来るなら何か言ってやらんとな」
「お前の言いたいことなら分かるぞ。『娘さんをください』だろう」
 草間が冥月をからかった。
 ……ハイキックで滅殺される。
「最後の1本。頑張ろうね、武彦さん」
 草間の婚約者であるシュライン・エマが、草間を助け起こしながら微笑みかける。
「俺は行った方がいいかね」
 草間は腕を組む。
「来ない方がいいと思うわ……」
 黒榊魅月姫がおごそかに言った。「敵は怪魔。普通の人間の来るところじゃない」
「そう言われると反論できんが、俺も情けないな」
「毎回頼みごとをするだけで、現場には来ない男よりはマシじゃないか?」
 冥月は草間と竜矢を交互に見た。
「俺は今の姫を屋敷に1人にできないだけですよ……」
 竜矢は苦笑する。
 紫鶴の不安定な心情はまだ揺れている。少女は恐れている。今は何に恐れているのか分からないほど、震えている。
「そうね。今の紫鶴は1人にできないわ。……よろしく、竜矢さん」
 前回紫鶴の本音を聞いた魅月姫が、竜矢に目配せした。
「今回は敵が多いそうですね……」
 普段は寡黙なノイバー・F・カッツェが静かに言った。
「事前に少し作戦を立てておくのがよいかと思いますが」
「私は作戦などどうでもいい。邪魔な物は抹殺するだけだ」
 興信所の壁にもたれかかっていたヴィルア・ラグーンが肩をすくめる。
 そんなヴィルアに声をかけたのは加藤忍だった。
「一応話は聞いておいた方が。それで皆様は、やどり木を囲っているのは何者だとお考えですか?」
「植物類じゃないかなって」
 柴樹紗枝が頬に指を当てる。「だってほら、やどり木って木なわけだし」
 ガウ、と紗枝の隣で、彼女の相棒の白虎・轟牙が首を動かす。
「……ミストルティンってさ、そーいややどり木なんだから宿る相手が要るわけだよな普通」
 紗枝の言葉にうなずくように、浅海紅珠がつぶやいた。
「神話だと、バルドル生還を願った神々想像しちゃうけど」
 シュラインがう〜んと柳眉を寄せる。「また吸血鬼関係の何か?」
「吸血鬼だろうよ、十中八九」
 冥月がヴィルアとは違う壁にもたれて言う。
「ただ、姿は変えてるだろうな。例によって」
「やどり木信仰で有名なドルイドたち……というのはどうでしょう」
 ノイバーが新しい言葉を口に出す。
「それ以前に倒すべき相手なのか、倒さなくていい相手なのかが分からんがな」
 冥月があごを引いた。「こればっかりは、本当に現場に行かんと分からん」
「邪魔な者なら……殲滅するだけだわ」
 魅月姫が目を閉じる。
「私は北欧の神々が邪魔をしてくるのじゃないかと思うけれど」
「しかし数が多いと、なかなか一番重要なやどり木にたどりつけないと思うんです」
 阿佐人悠輔が軽く手を挙げた。「こんな案があるんですが」
「何だ? 阿佐人君」
 草間が煙草をふかしながら続きを促す。
「やどり木に似せた形をしたものを全員に持ってもらい、それを相手にアピールして相手を拡散させ、隙を突いて本物を持った人が接ぎ木をする……」
「本物に似せてかあ……」
 シュラインが頬に手を当てると、
「はい、はい! 俺、はっきり言って戦闘に慣れてないけど、耳や目はいいつもりだしやどり木にひっそり近づいて枝一本折って来られるぞ!」
 紅珠が手を思いっきり挙げた。
 シュラインが少女を見て、
「今回のやどり木は魔力を持つ物と考えていいと思うのよ。それ自身に意識があったりするのじゃないかしら」
「え?」
「無理やり折るのがはばかられるということ。寄生してる木も傷つきそうだもの」
 紅珠がむうっと眉を寄せて思案する。
「紫鶴さんの剣、本質は何かを傷つける剣じゃなく護る剣だとそう思ってるから」
「それではどうなさいますか、皆さん」
 忍が尋ねる。
「あなたはどうなさるの? 忍さん」
「私は時間がありませんので、もちろん葛織家の方へ。ミストルテインはお任せします」
「そうね、それがよさそうだわ」
 シュラインはメンバーをぐるりと見て、「幸い、怪魔相手でも充分相手に出来るメンバーが揃っているようだし」
「亡霊でなければ私の串刺しで一撃だ」
 冥月がふんと鼻を鳴らした。
「私も敵なら遠慮なく……」
 魅月姫の淡々とした声に、どこか怒気が含まれている。
「じゃあ俺どうすればいいんだ? 戦闘は本気で苦手だぞ」
 紅珠がむくれた。シュラインはその頭を撫でて、
「私もやどり木自体に近づいて、北欧の言葉で話しかけてみるわ。一緒にやどり木を採りましょう」
「俺は何が相手でも、敵であれば全力で」
 悠輔が言った。「多分サポートに回るかと思いますが……」
「拒否されるのなら力づくでも」
 ノイバーが珍しく強い言葉を使った。
「敵が多いなら、鞭も使い勝手がいいな」
 紗枝が嬉しそうに、いつも手にしている特殊な鞭をぱちんと鳴らした。
「ガルル……ガル……(訳:紗枝、ほどほどにしておけ……お前は加減を知らん)」
「うわ、失礼すぎ轟牙! 私は紫鶴ちゃんのために頑張ろうとしてるだけなのに!」
「ガル……ガルルル……(訳:調子に乗りすぎてやどり木を折るなよ……すべてがご破算だ)」
「そんなミスするわけないでしょー!」
 轟牙と紗枝がひそかに漫才をやっている間に、悠輔が首をひねって、
「じゃあ……本物は戦っていらっしゃる方に持って頂いて、シュラインさんと紅珠さんにやどり木を折り取ってきてもらう、という方向でしょうか?」
「私に持たせれば保管は完璧だぞ」
 冥月は竜矢から受け取った、紫鶴の作った接ぎ木用のやどり木の欠片を影に沈めた。確かにこれなら、他人に奪われることはない。
「あとは現場で決めることばかりだな」
「ならさっさと行こうぜ」
 ヴィルアが壁から背中を離した。

 忍は最後に部屋を出る前に、竜矢を振り返った。
「竜矢さん。お尋ねしたいのですが、剣の遺失に気が付いたのと、作り直せといわれたのはどちらが先ですか?」
 問われて竜矢はあごに手をやった。
「確か……そう言われれば、作り直せと言われたのが先だったような気もしますね」
「剣は何か目的の為、本家が必要とし使用した結果、遺失したのでは?」
「その可能性も否めない」
「必要としたのは、当主か? 弟君か――?」
「………」
 考え込んでしまった竜矢に、忍は笑った。
「ではそれを確かめてまいりましょう。行ってまいります」

     +++ +++ +++ +++ +++

 忍は先に、葛織本家へと様子を見に行った。
 残りの全員は、ワゴンに乗って問題のやどり木の元へ向かうことになった。

 ――問題のやどり木は、東京郊外にあった1本の桜に寄生していた。
「おかしいわね」
 ワゴンを運転していたシュラインが首をかしげた。「桜の周りに誰もいないわ」
「あの桜じゃないんじゃねーの?」
「竜矢さんの情報では間違いないんだけど……」
「近づいてみれば分かるだろうよ」
 ヴィルアは、止まった車から真っ先に降りた。そしてすたすたと歩いていってしまう。
「待ちなさい、1人で行くのは危険よ……」
 魅月姫が足早に追いかけていく。
 冥月も肩をすくめて2人の後を追った。
 紗枝は轟牙の背に乗って、
「えーい!」
 さっきのお返しとばかりに轟牙に鞭を入れる。
「ガル……(訳:痛くて余計に走れん)」
「大人しく言うこと聞きなさーい!」
 走り出した轟牙の後ろを、悠輔とノイバーが追う。
 そして、少し遅れてから、シュラインと紅珠が車から降りた。

 やどり木にたどりついても、やはり周りには誰もいない。
 否――
「いや……何かがいるな」
 ヴィルアはその能力で察知していた。
「いると紫鶴が言ったのよ」
 追いついた魅月姫が冷静に言う。
 次々に仲間がたどり着いて来る。ヴィルアや魅月姫のように、怪魔の気配を感じられない者はきょとんとしていた。
「何だ、これなら簡単じゃん」
 紅珠がやどり木に近づく。
「紅珠さん、ちょっと待って!」
 同じく怪魔の気配は感じられないものの、長年の勘を持っているシュラインが少女の肩を押さえて止めた。
「な、なんだよ?」
「紅珠さん、まだ念のため……」
 悠輔が紅珠をかばうように立つ。
 その時。
 しゅるるるるるるるっ
 どこからか蔓が一斉に発生して、やどり木を取り囲んだ。
「何だっ!?」
 冥月が構える。ヴィルアが魔術を放とうと魔力をためる。紗枝は轟牙に乗ったままで、ノイバーは蔓の動きで起きた風に衣装を乱された。
 魅月姫がすぐさま魔杖『真紅の闇』をサイズフォームして大鎌にして振るった。
 蔓がざくざくざくっと斬り飛ばされていく。
 しかし――、脅威の生命力。蔓はすぐに再生した。
「ちっ」
 ヴィルアが火炎を放った。桜ややどり木には当たらぬよう――
 しかし、燃えない。この蔓は燃えない。
 やがて蔓は伸びて伸びて、彼らをも捕らえて空中に上げ、締め上げ始めた。
「ぐ……ううう」
 悠輔のバンダナが蔓に引っかかってはらりと地面に落ちる。
 よく見ると蔓の先端がとがっている。
 それが彼らに向かって襲いかかろうとしたその時――
 ガオオオオオオオウ!!
 轟牙が雄たけびを上げた。
 蔓の動きが一瞬止まった。
 魅月姫が再度『真紅の闇』を大鎌状態でその手に持ち、自分の体を拘束する蔓を断った。そして着地すると、次々と仲間たちの蔓も断ち切っていく。
 ノイバーが蔓に向かって、『弓矢』のカードを向けた。
 鋼の矢が連射される。桜とやどり木には当たらないよううまく調整して。
 蔓が――ぼろぼろと地面に落ちる。
 復活しないようにと、念のため冥月が影に沈めた。
「な、なんだあ」
 紅珠が驚いたように身をすくめた。悠輔が急いで地面に落ちたバンダナを拾う。
「とりあえず全員無事でよかったわ……」
 シュラインが吐息をつく。
 と、その時。
 シュラインは背中をどんと突かれ、前につんのめった。
「シュラインさん!」
 悠輔がすかさずバンダナを伸ばし、シュラインの体に引っかけて彼女の体が倒れるのを防ぐ。
 はっと他のメンバーが振り向いた時――
『我らの儀式を邪魔するのは……誰じゃ』
 数人の祭司――オークに寄生したやどり木の下で儀式をすることで有名な、ドルイドたちが、いた。
 冥月やヴィルア、ノイバーが攻撃態勢を整える。
 しかしそれを制して、魅月姫が大鎌を消し、ドルイドたちに近づく。
「……実はそのやどり木を1枝もらいたいの。駄目かしら?」
『やどり木は神聖な木……そなたたちのような穢れた種族には渡せん』
 魅月姫は眉をしかめた。穢れた種族――それは魅月姫が吸血鬼であることを指しているに違いないのだ。
「おい」
 ヴィルアが魅月姫の背後から言った。「話し合いするまでもねえぞ。こいつら同類だ」
「……そうね」
 言うなり、魅月姫は大鎌を発現させた。下から振り上げるようにドルイドを1人まっぷたつに裂く。
 体を裂かれて地面に倒れたドルイドは、地面からヴィルアがひそかに吸い取っていた。
 シュラインが悠輔の手を借りて体勢を整え、得意の音声調節でドルイドの動きを鈍くさせる。
 ノイバーが再び『弓矢』のカードで無尽蔵の矢を放った。
 冥月は空中に万本単位の影槍を用意し、ドルイドに向かって突き落とした。
 ドルイドは矢や影槍に串刺しにされ、しかしなおも生きていた。
『お……のれえ、神に従わぬ愚か者めが』
 まったく身動きできないまま、残っているドルイド数人は何事か呪文を唱え始める。
「そーは行くか」
 ヴィルアが片手に闇の魔力を乗せ――
 ドルイドに向かって叩きつけるように放つ。
 ドルイドは本来聖職者だ。本質は吸血鬼でもドルイドに成りきっていたため、闇の魔術は効果てきめんだった。
 串刺しにされていたドルイドたちが悲鳴をあげながら闇に呑まれていく。
 ノイバーが、近いようで遠いやどり木を仰いで言った。
「まるでハリネズミですね。棘の向きは逆ですが」
 冥月が顔をしかめた。
「……手ごたえがない。それにまだ何か匂う」
「そうね……」
 魅月姫がすうと息を吸った。
 そしてある一点へと向かって、大鎌を振り下ろした。

 空間が、ざっくりと割れた。

「へええ……」
 感心したような声が、聞こえた。
「私の気配が分かるなんて、なかなかだな、吸血鬼」
 魅月姫はきっとその存在をにらみやる。
 灰色の髪に不敵に笑う緑の目。空中に浮かびながら、足を組んでいる挑発するようなしぐさ。
 そして、
 彼の周りに1人の女性と――
 大蛇。
 半身の腐った少女。
 大狼。
 ――シュラインが目を見張る。
「そんな……どうして、やどり木の下にあなたが」
「何もおかしいことはないだろう?」
 と灰色の髪の青年はくっくっと笑った。「元はと言えば、やどり木は私が利用した木だ」
 それは北欧神話の中。
 やどり木を利用して。
 すべての神々に愛されたバルドル神を殺した張本人。
 その名を――ロキという。
 その傍に寄り添うのは妻のシギュンだろう。
 そして周りを囲っている3体の異形は――ロキの愛人が産んだ3匹の子供たちだ。
「きみたち、このやどり木が欲しいんだって?」
 くすくすとロキは笑った。
「そこのきみ。きみの影の中に不思議な気配がするねえ」
 冥月を指差し、ロキは続ける。
 冥月はぎりっと歯をきしませた。――邪神ロキと言えば、悪戯と欺瞞の神だ。
 つまりさっきまでの蔓やらドルイドやらは……すべてロキの悪戯なのだ。
 ただ遊んでいるだけ。そういう神。
「紫鶴の剣を返しなさい!」
 魅月姫が怒気を含んだ声でロキに言う。
 ロキは大げさに肩をすくめて、
「なら、私たちを倒してみせるんだね? できるものならねえ」
 悪戯の神がすいっと指先を空中に滑らせる。
「しま……っ伏せろ!」
 冥月の言うままに全員がその場に伏せる。
 空中で大爆発が起こった。
 ロキはルーン魔術が大の得意だった。
「さあお行き。私のかわいい子供たち」
 ロキは優しい声で子供たち3匹を消しかけた。

     +++ +++ +++ +++ +++

 忍は葛織本家に忍び入っていた。
 壮大な屋敷だ。紫鶴邸もかなり大きいが、本家はそれを超えている。無駄な部屋も多かろうと思えばそうでもない。客人が多いからだ。
 葛織京神はこの屋敷の管理者だった。
 当主である葛織臣羅が管理者ではないのだ。
 管理者と当主は違う。当主はあくまですべてのトップに鎮座するだけ。その下の、「屋敷管理人」という役職に京神がいるというだけの話。
「当主、どこへ行かれるのです」
 出かけようとしている臣羅を玄関まで見送りに来た京神が、厳しい声で問うていた。
「野暮用だ」
「当主にそのような言葉は許されませぬ。我々はあなた様の身を常に護らねばならぬ立場」
「たまにはよかろう。私とて身を護るすべは持っておる」
「しかし――」
「京神」
 臣羅は弟を鋭い眼光で見た。
 そして声は、ゆっくりと。
「……私の言葉は、絶対だ」
「………」
 京神は何も言えず、頭を下げた。
「お気をつけて……」

 忍はさらに屋敷内を探る。
 ――泥棒としての能力を活かして探し回るが、怪しい物は見つからない。
 紫鶴の作った剣が、もしかしたらまだ残っているのかもしれないと思ったのだが……
 眉を寄せながら、慎重に今まで足を踏み入れなかった場所にすべりこんだ。
 そこは現葛織家当主、葛織臣羅の部屋――
 そこをぐるりと見渡した忍は、やがてはっと気づいて足音をさせずにたたみの上を走ると、かがみこんだ。
 拾い上げた物――
 それはまぎれもなく、やどり木の破片だった。


 大蛇、ヨルムンガンドはやどり木の寄生している桜に体を五重にも六重にも巻けるほどのサイズだった。
 ただし神話上のヨルムンガンドはミッドガルド全体を囲っていたというから、これでも小さいのだろう。
 ヨルムンガンドはずるずると地面をすべり、頭をもたげてかっと大口を開ける。
「………っ!」
 紗枝が電撃鞭を放つ。ヨルムンガンドの鼻先に当たって、ヨルムンガンドは一度口を閉じた。
 しかしすぐに反撃を開始する。巨大な体をくねらせて、やどり木の宿った桜に体をぶつけて皆の気を引きその間に紗枝にからみつく。
「〜〜〜〜っこの蛇……っ!」
 サーカス団猛獣使いの彼女でも蛇は滅多に扱わない。動きを完全に拘束され、大きく開いた口で頭から飲み込まれそうになった時――
 ガオオオオオオウ
 紗枝の頼もしい相棒がヨルムンガンドの体に噛み付いた。
 ヨルムンガンドの意識が轟牙に移る。その隙に紗枝は鞭を蛇の胴体に打って電撃を流し、拘束を解いた。
 すかさず後ろからノイバーが『弓矢』のカードを浴びせる。
 体中に鋼の矢が刺さる。しかしまだ生きている――
「生命力は確かだな」
 冷静につぶやいた冥月が、大蛇の影から何本もの影槍を突き出し、串刺しにした。
 最後にはヴィルアが焼いて、ヨルムンガンドは地面へ真っ黒になって転がると、そのまま塵となって消えた。

 ふいに紅珠は後ろから抱きしめられて、ひっと声を上げた。
 半分冷たく、半分人のぬくもりがする。
「ふふ……このまま地獄まで送ってさしあげます……」
 半身が腐った少女ヘルは、紅珠を抱きしめたまま地面に沈みこもうとする。
「紅珠さん!」
 悠輔がバンダナを広げ、円盤状にして飛ばした。
 ヘルの足元に当たり、ヘルの動きが止まった。
 紅珠は必死に冷静になろうと努力し、そして最近師匠に習っていた術を使おうとする。
 ――体内の水分を逆流させる術――
 大技だった。1日に1回が限度だ。しかしこのヘルという存在には、得意の麻痺呪歌などは効かないと判断して。
 ヘルの一見人間のような体の中で、激しく水が逆流する。人間の体はほとんどが水分で出来ている。神もそうだというのなら、効果はあるはずだ。
 案の定、ヘルは悲鳴を上げて紅珠から手を離した。
 そこへ悠輔がバンダナを拾ってを剣状にすると、ヘルの心臓に突き立てた。
 ヘルは断末魔の叫びを上げながら地面に沈んでいく――

 シュラインを追いかけるのは大狼。神話によると大口を開けばそれは天にも届くほどの大きさだというが、この狼は通常の狼の5倍ほどの大きさがあるだけで……充分だ。
 シュラインは音波調節で狼の動きをのろくすることに挑戦してみる。
 グルルルルルルッ!
 狼は激しく首を振り、唾液を飛ばした。
 動きはのろくなったものの――でかいことに違いはない。シュラインが必死に走ると、
「伏せていなさい!」
 ふと頭上から声がして、とっさにシュラインは伏せた。
 跳躍した魅月姫が、動きののろくなった狼に大鎌を振り下ろした。
 狼の脳天をかち割る。そこからも魅月姫は何度も大鎌を振るい、狼をまるでステーキのように切り捨てた。もちろん絶命している。
 それに気づいたヴィルアが、足元から狼の残骸を吸収。
「……こいつも吸血鬼だな」
 食事ついでにぺろりと唇を舐めながら、つぶやいた。
「おやおやおや」
 ロキが面白そうに拍手をする。「見事だね。あっという間だね」
 隣でシギュンは感情のない薄っぺらい表情を見せている。
 元々この化け物3匹は彼女の子供ではないので、愛情がないのかもしれない。
 皆の注目がロキに集まる。
 ロキは軽く笑って――再び空中にルーン文字を描き上げた。
 ちょうど自分を倒しに来た者たちを嘲笑うかのように――彼らには直接当てず、その周辺にだけあちこち爆発させる。
「く……この……っ!」
「あははっ!」
 子供のような笑い声と共に、再び空中に描かれる文字。今度は吹雪が吹き荒れる。
 そして再度。反撃する間もなく次の文字。今度は雷雨が起こった。
「あ……う、俺、もう、駄目……」
 ヘルに抱きつかれていた時の思いがけない疲労感と、度重なるロキのルーン魔術で、紅珠がダウンする。
 その体を抱きとめて、悠輔は何とか踏ん張っていた。
 紗枝は失神し、轟牙がその体を自分の背に乗せる。
 シュラインも地面にどさっと座り込み、意識を保つので精一杯だった。
 冥月はこの程度で気絶するようなことはなかったが、反撃のチャンスを失っていた。
 ヴィルアは影による移動を試みようとしていたが――ロキに近づいたところで、次にどうする?
 そう考えていた時に。
「はっ……!」
 同じく吸血鬼の能力、影門での移動によりロキの目前までやってきた魅月姫が、跳躍して大鎌を大きく振るった。
 ロキはかわした。
 しかし、シギュンはかわせなかった。
 哀れ攻撃能力も防御能力も持たない女は、そのまま声も出さずに消え去った。
 ロキの顔色がさすがに一変する。
「よくも……」
 目の前の魅月姫を鋭い眼光でにらみつける。
 魅月姫は一瞬、その瞳に吸い込まれそうになった。
 しかし頭を一振りして、すぐに意識を取り戻す。
「真祖の吸血鬼を……なめないでくださいね」
 大鎌の連撃。かいくぐりながらロキはルーン文字を描こうとするが、ヴィルアが銃でロキの手を狙い、それを邪魔していた。
 やがて、気絶していた者、疲れ果てた者たちが力を取り戻し始める。
 シュラインが音波調節でロキの動きを乱し、紅珠が効果がないだろうと分かっていても必死で麻痺呪歌を歌う。ノイバーは『扉』のカードで遠くにいた悠輔を吸血鬼の傍まで移動させ、悠輔は剣状のバンダナでロキを狙う。
 紗枝は鞭をふるって、衝撃波を生み出す。
 仲間たちは器用にそれを避けた。
 ロキも避けてはいたが、動きは完全に乱れていた。
 魅月姫の素早い鎌さばきで、少しずつロキの体中に傷が刻まれていく。
 ロキの形相が変わっていく。邪神の顔へと変わっていく。
 しかし誰もそんなことは気にしていなかった。――怖くなどない。この男の正体も分かりきっているのだから。
 やがて冥月が――
「退け、お前ら!」
 彼女の合図で一斉にロキを攻撃していたメンバーが散る。
 冥月はたっぷりと渾身の力をこめた影で。
 下から槍を突き出し、ロキを串刺しにした。

「おのれぇ……おのれぇえええええ」
 串刺しにされても生き延びる邪神。
 魅月姫が無造作に鎌を振り下ろす。
 力が弱まったところで、冥月が影に沈め――
 そのまま、影の中でひねり殺した。


 はあ、はあと誰もが息をつく。
 雷雨を受けて濡れた体が嫌に重い。まとわりついてくる髪を適当に払って、紅珠や紗枝などはまたしゃがみこんでしまった。
 シュラインは、今度は必死に立ち上がった。やどり木の元まで行くと、北欧の言語で話しかける。
 やがて、彼女はやどり木の1枝を折り取った。交渉成立――
「冥月さん……紫鶴さんの欠片を」
「ああ」
 冥月は影に隠していた紫鶴のやどり木の破片を取り出して渡す。
 シュラインは折り取った枝と、破片を軽く触れ合わせた。
 輝きが目を焼いて――
 しばらく視界が真っ白になり、気づくとそこには1本の長い――長く細い、まるで剣のようなやどり木ができあがっていた。

     +++ +++ +++ +++ +++

 さあ、帰るぞ――
 彼らはゆうゆうと草間興信所に向かう。
 帰ってきた彼らを見て、「何だそのびしょぬれ状態は!」と草間が仰天したが、
「ミストルテインは出来たのか? なら紫鶴の家に行くといい。今ならちょうど……たどりついてる頃だろう」
 誰が、とは言わない。
 彼らは急いで紫鶴邸へと向かった。


 紫鶴邸を訪れていた人物――
 紫鶴は、呆然とその人物を見上げていた。
 一体何年ぶりに見た顔だろう。
「……紫鶴。大きくなったな」
 まったく感情の出ない顔で、低い声で、言った。その男は。
 現葛織家当主。
 紫鶴の――父親。


 そして少し遅れて入ってきたのは、ミストルテインを手に入れた紫鶴の友人たち――
 あっ、と紫鶴は声を上げて、慌てて自室へと引っ込んだ。
 そして、今までの4振りの剣を持ってきて、その上にミストルテインを置いてもらった。
「父上!」
 紫鶴は弾けそうな声で言った。
「父上、無くなった剣はすべて復元した! これで満足して頂ける――」
 臣羅はちらと娘の抱える剣を見やって、
「……無駄なことをしおって」
 と言った。
 え、と紫鶴が固まる。紫鶴の肩を支えていた竜矢も目を見張る。
 聞いていたまだびしょ濡れの面々も、耳を疑った。
「……無駄?」
 魅月姫がつぶやいた。
「そうでしょうねえ」
 ふいに聞こえた声。
 振り向くと、忍が紫鶴邸に入ってきていた。
「あ……調査は終わったんですか」
 竜矢が尋ねる。
「こんな物を見つけましたよ」
 忍は臣羅以外の全員に、手にしていた小さな物を見せる。
 シュラインが口を両手で覆った。
「や、やどり木の破片……」
「どこにあったと思いますか?」
「……勝手に入りおったのか。不法侵入だな」
 臣羅が忍を冷たい目で見る。
 紫鶴が引きつった。
「ま、まさか、父上」
 臣羅は手をかざし――
 紫鶴の抱えていた5振りの剣を、手刀で真っ二つに折った。
「な……っ!」
 がらんがらんと、使い物にならなくなった剣たちが床に落ちる。
「父上! どうして!」
「……詳しくお聞きしたいわ」
 魅月姫が低い声で言った。
 臣羅はしばらく黙っていた。
 外を警戒しようと、忍が玄関から出て行く。
「……紫鶴の姫さんのためですからね」
 臣羅に一言残して。
 ――轟牙が何かを訴えようと、紗枝に向かってぐる……と鳴く。
「どうしたの?」
 紗枝が轟牙の指し示す方向を見やると、そこには大きな絵画があった。
「?」
 紗枝は轟牙の、並外れた五感を知っている。だからその絵画を見に行った。
 臣羅がぴくりと反応する。
 紗枝は絵画を少し動かしてみて――
 その裏に取り付けられている小さな機械を見つけ、とっさに電撃鞭で破壊した。
「――盗聴器なんて、誰がしかけたの!」
 紗枝は怒りのこもった声で叫ぶ。
「今のご様子だと……」
 魅月姫が臣羅をにらんだ。「あなたのようね、ご当主様」
「………」
「他人の掌の上で、演目もわからず躍らされるのは嫌いでして……あなたの思惑、教えて頂きます」
 ノイバーが仮面を手で押さえながら、真っ向から臣羅に言った。
 臣羅は、
 紫鶴に、向き直った。
「紫鶴」
「――は、はい」
 紫鶴は震える声を出す。
「今ので分かっただろう。……お前の剣はすぐ折れる。未完成品だ」
 紫鶴は真っ青になって、
「まだ、まだ修行が足りない――んです。こ、これから頑張ります! 父上――!」
「無駄だ」
 臣羅は一言の元に切り捨てた。
「お前がお前である限り、当主交代のための剣は作れん。したがって、お前は次期当主にはなれん」
「な、なぜ――!」
「……お母上が吸血鬼とのハーフだからとでも?」
 魅月姫が静かに問う。
 紫鶴が目を見張って、魅月姫を振り返った。
 魅月姫ははかなく微笑んだ。
「私には分かるわ……紫鶴、あなたの中には確かに吸血鬼の気配がある」
「そんな――」
「できあがった剣にもすべて、吸血鬼の気配がしみついていただろう」
 確かにそうだった。
 すべての剣には、吸血鬼がからんでいた。
 それは――他ならぬ剣が、吸血鬼を呼んでいたからではないだろうか?
「……紫鶴が吸血鬼の血筋か」
 冥月が壁にもたれた。
「そもそも、京神氏は吸血鬼とのハーフの女性を娶ったあなたのスキャンダルを恐れて、あなたを追い落とそうとしているのでは?」
 ノイバーが仮面の下から尋ねる。
 臣羅は目を伏せ、
「そうだな……由緒正しい葛織家にこれから吸血鬼の血が受け継がれていくなどとんでもないと、怒っていたが」
 だから――
「だから、次の当主に紫鶴は相応しくないと見せしめるために、当主交代の時期でもないのにこの娘に剣を作らせた」
「……あなたのご命令じゃなかったのね」
 シュラインが神妙な態度で言う。
「いや。言い出したのが京神だというだけで、私は黙認した」
「一体何考えてるんだよ!」
 本家に常々怒りを感じていた紅珠が、ついに爆発した。
「紫鶴、苦しんでるんだぞ! こんなところに閉じ込められて、悲しい思いしてるんだぞ! 最後の剣が神剣じゃなくてミストルテインだったのも本家のいんぼーじゃないのか!」
「………」
 今にも殴りかかりそうになり、悠輔に止められている元気のいい少女を見やってから、臣羅は紫鶴を見た。
「紫鶴。……今の生活は、苦痛か」
「え?――その」
 紫鶴は口ごもった。
 視線が右へ左へと泳いだ。
 そしてようやく口に出来たのは――
「……分かりません。外で過ごすとどんな気持ちになれるのか、比べる対照がありません、父上」
 うつむいた少女の肩を、竜矢が優しく撫でる。
「お前は、今の生活でいいんだ」
 臣羅は言い切った。「お前の体質も含めて、お前はこうして閉じこもっている方がいいんだ」
「……なぜですか」
「周りに迷惑がかかるからだ」
 きっぱりと。
 他ならぬ父に言われ。
 紫鶴は片手で顔を覆った。
 肩が震えていた。嗚咽をこらえている気配があった。
 魅月姫が、紫鶴の前に立った。臣羅との間に割って入るように。
「私が何者かもお分かりになるでしょう、ご当主」
「……ああ」
「あなたは紫鶴をどう思っているのですか。盗聴器をしかけてまで、何をさせたいのですか」
 紫鶴は言っていた。
 自分は母親の命と引き換えに生まれてきたと。
 だから父親に嫌われているんだと。
 ――臣羅の視線がわずかに揺れた。
「……盗聴器は京神への警戒だ。あれが紫鶴に何をしかけるか、把握しておきたくてな」
「紫鶴のことを――」
「………」
 察して、魅月姫が横へ退く。
 臣羅は紫鶴の、赤と白の入り混じった不思議な髪を――
 くしゃり、と撫でた。
 びくっと紫鶴が体を震わせる。
「……大きくなればなるほど、似てくるな……」
 魅月姫は言った。
「私は何があろうと、紫鶴を護ります。紫鶴を傷付ける者は許しません」
「そうか」
 臣羅は思いがけず、優しい顔をした。
「いい友人を持ったな……紫鶴」
 紫鶴がそっと顔を上げる。
 実父の笑みがそこにあった。
「父……上……」
「お前は当主にはなれん。が、京神の血筋からも当主を出すつもりもない。安心しろ」
「―――」
 臣羅はそれだけ言って、くるりと背を向ける。
 魅月姫は紫鶴に告げた。
 ――自らの胸の内をすべて告げなさい、と。
 紫鶴は声を上げた。
「父上!」
 臣羅の動きが止まる。
 紫鶴はひとつ深呼吸をすると、
「……私は、諦めません。確かに葛織家に吸血鬼の血を混ぜるのはよくないかもしれない。けれど解決方法もあるかもしれない。私の体質だってそうです。立派な剣も作ってみせます」
「―――」
「私は――当主を目指します。葛織家のためになれる当主を」
 そして硬かった声を少し和らげて、
「……父上に会えて、嬉しかった」
 臣羅は静かにそれを聞いていたが――
「そうか」
 たった一言。
 そのまま、後姿が遠くなっていく。
 力が抜けて倒れそうになる紫鶴を、竜矢が支えた。
 竜矢は紫鶴を支え、びしょ濡れの面々のためにタオルを持ってくるようにメイドに言いつけ、全員を居間に連れて行く。
「お疲れだと食欲もあまりないでしょうから……お茶を持ってこさせます」
 何となく、居間全体に疲れた雰囲気が残る。
「……紫鶴さんに無理なことをさせずには済んだんだ。今はそれでいいと思う」
 悠輔がつぶやいた。
 誰も、応える者はいなかった。
 と竜矢がメイドにお茶を言いつけた時、遅れて忍が入ってきた。
「臣羅氏はお帰りになりました」
「忍殿……何を持ってらっしゃるのだ?」
「はい。……やどり木です」
 忍はにこにこと笑顔で、数枝のやどり木を束ねた物を持ってくると、ちょうど紫鶴と竜矢の頭上に来るようにかざした。
 そして片目をいたずらっぽく閉じ、
「やどり木の下では接吻をしなくてはならないという話、ご存知で?」
 ひえっと紅珠が顔を赤くした。
「ちょ、ちょっとそれは……」
 竜矢が首を振り、「大体俺は剣集めに何も関係してませんから」
「剣が無い間、紫鶴さんはきっと不安だったと思うわ」
 シュラインが微笑んだ。「その孤独を埋めたのは、竜矢さんよね」
 悠輔が顔をそらし、ヴィルアと冥月は呆れたように肩をすくめ、魅月姫は微笑ましそうに見つめている。
 紗枝は「やっほーい、やれやれー!」とはやしたて、轟牙に「ガル……(訳:はしたない)」といさめられた。
 ノイバーは仮面の下で、一体何を考えているのか分からない。
「姫は13歳ですよ!」
 と竜矢が声を上げたその時――
 その頬に、紫鶴がちゅっとキスをした。
 竜矢が真っ赤になる。
「お前……その歳で頬にキスされただけで赤くなるって、本当にへたれだな」
 冥月が指摘した。「そんなことでは女とはやっていけん。紫鶴は大きくなったらきっといい女になるぞ。紫鶴が奪われるのを手をこまねいて見ているんだな」
「あの……そういう話でしたっけ? 今は」
「そういう話ということにしておきましょう、竜矢さん」
 忍がやどり木をかざしたまま、
「こうして姫君の心の盾となることを、騎士は誓ったのでありました」
 そう言って、しめくくった。

 長い長い剣探し。
 その中で生まれた人々の友情、つながり。
 紫鶴の背中を押したのは、友人たちの心。

 今、はばたいて行くだろう、少女の心は。
 友情という名の風に乗って――……


 <剣を取り戻せ/完>


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0086/シュライン・エマ/女/26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【2778/黒・冥月/女/20歳/元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒】
【4682/黒榊・魅月姫/女/999歳/吸血鬼(真祖)/深淵の魔女】
【4958/浅海・紅珠/女/12歳/小学生/海の魔女見習】
【5745/加藤・忍/男/25歳/泥棒】
【5973/阿佐人・悠輔/男/17歳/高校生】
【6139/ノイバー・F・カッツェ/男/700歳/人造妖魔/『インビジブル』メンバー】
【6777/ヴィルア・ラグーン/女/28歳/運び屋】
【6788/柴樹・紗枝/女/17歳/猛獣使い&奇術師?】
【6811/白虎・轟牙/男/7歳/猛獣使いのパートナー】

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■         ライター通信          ■
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シュライン・エマ様
こんにちは、笠城夢斗です。
シリーズ最終章にご参加くださり、ありがとうございました!
シュラインさんは語学オタクとは言え、北欧語も話せるのですね……!すごいです。
相変わらず細やかなプレイング、楽しませていただきました。ありがとうございました。
またどこかでお会いできますよう……