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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


阿倍ヒミコ
「成功です!無事阿部ヒミコを捕獲しました!!」
「では彼女の世界に引きずりこまれないように、慎重に運べ」
「はい」

阿部ヒミコは危険な存在だ。
その気になれば世界を滅ぼすこともできる超常能力者である。
そのためIO2という、超常能力者の管理を行う組織で隔離するつもりだ。

そこはどこかの牢屋のように窓も何もない部屋で、
ベッドとトイレのみ置いてある。しかしその部屋は強力な結界が
張られていて、そこでヒミコの能力を封印するつもりだ。

「やめて!そんなことするとあなたから殺すわよ」

そのような脅迫に耳を貸さず、エージェント達はヒミコを
部屋に押し込んだ。


「よくやったな、さすがはトップクラスのエージェント」
「いえ、それほどでも」

そう言われているのはディテクター。心霊テロに関しては
決して許さないという態度を示してる。

あなたは大きな事件があった時、全て人間の仕業と思っていますか?
そうした心霊テロの可能性があるものを調査し、
犯人を警察に代わって処分するのが、このIO2の仕事だ。

ディテクターは更に口を開いた。
「その後、ヒミコはどうするんですか?」

組織の幹部はこう言った。

「我々にはヒミコを隔離する程度の能力しかない」
「私も……それが限界でした」
「でも」

ディテクターはそこでタバコを一本取り出し、火をつけた。

「アイツはいずれ滅ぼさなければいけない。しかし、打つ手がない」

とディテクターは思った。


今回の阿部ヒミコについては、簡単な報告書を科学班の元にも回ってきた。
IO2科学班でも優秀と言われている藤田あやこも首をかしげていた。

「阿倍ヒミコって誰ですか?虚無の境界にいる阿部ヒミコじゃなくて阿倍?
 なんかのパチモン?改良型?」

すると科学班の一人がこう言った。
「いえ、あれは間違いなく阿部ヒミコのようよ。報告書が間違ってるみたい」
「IC2の報告係もつまんない間違えするようになったわね」

あやこがおもわず報告書をぽいっと投げてしまった。いけない、いけない。
貴重な情報源がなくなってしまう。

とりあえず霊界ラジオを机の上にドンっと置いて、ヒミコの両親を呼びだしてみる。

「あの子は昔から強い超能力を持っていた。それを私は心配していたのだ。そして起こったのが……」

「私らは基本的に東京人なのだが、一時名古屋に住んだことがある。
 その時ヒミコはいじめの対象になったらしい」

「そして東京に戻ってしばらくしてから起きたのだよ」

あやこはまさかとは思ったけれど、ぶるっと震えがきた。

「名古屋にいたころの学校での大火災がね」

あやこにも少し記憶がある。名古屋の学校で火災があり、あまりにも火の回りが
早かったため、かなりの人数の死者が出たという。

「そしたら私らに幼いヒミコは言ったんだ。『名古屋の連中殺してやったよ』って
 私たちはそんなヒミコの邪悪な能力を恐れた。そして――」

ヒミコの両親は母親がヒミコを押さえつけ、父親がヒミコの首を絞めつけたのだ。

「……ぐっ」

ヒミコは言葉にならない言葉を発した時、父親の手がほどけて父親はぱたりと倒れた。

「ヒミコ!あなたまさか……」

そう言った母親とヒミコの目線が合った時、母親もパタリと倒れてしまった。

「私らはそこで死んでしまったので、その後はどうなったのかはわかりません」
「そうでしたか……」


そこであやこは行動を起こす前に、まずは阿倍…ではなく
阿部ヒミコの情報があるであろう資料室を訪れた。

「阿部勝、阿部百合子、心臓マヒによる突然の死」
この二人が連続して心臓マヒを起こす可能性は低いものの、
事故とみて調査している。

「阿部ヒミコ、両親が死んでから失踪。殺しの可能性?」
これはあくまで空想論に過ぎないということで締めくくられていた。

「朝の8時。東京の私鉄にて、ブレーキの利かなくなった状態で壁に激突し、
 何人かの死傷者が出た。一両目の人間の中で怪我のない子がいたが、
 インタビューには応じず」

「Rガス施設で大型のガス爆発が起きる。皮肉にもT学校の社会見学を
 していた時だった」

「原子力発電所に謎の少女現る。しかし何もせずにその場から消えた」

その後次々とヒミコが関連した記事がいくつか出てきた

次にあやこは邪妖精を呼び出した。
「なんだよー俺になんかさせるのー?」
「ね、同じ妖精のよしみで手伝ってよ」

そして二人はヒミコの結界の中に入っていった。

「ねぇ。私たちもあなたの世界に招待してよ」

ヒミコは少し疑いのある目をしていたが、ヒミコの世界ではヒミコが絶対優位。

「私の計画を許してくれるの?」
「えぇ。もちろん」

ヒミコは若干信じ難そうな目をしていたが、ここにいる限りは自分が優位なので、
出入りを許すことにした。

ヒミコの世界は永遠の夜であり、人が住んでる気配がない町であった。

「あぁ〜〜お腹すいたなぁ」

邪妖精がそんなことを言い出すと、ヒミコはあっという間にカレーを三人分差し出した。

「すごーい!」

二人は素直にびっくりした。

「あなた達がここで霊魂になった時にスタミナ不足になったら困るでしょ?」


そうやっている間にIO2はヒミコに世界崩壊の映像を映し出し、
世界が崩壊したと騙されてくれるようにCG班が積極的に動いていた。
いくつかのの資料や映像などをモデルにし、全てオリジナルで作っていた。

「そろそろ出来そうか?」

ディテクターはCG班の様子をうかがった。

「はい、もうすぐです」
「早くしないと科学班の連中がヒミコの世界にいる。いつ消されてもおかしくはない」


そんな会話がされてることも気づかずにヒミコの元へ行った二人は勝手に楽しんでいた。
邪妖精はタンバリンを叩き、あやこは歌っていた。

「きれいな歌声ね。あなた、名前は?」
「藤田・あやこよ」
「俺は名前ないんだよ」

そこでヒミコが、

「じゃあ私が名前を作ってあげる。グルッピーってのはどう?」
「グルッピー。いいんじゃない?グルッピー君」
「なんかいつもお腹空いてるみたいじゃないか〜〜」
「だってそうでしょ?」
「ねー」

もういつの間にか二人は本当の目的を忘れかけていた。
そこに。

ドーーーーーーーーーーン!!

ヒミコの世界からもわかるくらいの大きな核爆発が起こった。
「ついに核戦争でも始まって世界が滅びたのかしら?二人とも、現世に戻るわよ」

現世に戻った三人は自分たちの結界以外の場所には荒野が広がり、死体がごろごろ転がっていた。

「やったわ。私が手を下さなくても人類は滅んだのよ!」

喜ぶヒミコを前にあやこはこう言った。

「いえ、本当の崩壊はしていないわ」
「どうして?」
「私とグルッピーが生きているからよ」

「え?」

「本当に滅ぶというのは誰もいなくなること。私はこの結界を出て同じく滅ぶことにするわ」

そう言ってあやこは出ていった。

「グルッピーはここにいてくれるよね?」
「俺は……」

グルッピーは迷っていた。ヒミコにすっかり感情移入してしまったようだ。
しかし次の瞬間に出た映像でヒミコの顔色が変わった。

「何これ……有名なあの震災の映像じゃない」

実は先に結界を出たあやこが、必死に震災のことを思い出して、映像化してしまったのだ。

「ウソツキ!あやこのウソツキ!!」

結界の中でヒミコは暴れた。ありったけの霊力を結界の中でぶつけた。

「ヒミコは気づいたようです」
「やはり震災の映像が裏目に出たか」
「ここはやはり突撃しかないようだな。人質もいることだし」

エージェント達はそう会話して、突撃することになった。
突撃するのは元ヤクザで剣技がずば抜けている鬼鮫(おにざめ)である。
彼は超常能力者のような能力は持っていない。
あるのは剣技で、そのアイテムは「銀の霊剣」
これならばヒミコから超常能力の反撃も受けずに殺せるであろう。

鬼鮫は結界の中に入っていった。

「そんなことするなら私の世界へ引きずり込むわよ!!」
「そうしたけりゃすればいいぜ。俺は超常能力なんて使えないからな」

ピリピリとした言葉の駆け引きが行われていた。
実際ヒミコの世界に入れば、ヒミコの思いがけない超常能力で全滅にもなりかねない。
ヒミコが超常能力を使おうとしている短い時間。それがヒミコを殺す唯一の時間だ。

「やめて!」

そう言ったのはグルッピーだった。

「ヒミコはこんな邪妖精の俺に優しくしてくれた。悪い子じゃない!」
「名古屋の学校に放火してもか?東京の私鉄で死傷者を出してもか?
 大型のガス爆発を起こしていてもか?いい加減にしてくれ」
「……たしかにそういう過去を持ってるかもしれないよ。でも今は俺の友達なんだ」
「ヒミコの仲間ってとこか。じゃあ二人揃って地獄に落としてやる」

剣を握りしめた鬼鮫はヒミコに近づく。
超常能力はなくても勘でヒミコがどう攻撃してくるのか、ある程度読むことができた。
銀の霊剣でかわしながら近づいていく。

やがて鬼鮫はヒミコの近くまでやってきた。

「お前なんか一瞬で殺してやる!」

ヒミコがそう言った瞬間、銀の霊剣はもう貫いてしまっていた。


邪妖精のグルッピーに。


「グルッピーーーー!!」

ヒミコは情緒不安定になり、

「今だ!」

と鬼鮫はチャンスとばかりにヒミコのお腹を銀の霊剣で刺した。
ヒミコは何も言わず、そのまま倒れてしまった。

「私はいつから間違えてしまったんだろう……」

鬼鮫はだまって聞いていた。

「あの頃に戻りたい。あやことグルッピーと一緒に遊んだ時期に……」

ヒミコの目から涙があふれていた。どこから間違えてしまったんだろう。
超常能力者というのは悲しい。
力なんて最初からなければいいのに……。

最期にヒミコの口が動いた。「ご・め・ん・な・さ・い」と。

あやこは別室でこの映像を見ていた。
その後、すぐ部屋を飛び出してロッカールームへと走っていく。
あやこはすぐにハンカチを取り出し、幾度となくあふれ出る涙をハンカチで押さえていた。



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【7061 / 藤田・あやこ / 女 / 24歳 / 女子高生セレブ】



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■         ライター通信          ■
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いつもご依頼ありがとうございます。やはりあやこと霊界ラジオはセットなのですね。
最近一本書くとほぼ4000字を超える時が多く、どう削っていくかに迷いまして、
もっとラストをしっかり書けたらと思いました。ご依頼ありがとうございましす^ ^