コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


草間興信所ができるまで
ここはパラレルワールド。
真実とは違うけど、これも真実の世界。

ある世界では中ノ鳥島に行き、ふとした出会いがあった。
その時に初期型霊鬼兵・零を持ち帰った者が草間武彦とは限らない。

――

草間興信所ができる前にさかのぼる。
草間・武彦。18歳。高校生。金髪に染めてていかにもな不良である。
ちょうど二者面談の時。

「お前の成績じゃどこの大学も無理だな」
「それくらいわかってますよ。フン」
「専門学校に行ってはどうだ?」
「もう勉強なんてこりごりですよー金ないし」
「じゃあどうするんだ。就職か?」
「どっかの会社に拾ってもらいますよ」

そうして武彦は土木作業員となったのである。

この仕事は給料はいいが、かなりきつい仕事だ。
それに武彦と同じで学生時代にやんちゃをしてきた者が
たくさんいて、武彦はこれが自分の適職だと思っていた。
あの日まで――

雨の日のことだった。傘をさしボロアパートに帰る直前にあるゴミ捨て場で
奇妙なものを発見した。

女の子が捨てられている。
うさぎのぬいぐるみを抱いて、こちらと目が合うとにこっと笑う。
可哀そうなんで、背中におぶってアパートまで連れて帰った。
その子がどういう子かも知らずに――

「首と首の他、いくつもの継ぎ目がある。人間じゃないのか……?」
にこにこ笑う女の子を見て不思議に思いながらも眠った。
しかし、その眠りは来客により目をさますことになった。

「お前ら何もんなんだよ!?」
「私エージェントの佐野と言います」
「はい……」
「あなたの名は草間武彦。間違いじゃありませんね」
「はい(何でそんなこと知ってんだよ〜〜)」
「その娘は大日本帝国の時に戦力用に開発された初期型霊鬼兵・零といいます」
「……はい」
「その娘を悪用することがあったら我々はあなたを敵として見ることになります」
「わかりました」
「話は以上です」

そうやってエージェント佐野が出て行きそうになった時。

「あなた達は何者なんですか?」

その男は一呼吸置いて、
「IO2に所属するエージェント。捜査官みたいなもんです」

やばいなぁ、すげーもん拾ったんだなと思って動揺を隠せなかった。
そこでインターネットにつなげ、書き込みをした。

『やべぇ。俺兵器になるロボットを入手しちまったよ/ジロー』

書き込みのレスはいい加減で、

『それでヤな奴攻撃したら?』
『女の子だったら欲しいな。ゲヘヘ』

などといった書き込みが多かった。
しかし、その中にまともなメッセージをみつけた。

『今度私と二人でメッセしない?いろいろ聞きたいんだ/フェイ』

その書き込みの裏ににシュライン・エマがいた。

お互いメールアドレスの交換をして夜の8時に待ち合わせをした。
以下はメッセンジャーの会話である。

ジロー:俺は仕事の帰りのゴミ捨て場から拾ったんだよ。
フェイ:少女の外見や服装、ゴミ捨て場に落ちてたものはあった?
ジロー:いっぺんに聞くなよ。外見は普通の洋服姿でうさぎのぬいぐるみを持っている。
フェイ:それは何かの意味があるのかな?
ジロー:ゴミ捨て場には何も置いてなかった。それで、他に質問は?
フェイ:警察には届けたのか?
ジロー:あ、その手があったか!
フェイ:今更思い出しても遅いよ!じゃあ少女から聞けたことはないのか?
ジロー:特には……でもあの子の目の前でハンバーグ弁当食べたら、
    「贅沢は敵です!欲しがりません、勝つまでは!」とはり倒されたくらい。
    普段は恐ろしいほどニコニコしてるよ。何も言わない。

シュラインはそこで少女が戦前に造られたものだと悟った。

ジロー:あ、あと一つだけ。
    佐野って奴がどういうわけだかウチに少女がいるのを知ってて、
    悪いことに使うなら我々を敵に回すことになるってさ。
    
メッセンジャーはここで終わったが、少女が逃げていくのは可能だし、
それでゴミ捨て場に寝てるのはあきらかに不自然。少女に自我がない可能性がある。
「ジロー」は観察力に優れているようだし、その第一印象は無視できないかと。

シュラインは障害者、特に表情やコミュニケーション能力に障害が出る
サイトの掲示板で女の子(零)のことを相談してみた。

『統合失調症は日常のコミュニケーションや仕事の能率が悪くなる
 だから作業所などに通ってリハビリをするんだよ』

『いっそのこと障害者認定を受けて様々なサービスを受けるのもいいかもよ』

『自閉症の可能性もある。その病気も同じことを繰り返したり、興味の範囲が極端に低い』

シュラインはそれを見ながら自分が思ってもいないことを口にされて、
大変参考になった。たとえ少女とは直接関係のないことでも、
学校ではこういうことはおしえてくれない。

本日のメッセンジャー。

フェイ:いくつかの障害者のページを見てきた。
ジロー:何か収穫はあったか?
フェイ:わからないけど、リハビリが必要かもしれない。
ジロー:それで良くなるといいが……。
ジロー:あ、そうそう。俺警察に行ってみたよ。でも届け出がなかった。

性別もわからない(むしろ男を連想させる)名前であるシュラインは
どう受け取られてるのだろうか?

少女の着ている服やタグ、格好はもんぺなどではなく、
現代にも通用するものらしい。

フェイ:とりあえずリハビリしてはどうだ?接客業をさせてみるとか。
ジロー:そうだな。うまくいくといいんだけど……。

ということで、スマイル命のファーストフードで零を働かせることにした。

「いらっしゃいませー」

零の笑顔はお客さんにも好評だった。
ところがお客さんに違うバーガーを持って行ってしまった時。

「これ、俺の食べたい奴じゃねーよ。早くアレ持って来いよ」

するとにこにこしながら、「はい、持ってきますね」と言う零。

「なんだよ。そういう時は笑うもんじゃねーだろ!
 まずは申し訳なさそうに謝る。こんな基本的なことも
 できない奴が客商売してんのか!?」

すぐに店長が出てきて、零の頭を押さえこみ

「申し訳ありませんでした!」

と謝るはめに。当然零はクビになった。

武彦の家に帰ってきた時の零には笑顔が消えていた。

「どうしたんだ?零。何かあったのか?」

零は無表情のままポロポロ涙をこぼし立ち尽くしていた。
武彦は零のところに行き、抱きしめてやった。
言葉なんていらない。何があったかなんて言わなくてもわかるから。

ジロー:素直に喜べないが、泣くことを覚えたみたいだ。
フェイ:ちょっとバイトは荷が重すぎたな。
フェイ:そうだ!料理教室にでも通わせたらどうだ?
    お前の分も作ってくれるようになるかもよ。
ジロー:そうさせたいのだが、今お金を貯めててな。
フェイ:何に使うんだよ。
ジロー:開業して俺の目の届くところで働かせてやりたいんだ。

それからしばらくして、草間興信所を設立した。

ジロー:やったぞ!開業できた。
フェイ:おめでとう。ジロー。
ジロー:そこで今、零を働かせている。今となっては妹としてね。
フェイ:ふーん。私もそこで働いてみたいなー。
ジロー:じゃあ面接に来るかい?事務が一人欲しいんだ。

そういうことでシュラインは噴水広場で「ジロー」と会うことになった。
やがて走ってきた男性はどこかで見たことある……。

「草間武彦!」
「ご神木の時にいた女子中学生の……」
「シュライン・エマですよ!失礼な」
「俺『フェイ』って男かと思ってたよ」
「信じられない!」

シュラインは失礼なと思いながらも、

「でも初めて会った時の金髪から黒に染めなおしたのですね」
「これからは信用が第一だからね」
「で、どんな事業始めたんです?」
「草間興信所。ここで探偵めいたことをしようかと思って」

しかしその後、怪奇事件の依頼ばかり来るようになったのは言うまでもない。



□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
【0086 / シュライン・エマ / 女 / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】

実際、当時の年齢や職業は異なっていると思いますが、
勝手に設定を変えない方が良いと思い、公式プロフィール通りにしました。

□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□

ご依頼ありがとうございます^ ^ 公式設定を見ましたら、
確かに草間は零を中ノ鳥島で連れて帰ってると書かれてましたが、
その設定に縛られることなく描けるのが今の東京怪談だと思いましたので
自由にかかせていただきました。気に入ってくださるとうれしいです。