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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


こんにちは赤ちゃん
●オープニング【0】
「あれっ? 草間さん、テレビで……」
 10月のある日、テレビを見ていた草間零が草間武彦を呼んだ。見るとテレビではワイドショーがやっていて、ちょうどおめでた報告なるものが行われていた。
「ん? お、これはこれは」
 テレビを見るなり、草間の表情が緩む。そこにはよく知った顔が2つ並んでいたからである。1人は監督などを生業とする内海良司、そしてもう1人はその妻である女優の麻生加奈子。この夫婦の間に、赤ちゃんが出来たというのである。
「おめでたいですよね」
「ああ、めでたいな」
 笑顔の零の言葉に頷く草間。知り合いでなくとも、新しい生命の誕生は嬉しいものだ。もちろん知り合いならなおさらのことで。
「何かお祝いをした方がいいんでしょうか?」
「生まれてからでもいいんじゃないか? 会う予定があるならともかく」
 と、草間が答えた時だった。草間興信所の電話が鳴ったのは。
「はい、草間興信所」
「もしもし、俺だ」
 電話の向こうから、草間の聞き慣れた声が聞こえてきた。言うまでもなく、内海の声であった。
「……見ましたよ、おめでとうございます」
 苦笑しながら、お祝いの言葉を草間は述べた。いやはや、いいタイミングだ。
「何だ知ってたのか。いやー、ありがとうな」
 そう返してくる内海の声は、嬉しいながらもどこか照れたような感じであった。
「でな。内輪でお祝いのパーティをやろうかと考えてるんだが……お前たちも来てくれないか? 何人誘ってきてもいいぞ」
 どうやら内海が電話をかけてきたのは、加奈子の妊娠報告とパーティへのお誘いのためだったようである。
 まあおめでたい席ですし……行ってみますか? 手ぶらで行くかどうかは個人の判断ですが、ええ。

●悩んでいるのです【1】
「草間! 零さん!」
 それはパーティ前日のことだった。守崎啓斗は草間興信所にやってくるなり、真剣な表情で草間たちの名を呼んだのである。
「どうした、何事だ?」
 啓斗の様子に草間も思わず表情が固くなってしまう。何か重大な事件でも起きたのかと、草間が思ってしまってもそれを責めることは出来ないはずだ。
「…………」
 零も無言で啓斗の言葉を待っていた。そして啓斗の口から出た言葉は――。
「本当に何を持っていけばいいんだ!」
「……はぁ?」
 啓斗に怪訝な眼差しを向ける草間。いきなりこんなことを言われても、さっぱり話が見えてこない。
 草間はそっと零に視線を向けてみたが、零も零で首を少し傾げている。どうやらこちらも何事か分かっていないらしい。
「悩んでいるんだ……」
 しかし啓斗本人の様子は極めて真剣。悩んでいるというのは本当のようなのだが……。
「兄貴。草間たちが困惑してるぞー」
 その時、遅れて入ってきた啓斗の弟の守崎北斗が呆れたように声をかけた。
「たく、餅は餅屋っつーことわざもあるじゃん。な、草間?」
 と北斗は草間に同意を求めたが、
「だからな、お前ら。頭と途中の説明を省くな。分かるように最初から言え」
 そう言って草間は小さな溜息を吐いた。すると零がはっとしたようにつぶやいた。
「あ。もしかして明日のパーティの……」
「そう、それ。それで兄貴が延々と悩んでてさぁ」
 零の言葉に頷くと、北斗はじろりと啓斗に目を向けた。
「……お前も行くんだろ?」
 草間が尋ねると、啓斗はこくっと頷いた。
「しかし祝いが」
 ぼそっとつぶやく啓斗。
「何だ、祝いで悩んでるのか!」
 驚きと呆れの入り混じった草間の言葉であった。
「こういう祝い事には本当に縁がないからな……」
 啓斗は困惑の表情を崩さない。いやはや、これはそうとう根が深そうだ。
「祝い事には赤飯だとは思うんだが……的を外して失礼になるかもしれないし。それに硬くなった赤飯なんて食えたもんじゃない」
「まあなあ。知人のレストラン借り切ってやるみたいだからな」
 啓斗の言葉に頷きながら聞いている草間。広さは知らぬが、場所がレストランゆえある程度料理は用意されることだろう。赤飯もそこに並んでいる可能性はある。
「だろう? だから赤飯をやめて、ベビー用品にしようかとも思ったんだが……」
「いいじゃないか、それで。何か困ることでもあるのか?」
「今何ヶ月か分からないし、生まれてくる子も母体内でもだいたい判別出来るようになっても、確実に男女が見分けられる訳じゃないだろ?」
「あー……まあ、そりゃそうだと思うが」
「……ピンクでベビー用品見繕って、男の子が生まれたらどうするんだ!」
「…………」
 真顔で言い切る啓斗に対し、草間はやれやれといった様子で視線を外した。
「男女はっきり分かる色にしなきゃいいだけじゃん……」
 啓斗の後ろでぼそり北斗がつぶやいた。まったくだ。
「啓斗。いいこと教えてやろうか」
 草間が啓斗から視線を外したまま口を開いた。
「いいこと?」
「世の中にはな、不要な物を交換するって手もあるんだぞ。それにベビー用品なんてもんは半ば消耗品だ。下手すりゃ色なんか構ってられるもんか」
 冗談抜きに、赤ちゃんの物なんていくらあっても足らない訳で。もっとも重要なのは使えるか使えないかということでして……。
「だよなー? だいたい、デパートのマタニティ売り場でアドバイス受けりゃいいだけじゃん?」
「ああ。北斗の言う通りだぞ」
 草間は北斗の言葉に大きく頷いて言った。
「……そういう草間たちは決めたのか?」
 言われっぱなしというのもあれだったのだろうか、啓斗が草間に尋ねてきた。
「ああ」
 しかし、草間はしれっと答える。
「花束を贈る」
「シュラインさんのアイデアなんですよ。1人でより、3人分でよい花束1つ用意しないかって」
 草間の言葉に零が補足して、今この場には居ないシュライン・エマの名前を出した。
「あー、シュラ姐なら納得」
 シュラインの名前が出て、北斗は大きくこくこくと頷いた。そしてにやっと笑って草間に話しかける。
「草間から花束なんて考え出てくるとは思えないもんなぁ」
「別に……お前だけ急用が出来て行けなくなったことにしてやってもいいんだぞ?」
 草間さん、そりゃ酷い。

●いざ会場へ【2】
 パーティ当日。草間たちは連れ立って、会場となるレストランへ向かった。
 総勢6人、草間と零の他は守崎啓斗に守崎北斗、それからシュライン・エマ、そして今日は小学生サイズになっている露樹八重といった面々である。
「幸せおすそ分けさんな人には、よいことが倍返しになってかえってくるのでぇすよ♪」 うきうきした様子の八重は一行の先頭に立って歩いていた。幸せな現場に行けることが嬉しいのか、あるいはパーティの料理が楽しみなのか……。まあ、恐らくはその両方なのだろうけれども。
「でもほんと、最近嫌な事件多かったから祝い事あるの嬉しいわ」
 歩きながらぼそりとシュラインがつぶやく。
「そうだな。いいことばかりあればいいんだろうが……」
 そこまで言ってから、草間は苦笑した。
「そうなったら、俺は転職だな」
 探偵という職業は何かしら事件が起きているから成立している面がある訳で……。
「んー……農作業やってる武彦さんとか、ちょっとすぐには想像出来ないかも」
 と、シュラインも笑みを浮かべながら言った。
「じゃ、内海監督に頼んで芸能界に入れてもらうか」
 草間も少し悪のりして、笑いながらそんなことを言う。
「ま、その前に今日はあれこれのろけを聞かなきゃいけないんだろうが……」
「……おのろけも幸せおすそ分けの一部なのでぇす……」
 振り返った八重が、苦笑いとともに草間に言った。
「あ、見えてきましたよ。あの白い壁の」
 花束を抱えた零が皆にそう伝える。目的のレストランが見えてきたのだ。
「そういや何のレストランだっけ?」
 北斗が誰ともなく尋ねると、零が答えてくれた。
「ええと、イタリアとかスペインと聞きましたけど……」
「色んな所の料理をチョイスして出してるらしいぞ、普段は」
 草間が横から口を挟んできた。なるほど、いいとこ取りといった感じか。
「そうなのか」
 聞きようによっては少し安堵したように言ったのは啓斗であった。何故ならば、一晩悩みに悩んだ挙句、赤飯もお祝いとして持ってきていたから……。
 ともあれ、無事に到着した一行は会場となるレストランへ足を踏み入れたのだった。

●歓迎【3】
「おお、よく来てくれたな!!」
 草間たちが入るなり、内海のそんな歓迎の声が飛んできた。店の奥の方に居たが、ずんずんと入口の方へ歩いてくる。
「本日はお招きありがとうございます。ひとまず、これを。零」
 草間が内海に挨拶を返してから、零を促した。零が前に出てきて花束を内海に手渡す。
「おめでとうございます」
「いや……これはこれは。どうもありがとう。おーい、加奈子!」
 零に礼を言ってから、内海は妻である加奈子を呼んだ。椅子に座っていた加奈子だったが、内海に呼ばれるとゆっくりと腰を浮かせた。
「あ、そのままで……」
 とシュラインがお腹の中の赤ちゃんを気遣って言ったものの、近かったこともあり結局は草間たちのそばまで加奈子は来たのだった。
「綺麗なお花……。皆さん、どうもありがとうございます」
 一同ににっこりと微笑みを向ける加奈子。
「おめでとうございます。……匂いとか、大丈夫でしたか?」
 加奈子のそばへ行き、シュラインがこそっと尋ねる。一応前もって、妊娠してからの加奈子の変化などを聞いていた。それで特に苦手になった匂いや味とかはないと聞いたものの、やはり心配であったのだ。
「ええ。おかげさまで、つわりとかも軽いのよ」
 笑顔でそう答える加奈子。見た所血色もよいから、順調であるのだろう。
「それならよかった。でも、無理はしないでくださいね。大切なお身体なんですから」
 シュラインは加奈子を気遣って言った。
「ささ、今日はしっかり食べて飲んで帰ってくれよ」
 内海が嬉しそうに草間に話しかける。
「そのつもりですよ。飲むはさておき、よく食べるのは連れてきてますから」
 草間も笑ってそう返した。
「おっ、ピザにパスタ、パエリアもあるじゃん。向こうには色んなソーセージも!」
 草間の言葉を裏付けるかのように、北斗がテーブルに並んだ料理を目ざとく見付けていた。どれも大皿に盛られていることから、バイキング形式なのだろうとは容易に想像がついた。
「はっはっは。ボルシチとカレーと、ナンもあるぞ」
 内海が北斗に向かって言った。えーと……このレストランって無国籍ですか?
「ほんとうにいろいろあるみたいなのでぇす」
 八重がしみじみとつぶやいた。でも視線はテーブルに載ってる料理に釘付けだったりするのは内緒。
「とりあえず、まだ何人か着いてないんだ。揃い次第始めるつもりだから、それまで適当に荷物を置いて、ゆっくりしてくれ」
 内海はそう言うと、また店の奥へ戻っていった。加奈子もぺこりと頭を下げ、先程まで座っていた椅子へと戻る。
 草間も空いているテーブルに荷物を置いてゆっくりしようとしたのだが……。
「お久し振りです」
 横から女の子の声が聞こえてきたのである。
「ん?」
 その声に聞き覚えのあった草間が振り向くと、そこにはやはり見覚えのある少女が立っていた。
「君は確か……」
「はい、香西真夏です」
 少女――香西真夏ははっきりとした口調で名乗った。特撮ドラマ『魔法少女バニライム』主役の大月鈴、すなわちバニライム役を演じていた少女である。
「以前はお世話になりました」
 ぺこりと頭を下げる真夏。小学生から女優として頑張っているからだろうか、礼儀はやはりきちんとしている。
「君も招待されたのかい?」
「はい。内海監督や、麻生さんにはお世話になっていますから」
 草間の問いかけに真夏は笑顔で答える。
「あ、今度時代劇に出させてもらうことが決まったんです。よかったら見てくださいね」
 と、ちゃっかり宣伝をするのはこの年代の少女らしいが。
「タイトル教えといてくれたら、宣伝しとくさ」
 草間は苦笑して真夏へ言った。
(事件の起こらないタイトルだといいんだが)
 心の中でついそんなことを草間がつぶやいたのは秘密である。

●お祝いの席【4】
 それから10数分ほどして招待された面子が揃い、ようやくパーティが始まった。草間たちを除けば、招待客は基本的に業界関係者ばかり。事務所スタッフやマネージャー、放送局や映画会社の人間、馴染みのメイクやスタイリスト、仲のよい俳優や女優といった所だ。草間たちも加えて全部で30……いや、40人近い。ちなみに、これのどこが内輪だという突っ込みは却下だ。
 で、最初はもちろん内海による挨拶である。
「えー……皆さん」
 軽く咳払いする内海。こういう場で改まって挨拶するとなると、どうしても多少の照れが出てきてしまうのだろう。
「皆さん。あー……お集まりいただきありがとうございます。すでにご存知の通り、妻の加奈子がそのー……子供を授かりまして。それで、うー……ささやかながら、祝いの宴を用意させていただいたと。なんで今日は、えー……楽しんで帰ってもらえれば幸いです」
 そこまで言うと、内海はハンカチを取り出して顔からスキンヘッドの頭まで汗を拭った。こういう内海の姿は貴重なのであろう、招待客の中からくすくすと笑い声が漏れた。よく見れば加奈子もくすくすと笑っている。
「ともかく、乾杯!!」
「「「「「かんぱーい!!!」」」」」
 グラスのぶつかる音があちこちから聞こえてきて、ややあってから拍手が起こった。もちろん内海と加奈子、そしてお腹の中の赤ちゃんに向けた祝福の拍手である。
 乾杯が終わると、八重がとてとてと加奈子のそばへやってきた。そしてじーっと椅子に座っている加奈子のお腹を見つめる。
「あら、どうしたの?」
 そう加奈子が言うと、八重はにこぉっと笑って加奈子のお腹を優しく撫でてあげた。
「おふたりと、生まれてくる赤ちゃんに時間が悪戯しませんように……」
「あらあら……おまじないかしら。どうもありがとう」
 にこっと笑顔を返す加奈子。すると八重は、苺の飾りがついたヘアゴムを加奈子に差し出した。
「お腹が大きくなって髪の毛がうっとおしくなったら使ってくださいなのでぇす♪」
「ありがとう、嬉しいわ」
 加奈子は笑顔でそれを受け取ると、大事そうにハンカチに包んでポケットに仕舞った。
「それじゃあまたあとでなのでぇす」
 八重はぶんぶん手を振ると、とてとてと今度は料理の並んでいるテーブルの方へ向かったのだった。
 それと入れ替わりに、啓斗と北斗が加奈子のそばへやってきた。手には各々贈り物だろうか、それを抱えている。
「あの……」
 啓斗が加奈子に声をかけた。
「はい。何かしら?」
 屈託のない笑顔を2人へ向ける加奈子。
「その……お祝いの品を」
 啓斗はそれだけ言うと、風呂敷包みを加奈子に差し出した。受け取った加奈子がそれを開いてみると、中身は腹帯用のさらしと赤飯であった。
「腹帯と……お赤飯?」
 加奈子が聞き返すと啓斗はこくんと頷いた。
「手作りで……」
「まあ、手作りなの? 大変だったでしょう? どうもありがとう。せっかくだから、皆でいただきましょう」
 にこにこと加奈子がそう言ってくれるのを聞いて、啓斗はほっと胸を撫で下ろした。あれこれ悩んだものの、失礼にならなくてよかったと心底思っているのだ。
「あ、これは俺からです」
 続いて北斗が風呂敷包みを差し出した。こちらの中身は、水を使わなくても洗髪出来るシャンプーと、季節の果物であった。兄の啓斗がお腹の赤ちゃんに向けた贈り物だとすれば、弟の北斗は妊婦である加奈子に向けた贈り物だと言えるだろう。
「あら。便利よね、このシャンプー」
 嬉しそうに北斗に言う加奈子。どうやらこの贈り物、喜んでくれたようである。
「この果物も、せっかくだから皆でいただきましょうね。本当にどうもありがとう」
 加奈子はそう言ってから、ある視線にふと気付いた。啓斗が不思議そうな眼差しを、加奈子のお腹へ注いでいたのである。もしかするとあれだろうか、この中に新しい生命があるんだななどと考えているのかもしれない。
「……触ってみる?」
 ふふっと笑って加奈子が啓斗に言った。一瞬驚いた啓斗はためらいを見せたものの、何かしら思う所があったのか、加奈子の好意に甘えさせてもらうことにした。
 気を付けて、そっと加奈子のお腹に触れる啓斗。衣服越しにじんわりと加奈子の温もりが伝わってきて、そして――とくん、と何か動いたような気がした。
「……うわ……」
 思わずそんな声が啓斗の口から漏れる。無表情朴念仁なりに、生命の神秘に触れて感動する所があるのだろう。
 と――不意に加奈子と啓斗の視線が合った。
(なーに、顔赤くして照れてんだか……)
 顔を赤くしてうつむいた啓斗の姿を横目に、北斗は苦笑した。
「……あれ?」
 その時、北斗の脳裏にある疑問が浮かんだ。それをすぐ、加奈子にぶつけてみる。
「今発表するってことは、いつ出産に?」
 そういや妊娠何ヶ月なのか、まだ聞いていない。
「もうすぐ4ヶ月目に入るのよ。だから、マスコミにも発表したの」
 なるほど、ある程度安定してから発表した訳か。
「その間ってやっぱ芸能活動休止なんだ?」
「そうなるのかしら。トーク番組のゲストが2つ3つあって……それが終わったら産休ね」
 頭の中でスケジュールを確認してから加奈子は北斗に答えた。
「なるほどなー」
 うんうんと頷きながら、北斗はもう1度啓斗の顔をこっそり見てみた。もうとっくに加奈子のお腹から手は離していたけれど、未だ啓斗の顔は照れて赤くなっていた――。

●パーティは続くよ【7】
「お前さんにゃ、色々と迷惑かけてすまんな〜」
「まあ……仕事ですからね」
 ほろ酔い加減の内海に肩をつかまれながら、草間は苦笑していた。何についての会話なのかは推して知るべし。
「また何かあったらお前さんとこに頼むから、その時もよろしく頼むぞ〜」
「……了解です」
 内海の言葉に、草間は小さく答えた。実際問題、こっちの業界からの依頼というのは厄介ではあるが、まとまった金額になる。事務所の財政を考えると、犯罪行為に加担するのでなければ特別断る理由もなく。
「よし、飲め!」
「飲んでますよ」
 酒を勧める内海に対し、草間はニヤッと笑ってグラスの中の酒を飲み干した。さて、このやり取りはこれで何度目であったろうか。
「ご機嫌ですねえ……」
 零はそんな内海と草間の姿を見ながら、もぎゅもぎゅと料理を食べていた。パーティは和やかなまま、まだまだ続いてゆくのであった……。

【こんにちは赤ちゃん 了】


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【 整理番号 / PC名(読み) 
                   / 性別 / 年齢 / 職業 】
【 0086 / シュライン・エマ(しゅらいん・えま)
     / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員 】
【 0554 / 守崎・啓斗(もりさき・けいと)
                / 男 / 17 / 高校生(忍) 】
【 0568 / 守崎・北斗(もりさき・ほくと)
                / 男 / 17 / 高校生(忍) 】
【 1009 / 露樹・八重(つゆき・やえ)
          / 女 / 子供? / 時計屋主人兼マスコット 】


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■         ライター通信          ■
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・『東京怪談ウェブゲーム』へのご参加ありがとうございます。本依頼の担当ライター、高原恵です。
・高原は原則としてPCを名で表記するようにしています。
・各タイトルの後ろには英数字がついていますが、数字は時間軸の流れを、英字が同時間帯別場面を意味します。ですので、1から始まっていなかったり、途中の数字が飛んでいる場合もあります。
・なお、本依頼の文章は(オープニングを除き)全7場面で構成されています。他の参加者の方の文章に目を通す機会がありましたら、本依頼の全体像がより見えてくるかもしれません。
・今回の参加者一覧は整理番号順で固定しています。
・大変お待たせさせてしまい申し訳ありませんでした。ここにもう親ばか状態に突入している夫と、色々と落ち着いている妻の喜びの様子をお届けいたします。
・今回のお話を書く前に、過去のお話を読み返してみました。2002年ですよ、内海と加奈子の登場って。長い付き合いになってるんだなあ……と改めて感じました。結婚を経て2人に子供が出来るなんて、その当時は高原も思っていなかったですからね。
・そんな2人のおめでたい席ですから、懐かしい顔をもう1人出してみました。覚えていますかねえ? ……え、何か妙なこと言ってないか、ですって? 気のせいです、きっと、たぶん。
・守崎北斗さん、27度目のご参加ありがとうございます。ああいったシャンプー、風邪気味の時なんかに重宝しますよねー。妊婦さんの方に着目したのはよかったと思いますよ。
・感想等ありましたら、お気軽にテラコン等よりお送りください。きちんと目を通させていただき、今後の参考といたしますので。
・それでは、また別の依頼でお会いできることを願って。