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<Trick and Treat!・PCゲームノベル>


【Halloween★castle helpers!!】


 造りは頑固で古臭い石積みで。
 灯りはとっても頼り無い蝋燭達がゆらゆらと。
 忙しなく通路を行き来するのは二足で歩くメイド姿の狼達。調理場から出てくるコックには足が無くて透けているし、ホールを仕切っているのは鋭い牙の吸血鬼。
 此処は…ハロウィン、城…?
 なんでも、今夜開かれるパーティー手伝い成功させねば自分の世界へは戻れない様だ。
 さてはて、この怪しさ満点のお城で、どんな手伝いをしたものだろうか…


 + + +

 そんな格好で何が出来るってんだい。
 ずらりと牙の並んだ赤くて大きな口を開いた狼女のメイド長は、そんな事を言って白いエプロンを投げ渡してきていた。白くてフリフリの付いたエプロンを。
「……」
 エプロンを手にしたのは四人。
 どうやら、オレンジ頭のリデルに悪戯をされてこのハロウィン城に連れてこられたのは自分だけでは無い様だった。
「何なのよっ! 何でこの私が手伝いなんてしなきゃなのよっ…あのクソガキ、見つけたら絶対許さないからね!」
 そのうちの一人。背中にエルフの羽を背負った女、藤田あやこは早々に拳を握って文句を立てていた。その割りには手際もよく、さっさとエプロンを装備すると立てかけてあった箒を手にあやこはズンズン部屋を出て行った。
「……。やる気満々だな、彼女は」
 そんな姿を見送ったアレスディア・ヴォルフリート。その後にエプロンを見下ろした。今一、今この現状が理解出来ていないが…まあ、手伝えば帰れると言うならば手伝うまで。今までだって何度も不思議世界には飛ばされているのだ、焦る前に落ち着く事ぐらいは簡単だった。しかし、こんなエプロンをする羽目になるのは計算の外であったが。
 と、軽い溜息なぞ落としてエプロンをつける彼女の青目に残り二人の姿が映った。
 互いにポカンと狼女のメイド長を見て瞳をパチパチ、パチパチさせていた。
「もふ…もっふもふ。ふっかふかだぁ…触りたい…」
 その一人は小さな小さな女の子。ふんわり大きな茸傘の様なバルーンワンピースを着た少女が、早く準備をおし、と此方を見てくるメイド長を見上げている。彼女はシュライン・エマ。本来はスマートな大人の女性だが、どうやらリデルの悪戯が過ぎたのか今はまるで茸の妖精の様な微笑ましい姿になっていた。
「子供だからって、特別扱いはしないからね。ちゃんと手伝…こら、尻尾を触るんじゃぁないよ」
 上から落ちてくるメイド長の言葉も気に止めず、シュラインはちょこちょこと後ろに回りこんで尻尾をもふもふと触った。モフモフ尻尾を触って一頻り満足をすると、気を取り直してから周囲の状況を確認。お手伝い、お手伝い、と確り握ったエプロンを装着。最後にリボンを締める事に四苦八苦していれば狼女のメイド長がキュっと後ろでリボンを作ってくれていた。
 そんな二人のやり取りをじぃっと横で見ていたのは四人目となる千獣であった。
 真っ赤な瞳でじぃっと見詰めて、何度か瞬きをした後に長い黒髪と呪符帯が引っかからないように、気をつけてエプロンをつける。
「……お手、伝い……。じゃあ…、私は…部屋、の……掃除を…手伝おう、かな…」
 後ろでリボンを結ぶと、千獣は早々手伝う内容を告げた。
 少し狼女のメイド長さんは気になるのだけれども、何にせよ手伝えば良いのだと理解をすれば、千獣もそれに対して動き始めていた。

 + + +

 一足先に部屋を飛び出したあやこは、箒を握り締めて城の中を歩き回っている。
 大人しく掃除や食器運びなどやってられるかと言う話しである。それよりもあのオレンジ頭を捕まえて頭の一つも引っ叩いてやろうと思っている。
「地味な裏方仕事は、私には向いて無いんだから。もっと派手で騒がしい方が私向きなのよっ」
 すれ違う手伝いの者達が不思議な目で見てくる事も構わず、あやこは文句を落としながらズンズン歩く。広い城の中、迷子になるのもお構いなしの様だ。
「ぁあーっ! 見つけた、オレンジ頭! アンタ、自分は手伝いしてないじゃない!」
 通路の丁度角で、あやこはばったり偶然リデルと出くわしていた。探していたオレンジ頭だ。
「ぅわ…ビックリした。ボクはいいの、キミ達を見守る係りだから〜」
「何えらそうにワケわかんない事言ってんのよ! アンタも手伝っ…逃げんじゃないわよ!」
 手伝え!とあやこがリデルに詰め寄ったのだが、その前にリデルは持ち前のすばしっこさでそこから逃げ出す。それをあやこは当然とばかりに箒を振り上げ追いかけ始めていた。

 +++

 部屋の掃除をすると言っていた千獣は手伝いに不平を言うでもなく狼女のメイド長に連れられ、魔女たちが宿泊すると言う薄暗い部屋を掃除している。
 掃除、と一言に言ってもここの掃除は少し変わっているようだ。
「……クモ…の、巣は?」
「それは取っちゃいけないよ、これも部屋の飾りの内だからね」
 と、そんな事ばかり。
 しおれた花も捨てては駄目。埃も取りすぎてはいけなくて、適度に残さないと行けないし。
 ここのお城は変わってる。とやはり千獣も思ったが、そうだと言うならば言われた様にテキパキ動く。逆に余分な事までして、メイド長さんの仕事を増やしてしまうのも悪いから。
 部屋にあるテーブルに、小さな籠を置いてその中に色々なお菓子を詰めていく。髑髏のチョコレートだったり、蜘蛛形のクッキーだったりと、可愛いからはかけ離れたものばかりだが、それらを詰めてテーブルの上を片付けながら、近くでベッドメイキングをしているメイド長をじぃーっと見詰める。
 手元で片付けるものが無くなると、千獣は狼女のメイド長の側へと移動しておもむろにその毛並に手を伸ばし触れている。
「…? どうしたんだい?」
 枕を置き終えたメイド長が不思議そうに千獣へ獣の眼を向けている。
 そんな彼女の視線を受けながら、千獣はほんの少し硬さのある狼の毛並を撫でる。
「ん……昔…、すごく、昔…お、母、さん…が、こんな…、感じ、だった、かな……と、思って…」
 何か、懐かしい物を感じた様な。もうどれだけ前なのかも分からなくなりそうな程の昔に、森の中で共に過ごしていた獣の母を千獣は思い出していた。
「おやおや…そんな事言われちゃうと、私も厳しく言えなくなっちゃうじゃないかい」
 ずっと厳しく言ってきていたメイド長は千獣の言葉に困った様に優しく笑った。そうして大きな獣の手で千獣の頭を撫ぜて、ほんの少しの間だけ抱き締めてくれていた。
「…あった…か、い…」
 何ともいえぬ毛並の懐かしさに、思わず目を閉じた千獣であったが次にはポンポンと背中を叩かれて目を開く。
「まだ準備は終わって無いんだから。さて、次の部屋に行くよ」
 寝られたら困ると狼女のメイド長は、千獣を離すと笑いながら次の部屋へ。
「…う、ん。手伝い、も…しっかり、しな、きゃ…」
 千獣は触れた毛並の懐かしさを確かめる様に一度手を見下ろすと、こくりと頷いてエプロンの裾を揺らしてメイド長の後を追いかけていた。

 +++

 そして場所は変わりパーティー会場。
 広いホールは魔女達が集まるとはいえ思いのほか明るかった。まだ魔女の姿は無く、今は狼のメイド達や給仕係りと思わしき者達が忙しなく働いている。
 ハロウィンといえばやはりカボチャだろう。会場の隅に山と積まれた大小さまざまのカボチャを指示された場所へ運んで次々と飾り付けてゆく。
「これはまた立派なカボチャだな。よしっ――あちらのテーブルに運べばいいんだな」
 子供一抱え分程の大きさがあろうかと言う大きなカボチャをアレスディアは抱え上げた。ずっしりとしたカボチャはその重さと大きさで他の者達が運ぶのを躊躇っていた様だったが、アレスディアは苦も無く持ち上げる。
 ふだんより重い武器を手にしたり、時には己の体重よりも重量のある鎧を見につけるアレスディアにとってこれくらいの重さはまるで苦ではなかった。
「おっ、アンタ女なのに力あるねえ。今回のカボチャの中で俺が一番デカクて色もいいんだぜ」
「まあな。腕力には自信がある」
 カボチャを運ぶアレスディアはそんな聞こえた声にごく普通に相槌を打つ。さして何処から声が聞こえたかと気にもしなかったが、その後直ぐに不思議な違和感に立ち止まってカボチャを見下ろした。
「ン? なんだよ、どうかしたか?」
「いや…」
 見下ろせばカボチャに目と口が浮かぶ。それこそハロウィンにつき物のジャック・オ・ランタンのあの顔である。
「流石はハロウィン城だな、と。此処ではカボチャも喋るのか」
 声の主を特定したアレスディアは感心した様に返事をしてから再び歩く。気をつけて他のテーブルにあるカボチャを見れば、なるほど悪戯そうな顔が浮かんだり消えたりしていた。
「なんだよ、ここで働いてる癖にカボチャが喋るのに驚いてンのかよ?」
「働いてると言っても、つい先ほどこの城に来たばかりでな。正直、右も左もまだ分かっていない」
 来たと言うのか、連れてこられたと言うのか。手伝えば元の世界に戻してもらえるらしいと、笑いながらカボチャに説明をした。
「はぁ〜ん、悪戯リデルの仕業だな。この時期になると、色んな場所で悪戯しでかしてるからな。アンタも大変だ」
 そんな風にカボチャから同情の言葉を受けた所で漸く目的のテーブルに付く。カボチャをゴトリと乗せて一息落すと、そのアレスディアの足元に走りよってくる姿があった。
「シュライン?」
 小さなシュラインであった。
 片手に燭台を持っている所から見ると、テーブル上のランタンに火を灯そうと言う所だろうか。大きなテーブルを覗き上げる事も危ういシュラインが火を持つ姿を見て、思わずアレスディアが手を伸ばしかけたが…
「こりゃ可愛いな。お嬢ちゃん、Trick or treat?」
 そこでテーブルの上からそれを覗いていたカボチャが一言。
「……それって、本来は子供が言う言葉じゃないの?」
「俺はカボチャだから関係ねえの」
 小さくてもクールな中身はそのままだったようだ。冷静な切り返しに危ないと手を伸ばしかけたアレスディアが動きを止めて、カボチャはそんな返事。
「んーんー、施しがねえンなら、悪戯しないとなー」
「小さな子供相手に悪戯なんて、大人気なっ…おい、お前!」
「あ…」
 カボチャの答えにアレスディアは呆れて言ったが、その最中にカボチャがシュラインの手元にあった燭台を大口開けて丸ごと飲み込んでしまう。どうやらコレが悪戯。
「子供は火遊びしちゃいけねえんだぜ」
「失礼しちゃう。今はちっちゃい姿だけど、子供じゃないんだから。本当は」
 手元から消えてしまった燭台に一瞬ポカンとしたシュラインだったが、直ぐに気を取り直してカボチャを見上げ言った。言ったが、その姿はどうしても幼い少女がちょっと背伸びをしてそんな風に言っている様にしか見えず。アレスディアは気付かれないように微笑ましいと小さく笑っていた。
「あっはっはっは。ま、せーぜい魔女に食われないように気をつけな。茸の妖精さん」
 カボチャも大概失礼だった。そんな言葉を聞きながら、燭台を食べられてしまったシュラインは仕方ないとまた別の手伝いを探しに出かけていた。
「まったくお前は。それで、お前の言うtreat(施し)と言うのはなんなのだ。まさかお菓子をくれとは言わないだろう?」
「いやさ、実は俺、悪い魔女に魔法掛けられてて。乙女のキスで王子様に戻れるわけだ。ってことで、Trick or tr…」
「断る。今夜来る魔女達にでも頼むんだな」
 カボチャに全部は言わせなかった。ポンと大きな実を叩いたアレスディアは、遠くで聞こえ出した魔女達の笑いを耳にしながら新たなカボチャ運びへと戻って行っていた。

 +++

 甲高い魔女達の笑いが響く中、厨房はまるで戦場の様だった。
 カボチャに燭台を食べられてしまったシュラインは、辺りを好奇心の瞳でドキドキと見回しながらその厨房へ現れていた。此処で普段の料理の腕が通用するかはわからないが、料理は得意だった。
「何か、お手伝いできる事ってある、かな?」
 大きな戸口から、ひょいっと顔を覗かせてみる。中では白い影が幾つも忙しそうに動いているのに、それには皆足が無い。オバケとか幽霊とか。そんな類なんだろう。ハロウィン城だと言うのだから、ソレくらい居たって不思議は無い。
「おおっと、こんな所に美味そうな茸の妖精が居るな。魔女共はコレが大好物なんだよ」
「え…ちょっと」
 邪魔になるかな、と覗き込んでいた厨房だったがその後ろから不意に小さなシュラインは抱き上げられた。とんでもない台詞と共に足が宙に浮いて、流石のシュラインも驚いてじたばた。
「バターと塩で軽くソテーしてな」
 面白そうに笑う声だったが程なくしてシュラインは下された。
 何に抱えられたのかと後ろを見上げると、長いコック帽を被った白い髭の料理長。
「茸の妖精って、美味しいの?」
 きょとんと見上げて尋ねれば、がはっはと笑った料理長がそうらしいと簡単に返してきていた。
「美味いが毒抜きが大変でな。それより、そこの鍋をかき回しといてくれ」
 ひょいっと大きなお玉を投げ渡されて、シュラインは鍋を振り返る。大きい…。小さなシュラインが頭からすっぽり収まりそうな鍋だったので、辺りを見回して台になる椅子を運んでくるとそれに乗ってお玉を突っ込んだ。
「わぁ…流石、魔女が食べるだけの料理。こんなの事務所で出したらどうなるかしら」
 両手を使ってぐーるぐる。鍋をお玉でかき回すと、スープの中から時々目玉らしきがちゃぷんと姿を見せる。それをみると、シュラインは怖がるどころか逆に興味津々。新しい料理のバリエーションに加えられないかと面白そうに考える始末であった。
「コックさん、これって何の目玉なの?」
「今夜のは魚の目玉。出汁も出るし、けっこう美味い」
「そうなんだ。案外お手頃食材なのねえ…この大きさって、カツオとかマグロの目かしら」
 隣で蜥蜴を捌いているコックの返事に頷きながらシュラインはコトコト煮詰まるスープを焦がさぬ様に掻き混ぜていた。
「そろそろ始まるってよ!」
 厨房の入口からそんな声。それとともに元々忙しかった厨房の内側が更に忙しさを増して、会場の方からは何やら騒がしい歓声が聞こえてきていた。
 どうやらパーティーが始まった様だった。

+++

 会場には腰の曲がったいかにも、な魔女達が大勢集まって楽しげに談笑に花を咲かせている。
 そんな間を縫って、シュライン、アレスディア、千獣の三人は料理の配膳をしたり、飲み物を配ったりとまだ忙しくしていた。
「さぁーて、魔女の皆様お立会い!」
 そんな声と共に会場の明かりが落ちた。当然あたりはざわざわとなるが、間もおかずに会場正面に大きな火柱が上がる派手な演出と共に次々と蝋燭台に火が灯される。
 効果音をつけるなら、じゃーん。と言うようなそんな感じで、その灯りの中央には骸骨で組み上げたドラムセットを前に、骨のスティックを構えるエプロン姿のあやこが居る。
「今から盛り上げてくから、皆ノってちょうだいね!」
「……こんなで盛り上がるワケないじゃ…」
「パフォーマーが盛下がってどうすんのよ。ほら、やるわよ!」
 なんと、あやこの横には古臭いオルガンの前に立たされているリデル。逃げ回っていたが捕まったのだろう。
 文句を垂れるリデルを余所に、今一状況を飲み込めていない魔女達を余所に。あやこはリズムを取ると、髑髏のドラムを一気に叩き込んで、何処から仕入れたのかもともと知っていたのか黒ミサの呪文をアレンジした歌を歌いだした。
 外したか、と思ったのは最初のほんの一瞬。ガンガンにノってくると言う様子は文化の違いやら年齢の関係やらなのか無かったが、受けは上々。次はコレとリクエストをしてくる魔女もいて、知らぬ魔女文化に多少困る部分もありつつ、持ち前のノリの良さで次々にあやこはリクエストに対応していっていた。
「ほーら、これだって立派な手伝いでしょ。場の雰囲気は大事だし」
 曲の合い間、あやこは気分よくリデルにそう言っていた。

 +++

 ハロウィンパーティーは夜通し続いた。
 とはいえ、窓の外に朝日が昇る事は無い。夜しか無い世界らしい。
 相変わらず窓の外には蝙蝠がパタパタ飛び回り、遠くで狼の遠吠えが聞こえている。
 遠足は帰るまでが遠足で、パーティーも片付けを終えるまでがパーティー。四人とも出切る限りの片付けを手伝い、漸く一息を入れた。
「なんだか、お手伝いって言うよりは楽しませてもらったって感じかな」
 ひっそりと厨房で料理のレシピを教えてもらった小さなシュラインは、にこにことソレを眺めて満足そうだ。
「そうだな。疲れたと言うか、楽しかった。」
 肩と髪を揺らすアレスディアは、ほんの少しカボチャの戯言が気になっている。あのカボチャ、本当に魔女に魔法を掛けられた王子だったのかどうなのか…。
「私、も…お、手伝、い…楽、しかった、な…。う、ん…もっと……色々、お手伝、い……した、かった…か、も」
 怖いようでいて、本当は優しい狼女のメイド長さん。もう少し手伝いをして話しをして側に居たかったなぁ、と千獣はぼんやり思っていたのだった。
「Trick and treat! みんな、お手伝い有難うね〜ぇっ! 有難うって、お城の人も感謝してるって!」
 それぞれ思い思いに感想を述べていると、部屋の扉が勢い良く開いて元気なリデルが現れた。
「結局、私たちも楽しませてもらった。それで感謝をされるとは」
「う、ん……。こっち、が…、ありがと、うって……言、いた…い、な…」
 行き成り知らぬ世界に飛ばされて、手伝いをしろと言われて。本来なら憤慨するはずの展開なのだが、楽しかったとアレスディアと千獣。
「それなら、連れてきたボクも一安心〜。でも、今年のハロウィンパーティーは前代未聞の騒がしさだったってさぁーそりゃそうだよねえ、あんだけガチャガチャ騒げばねえー」
 と、リデルが緑の眼をチラっと向ける先には、魔女からふんだくったマントを肩にかけてぐっすりと眠るあやこが居た。
「それじゃぁ、約束どーりにみんなをもとの世界に帰してあげるね〜」
 言ったリデルは手にしていた箱の中身をテーブルに散らかした。全部が色とりどりの可愛いお菓子達。
「どれでも好きなの食べて! そうすれば、あら不思議〜。もとの世界に戻れちゃう」
 全員がお菓子の包みを手にした事をリデルは確認。
「Trick and treat!!」

 元気なリデルの声と口いっぱいに広がった甘ったるさ。
『また、来年も悪戯しちゃったらゴメンね』
 そんな笑い声が聞こえた様な…そして目をぱちりと開けば、そこは自分の良く知った場所。
 ほんの少しだけ疲れた感じがあって、口の中にはやっぱり甘い甘い味。
 片手を開けば可愛いお菓子の包み紙があって、それに思わず笑顔を零して不思議なハロウィンの一日は終わったのだった。


 End.









■登場人物(この物語に登場した人物の一覧)■

―――東京怪談―――――――――

【0086】シュライン・エマ/女性/26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
【7061】藤田 あやこ(フジタ アヤコ)/女性/24歳/IO2オカルティックサイエンティスト

―――聖獣界ソーン―――――――

【3087】千獣(センジュ)/女性/17歳(実年齢999歳)/異界職
【2919】アレスディア・ヴォルフリート/女性/18歳/ルーンアームナイト


(NPC)リデル/無性/12歳くらいに見える/観察者





■ライター通信■

 藤田 あやこ 様

 この度はHalloween★castle helpers!!にご参加有難う御座いました。
 ライター神楽月です。
 イベントノベルと言う事で怪談とソーン、二つの世界の住人様達をごちゃ混ぜさせて貰いました。笑
 それから、素敵な女性陣が集まっていただけましたので
 悪戯心で思わず、全員様にメイド風エプロンを装備させて頂きました。

 余興のパフォーマーと言う、一風変わったお手伝いにまず始めに驚かせて頂きました。笑
 そんなわけで、NPCリデルを追いかけまわしつつ派手な音楽演奏で魔女達を楽しませる形となりました。
 ノリの良い藤田様には、こんな形で目立つ物が本当に似合うなぁと感じて楽しかったです。
 書かれたいくつかのプレイング、なるべく全部織り交ぜようと考えましたが力不足で申し訳御座いませんでした。
 
 今回はご参加有難う御座いました。
 お楽しみ頂けましたら幸いです。
 それでは、皆様に素敵なハロウィンが訪れます様にひっそりと願いつつ、失礼させて頂きます。