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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


女性たちの楽園
「はい、わかりました」

がちゃんと黒電話を置いたその男は草間武彦。

「コーヒーできましたよ」

とコーヒーを武彦に渡す娘は草間零。

コーヒーを飲みながら、武彦は零を見る。

「お前じゃ大人の女に程遠いよな。お酒も飲めなさそうだし」
「というより飲まなくてもエネルギーは自分でなんとかできますから」

武彦はあせった。
というのも、今回の依頼は大人の女性だけを集めてする
パーティイベントでの問題があり、たまにオカマが侵入し、
女性に近づいて困っている人がいるようだ。

「名前は何とおっしゃるのですか?」

「女性だが名乗らなかったよ。とにかく主催者とミーティングしてくれってね」

「やはりここは草間の人脈を頼りに大人の女性を探すしかない!
 もしくは完璧にオカマになれる美形の男……でもいいのか?
 とにかく誰か助けてくれーーーーーー!!」

武彦は携帯電話の電話帳を見ながら、よさそうな人物を片っ端から
電話した。この人もダメ、あの人もダメ……最後にあの人は……?

……

「よし!」

武彦はどうやら相手を決めたようだ。それは女性なのか、
女装の似合う男なのか……?

結局、選んだのはおなじみの、シュライン・エマだった。

「ちょっとー。私は何でも屋さんじゃないわよ」

草間興信所にて事務、整理等はしてるし、零と一緒に家事手伝いのボランティアまでしている。

「大丈夫だ。チケットなら2枚ある」
「そういう問題じゃないでしょう」

でもなんか引っかかる。その疑問を武彦にぶつけてみた。

「んー…。オカマって言うか、今回困ってるの、女性目当ての女装のノーマルな男性に、なのよね武彦さん?」
「俺もミーティングで詳しく話すそうだから、多分そっちだろうな」

武彦、シュライン共に疑問は残ったが、結局オカマ退治に行くことになった。
そのミーティングとして、主催側と武彦、シュラインで話し合うことになった。

そこで驚いたのが、主催者が男だということだ。
それもビール腹が気になる体型の大きさ。

「ちょっと!男がオカマ退治してどうするんですか!」
「まぁまぁ。そうは言わないで下さい」

武彦は席に付き、納得しないという顔でフンと座っている。

「例えば女性のための女性専用車両だって、考え出したのは女性じゃなく
 男性だったかもしれません。主催者が女性かどうかなんて関係ないのです」

そう言われてみればそうだ。要は女性が安心して楽しめればいいわけだ。
武彦もシュラインもそう思った。

そこで初めてシュラインが口を開いた。

「捕獲して追い出すことでいいんですよね」
「はい。彼らは必ず集団でやってきてやりにくいかもしれんが、頼むよ」
「それともう一つ、精神的に女性、また精神的に女だけれどレズビアンな場合はどうですか?」
「それは大目に見たいが、念のため退場していただこう」

そしてだいたい話し合った後、シュラインは口にした。

「そのオカマさんは心も女のオカマさんなんですか?それとも女装した男の人も含まれるんですか?」
「まぎらわしいからどちらもひっ捕まえて叩き出してくれ」

というわけで、ミーティングは終わった。どうもシュライン一人でやるには荷が重すぎる。
ケータイを取り出し、大人の女性としてふさわしい人に何人か連絡を取った。
アトラス編集部の麗香さんは相変わらず忙しいようだ。
蓮さんにも電話してみた。相変わらず暇そうで、曰く付きの商品を一つ買ってくれるなら協力するそうだ。


――パーティ当日。

パーティといってもドレスを着るパーティではなくて化粧もアクセも衣装もシックに決め込む
そんなパーティだった。同じく蓮もそんな格好をしていた。
……というか、あの人は普段着で十分なくらいだ。

クラブとしても利用されている会場でチケットを見せる。
シュラインは中に入って辺りを見回した。
本当に女性ばかりで、誰がオカマかなんてわからない。

とりあえずバーテンさんにワインを入れてもらい、蓮と乾杯した。

すると女性たちが寄ってきた。

「初めてですよね?普段何されてる方ですか?」

シュラインは
「いえ、ただの事務員ですよ」

と答えたが、蓮は、
「アンティークショップの店員よ」

と答えたもんだから、

「わーすごいですねぇ。お店行ってみたいです!」
「本当に行きたいと思えばたどり着けるわよ」

今度はその女の子が自己紹介し出し、
「私はこういう者なんですよ」

と渡された名刺には、西洋人形技師と書かれた。

「あなたとはまた会えそうね」

と蓮は言った。

その後も話しかけられたり、話したりしてたくさんの出会いがあった。
シュラインのつらいところだったのが、ここに来ている人の
ほとんどが業界人だということだ。

カメラマン、フリーライター、シンガーソングライター、スタイリスト……。

もちろんそういう華やかな職業ばかり就いてなくても、アーティストのブッキングを
得意とする影の功労人もいた。ただ一ついないのはシュラインみたいな事務員などのOL。

華やかな世界で活躍している人を目にしてシュラインの目は下を向いていた。
でもこれじゃダメだ!と辺りを見渡した。

いたのだ。女性を囲んでる3人の人。
アクセサリーや襟で喉仏隠してる。肩幅誤魔化しに胸元派手にしたりしている。
髪型も顎エラ隠す形は要確認。

そこでシュラインは話を盗み聞きした。

「私たちオカマなんだけどね。ここオカマも禁止なの」
「今回は入れたけどね」
「私たち心は女性だもの」
「仲間に入れてくれるよねお姉さん」

お姉さんと呼ばれた女性は返答に困っていた。

そこでシュラインは男の声で話しかけた。
「実は私もそうなのよね」

すると3人の態度が変わった。

「仲間!仲間がいるなんて!」

そこでタイミングよく蓮が来た。

「そこの女の子ちゃん達。ここはオカマ禁止だけど、身分証明書見せられるわよね?」

そこで3人の人間が固まった。シュラインはさっと身分証明書を出す。

「私は声色変えてただけなの。ごめんね。オカマは退場することになってるんで」
 ほら、その女の子だって困ってるじゃないの。迫るのはほどほどにね」

と軽く注意したら、あっさりオカマ集団は出て行ってくれた。

シュラインは、
「はーー。ひと仕事終わった気分」

蓮は
「いろんな業界人と知りあえたし、オカマも追い出せたし、いい経験だったわね」

「あれ?」

シュラインは女性と女性がプライベートルームに入っていく後ろ姿のが見えた。

「ねぇ、蓮」

「ちょっと気になるね。後をつけてみようか」

こっそり後をつけて、ドアを開けるととんでもない光景が目に入った。
主催者は女性の襟元をつかんでロッカーのところで押さえこんでいた。

シュラインは怒りの声で、

「本当に迷惑かけているオカマはアンタなのね」

すると主催者は言う。
「そのためにいつだって女装して入ってくるオカマを集めて、そっちに気を取られようと
 してたわけさ。そしてそいつらを退散させた時にこっそり女性を連れ込む。
 簡単だろ?でも失敗だった。誰かが俺のフリをして草間にオカマを退治してくれと
 願ったからだ。だから私もミーティングに参加せずにはいられなかった。
 全部ここを利用する誰かのせいだ!」

「何言ってんのよ。元々あんたのせいでしょう」
とシュライン。

やがて主催者は小さいメスのようなナイフを取り出し、
女の子を人質にメスを女の子に当てる。

「何か俺にしてみろ。この子の首を切り刻むぞ!!」

シュラインはじりじりと主催者とにらみ合いをしていた。
すると後ろの廊下から白くて大きい飴玉のようなものを
転がしてきた。主催者はシュラインに気を取られ過ぎて、
蓮の存在を忘れていたのだ。
白い塊は煙を出し、一定時間身体を動けなくしてしまうのだ。

「人を数時間硬直させるスティファニス煙よ。残念だったわね。私の存在を忘れてたなんて」

女の子の身体も硬直させてしまったのは悪いが、安全な場所まで運ぶことにした。

「護身用に持ち歩いててよかったわ。シュライン、もうさっさと帰りましょう」



女の子を自宅まで送っていくために、武彦は早朝から運転手である。

「その女の子を返す時、タクシーでも呼んだ方がよかったんじゃない?」
と武彦が言うが、

「タクシーが早朝から仕事してるの見たことないし、いいじゃない」
とシュラインは言う。でも本当は武彦の運転で帰られる嬉しさも少しあった。

「ところでねぇ」
蓮が口を挟む。

「何か買ってくれるのよねぇ?」

その質問、耳が痛い。シュラインはもちろんのこと、自分にも火の粉が飛びそうな武彦も。

「時間を早く進める『お急ぎ時計』とか、自分の死ぬ瞬間が見れる万華鏡とか」
「いかにも嫌な商品ばっかりじゃない〜〜」

車の中で悲鳴がが走った。



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0086 / シュライン・エマ / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】



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■         ライター通信          ■
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いつもありかどうございます。真咲翼です。
今回は行ったことはないのですが、とあるイベントがモデルでした
(遠方なのとお酒が飲めないため行ったことはないですが)
今回は特別にアンティークショップの蓮さんを出動しました。
今後も活動続けるんで、よければチェックしてやってください。