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<東京怪談ウェブゲーム 神聖都学園>


夏の置き土産
●オープニング【0】
 彼女――神聖都学園高等部に通う原田文子が『それ』に気付いたのは、まもなく10月に差しかかろうかという頃であった。
 体育の授業の前後、妙に周囲を気にしながら部屋の隅でこそこそと何か隠すようにして着替えている同級生の姿に、ふと気付いたのである。その同級生の少女の名は黒石佳子、文子とは特に親しい訳ではないが、だからといって嫌っている訳でもない。何かあれば2、3言葉を交わすくらいの、ごく普通の同級生という間柄だ。
 そして次に体育の授業があった時、文子は佳子のことを注意して見ていた。やはりこそこそと着替えをしている佳子。しかし、そこで文子は見てしまったのである。佳子の腹部に、青い痣のようなものが複数あったことを……。
(怪我? ううん、違う……)
 あれは、何がしか殴られたような感じだ。でも誰がそんなことを?
(……そういえば……)
 その時、文子はふっと思い出した。夏休みが終わって早々、佳子が他の同級生たちと嬉しそうに会話していた時のことを。確か佳子は、夏休みに彼氏が出来たとか言っていなかったか?
(まさか彼氏からの暴力?)
 可能性はあるかもしれない。けど、それに気付いたからといって、どうすればよいのだろうか。よもや本人に直接尋ねる訳にもゆかない。佳子が何もないと言ってしまえば、そこで話は終わってしまうのだから。
(どうしよう……)
 数日の間、悩んでいた文子。とそんなある日、脳裏にある男の顔が浮かんできた。
(そうだ。あの探偵さんだったら……)
 何とかしてくれるかもしれない。以前、自分に関わる出来事も何とかしてくれたのだから。
 文子の脳裏に浮かんだ男の名は草間武彦――改めて言うまでもなく、草間興信所の所長である。そして文子は10月のある日の放課後、草間興信所を訪れたのだった……。

●相談【1】
「いらっしゃいま……あ」
 草間興信所――来客者を出迎えた草間零の言葉が一瞬止まった。ササキビ・クミノと携帯電話のテレビ電話機能でとある用事について話していた草間武彦も、それに気付いて零の方へ視線を向けた。
「原田さん、でしたよね?」
 そしてすぐにそう確認する零。その通り、目の前に立っていたのは原田文子である。
「はい。原田です」
 会釈とともに文子が静かに答えると、それが耳に入ったか奥から女性――シュライン・エマの声が聞こえてきた。
「零ちゃん、中に入ってもらいましょ。今ちょうどお茶入れてた所だし」
「あ、はい、分かりました。どうぞ」
 シュラインの言葉を受け、零が文子を中へと促す。それを見ていた草間は、クミノに小声でこう言った。
「そのまま待っててくれ。依頼人、かもしれない」
「分かった草間。待っていよう」
 液晶画面の向こうに居るクミノは小さく頷くと、待機の態勢に入った。
 草間としてみれば、もし文子が依頼でやってきたのならまた誰かしら人手が必要になる訳で。だったらこのまま、クミノに聞いておいてもらった方がよいの判断したのだろう。一方のクミノにしてもそれが分かったので、何も聞かず素直に待機することにしたのだ。第一、もし自分に手伝いを要請されたなら、直接会話を聞いているのといないのとでは解釈の仕方が変わってくるのだし。
「何のよーでぇすかねー?」
 机の上にちょこんと座っていた露樹八重がぼそりとつぶやく。傍から見れば、草間が机の上にマスコットを置いているようにしか見えないのだが……それは八重には内緒である。
「さあな」
 草間は短く答えると、携帯電話を片手に文子の向かい側のソファに移動した。そこへシュラインが、お茶とお茶菓子を持って台所の方から姿を現した。
「日本茶とお煎餅だけど、よかったかしら?」
「いえ、どうかお構いなく」
 シュラインの言葉に、文子はゆっくりと頭を振って答える。そして草間の方へ向き直り、ぺこりと頭を下げた。
「先日はどうもありがとうございました」
「いや……あれから視線を感じることは?」
 礼を言う文子に対し、あの後変わったことはないかと草間は確認した。
「おかげさまで、あれからは何も」
 その文子の答えに草間は安堵した。何事もないのなら、それでよい。
「今日はそのお礼を言いに?」
 とシュラインが尋ねると、文子はまた頭を振った。
「あ、いえ。今日はそれだけじゃなくて……少し、ご相談したいことが。私じゃないんですけれど……」
「ご家族かお友だちでしょうか?」
「同級生です」
 零の質問にそう文子は答えた。
「……聞かせてもらえるかな」
 草間が促すと、文子は経緯をありのままに話した。黒石佳子の痣のこと、夏に彼氏が出来たと話していたこと、実は自分はそんなに親しくはないことなど――。
「でも、気になって仕方ないのね」
「はい」
 シュラインが尋ねると、こくんと文子は頷いた。その時、黙って聞いていた草間が文子に質問を投げかけた。
「そいつ……いや、彼氏の名前は無理だろうから、どうやって出会ったとかは聞いてないかい?」
「……断片的にしか覚えていないんですけど、構いませんか?」
「ないよりはましさ」
「相手は大学生で……確か、白浜にある海水浴場で知り合ったって」
「白浜? それって和歌山の?」
 意外な地名が出て来て、シュラインが思わず文子に確認した。
「はい。彼女の親戚がそこに居るらしくって。それで、東京からサークルの合宿で来てた彼氏と知り合ったみたいで……」
「つまり、相手も東京に居る訳か」
 草間はそう言って思案する。
「ねえ、その黒石さんだけど、最近は彼氏さんと順調かは聞いてる?」
 その間にシュラインが聞いてみるが、文子は首を横に振った。
「聞けません。でも……最近、彼氏の話は聞いた記憶はないような……」
「聞いてない……のね」
 1人うんうんと頷くシュライン。すると、思案していた草間が口を開いた。
「出会った時期、いつなのかは分かるかい」
「はい、それは分かります。8月の頭って言っていました」
 きっぱりと答える文子。
「ところで、黒石さんの写真はお持ちですか?」
 零が尋ねると、文子は携帯電話を取り出して開いてみせた。
「携帯のでよければ」
「じゃあそれを、彼女の携帯に送ってもらえるかな。シュライン、頼む」
 草間がシュラインを示して文子に言った。シュラインは頷くと、すぐに携帯電話を取り出した。そして文子から佳子の画像を送ってもらう。
「あとそうだな、彼氏の名前は……やっぱり難しいか」
 『やっぱり』と草間が言ったことからすると、最初から聞こうとは考えていたものの、難しいだろうと思ったから後回しにしたのであろう。
「……ちゃんとした名前はもちろん分かりません。でも、何かの拍子に『ゆうちゃん』とか言ったような、言ってないような……」
「上出来だ」
 記憶の糸を辿って答える文子に対し、草間は笑みを浮かべて言った。
 それからしばらく細々としたことを話した後、文子は草間興信所を後にしたのであった――。

●分析【2】
 文子が帰ってから、草間は待機してもらっていたクミノに呼びかけた。
「……聞こえてたか?」
「ああ。同級生のよくない異変に気付けたのは、誉められてよいことだ」
 どうやらちゃんと聞こえていたらしい。
「しかし、原田文子はよく『それ』に気付けたものだな……」
 クミノのそんなつぶやきに、シュラインが反応した。
「それはね。文子ちゃんって、勘がよい所があるみたいだから」
 と自分で言ってから、シュラインは首を傾げた。
「ただ、それだったら、黒石さんの様子が妙なの着替え以外の時でも気付いてても不思議じゃない気もするのよね。もし彼氏との仲がおかしくなっていたのなら」
 文子は勘がいいのに、どうしてそういう部分で気付いていないのか、そこがシュラインは気になったようだ。
「話を聞いた感じだと、痣に気付かなかったら、そのまま接点も薄く最後まで過ごしてそうな気はしたけどな。気にしてなけりゃ、何も感じないってことは、別に不思議じゃないさ。ま、気になってしまったからこそ、こうやって相談に来たんだろうが」
 草間がそうシュラインに言った。
「草間のおじちゃ……」
 いつの間にやら移動してきていた八重が、草間を呼んだ。何故か、にしゃりと人の悪い笑みを浮かべて。
「ん、どうした?」
「おじちゃの言う『はーどぼいるど』って『夢見る乙女』の恋愛にまで首を突っ込まなきゃダメダメなのでぇすか……」
 くすくすと笑う八重。だが草間は特に反応する訳でもなく、ふうと溜息を吐いてつぶやいた。
「『夢見る乙女』の世界だけで済むんならいいけどな」
 ……どういう意味ですか、それは?
「おじちゃって、案外世話好きでぇすか?」
 八重がこそこそと尋ねると、シュラインも苦笑しながら小声で答えた。
「困ってる人を放ってはおけない所はあるわよねぇ、武彦さんってば」
(持ち出しでしょうね、今回は)
 事務所の財政を預かるシュラインとしては、内心こんなことも思ったり。
「……他の同級生は気付いているのだろうか」
 液晶画面の向こうでクミノが素朴な疑問を口にした。が、草間がすぐにそれを否定した。
「それはないと考えていいだろう。気付いていたら、原田文子はその光景も見ているはずだ。何しろ気付いてから数日、気になって悩んでいたんだからな」
「青い痣ねぇ……」
 思案しながらシュラインが言った。
「私がすぐに連想したのは、クラゲか蚊の痕なの。肌の弱い子だとかなり長い間、青く痛々しいの残っちゃうもの」
「2ヶ月も残るのか?」
「それは何とも言えないけど」
 草間の突っ込みにシュラインが肩を竦めた。
「むー……でも、青あざって結構簡単にできるのでぇすよ。何回も重いものを、お腹で支えつつ持ち運びしたりするとか〜」
 八重はそう言ってから、草間をびしっと指差した。
「だからいきなり、彼氏からの暴力受けてるとは考えちゃダメダメでぇすよ?」
 草間に釘を刺す八重。すると草間は苦笑いを浮かべた。
「決め付けちゃいないさ。ただ、可能性の1つにあることは否定しないがな」
「とりあえず、黒石さんを尾行する必要はあるのかも……うーん」
 また思案するシュライン。痣が出来る要因があるのならば、それを調べるために尾行することは避けられないだろう。
「うー……」
「どうした?」
 急に唸り出した八重に対し、草間が声をかけた。
「なんだかああやって聞いていくのって、のろけ話をわざわざ話してもらおうとしてる感じで、かなり照れてきますでぇすね……」
 文子が話してくれた内容を思い返し、八重は遠い目をしてテーブルの上でごろごろと転がり出した。
「おじちゃ……じつはこののろけを聞いて忍耐力を鍛えてるのでぇすか?」
「そんな訳ないだろ」
「じゃあ見直せないでぇすね……残念なのでぇすよ……」
 ごろごろと転がり続けたまま、八重はやれやれといった口調でつぶやいた。

●尾行【3】
 翌日放課後、神聖都学園近くにシュラインの姿があった。無論、佳子を尾行してみるためだ。昨日のうちに、瀬名雫を通じて影沼ヒミコからそれとなく情報を仕入れようと思ったのだが……こちらの方はどうも芳しくなく。ゆえに、尾行が頼みの綱となった訳だ。
「すぐ出てきてくれるといいでぇすね」
 シュラインの服のポケットに入った八重が、顔だけ出して言った。無言で頷くシュライン。
 だが結局、2人はさほど待つ必要はなかった。すぐに佳子は正門から出てきたからだ。ある程度の距離を保ち、シュラインは尾行を開始した。
(さあ、これからどこに行くのかしら……)
 そんなことを考えながらシュラインがついてゆくと、佳子はかかってきた電話に出ていた。耳を澄ませ、シュラインは集中してその会話を聞いてみた。シュラインの耳ならば、この距離であれば佳子の声は十分聞こえるはずだ。
「あ……ゆうちゃん? うん……うん……行けばいいのね……うん……分かった……あたしも話したいことあるし……うん……」
 電話での会話はこうだった。『ゆうちゃん』という名前が出たことからすると、相手は佳子の彼氏に間違いないのだろう。
(このまま会いに行くのかしら)
 シュラインはそう思ったが、佳子はどこにも寄り道することなく自宅へと帰ってしまった。
「……今日会うんじゃないのかしら」
 シュラインが首を傾げていると、八重がポケットから顔を出して話しかけてきた。
「佳子しゃん、何だかひょーじょーが暗かったように見えたでぇすよ?」
 シュラインが会話を聞くことに集中している間、八重は佳子の表情に注目していたようだ。表情が暗かったということは、電話は嬉しくない内容だったということだろうか。
 と、少ししてから、自宅から私服に着替えた佳子が姿を現した。
(なるほど、一旦帰って着替えたのね)
 着替えたのなら、もう会いに行くことはほぼ間違いない。シュラインはまた距離を保って佳子の尾行を再開した。
 途中、佳子は薬局に寄った。いわゆるドラッグストアと呼ばれる類の大きな店だ。シュラインもこっそりと中へ入り、佳子がどんな物を買おうとするのかチェックしていた。
 佳子はとある物を手に取ると、レジで会計を済ませた。シュラインは気付かれぬようそれを見ている。
(え、あれって……)
 シュラインは、佳子がレジの方へ向かう前に居た場所を改めて確認した。そこには、妊娠検査薬が置かれていた――。

●登場【4】
 嫌な予感を覚えながら、なおも佳子の尾行を続けるシュライン。やがて佳子は、あるマンションの裏手にやってきた。そこに居たのは顔のいい優男が1人。高校生の娘なら、簡単に惚れてしまいそうな容姿ではあった。
「ゆうちゃん……」
「待ってたよ、佳子」
 笑顔で佳子に話しかける優男。
「さ、一緒に行こうか。もう向こうで待ってるからさ」
 そう言って優男は佳子の手を取って引っ張ろうとするが、佳子は強い力でそれに抵抗した。
「佳子?」
「話を聞いて、ゆうちゃん」
 佳子の表情はとても、固い。
「……とっとと済ませろよ」
 一瞬不機嫌そうな表情を見せる優男。シュラインと八重はその表情を見逃さなかった。
「……出来たみたいなの……」
(あ……やっぱり……)
 薬局の時点で想像はついていたが、シュラインとしてはやっぱりかという思いであった。
 だが――その次の出来事はシュラインと八重にも全くの予想外であった。何と優男はいきなり、左手を佳子の喉にかけたのである!
「……ふざけたこと言ってんじゃねえぞ」
 それまでの声と違って、低い声で脅すように優男は言った。
「もう話ついてんだよ。いいから、お前は黙って俺の言う通りにすりゃいいんだ。また……痛い思いをしたいのか……?」
 ニヤリと笑みを浮かべる優男。それは見ているだけで不快になるとても嫌らしい笑みであった。
「おらっ!!」
 次の瞬間、優男の右手のこぶしが佳子の腹部へ叩き込まれていた。
「ぅぐっ!」
 呻く佳子。それを見て、優男はへらへらと笑っている。
「もいっちょ!!」
 そして優男がまたこぶしを叩き込もうとした時――後ろから、優男を羽交い締めにする男が居た。
「男の風上にもおけない奴だな、全く」
「武彦さん!?」
「草間のおじちゃ!?」
 突然現れた男――草間の姿に、シュラインと八重がとても驚いた。そしてすぐにそばへと移動する。
「武彦さん、どうしてここが?」
「その説明は後だ。それより彼女を頼む」
 草間にそう言われ、シュラインは小さく頷くとすぐに佳子の方へ向かった。
「大丈夫?」
 シュラインが優男から佳子を引き離し、気遣いの言葉をかけた。その途端に、佳子の両目からぼろぼろと涙がこぼれ落ちてきた。
「ううっ……うっ……うぁぁぁぁぁーっ!!」
 シュラインの胸に顔を埋め、佳子はそのまま泣き出してしまった。シュラインはそんな佳子の背中を、無言で優しくぽむぽむとさするように叩いてあげた。
「お……お前たちはいったい……?」
 草間に羽交い締めにされたままの優男が尋ねてきた。
「なーに、単なる通りすがりのお節介焼きさ」
 草間はニヤリと笑って、優男に言い放った……。

●囁き【5】
「で、どうしてあの場所が分かったのでぇすか?」
 翌日、草間興信所にて八重が草間に尋ねた。それはシュラインも気になっていたことである。後で話すと言われたまま、1日経ってしまっているではないか。
「ああ、それか。話せば単純なんだが……」
 苦笑しながら草間が見せたのは、クミノに繋がっている携帯電話である。液晶画面の向こうでは、クミノ越しにパソコンのモニタが映し出されていた。
「8月頭、サークル、東京の大学、そして白浜に『ゆうちゃん』。これでダメ元でこいつに調べてもらっていたんだ」
「そうそう簡単に見付かるはずないと思ったんだが……草間も一応探偵だけのことはある」
 クミノが液晶画面の向こうからそう言った。
「一応は余計だ」
「……褒めたつもりだが?」
「もしかして、写真が見付かったとか?」
 ピンときたシュラインがそう言うと、草間がニヤッと笑った。
「そういうことだ。写真をネットで公開してる可能性はあるんじゃないかって思ってな。そしたら思った通りだ。それでそっちから辿っていって、ゆうちゃんとやらの家が分かったと思ったら……あれだ」
「ほんとーにあれは許せないでぇすよ!」
 ぷんぷんと怒る八重。あれはもう、思い出しただけで何度でも腹が立ってくる光景である。
 あの後、桜桃署の月島美紅巡査やその上司にあたる築地大蔵警部補などにもご足労願って、彼らを交えて『それはもう本当に色々と』話をしたのである。それで2度と佳子に近付かないことを約束させ、優男を解放したのだった。
「ま、事件にすると色々と面倒だからな」
 そう草間は言ったが、きっとそれは佳子のことを思ってのことだったに違いない。
「でも、放っておいていいの……あれを?」
 シュラインは優男を無罪放免したことが、ちょっと引っかかってるようだ。今後また、同じことを繰り返さないとも限らないから。
「……そのうち罰が当たるだろ」
 しれっと答える草間。その翌月、優男がサークルの仲間ともどもに逮捕されたことは、余談であるので詳しくは説明しないことにする。
「そういや……大丈夫だったのか?」
 草間がふと思い出して、聞き辛そうな表情でシュラインに言った。
「ええ、そっちは大丈夫。ちゃんと調べてもらったけれど、色々あったから遅れていたみたいね、彼女」
「そうか……」
 シュラインの報告を聞いて、草間は安堵の表情を浮かべた。
「1つ気になるのだが」
 クミノが草間に尋ねてきた。
「どうしてその男は、そんな真似をした訳なんだ?」
 もっともな疑問である。けれども、それについて優男は何も答えていなかった。
 草間は皆に聞こえるように言った。
「さーてな。でもたまにあるだろ。悪魔が囁くって奴が――」

【夏の置き土産 了】


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【 整理番号 / PC名(読み) 
                   / 性別 / 年齢 / 職業 】
【 0086 / シュライン・エマ(しゅらいん・えま)
     / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員 】
【 1009 / 露樹・八重(つゆき・やえ)
          / 女 / 子供? / 時計屋主人兼マスコット 】
【 1166 / ササキビ・クミノ(ささきび・くみの)
   / 女 / 13 / 殺し屋じゃない、殺し屋では断じてない。 】


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■         ライター通信          ■
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・『東京怪談ウェブゲーム』へのご参加ありがとうございます。本依頼の担当ライター、高原恵です。
・高原は原則としてPCを名で表記するようにしています。
・各タイトルの後ろには英数字がついていますが、数字は時間軸の流れを、英字が同時間帯別場面を意味します。ですので、1から始まっていなかったり、途中の数字が飛んでいる場合もあります。
・なお、本依頼の文章は(オープニングを除き)全5場面で構成されています。今回は参加者全員同一の文章となっております。
・今回の参加者一覧は整理番号順で固定しています。
・大変お待たせさせてしまい申し訳ありませんでした。ここに恋愛絡みではあるものの、どろどろと黒い物がかなり混じっているかもしれないお話をお届けいたします。
・えーと、実は高原はこういうお話も一応守備範囲ではあります。なかなかやれる機会はありませんが、今回はちょうどそういう機会が出来ましたので……抑え気味で書かせていただきました。
・結局、佳子には文子の名前は一切出していません。これは草間の考えで、教えない方がいいだろうと判断したからです。きっと、教えたことによって2人が学校でぎくしゃくすることを避けたのでしょう。
・シュライン・エマさん、133度目のご参加ありがとうございます。購入薬チェックなどはよい行動だと思いました。とりあえず今回のお話、シュラインさんについては心の片隅に覚えておいて損はないと思いますよ?
・感想等ありましたら、お気軽にテラコン等よりお送りください。きちんと目を通させていただき、今後の参考といたしますので。
・それでは、また別の依頼でお会いできることを願って。