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<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>


錆びついたナイフ
美しくほんのり光るお店にアンティーク商品がきらびやかに飾られている。
そこでほこりをはたく店主、碧摩・蓮(へきま・れん)がいた。
決して客の数は多くないが、ひどい時は誰一人来ないままというのも
めずらしくない。

そんな中でチリリンという呼び鈴があった。


「あら、いらしゃい。古いものばっかりだけど見ていっておくれよ」

しかし男は間髪入れずに、こう言った。

「ウィンドウの中にある錆びついたナイフを買わせてください」

「錆びついたナイフ?確かにあるよ」

そこでテーブルの下からナイフを取り出した。

「これでいいのかい?」
「あぁ」

蓮は法律上、刃物を普通に持ち出すだけで銃刀法違反になるので、
プラスティックの入れ物に入れて、ホッチキスを使い、厳重な装備をした。

「あんたがこのナイフをどう使うかはわからないけど、この厳重な装備は
 家に着くまで外すんじゃないよ。銃刀法違反になるからね」

その客はわかったと言い、錆びついたナイフを持って帰った。

「錆びついたナイフねぇ。切れないナイフだけどある条件が揃うと切れるんだよね。
 そしてそれと同時にナイフも消えるから証拠が残りにくい……。
 あたしは責任取らないよ」

男は錆びついたナイフの入った自転車で移動してる時であった。
前から来たバイクがすっと盗んでいったのだ。

「何しやがる!あのナイフで殺したい奴がいたのに!」

そのバイクは明らかに制限速度をやぶって走り去って行った。男はすかさずナンバープレートを見た。

「東京 ナンバーP2-P2」
「あんなナンバープレートあるんかい!」

そしてもう、あのバイクは見えなくなっていた。


そのバイクはずっと走り去って、あるプレハブの建物でバイクから降りた。
中に入って行ったのは金髪がきれいな女性であった。

「やばいわね〜。刑事がひったくりなんて。
 でも顔は隠したし、ナンバーは仮のものだから大丈夫よね」

このおんぼろの施設は超常組織スピリッターの事務所。
IO2や草間興信所とも密かに繋がっていたりする。
この「錆びついたナイフ」を悪用させないためと、研究に使ってもらうため、
ある場所に送り付けた。

 ところ変わって藤田グループの中枢機関。

 社長である「あやこ」はとあるビルで社長として男性向けミリタリーブランドモスカジ、
ブティック、ジャズカフェバー、蛾妖怪の芸能プロダクション全てをここで管理している。

 通常は秘書に郵便物管理をまかせていたのだが、ちょっと形状の違った郵便物があった。
裏のリターンアドレスを見ると「超常組織スピリッターズ/エル・レイニーズ」

「藤田社長、これ知り合いですか?念のため私たちが開けましょうか?」
「あぁ、あの女刑事で戦隊モノもやってる年増の人? 
 知ってるわよ。あんまりつきあいないけど」

と何のちゅうちょもなくあやこはその郵便物をぱっと秘書から取り上げた。

「あの女、なにを送ってきたのかしら?」

あやこはハサミを使って封を開けない。手でびりびり破いてしまった。

「いったー。何よこれ。紙に包んだだけの錆びたナイフじゃない」

あやこの指からたらりと血が流れるにいたらず、薄皮一枚の怪我で済んだ。

「ははぁよくある嫌がらせね。はいはい儲け過ぎですよ!
 あのオバサンの給料とは比べられませんもんね。
 とうとうお金持ちの私に嫌がらせするようになったのね。
 器がちっちゃいというか何というか。だからあの戦隊ものもダメなのよねぇ」

とはいえ、ナイフは気になる。どうやって保管しよう?いっそあの女に送り返そうか。
いや、三十路過ぎていてもこちらに送り届けたのは何か意味があっての
ことだろう。もしくは偽名……?

「川島さん」
川島さんというのは秘書の名前だ。

「これを厳重に包装してIO2科学研究室に『藤田あやこ』の名前で送ってくれる?」
「はい、わかりました」

 その後、やっぱりナイフが気になったため、知人のヤクザのボス電話をした。

 プルルルルル。
「いや、脅迫文を入れ忘れる様な間抜けはうちの組員にいねーぞアヤコちゃん」
「じゃあ他の人間の名前を使うとかは?」
「それはたまにあるだろうけど、アヤコちゃんに送るわけねーじゃないすか」

それから、超常組織スピリッターにもコンタクトを取ってみた。

 プルルルルル。
「もしもし、超常組織スピリッターズです」
「あなた女子高生の方よね?私はあの歳増女と電話したいんだけど」
「エルさんは刑事の仕事が忙しいらしく、今夜は来てません」

くっ……こんな時に。この女子高生に文句言っても仕方ないしなー。


研究室にて。

 ナイフを厳重に管理し、分析を行うことにした。というのも
エル・レイニーズは髪に包んだだけの簡易包装なのだが、
その手紙にこう書かれていた。

「このナイフは普通じゃない。厳重に管理するように」

「厳重に管理して欲しければあんな紙一枚の包装しないでよね。あーくやしい!」

あやこは肉まんを食べながら、そのナイフをにらみつけるように見ていたら、
錆びたナイフの腹から剃刀が生まれた。あまりにも急だったため、
あやこは食べていた肉まんの手が止まるほどだった。

それからも剃刀は増殖していって、やがて電子レンジのような分厚いドアを突き破って
やがてこちらに襲ってきた。剃刀は偶然おやつで置いていた肉まんに刺さると消えた。
あることを閃いたあやこはボスに電話した。
もちろんこの間も肉まんにどんどん刺さってきている。
あやこは逃げ出した。IO2の外に行き、携帯電話でボスに電話した。

「急で悪いけど、空いてる倉庫ある?」
「そんなのたくさんありますよ」
「じゃあC倉庫でいいかしら?」
「おう、丁度空いてるとこだぜ」
「ありがとう。ボス」
「アヤコちゃんにはお世話になってるからねぇ」

そこであやこは剃刀と更なるたくらみのことを話した。

「じゃあこの倉庫の奥で冷やしてある粉砕された肉買うかい?
 曰く付きの肉でねぇ。どうもそういう肉が好きなんじゃないかい?」
「えぇ! もちろん買いますとも。もちろん利益が思ったより出たら…ふふ」

あやこが研究室に帰ると、すっかり部屋は落ち着いていた。
その他の研究員にまじって、あのエル・レイニーズがいる。

「コラぁ! エル・レイニーズ。なんてものを送ったのよ!」
「それについてはごめんなさい。私もこのナイフが気になったから来てみたのよ」
「あなたに何ができるのよ」

とあやこは言ってみた。

「このナイフの正体は未知の古代魚であるらしいことが、
 研究員のおかげでわかったわ。私には霊体を持つ生き物にしか見えなかったから……」
「ふーん。霊体ねぇ」
「それも平家ガニみたいに人、特に肉にね怨念を背負った不気味な奴なのよ」

研究所は静寂に包まれた。

「じゃ、仕事があるんで帰るわ。一応霊的結界は張ってあるから。いつまでもつかわからないけど」

そう言ってエル・レイニーズは去っていった。

――

しばらくして。

「藤田グループ主催・古代魚ナイフショー」

と書かれた場所がデパートの一角で行われた。
スタッフが入口、出口に待機してて、入口にはチケットの販売所、検閲する場所があった。

あやこは、
「はーい。これを見てください。粉砕された大きな牛肉がありますねー。
 そこで錆びついたナイフがあります。本当は未知の古代魚らしいですが、
 ここは錆びたナイフということにしましょう。だから私の手も切れませんね。はい。
 しかし、この緑色の糸でまかれた封印を解くと……。
 この錆びついたナイフの腹から剃刀が大量発生します。ほら、みてください。
 もう剃刀が出てきてますね。その剃刀はなんとこの大きな粉砕された肉に刺さると、
 消えていくのです。」

そのシーンをみた観客がおぉーと驚く。

剃刀はどんどん肉に刺さっていくが、1本間違えてあやこの方に飛んできた。

「ちょっと!そっちにおいしいお肉があるじゃないの!私を刺すな〜」

と逃げまどうあやこ。それはそれで観客の笑いをとっている。
仕方なしに古代魚に緑の糸をを締めると、剃刀の増殖だけは止まった。
あやこに向かった剃刀も手で払うとなんとか動きが止まり、そして消えていった。

「えー、ちょっとしたハプニングもあるナイフショーどうでしたか?
 また来てくださいねー」


お金持ちと貧乏に違いがあるとすれば、

何でもネタにして商売にしてしまう者がのし上がれるものだろうか?



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【7061 / 藤田・あやこ  / 女性 / 24歳 / IO2オカルティックサイエンティスト】

【NPC / エル・レイニーズ  / 女性 / 32歳 / 女刑事】
【NPC / 川島  / 女性 / 28歳 / 藤田グループ直属の秘書】
 名前のないキャラクターは省略させていただいてます。

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■         ライター通信          ■
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いつもご依頼ありがとうございます。私もだんだんあやこちゃんというエルフが
自分に馴染んできて、可愛い存在になってきました。
今回、平家ガニという言葉を間違えて片家ガニと書いてしまって
すみませんでした。許せない気持ちもあるかと思いますが、
私はまた、あやこちゃんに出会いたいと思っています。