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<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>
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【箱庭屋敷の旦那様】
■序章
骨董屋のカウンターには小奇麗な箱庭が乗っていた。
その中には小さな喋る黒猫がいる。
「で。入ったくせに出られないってのは、どんな理由だい。」
店の主人、蓮はそんな黒猫に笑い聞いた。
「それは俺が知りたい! 解ってる範囲ではこの箱庭屋敷の中にいる強い思念のおかげで外に出れない様だが…」
出たいのだと猫が小さな屋敷の屋根上で鳴き喚く。
屋敷の鍵があれば中に入って出れない原因を如何にか出来るがと猫は更に続け、大きな溜息を付いて肩を落す。鍵は箱庭の横に大きなサイズのまま転がっていた。
「それは困った話しだねえ」
さして困った様子もなく蓮が肩を揺らしながら言っていると、店の扉がカチャリと開いた。
「こんにちは。お久しぶりです、蓮さん」
扉を開くのはセーラー服姿の少女、海原みなもであった。
学校の帰り、久しぶりに蓮の店へと立ち寄った。中学生にはまだまだ敷居の高い骨董屋ではあったが、ここには色々と興味深いものや綺麗で目の奪われるものと、見ているだけでも楽しい物も多かった。
「おやあんた、久しぶりだね。ちょっと面白いものがあるんだけれど見てみるかい?」
店へと入るや否や。蓮がそう手招きをしてみなもを呼ぶ。
「これなんだけれどね。この箱庭」
「はい、この箱庭が…?」
カウンター越しの蓮が、その上に乗った小さな白い箱庭を指差した。変わった様子など見受けられない箱庭であったが、この店にあるのだから、何かしらの曰くつきの品物なのだろう。と、それはみなもでも何となく読めていた。
「人を食うんだよ。まあ…今、食われてるのは猫なんだけれどね。ちょいと出れなくて困ってるんだ。鍵を持って中に入ってくれるだけでいいから、助けてやってくれないかい」
からっと笑い簡単だから、と足す蓮であったが…まともな説明もなしに突然、箱庭に入ってくれなどと言われても…すぐさま頷く事は躊躇われてしまう。
蓮の言葉を聞いてみなもはほんの少し考え首をかしげる。
「…行くのはいいですけど、もう少し詳しい事情をお聞きしたいです」
中学生ながら、みなもはしっかりとした少女である。何もかも不明なままで飛び込み、自分までもが出れなくなってしまうと言う可能性だってあるのだ。
「ああ…しっかりした娘だね、あんたは。そうさねえ…猫が言う分には、此処の屋敷の中にいる霊だか怨霊を始末すれば出れるはずだ、って話しだけれども。それ以外はお手上げらしいよ」
「はぁ。そう、ですか…」
なんと大雑把な話しだろうか。思わず躊躇った様な声で頷くみなもは、取り合えずと鞄をカウンターの下へ置いた。
「単純な可能性になりますが…この箱庭の製作者の念がこの中に留まって誰かを待っている。もしくは、何かの理由で憑いた誰かの霊、例えば子供でしょうか…そんな方の思いが寂しさを紛らわすために人を引き寄せて、外に出さない、とか」
ほんの少しの間にみなもはそんな可能性を考える。霊や怨霊と言うものが相手ならば、それを払う物が必要だ。
「蓮さん。すみませんが、水道水でいいのでペットボトルに入れて頂いてもいいですか?」
「構わないけれど、何に使うんだい。ちょっと待ってなよ」
みなもの言葉を腕組をした姿勢で聞いていた蓮であったが、唐突な申し出に些か驚いた様に頷いて奥へと水を取りに行く。そうして水を入れたボトルを二本持って蓮が戻ってくると、みなもはそれを受け取っていた。
「後もう一つの可能性として、ただ単に封印職人の方が“何か”を封印して、それの余波で引き込まれた人が出れない、って可能性もあるかもしれませんね」
受け取ったボトルの蓋を開け指先で水に触れる。なんの変化も無い様に見られたが、ボトル内の水は急激な分子融合を引き起こし、また変化に必要な新たな分子を追加され配列変更を経て聖水へ変わっていた。
人魚の力を有しているみなもには、水の分子配列を変更するくらいなら大した苦でもない。これで、怨霊を対処する物が出来上がった。
新たな可能性を口にし、自分自身でも確認をしつつ水道水を聖水へ変える作業を終えたみなもはボトルの口をしっかりとしめ、二本を抱え持った。
「それでは行ってきます」
「ああ、頼んだよ。中に喋る猫がいるから、そいつに後は色々聞いておくれ。それと、これが屋敷に入る鍵になるよ」
頷いた蓮がみなもに鍵を手渡した。
それを受け取ったみなもは、箱庭の門に触れれば中へ入れるとの蓮の言葉に従い、門へ触れて箱庭の中へと入って行った。
■箱庭の中
門を触れた瞬間、まるで引き寄せられるかの様な力で箱庭の中へと吸い込まれた。
どさっと箱庭の中に落とされると、抱えていたペットボトルが腕から転がり落ちる。
「お前、みなもか…?」
尻餅をつく様な形で落とされて、ボトルを拾う前に痛がって見せていると突然名前を呼ばれている。
「えっと…、はい。みなもですが……っ!!」
突然の事にきょろきょろと辺りを見回せば、転がったボトルを前脚で押さえる黒猫が居た。何処かでみた覚えが…と、そう思ったのだが、ふっと自分の足をみるとセーラーのスカートが大きく捲れていて、慌ててそれを直してから猫へ向き直る。
「もしかして、猫さん。藍星さんですか?」
じぃっと猫を見て、ひっかかる記憶を引っ張り出す。そういえば、いつだったか暴走する雨降らしの玉を止めろと頼まれた事のある猫だった。思い出すと同時にみなもは猫の名を呼んだ。
「ああ、あの時は世話になった。――で、また世話になるみたいだ。何度も悪いな」
前脚で押さえていたボトルをみなもの方へ押し戻した猫は、申し訳ないと頭を下げている。
「いいえ、困った時はお互い様です」
青髪を揺らして首を横へと振ったみなもは、戻ってきた聖水入りのボトルを拾い上げながら言った。
そうすれば黒猫はほっとした様に尾を一度パタっと揺らしてから、みなもの足下へとじゃれてみせていた。
「それで藍星さん。蓮さんから話しを聞いて、鍵を預かってきました。お屋敷の中に入って、私たちを閉じ込めてる原因をどうにかしないと出れないんですよね」
じゃれてきた猫がくすぐったくて、一度微笑んだがこんな事をしている場合ではないと思い次の行動へつなげるべく話しを進める。
「そうだ。だが、この中に何が居るまではわかってないんだ」
屋敷の扉を見上げた猫が面倒そうに溜息を付いた。やはり、詳しい事は屋敷の中へ入ってからでないと解らない様だ。みなもは近くの窓から内側を覗いてみたが、薄暗くてはっきりしとした様子は見れなかった。
「とりあえず…扉を開けてみますか?」
「そうだな。何があるかわからんから、気をつけろよ」
中に入れなければわからないのなら。扉を開いて進入するしかないのだ、とみなもは握り締めていた鍵でまず錠を外した。そして、気をつけろとの黒猫の言葉に頷いて緊張をして扉を開いた。
「………。何も、起こらないですね…」
もしかしたら、行き成り怨霊らしきものが飛び出てくるかもしれない。少しの覚悟と緊張を持って扉を開けたが、そんな様子は一切なかった。ちょっと拍子抜けだ。
「やっぱり、中に入らないと駄目、か。」
「その様ですね…、行きましょう」
出来るなら今此処で片付けば良かった、と言う様な黒猫の深い溜息にみなもはちょっとだけ肩を竦める。そして、気分を盛り上げるためにも。と、みなもは自ら屋敷へ向うと口にして戸口を恐る恐るではあったが、潜ったのだった。
何かがあるかもしれない、と怖いながらもみなもの心はほんの少しだけのドキドキ感も抱えていた。
戸口を潜った先は二階へと続く階段と、行き成りひらけた広い部屋と奥に小さなキッチンがあった。箱庭と言う人の手で作られた細かな屋敷のはずなのに、その作りは驚く程に精巧で丁寧だった。
「すごいですね…なんだか、このまま生活でも出来ちゃいそう」
みなもはまずそんな感想を持った。それどころか、まるで誰かが住んでいそうだ。
「ふむ…下の階には何もなさそうだな。特に変わった様子も見受けられない」
きょろきょろとみなもが周囲を観察している間に、黒猫が室内をざっと見回ってきた様で、奥から戻ってくると同時にそう報告をする。
「隠し通路なんかで、地下牢なんてあったりしないでしょうか?」
「…地下牢?」
「もしかしたら、そう言う場所に閉じ込められている何かが居るのかな、って思いまして」
これも憶測の一つであったが。そう言って見れば黒猫も一理あると頷き、暫く二人して床や壁に張り付いてトントンと叩き隠し通路の存在を探して見たが、どうやらその様な物は無さそうだった。
そうして隠し通路の探索を終えると二階へと上る事となった。
「書斎なんかを見つけられたら、何か手掛りがあるかもしれませんよね」
うーん、と悩みつつ階段を上ってみなもは言う。
「ところで、今更なんだが。こうやって一緒に付いて着てくれているが、何かあったら大丈夫か?」
みなもの一足先を上がっていた猫が立ち止まって振り向く。そして本当に今更な事を言った。
「えっ…えーっと、一応こうやって聖水も持って着ましたし、出来ればその怨霊さん…ですか? その方とお話で解決できればなぁ…と、思ってるんですが」
行き成りすぎる質問に一瞬だけ戸惑ったが、聖水の入ったボトルをグィっと猫の鼻先に持っていって返答した。
多少は…多少は、役には立てたら。嬉しいな…、なんて思っている。とはいえ、やはり何か乱暴な事になってしまったら、自分の力では対処しきれない可能性もある。それはみなもも、解っていた。
「でも、運動神経はきっと猫さん、藍星さんの方が良いと思います。ですから、もし…何かが起こったときには、藍星さん、お願いします」
持ち上げていた聖水入りボトルを下ろすとみなもは礼儀正しくペコっと頭を下げている。
「なんとかの時はお互い様だ。大丈夫だ、助けに来てくれたみなもを、危ない目にあわせる様な事はせんぞ」
大船に乗ったつもりで、とまでは猫は言わなかったが胸を張って頷き言った。その後に。
「しかし、それにしても聖水片手に怨霊と話し合い希望とは。なかなか根性が座っているな」
「それは…聖水は、保険です!」
言われて見れば、霊に取って聖水は恐ろしいこの上無いものだろう。人で例えれば、凶器片手に“穏便にお話合いをしましょうか”と言う様なものなのかも知れない。
実に面白そうに笑って言ってきた猫の言葉にみなもは、はっとして思わずボトルを身体の後ろへと隠していたのだった。
■箱庭屋敷の旦那様
二階へ上がり、一番初めの扉は鍵が掛かっていた。何度か押してみたが開く気配もなく、屋敷に入る時に使った鍵を鍵口に合わせようとしたが入らなかった。
仕方が無いので別の扉を開く。小さな屋敷の二階はそれほどの部屋数もなく、空き部屋が続いて最後の扉を開けるとその先は探したいとみなもが言っていた書斎であった。
書斎、と言っても大して立派なものでもない。狭い部屋に申し訳程度の本棚が並び、その本棚も空いている棚が殆どだった。
「素っ気無い部屋だ。古臭い机と本棚しかないのか」
部屋へと入り込んだ猫がつまらなそうな声を上げる。古臭いと言った机の上へと飛び乗った猫を見た後に、みなもは本棚へと向き合った。
小さな本棚だ。みなもの背よりも後少しだけ高い位の本棚。倒れている一冊を手に取って、みなもはパラパラと捲った。
「アルバム…?」
その中身は色あせた写真が何枚も貼り付けらていた。
写真は全てが小さな子供。中にはみなも程の年齢の子も居るだろうか。時折、初老の女性と共に写る子供も居たが、子供たちは皆一様に表情が寂しかった。
このアルバムは一体何を意味するのだろう。ページを一枚一枚捲りながら考えるみなもであったが、次に捲ったそのページは真っ白だった。
何か文字が書いてあるわけでもなく、ただ淡々と写真だけが並び張られたアルバムからは何か引っかかるものはあれど、これと言う事も解らない。
次の本を見ようとみなもはアルバムを閉じかけたが、その時ふっと首筋に嫌な気配を感じ、アルバムをバサリと手落とした。
『そこには、お嬢ちゃんの写真を貼り付けてあげようかね…』
「っ、きゃぁああ!!」
顔の真横でそんな皺枯れた声が笑いながら響いた。
みなもは咄嗟に振り向いて慌てるままに手に持っていた一本のボトルを声の方向へ投げつけたが、それに当たった音はせずにボトルは床に落ちて転がって行く。
そして次に重く低い音がドンっと響く。
「ぁ、ぅっ…」
転がるボトルの音を聞いたみなもは首を何かに締め上げられ、強い力で背後の本棚へと叩きつけられた。
『綺麗な子だねえ…どうやって迷い込んだかはしらないけれども、今日からお嬢ちゃんも私と此処で暮すんだよ』
喉が痛い、苦しい、息が出来ない。突然首を絞められたみなもの頭が自分の身に起こっている危険を知らせる。そんな中、みなもの青い瞳には初老の女が写り込む。写真の中に居た老女。
彼女が、この屋敷の主人なのか…。
「や、…め……て…」
掠れ、ただ空気が口から出ているようなその声で訴えたが、喉に絡まった老女の指は緩む事はなく更に力を増してゆく。このままでは、息が出来ずに死んでしまう。せめて、残ったこの聖水ボトルの蓋を開ける事が出来たなら…緩む力で試みるが蓋を開ける所か、段々とボトルを持つ力も消えてってしまう。
「おい、女! みなもを離せっ」
ついに残ったボトルも手から滑り落ちた。もう駄目だ、とボトルと共に意識も落としかけたが、黒猫の声が聞こえると同時に首の手が離され、みなもは本棚を伝って崩れるように座り込む。
「げほっ、ごほっ…!」
咳を繰り返し必死に肺へ息を吸い込んで呼吸を整える。生理的に流れた涙を一度拭うと、みなもは視線を持ち上げた。
「みなも! 聖水だっ、持って来てた聖水をこの怨霊に使えっ」
「え、あ…はい!!」
部屋の中にはみなもの首を絞めた老女。そして、老女と退治する黒髪の男がいた。誰、と疑問を抱くより前に聖水を、と叫ばれてみなもは慌てて転がるボトルを掴んでその蓋を開いた。そして、勢い良くペットボトルの中腹を指で押さえて中身を発射した。
『アァっ…、この、水っ…! 何を、するつもりっ…ただ、私はっ…子供達と一緒に住みたいだけなのよっ』
顔面に聖水を浴びせられた老女は、後ずさりながら両手で顔を覆う。聖水の効果が現れるのか、覆ったその手先から溶け出すように老女の体が消えてゆく。
「こ…んな風に、無理矢理人を、子供をお屋敷に引きずりこむのは…、一緒に住むだなんていいません…!」
アルバムに張られた写真の子供達は、皆この屋敷に迷い込んでこの老女に命を奪われてしまった子供達だったのだろう。そう思えば、みなもは強く叫んだ。そんな事、どんな理由があっても許せない。
『私はっ…わたしはぁっ…子供達と楽しくっ…あぁっ…!』
呪わしい声で言葉を続けていた老女だったが、その最後には耳障りな高い声を上げて消えて行った。
「……はぁ…」
老女の消えた先を暫く見詰めたみなもだったが、気が抜けたような息を落した。話し合いで解決をしようと思っていたのに、まともな会話一つも交わせなかった。望む形で消えることの出来なかった老女が、また何処かで彷徨わなければいいけれども。ほんの少しだけみなもの心は複雑だった。
「大丈夫だったか?」
「はい、助けてもらえたので、なんとか。…あの、あなたは…」
座り込むみなもに近づき、視線を合わせるように膝を折った黒髪の青年が様子を伺うように尋ねてきている。大丈夫、と一言返した後、漸く誰かとみなもは問いかけた。
「はは、藍星だ。流石に猫のままでは怨霊に馬鹿にされるだろ? ――ところで、この鍵。さっきの怨霊が落として行った。開かなかった扉の鍵だと思うが。行ってみるか?」
黒髪の正体は当然の成り行きかもしれないが黒猫であった。ほんの一瞬驚いたみなもであったが、思えば自分だって人魚へと姿を変える事が出来るのだから。それと同じものだと思えば驚く程の事でも無かった。
青年の正体を確認し、差し出された鍵については頷いた。
開かなかった扉の前へと戻ると、藍星が鍵を開けた。
続けて扉を押し開けると、内側から勢い良く白い何かが沢山飛び出て天井をすり抜けて屋敷を出て行く。時折、笑い声や「ありがとう」などの声が混じり、みなもは天井を見上げて安心するように微笑んだ。
「お屋敷に閉じ込められていた、子供さん達ですね。よかった、皆さんちゃんと天国に行けるみたいで」
気になっていたのだ。老女が一緒に住んでいると言っていた子供達が何処にいるのかと。
全ての子供の霊が屋敷から出て行き、改めてその部屋を見るとそこは可愛らしい子供部屋だった。
「さて、解決したな。屋敷を出たら俺たちも此処から外に出れるな…戻るか」
「ちょっとだけ、待ってもらっていいですか?」
もう危険が無いと悟ったのか気を抜いた藍星がそう言うが、みなもは頷かずに子供部屋へと入る。
そのままクローゼットまで小走りで向うと、衣装棚の扉を両手で引きあけている。
「わ、可愛いっ。お人形さんみたい」
ちょっとだけ、服が気になったのだ。
開いた扉の奥にはぎっしりと詰められた色とりどりのワンピース。思わず手を伸ばして扉の裏についた鏡で合わせてしまう。
「藍星さん、この色どうですか? …ちょっと、地味かな。こっちかな、たまには明るいピンクなんかも素敵かも」
「…似合いはしてるが…、そろそろ戻らないと蓮が煩いぞ…」
「もう少しだけ」
あれこれ引っ張りだしては遊んでいたが、暫くして藍星が言った様に屋敷の外から蓮が早く出て来いと怒鳴ってきた。
これは流石に不味い、と肩を竦める二人は急いで箱庭から外へと出たのだった。
■終章
「ふぅん、老女の怨霊が子供を集めて閉じ込めてたってかい」
出てきた二人は箱庭の中での事を蓮へと報告した。
老女が何故、子供達を閉じ込めるに至ったか。その経緯までは流石に謎のままであったが、箱庭に引き寄せられる理由や引き寄せられ屋敷より出れないその理由は解決したと言えるだろう。
老女が子供を集めるために箱庭に人を引き寄せ、逃げ出さないように屋敷や部屋に鍵をし、更には一度入ったら出れない様なそんな力を老女が使っていたのだ。
しかし、みなもが思うには助けて欲しいと願う閉じ込めるれた子供達の霊もまた、箱庭へと人を吸い寄せる原因になっていたのではないかと。
そんな事をちらっと口にしてみてから、みなもは外が暗くなっている事に気付き慌てて鞄を持つ。
「それでは、あたしは帰ります。少しでもお役に立てたみたいで、よかったです」
「こっちこそ、まさかみなもに助けてもらえるなんてな。有難うな、本当に助かった」
もう猫の姿に戻っていた藍星が、みなもの声に改めてカウンターの上から礼を口にする。
そんな猫の言葉に微笑んだみなもは、一度だけ白い箱庭に視線を落す。
もうそれが本当のただの箱庭になったのだ、と確認するとみなもは鞄を握りなおして店の扉を目指す。
「また遊びにおいでね、今日はありがとうよ」
そんな蓮の声に見送られ、猫を助けて一つの問題を解決したみなもは帰途へとついたのだった。
END.
■登場人物(この物語に登場した人物の一覧)■
【1252】海原 みなも(ウナバラ ミナモ)/女性/13歳/中学生
【NPC】
碧摩 蓮(ヘキマ レン)
藍星(ランシン)
■ライター通信■
海原 みなも 様
大変お久しぶりとなります、この度はご参加有難う御座いました。
お屋敷内部にいる”何か”の推測を大変詳しくして頂きましたので、どれか一つがバッチリ合うと言う形ではなく
所々みなも様の推理が当たっているかな、と言う様な形の”旦那様”となりました。
怨霊とはお話し合いを希望されていましたが、この様な結果となってしまって申し訳ございませんでした。
ほんの少しだけでも、お気に召して頂けましたら幸いです。
では、寒い日々が続きますがお風邪を召さぬ様にして下さいませ。
今回は有難う御座いました。失礼させて頂きます。
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