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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


あり得ない4号病室

 廃病院の入院病棟に、普通ありもしない病室があるという。
 4というのは病院内では忌み嫌われる。「死」を意味する。「9」もだ。
 SHIZUKUは、この情報を手に入れたときに特別スレッドをたて、
情報収集に力を注いだ。
 そして、場所と、発生タイミングとその先どうなるのかを、いくつか知る。
「よし! よし! これはとっても得ダネ! これはもう見に行かなきゃ!」
 SHIZUKUは興奮する。
「SHIZUKUちゃん、これ、まとめデータね。」
 影沼ヒミコがメディアを渡してくれる。
「サンクス。ヒミコちゃん。」
「わたしは、高峰さんに言っちゃダメって言われているので……同行できなくてごめんなさいね。」
「ううん、それは仕方ないよ。大丈夫! 大丈夫!」
 SHIZUKUはヒミコの肩をたたく。
 おもむろに携帯をだすと、一緒に行ってもらえそうな人にまとめて誘うため、メールを出す。
「さて、季節はずれの肝試しになるよ!」
 そう、すでに冬。
 極寒にさらに寒くなる。そんな探検の始まりであった。


〈騙される人と勘違いの人〉
 通学通勤に欠かせない駅前のロータリー。そこの目立つオブジェ前に、広瀬・ファイリアと高瀬・隼人が待ち合わせ場所に立っていた。
「何か面白いことあると聞いて来たのですよ〜。」
「……」
 ワクワクしているファイリアとは対照的に、固まっているのは隼人。
(「デートじゃなかったのか?!」)
 それは全くの勘違いで、あさっての方向である。
 メールをしっかり読んでないのが二人。
「おまたせー。」
 SHIZUKUが真後ろから声を、姿はニット帽子にグラサンだ。
「ひゃあ!」
「うわあ!」
 当然驚く。
「でも夜中に呼び出してどうするの? オフがとれなかったとか?」
 ファイリアが訊くと、
「あ、楽しい所って、あそこなんだ。」
 と、指差すは廃ビル。
 そこで、二人は気づいた。
 遅すぎ。
「ははは、き、肝試しなんだー。そっかー。張り切っていこう! って、どこ?」
 棒読みなのは隼人。
 メッチャ残念そうである。SHIZUKUはなぜそうなのか気づいていないが。
 ファイリアは既にがくがく震えて、泣きそうだった。
「SHIZUKUちゃーん! 肝試しって? 肝試し?!」
「そうだよー。」
 怖がるファイリアに、SHIZUKUは可愛い笑顔で答える。
「色々噂があってねぇ……。」
 聞きたくもないのに、SHIZUKUが説明する。
 様々な噂で、この廃病院に“無い病室”が出来ているという。それを見つける探検なのだ、と。発見できなくても、肝試しができ、それで楽しめるというのだ。
「ただ、あるかどうか分からないことを、自分で見つけるってラッキーじゃないかな〜、とおもうってね。呼んだの。」
「うえええん。こわいですよぉ。」
 ファイリアはもう泣いている。
「大丈夫。準備していれば良かったけどなぁ。まあ、タダの肝試しっていうならそれでいいか」
 隼人は既に頭のチャンネルを切り替えていた。
「それじゃーしゅっぱーつ!」
 SHIZUKUが意気揚々に目的地に進む。
「おーっし!」
 SHIZUKUの横に隼人がいる。
「ああ! まってよー!」
 ファイリアが半泣きで追いかけていくのであった。


〈探検〉
「まず304号室をさがそうぜ」
 隼人は提案する。
「では3階から?」
「普通はそうだけど、もしかすると噂のねじれで階数が違う。3階にありえない4号室っていうのはあるけどさ。」
 つまり、通常は部屋番号というのは階数の次に何号室となる。建物の形によっては違うが、14階建てで2階から14、1階層の部屋数が30とすれば 10階の18号というのは1018という感じになるだ。
「3階を1として5階を3と考える、5階の個人病室の方が、何か幽霊でそうじゃないか?」
 隼人は、それを「病室がある階層」だけで考えてみたのだ。
「それもそうだね。まずそっちから行ってみよう!」
 SHIZUKUはうきうきと階段を登っていく。
 ファイリアというとSHIZUKUの服の袖にしがみついてぶるぶる震えていた。
「大丈夫だって。ファイリアちゃん。」
「こわいものはこわいですぅ」
「肝試しは恐怖に打ち克つ……、ぎゃああ!」
「え? ひゃああああ!」
 隼人がいきなり叫んだことで連鎖の悲鳴。そして、だんごになって階段を転げ落ちる。
「な、なんだったの?」
 一番上に乗っかっていたSHIZUKUが言うと。
「な、なにかでた……それが背中に……」
 懐中電灯を光がその場所を照らす。
 壁に何か大きな影があった……。八本足の……。
「ま、まさか……って、蜘蛛じゃん。」
 SHIZUKUは残念そうにため息ついて、立ち上がり、目を回しているファイリアを起こした。
 蜘蛛の方も何事かと驚いて、蜘蛛の糸をよじ登って逃げていた。
「でも、ふふふふふ」
 隼人を見て、不気味な笑い。
「な、なんだよ!」
「……なんでもないー♪」
「なにか、俺とんでもないことになったのかな?」
 と、なんだかよく分からないが恐怖した。

〈4号室〉
 5階まで歩くのに、SHIZUKUが噂を話す。ファイリアは、こわいこわいと震えては、「あっちはよくないものが〜」というので、「じゃ、そっち行こう」と逆に向かってしまう。ファイリアが
「だめ〜!」
 本泣きが入っている。
 SHIZUKUに引きずられるように、彼女は進む形になった。
「ああ、いいな。ファイリアは。」
 隼人は別の方面で羨ましがっている。
 肝試しデートだったら、怖がるSHIZUKUと手をつないで……って、たぶんあり得ない。とか想像して落胆する。がんばれ、少年と、何か声がしたが、空耳だったのだろうか? 気にせず先を進むことに。
 結局ファイリアの霊感知がかなりのものだった。なんと、ポルターガイストに遭遇して、速攻で逃げる。そのときにしっかり部屋番号を確認したが、その階層に4号室はなかった。
「あーおどろいたー! おもしろかった! 流石ファイリアちゃん。GJ!」
 息を切らして親指を立てるSHIZUKUだが、
「こわいですよー!」
「あー、つかれる……」
 泣いているファイリアにさらにぜいぜい息を切らしている隼人であった。

 そして、5階。
 ライトを照らしながらあたりを見る。
「何か感じないか聞こえない?」
 ファイリアが震えながら言う。
「若干寒いね」
「コートかそうか? SHIZUKUちゃん。」
「ううん。これで大丈夫。」
 懐炉をも見直しているSHIZUKU、さりげない優しさを超スルー。
 隼人はそっちにダメージ。また、がんばれ少年と聞こえた気がした。
 地図を見る、若干形が変わっていないか? という違和感。
 改築もされるから、この地図が古いと模様事態が変わる。ただ、なにか違うと第六感が告げるのだ。
「声?」
 一室だけ月明かりが入り口から零れている。月明かりといってもこれほど強いはずがない。時間的に考えて、だ。
 病室の表札を見る。
「……50……4?」
 あった。
 4号室。
 3人そろって、その部屋をのぞき込む。
 月明かりをみている女性がたたずんでいた。
「本当に、いた……。」
「いたあああ! きゃあああ!」
 そこでファイリア絶叫。
 あわてふためいて大泣きしている、ファイリアを落ちつかせて、またその女性をみると、居ない。
「消えた?」
「流石幽霊……。」
「こわいよー。帰ろうよSHIZUKUちゃあん」

『どうかしましたか?』

 声。女性の優しくて悲しい。
「!?」
 その方向を見ると、先ほどたたずんでいた女性が後ろにいた。
「私に何かご用で?」
 と、まるで生きているように話しかける。
「あの、あなたがあり得ない病室の?」
 隼人が尋ねる。
「私は死を待ち続けています。助かる見込みがあるといわれ、結局そのオペは失敗、ずっと眠り続けていたのです。」
 と。
「だ、だめです! 死を待ち続けちゃダメです!」
 ファイリアが怒っていた。
「何があったのかは全然分かりませんけど! 死を覚悟や死を期待するのは行けないことなのです!」
 説得に当たっていた。
「いや、ファイリアちゃん。この人足ないし。幽霊だよ。 ただ、自覚がないかどうかだけだけど……。」
「それでもです!」
 ビシッとSHIZUKUのつっこみに反論している。
「死、ああ、なるほど。キミが望んでいるのは成仏か?」
 隼人は気づいた。
 4と言う数字にとらわれ、真の死の国に迎え入れられないのだ。
 SHIZUKUは考えると、この話が噂だらけというだけでも実在するのも、あれに起因しているのではと思うが、いまはどうでも良い話だ。危害がないなら怖いことも何でもない。悲しい話というだけだ。
「私はここで死を待っています……。見舞いに来てくれてありがとう」
 その女性は何かを待っている。
 ファイリアが、死んじゃダメだと説得する事も意味をなさない。
 ファイリアは説得が的はずれであることを理解したとき、彼女は余計に泣き出した。
「かわいそうです。囚われているというのが可哀想です。」
 彼女は既に幽霊、故にしかるべき所に還るべきなのだと。
 小一時間話して、3人は去っていく。
「おじゃましました〜」
「お帰りになるのなら、安全な道を教えますよ」
 と、女性は親切にしてくれた。


〈終わりに〉
 あの4号室の異空間を解放できないと隼人は肌で感じていた。
 無事に出口から出てくる。
「肝試しって言うか可哀想な人に会いに行った感じだなぁ。」
「実際あるからレポートは出来るし、ありがとね!」
「もう、SHIZUKUちゃん! あのお姉さんをどうにかするとか考えないの?」
「考えているって。大丈夫。心配しないで。」
 と、SHIZUKUは言う。
「メール送信、と。皆さんお疲れ様!」
 と、朝日に向かってかけていくSHIZUKU。
「あいかわらずなんだから……。」
 引っかき回される二人が呆然と立っていた。


 あのあと、4号室がどうなったと、SHIZUKUに尋ねると、問題なく解決したという。
「どうやって?」
「ある先輩が格好いい人がすごい腕でね。そのひとに頼んだの。」
「俺がやりたかったその役。」
 隼人は項垂れた。
「込み入ったことだったから、ごめんね。」
 SHIZUKUが手を合わせて、自分より背の低い高校生に謝る。
「何とかなって良かったです。でもSHIZUKUちゃん……。」
「何?」
「もう、全部はしょって誘わないでよぉ! 怖いものは嫌だって言ってるのにー!」
「肝試しって楽しいじゃない。」
「ちがうよー!」
 じたばたしてわめくファイリア。
 良いおもちゃ状態である。


 ただ、隼人には怖いことがある、女性の声でも男性の声でもない声が、たまに聞こえる。
「がんばれ、少年」
 それは、今もずっと。
「俺、何かに憑かれている!?」
 霊視しても不明だった。
 謎だけが残る……。


 あの後、あの病院がどうなったかは……特別スレッドもなくなり、噂は噂のまま都市伝説となった。

END


■登場人物
【6029 広瀬・ファイリア 17 女 家事手伝い(トラブルメーカー)】
【7213 高瀬・隼人 16 男 高校生】


■ライター通信
 滝照です。
 あり得ない4号病室に参加して頂きありがとうございます。

 結局、謎のままに終わりました。真実としても、SHIZUKUは色々考えているようです。
 あれから病院がどうなったのかは、ご想像にお任せするかたちになります。行動などの結果でホラーというより、悲しい話になりました。
 
 高瀬・隼人さん、初参加ありがとうございまた。

 では、どこか別のお話でお会いしましょう。

滝照直樹
20071120