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<東京怪談ウェブゲーム あやかし荘>


新しい入居者が来るかも!?
裏山にそびえ立つ巨大アパート、「あやかし荘」
住んでいる人数が少ないため、まだまだ空き部屋はある。

それでもいい。
皆仲良くやれているのだから……。


ある日、高級車で乗り付けてきた、天王寺・綾が車から降りた。
「おーい。恵美ぃ。おるかー」

因幡・恵美(いなば・めぐみ)。このアパートの管理人である。
「いるいる。上がってきなよ。綾」

そうしてリビングで話をすることにした。
綾は勢いよくこうしゃべった。

「あのな、ここに入居したい! っていう人がみつかってん」
「ほんと!?」
「でな、後日見学に来るらしいから、それまでに奴らを……」
「奴らってボクのことかな?」

がばっと綾に抱きついてきたのは、きつねのしっぽが特徴の柚葉。

「やだよぅ。部屋に閉じ込めるとかそういうことはやだよぅ」
「嬉璃(きり)はいつも同じ部屋から離れんからいいけどな」

といつの間にか、曰く付きな方たちがここに揃っていた。
柚葉、嬉璃、歌姫。みんな不安そうな顔をしている。

「け、見学の時だけね。ちょっとおとなしくしてて欲しいなーと」

恵美は必至に説得をした。
その結果、あかずの間のフリをした部屋に全員集合してもらい、
なんとかしのぐことにした。

さて、見学会はうまくいくのだろうか?


一方、藤田・あやこの経営するネットカフェでは……

ネットカフェ難民と言えば聞こえはいいが、つまりホームレスな人たちで
あふれかえっていた。そして何故か浮幽霊までゆらゆらしている。

あやこは店員に聞いた。
「いつからこんな状態になったのよ」

「テレビでネットカフェ難民の特集が組まれたときには時すでに遅しでした」

確かにネカフェは便利だ。カップメンにそそぐお湯が用意してあって、
ソフトドリンクは飲み放題、毛布も貸出している。
そして何といってもシャワー室の利用が自由だ。

中に入っていくとインターネットができる画面があり、
テレビ機能のある場所もある。マンガももちろん読み放題だ。

「おかげでビジネスマンとかマンガ、インターネット目的で来る人は激減ですよ」

あやこは思った。このお洒落なデザインをデザイン会社に要求し、
話し合いに話し合いにかけて作りだしたというのに〜〜〜。

鉛筆一本折りたいくらいだわ。

でもあやこは考えた。つまりホームレスが減ればいいわけね。
あやこはお店の電話である場所――あやかし荘――に電話をした。

「というわけで、とりあえず見学だけでもさせてくれないかしら?」
「でもウチは曰く付きのアパートよ。それでもいいの?」
「だーいじょーぶよ。住めば都よ」

そしてあやこはネカフェの霊を手招きした。

「いらっしゃい。お仕事よ」

あやかし荘の景観は良かった。山林の涼しさや静けさが感じられる。

「いらっしゃい。歓迎するわ。私は管理人の因幡恵美よ」
「こちらこそ。藤田あやこです」
「今も何人か住んでるけど、気にしないで存分に見学していってください」

付け加えるなら石狩の間のドアが開かないでくれることを祈る恵美だった。

ぎしりと鳴らす床を歩いていると、朝日の間というところに
あやこの目が光った。

「なんか素敵な予感がするわ。よし! 明日から私ここに仮住まいするわ」

えぇーーーーーー!と言いたくなったのは恵美だった。

「あの……それは困ります」
「困るわけないでしょう。住人が増えるんだから」

そこで、ドタドタドタという足音が聞こえ、恵美はいそいで石狩の間に行ったら
ものの見事にからっぽであった。

「その子が見学者?きれいなお姉さんだね」
「まあ何日もつかじゃのう」
「……」

しかしあやこにとっては別に妖怪を怖がるようなものではなかった。

「ありがとねー。じゃ、見学してくる」

そうしてあやこは「朝日の間」に仮住まいすることにした。

トイレは共同。お風呂なし。

仏壇が掲げてあって、とりあえずお線香を立てるあやこ。
すると煙の中にパソコンの画面が出てきた。
下の引き出しを開けると何故かキーボードとマウスが入れられていた。
なんだ、パソコンも使えるのね、とあやこはお得感を感じてしまった。

なんだか「朝日の間」の照明が暗いし、肌寒いので、人魂を浮かべて灯りにした。
すると生暖かい風が吹き始めたので、

「うん、エアコンよし!」
と頷く。

次に部屋の隅に柳が生えた。その下にしとしと降る雨があった。

「これこそ柳のシャワーじゃない!」

とあやこは服を脱ぎ、後ろの羽根をパタパタさせて、シャワーを浴びだした。

「あやこちゃーん。お風呂なんだけどね……」

と恵美が来たら、一瞬失神しそうになりながらも恵美はこう言った。

「ウチはね、無料の天然温泉があるのよ。男性のは間欠泉だけど」
「んー大丈夫。気持ちいいし、風で髪があっという間に乾くのよ」

そうやって風で髪を乾かすと柳と水は消えた。

「そんな……この屋敷もまだ不思議が沢山あるのね……管理人として初めて知ったわ」

そうやって考え込みながら、恵美は去っていった。

「さーーーって寝るか。晩御飯欲しいけど持ってくるの忘れたし、もういいや」

そうしてあやこは布団を敷き、人魂を窓の近くに移動させて眠ることにした。

……

ピチピチ

……

ピチピチ

「あーーーーーーーもううるさくって眠れない!」

人魂を再び天井に戻し、あやこは布団をひっぺがえした。
そして畳に耳をあてた。

ピチピチ

ピチピチ

あやこはおもいきって畳をあげると、イワシがびっしり張り付いていた。

「これね! イワシが動く音だったのね。妖怪畳イワシだわ〜」

あやこは「朝日の間」を出て。共同キッチンへ向かった。
そこでお皿と竹ぐしを少し拝借すると、また「朝日の間」へと戻って行った。

「うふふふふ。このイワシを人魂であぶるとおいしそうなのよね」

人魂は竹ぐしで通されたイワシを少しずつ焼いていった。
じゅわ〜と焼けてくるイワシの匂いがなんともいえぬ。
表裏焼けたなと思うと、あやこは焼きイワシをぱくっと食べた。
小骨をかりかり噛んでこわしていくうちに、何ともいえない素朴な味がした。

そうやってイワシを食べていると、仏壇の鐘がチーンと鳴って着信した。
そうか。あの鐘は幽霊電話だったのか。なにか会話をしている。
聞いてみよう。

「うんー引っ越したのーうち来るー?」
「うん。来る来るー」

と何やら楽しそうな会話をしている。
しばらくすると幽霊がお供え物のスルメとビールを持ってきた。
やがてラップ音をパチンと鳴らし、あやこと幽霊で大宴会。
あやこはビールを口に含み、

「やっぱシャワー浴びた後のビールは最高だわ!」

そうして、あやこはVサイン。
仮住まいはあっという間に終わったのであった。


そして難民ぞろいのネカフェへと足を運んだあやこは、
自動ドアが開いた後、こんなことを口にした。

「え〜〜ネット難民の諸君、いえホームレスたちよ。
 格安で泊まれて、生活費まで格安で済むアパートがあるのなら
 住んでみたいと思わないのかね」

……無視。

「だって今の生活に満足してるしなぁ」
「どうせ田舎だろ?都会の方が気楽だしきれいだよ」

あやこはブチ切れた。

「住所がないってどういうことかわかる?
 履歴書の住所の欄を白紙にしなくてはいけないことなのよ!
 そんな調子でまともな職業に就けると思ったら大間違いよ!」

その演説が心に響いたのか、何人か、「行こうかな」「俺も」

と次々とあやこについてくる人が増えてきた。
やがて大名行列のようになり「あやかし荘」へと向かって行った。

そこでうまくいった! と思ったら大間違いだった。

「畳のイワシって何だよ〜」
「うるさい!イワシは身体にいいのよ」

「柳のシャワーって畳は大丈夫なのか?」
「一通り終わったら水気が引くし、シャワーは温かいわよ」

「この線香パソコン見づらいよ」
「どんだけ使っても壊れないパソコンなのよ。我慢しなさい」

「幽霊怖いよ〜」
「そんなの克服しなさい!全部が悪霊じゃないのよ」

文句が出るたびにビシビシ叱るあやこ。
そんな姿を影から恵美と綾は見ていた。

「あやこちゃんには負けるなあ、恵美」
「そうだね。これで入居者が増えるといいんだけど」

何人かのネカフェ難民にはあやこは無理やり入居届けを
書かせようとしている。

禁断のワールドへようこそ。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【7061 / 藤田・あやこ / 女性 / 24歳 / IO2オカルティックサイエンティスト】

【NPC / 因幡・恵美(いなば・めぐみ) / 女性 / 21歳 / あやかし荘の管理人】
【NPC / 天王寺・綾 / 女性 / 19歳 / 女子大生】
【NPC / 嬉璃(きり・ー) / 女性 / 999歳 / 座敷わらし】
【NPC / 柚葉・−(ゆずは・ー) / 女性 / 14歳 / 子供の妖狐】
【NPC / 歌姫・−(うたひめ・ー) / 女性 / 23歳 / 妖しの者・歌姫】

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■         ライター通信          ■
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いつもありがとうございます。真咲翼です。
前回間違いでご迷惑をかけたというのに、再び発注してくれたことに深い喜びを感じます。
それにしても相変わらずあやこちゃんは度胸がすわっていますね。さすが大物。
またぶっ飛んだあやこちゃんが見てみたいです。それでは。