コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


Regret―心残り―


 その日、草間興信所おなじみの殺人的に喧しいブザーを鳴らしたのは、どうという特徴のない平凡な男子高校生だった。
 零に案内されソファに腰を下ろした彼は『川瀬誠』と名乗り、そして『依頼』について話し出す。
「探して欲しい人が居るんです」
 人探し自体は興信所に持ち込まれる依頼としては真っ当なものである。怪奇がらみではないのか、と草間武彦はひそかに胸を撫で下ろした。
「探して欲しいのは俺と同じ学校の生徒で、『ヒカル』っていう名前の人物なんですが……」
 その言葉を聞いて、草間は眉根を寄せる。随分中途半端な情報だ。というより――。
「同じ学校なら、わざわざこんな所に依頼することはないんじゃないか?」
 名前も分かっているのだし、普通に学校内を探し回ればいいのではないか。
 そう考えての草間の科白に、誠は困ったように笑って、答えた。
「ええ、そうなんですけど……何せ俺、自分の学校が分からないんですよ」
「…………は?」
 物凄く間抜けな声が草間から漏れた。というのも、誠は明らかに制服姿だったからだ。
「いや、それ、制服じゃないのか?」
「あ、俺が着てるのって制服なんですか? 自分の体も見えないから、知りませんでした」
「…………………はぁ?」
「…もしかして気づいてませんでした? 俺、多分『幽霊』ってやつなんですけど」
 草間は今度こそ、絶句した。
 とりあえず話を聞いてみたところ、彼は気づいたら幽霊になってその辺を彷徨っていたらしい。
 覚えているのは自分の名前と、自分が高校生だったと言うことだけ。
 どうして自分が死んだのか、事故にしろそれ以外にしろ何故幽霊としてこの世にとどまっているのかもわからない。
 仕方なくうろうろしているうちに、「『ヒカル』に会わないといけない」ことを思い出したらしい。その思いだけが妙に鮮明に残っていたので、それが心残りなんじゃないかと考えたそうだ。
 しかし『ヒカル』が同じ学校の生徒だったことは覚えていたものの、そもそも自分がどこの学校だったかも分からないので自力で探すことも叶わず、結局風の噂で知った草間興信所を訪ねてみることにした、という話だった。
(結局また、怪奇絡みなのか……)
 おおよその事情を聞いた草間は、心中で深く深く溜息を吐いたのだった。

◆ ◇ ◆

「まずは川瀬くんの通っていた学校の特定からね。それがわからないと色々調べるのに手間がかかっちゃうし」
 一通り誠に話を聞いた後、シュライン・エマはそう言った。草間もそれに同意する。
「そうだな。どうも近隣の学校の制服じゃないように思うが…」
 考えるように眉間に皺を寄せる草間に、シュラインは最も確実と思われる手段を提案する。
「ほら、雫ちゃんとか知り合いの学生さん達に制服の特徴伝えて心当たりがないか聞いてみましょ? こういうのに詳しいのはやっぱり現役の子達だから」
 シュラインの言葉に草間は一瞬考え、「確かにな」と納得したのだった。
 そして現役学生の知人に手分けして連絡をとり訊ねた結果、『恐らくここだろう』という学校が判明した。
 興信所からは少々離れた郊外とも呼べる場所にある、そこそこに古い歴史があるのと、敷地内に古墳があるということ以外には何ら特徴のない高校。
 それが制服から割り出された『川瀬誠』の母校だった。
 とりあえず外観の写真だけ見せてみれば、誠は「何となく見覚えある…気がしなくもないです」と言った。
はっきりしない返答ではあるが、その高校について調べた際に制服の写真も入手し見比べたので、ほぼ間違いないだろう。
 学校が判明し『ヒカル』なる人物へと少しばかり近づいたものの、まだまだ調べることはある。
「川瀬くんの死亡時期が問題よね……。あんまり時間が経っちゃってると、卒業生調査の可能性もあるし」
「そうだとしたらえらく骨が折れそうだな。…とりあえず本人に聞いてみるか」
 ということで、その辺りをふらふら浮遊していた誠を呼び出して尋ねてみる。
「幽霊として意識が目覚めたのがいつか、大体でいいからわからないかしら。街頭テレビとか街の雰囲気とか、覚えていたら教えてもらえる? それと、意識が覚めた場所も。何か関わりがあるかもしれないし…」
「意識が覚めたのは……大体半年くらい前かと。最初の頃はかなり頭がぼんやりしてたので正確にはわかりませんけど…。場所はよく憶えてないです。ああ、でもビルが乱立してる場所ではなかった気がします。大きい建物が一つどーんと建ってるみたいな…いや、ちゃんと都会だった気はしますが」
 考え考え言う誠。場所に関してはほとんど手がかりにならなかったが、意識が覚めた時期が分かっただけでもかなりの収穫だ。
 早速その頃の地元新聞のお悔やみ欄などを当たってみる。幽霊として意識が覚醒した頃を死亡時期と考えるのは安直過ぎるかもしれないが、調べておくにこしたことはない。
 大体プラスマイナス一ヶ月の誤差を考えて、半年前あたりの新聞を調べる。事故記事の有無の確認もしつつ、黙々と作業を続けてどれほど経っただろうか。
 知っている文字の並び――『川瀬誠』という名前が目に入ってきた。
「……っ、あったわ!」
「こっちもだ!」
 思わず声を上げれば、同時に作業をしていた草間も何かを見つけたらしい。
 二人はお互いに見つけたものを見せ合う。
「飲酒運転のトラックに轢かれて重体…」
 草間が見つけたのは飲酒運転のトラックに男子高校生がはねられたという記事。その男子高校生が『川瀬誠』だった。ちょうどシュラインがお悔やみ欄に誠の名を見つけた記事の一週間前の出来事らしい。
 つまり、誠は交通事故で意識不明の重体になり、それから約一週間後に死亡したという事になる。
 そして誠の享年も判明した。17歳、とあるので高校二年か三年だろう。
 ここまで判明すれば、あとはもう聞き込みに出てもいいだろう。草間との相談の結果、下校時に絞って聞き込みをすることになった。
 ついに自分の通っていた学校に行くことになったと聞いて、誠は何故か嬉しさと不安が混ざり合ったような微妙な顔をした。
 そんな彼に、シュラインは言うべきか言わないでいるべきか少々悩んだ挙句に告げる。
「まだ、詳しいことは分からないけれど……『ヒカル』さんとの再会、気持ちのいい内容かは分からないから、覚悟だけはしておいたほうがいいと思うわ」
「そう、……ですよね。会わなきゃって気持ちだけあったから理由とか考えてなかったですけど、やっぱり覚悟はしとくべきですよね」
 そう言ってへにゃっと力なく笑う誠。
 興信所を出る間際、誠に聞こえないようにシュラインは草間に囁く。
「川瀬くんの『会いたい』理由……余計に辛くなるものでなければいいわね…」
 草間はただ、無言で瞳を伏せただけだった。

◆ ◇ ◆

「…っれ?」
「どうしたの?」
 もうすぐで学校に着くというところになって、シュラインと草間の後ろをふわふわついてきていた誠が止まって、間抜けな声を漏らした。
 気付いたシュラインがどうしたのかと訊ねれば、誠はまるで自分の前に壁があるかのように宙をぺたぺたと触る。
「なんか……透明な壁があるような」
「壁?」
 試しに誠が触っているらしい壁があるあたりに手をやってみるが、草間にもシュラインにも何も触れなかった。
「一体何だ? 霊的なものにだけ反応する結界みたいなものか?」
 草間の言葉に、シュラインはふと思いだす。
「そういえば、学校の敷地内に古墳があるんだったわね。もしかして、それが関係あったりするのかしら」
 死者の眠る場所である古墳。現代よりも呪術的なものが公に信じられていた時代に作られたものだ、なんらかの形で結界のようなものが張られていてもおかしくない。
 詳細は分からないが、とにかく誠はここから先学校に近づけないらしい。
「うーん…。俺、これ以上行けないみたいなんで、お二人だけで行って来てください。お二人だけにお任せするのはちょっと心苦しいですけど、この壁みたいなの通り抜けられなさそうですし…」
「そうね。じゃあ、ここで待っていてもらえる?」
 シュラインが少しだけ眉尻を下げて問えば、誠は頷いた。
 そして草間とシュラインのみで件の学校へと歩く。そうしないうちに学校の門扉が見えてきた。
 ちらほらと下校する生徒達が視界に入る。シュラインと草間はざっと辺りを見た。
 聞き込みの対象は、主に男子生徒にするつもりだ。誠は男だし、やはり男子生徒に聞いたほうが情報が得られる可能性が高い。
 この学校の制服はブレザーで、ネクタイの色で学年が分かる。なので二年と三年に絞って声をかけることにする。
 さて、誰に声をかけようかと視線をめぐらせたその先、ちょうど校門から出てきた男子生徒の集団に目を留めた。
 四人連れで、ネクタイから判断すると三年生だろう。見た目からして活発そうな男子生徒が、落ち着いた雰囲気の男子生徒に向かってきゃんきゃん騒いでいる。
 なんとなく気になったので、その集団の会話を少し聞いてみることにするシュライン。そんなシュラインの様子に気付いたらしい草間も、その集団に眼を向けた。
「何で今日部活ねーんだよっ!」
「うっせー。お前がミーティング来てなかったから知らなかっただけだろ」
「だったら教えてくれたっていいじゃねえか!」
「ハッ、何で俺が」
「お前なぁ!!」
「まーまー落ち着けよ。せっかくだしどっかで食べてこうぜ。部活ももうちょっとで引退だし、英気を養うってことでさ」
 一段と強い語調で食って掛かろうとした少年を、集団のまとめ役らしい男子生徒が宥めて話題転換する。それに残りの1人が同意した。
「お、いいね。っつーか、そういやもう引退かー」
「結構感慨深いもんがあるな。……誠と一緒に引退したかったな」
 聞き覚えのある人名に草間とシュラインは顔を見合わせて、さらにの集団の会話を聞くことにする。
「しゃーねーじゃん、あいつだって好きで事故に遭ったわけじゃねーだろうしさ。だからあいつの分も、ぱーっと騒いでやろうぜ」
「騒いでどうするんだよ……せめて有終の美を飾ろうって言え」
「ユウシュウノビって何だよ?」
「……お前、よく高校うかったな」
 『事故』に遭ったという『マコト』。もしかして、とシュラインは思う。草間も同じらしく、軽く頷かれた。
 それに頷き返し、シュラインは件の集団へと近づき、そして口を開いた。
「こんにちは。あの、突然だけれど、あなた達は川瀬くんのご友人かしら」
 シュラインが声をかけると、学ラン姿の少年達は振り向いた。シュラインと草間を確認した瞳に困惑の色が混じる。
 少年達は目配せしあい、そして落ち着いた雰囲気の男子生徒がシュラインたちに向き直った。
「……どちらさまですか?」
「ごめんなさい、突然。私はシュライン・エマ。ここの学校に通っていたっていう『川瀬誠』くんの知り合いなのだけれど…」
 本来は知り合いとは呼べないかもしれないが、まさか幽霊になった川瀬誠に人探しと頼まれた興信所の者です、と言うわけにもいかない。
 いきなりそんなことを言っても信じてもらえるかどうかかなり微妙だ。
「そちらは?」
 草間を見て訊ねる男子生徒に、「……草間武彦だ」と簡潔に告げる草間。
「男女の二人組……『誠の知り合い』ね……」
「サクマが言ってたのってこの人たちのことじゃねーの?」
「本当に来たな。ってかサクマまだ来ねえの?」
「まあとにかくさ、話聞いてみようぜ」
 ぼそぼそとシュライン達に聞こえないように言葉を交わす男子生徒たち。
 しかし優れた聴覚を持つシュラインにはその会話内容が聞こえていた。
(『サクマ』……? 誰かしら?)
 どうやら誠の知り合いという男女の二人組が来ると事前に彼らに言っていたらしいが――一体どこの誰が。生前の誠と自分達は関わりがなかったのだから、予想などできるはずもないのだけれど。
 また、少年達がシュラインたちを見る。今度はまとめ役らしい男子学生が口を開いた。
「ええと、誠――『川瀬誠』の知り合いなんですよね? どういうご用件ですか?」
「川瀬くんが会いたがっていた人がこの学校にいるって聞いたから、その人に会いに来たの。『ヒカル』って名前の子らしいんだけれど…。心当たりとかないかしら」
 人好きのする笑みを浮かべてシュラインが問えば、少年達は互いに顔を見合わせた。
「誠が? 『ヒカル』ねぇ…おい、聞いたことあるか?」
「俺はねぇけど」
「あいつ彼女いなかったよな」
「友達にいたっけか?」
 ぼそぼそと言葉を交わし、首を傾げる少年達。どうやら心当たりはないらしい。内心少々落胆するシュライン達だったが、それまでずっと黙っていた小柄な男子生徒が、不意に言葉を零した。
「………あ、もしかして」
「何か心当たりでも?」
「いや、心当たりってか、ほら、誠、週に一回は部活に来ないことあったじゃん」
「ああ、そういや…部長が何も言わないから俺らも気にしてなかったけど」
「あれって、最初は母親の見舞いだったらしいけど、一年の終わりに亡くなっただろ? でもそのあとも部活休むから、俺一回聞いたことがあるんだよ」
「理由、なんだったんだ?」
「『藤堂さんに会いに行くんだ』ってさ。うちのクラスの、なんか病気で休学中の『藤堂さん』のことらしかったけど、確か『藤堂さん』って下の名前『光』じゃなかったか?」
「そうだっけか? でもよ、確か藤堂さんってこないだ――」
 言いかけて、何故か口篭る。シュラインと草間が少々怪訝そうに見ると、別の少年が眉根を寄せて続けた。
「確か、一ヶ月前くらいに亡くなったはず、です。……もちろん、誠が会いたがってたという『ヒカル』が藤堂さんだという証拠はないですが」
「………いや、藤堂のことだろう」
 唐突に、その場の誰のものでもない声がした。
「え?」
 思わず声のした方を向いたシュライン達の目に、草間を越す長身の人物が映る。
 その人物を目にした少年達の瞳に、驚きと安心が広がった。
「うわっ、サクマ!」
「お前物音立てずに近づいてくるのやめろっていっつも言ってんだろ!?」
「なかなか来ないからどうしたのかと思った」
「………すまない」
 きっちりと角度をつけて礼をするサクマと呼ばれた少年。
 彼はシュラインと草間に向き直ると、口を開いた。
「『ヒカル』を探しに来たんだろう? どういう経緯かはよく分からないが、誠の依頼で」
「どうして…」
 何故それを知っているのかと疑問を口にしようとしたシュラインに、サクマは淡々と告げる。
「ああ、何故知っているのかということだろう。特に気にせずとも良いとは思うが、俺は少々特殊で……分かり易く言えば、予知能力のようなものを持っているのだ。――しかし今はそれはどうでもいい。ともかく、貴方達は『ヒカル』を探しているのだろう? 誠が会いたがっている『ヒカル』に。先ほども言ったが、その『ヒカル』は『藤堂光』のことだ。先月他界したが」
 そこまで彼が言ったところで、耐えかねたように少年達の中でも活発そうな男子学生が声をあげた。
「だから、なんでその『誠が会いたがってたヒカル』が藤堂さんの事だって分かるんだよっ!」
 その疑問にもサクマは静かに答える。
「藤堂は俺の従妹だ。誠と藤堂が仲良かったのも知っている」
「おまっ、今まで何も言わなかったじゃねーか!」
「聞かれなかったしな。それに、誠からできれば内緒にしておいてくれと言われていた」
「何でだ?」
「『秘密』だったらしい。藤堂に会うことが、というより、共通の趣味が」
「趣味って?」
「『絵本作り』だ」
「――――――…は?」
 間の抜けた声が少年達から漏れた。
「その話はまた後で。それより、貴方達にこれを」
 そう言って、サクマはシュラインと草間に一冊の本を差し出した。
 それは見るからに手作りの、………絵本だった。
「それを誠に渡してやってくれ。藤堂に頼まれた」
「これを?」
 訊ねれば、サクマは頷いた。
「『約束』だったらしいが、詳しくは知らない。渡してもらうだけでいい」
 半ば押し付けるようにシュラインの手にそれを渡すと、サクマはくるりと踵を返した。よく状況がつかめていないらしい少年達に視線を遣り、「行かないのか」と言葉を落とした。
「い、行く行く!」
「お前がもう用がないってなら別にいいけど」
「えーと、そういうことらしいんで」
「それじゃ、失礼します」
 そしてシュライン達が止める間もなく、彼らは連れ立って去って行った。
 シュラインと草間は顔を見合わせて、そしてどちらともなく小さく溜息を吐いた。
 なんだか『サクマ』という男子生徒のペースにかなり呑まれたような気はするが、『ヒカル』なる人物についても多少分かった。彼らの言を信じるなら本人に会うことは叶わないようだが――。
(代わりになるかは分からないけれど――これもあるし)
 手の中の絵本を見ながら思う。なんとなく、根拠はないけれど、誠の『心残り』はこの絵本に関することなのだろうと、そう思った。

◆ ◇ ◆

 誠が待つ場所に戻ったシュラインと草間は、少年達と会って分かったことを伝える。
 探していた『ヒカル』が亡くなっているらしいこと、『ヒカル』と誠の関係性、そして―――。
「これを……預かったわ。あなたに渡してくれって。『約束』――だったらしいのだけど…」
 シュラインが預かった絵本を差し出せば、誠は僅かに目を見開き――そして、ぽつりと言葉を漏らした。
「ああ、そっか。『約束』、してたんだっけ」
 独り言のように、誠は呟く。
「いつか一緒に絵本作ろうねって、『約束』して―――いつもみたいに光の見舞いに行った帰りに、俺…トラックにはねられたんだった。だから、幽霊になっちゃったのか。病院の前で目が覚めたけど、でも何も覚えてなくて、約束も守れなかった。……けど、光はちゃんと、『約束』守ってくれたんだ」
 今にも泣きそうに歪んだ顔で、それでも誠は笑った。
「ちゃんと俺の絵で、作ってくれたんだな……」
 ふわり、と絵本が浮かんだ。ぱらぱらとページがめくれ、そして最後のページを開いて、止まった。
 そのページに目を留めて、誠が笑った。とても、嬉しそうな笑顔だった。
「シュラインさん、草間さん。有難うございました。……『光』に、会わせてくれて」
 少しずつ、誠の体が消えていく。空気に、景色に溶けるように。
「―――…さようなら」
 最後に淡く煌めいて、今度こそ誠は消えた。
 残されたのは、シュラインと草間と、そして再び手の中に降りてきた一冊の絵本。
 開かれたページには、光が書いたのだろう誠へのメッセージが、あった。
 絵本を優しく閉じたシュラインは、草間を見た。
「………帰るか」
「―――…そうね」
 草間の言葉に頷いて、そしてシュライン達は歩き出す。
 肩を並べ、―――同じ歩調で、共に。



□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【0086/シュライン・エマ(しゅらいん・えま)/女性/26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】

□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
 こんにちは、シュライン様。ライターの遊月です。
 「Regret―心残り―」にご参加くださりありがとうございました。毎度ありがとうございます…!だというのにまたも遅くなりまして申し訳なく…。

 切ないけれど暖かい系のお話しにしようと最初は考えていたのですが、何とも言えない感じのお話しになってしまったような…。不透明なところもちょこちょこありますが、その辺りはご想像にお任せということで。
 少しでもお気に召していただければ幸いです。

 ご満足いただける作品に仕上がっているとよいのですが…。
 リテイクその他はご遠慮なく。
 それでは、本当にありがとうございました。