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<東京怪談・PCゲームノベル>


Innocence / 01 / スカウト

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OPENING

異界の辺境、廃墟が並ぶ不気味な地域。
魔物の出現が頻繁な、物騒地。
異界の住人でも、好き好んで寄り付く者はいないであろう、この地に存在する、
美しき白亜の館。
その館から、今。
一人の少年が、姿を現した。
「はぁ〜。ひっさしぶりだよな。スカウト!腕が鳴るぜ〜」
伸びをしながら、サクサクと歩く、何とも楽しそうな表情の少年。
そんな少年の後ろを、小柄な少女が、ゆっくりと付いて行く。
少女は、少年の背中に忠告を突き刺した。
「…誰でも良いわけじゃないんだからね」
「わ〜かってるよ」
ケラケラと笑いつつ返す少年。
無邪気な少年に、少女は溜息を落とす。

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「おつかれ、ミリー」
「うん…おつかれさま…」
サーカスの公演を終え、後片付けをする団員達。
今日も大盛況で、団員達は皆、満足な汗を額に滲ませている。
(お片付けが終わるまでが…公演…)
心の中で、サーカス入団時に団長に言われた言葉を復唱しながら、
重い荷物を一生懸命運ぶミリーシャ。
細く小柄な体躯からは想像できぬほど、彼女は力持ちだ。
ショーで使用した荷物を所定の位置に戻し終え、
フゥと小さく息を吐いた時だった。
見知らぬ少年が、ジッとこちらを見ている。
年齢は、ミリーシャと同じくらいか、少し上といったところか。
(…?)
首を傾げて少年を見やるミリーシャ。
すると、少年はテクテクとミリーシャに近寄りながら、
屈託のない笑顔を浮かべて言った。
「お疲れさま!凄かったよ。楽しかった」
「うん…ありがとう…?」
見知らぬ少年に声を掛けられて、はじめはキョトンとしていたミリーシャだったが、
少年が懐から銃を取り出すのを見た瞬間、
パチクリと二回ほど瞬きをして、辺りを見回した。
ミリーシャの周りには、片付けをしている団員が数名いる。
危ない。そう判断したミリーシャは、
団員達に気付かれぬよう足早に移動し、
少年に場所を変えましょうという意志を示した。
ミリーシャの意志・提案を理解した少年は、
ニコニコと微笑みながら、銃を一旦懐へ戻してミリーシャについていく。

サーカスキャンプから適度に離れた位置にある、人気のない公園。
ミリーシャはピタリと足を止めて、少年に疑問の表情を浮かべた。
何の用?どうして、銃を抜くの?
そう伝えるミリーシャの表情に、少年は不思議そうな顔をして言う。
「喋るの苦手なの?」
ミリーシャは一呼吸置いて、
「うん…少し…」
小さな声で、そう返した。
「ふぅん。そっかぁ」
少年はガシガシと頭を掻きながら、再び銃を取り出す少年。
むぅ、とした表情を浮かべるミリーシャに、少年は一言。
「テストっ」
無邪気な笑みを浮かべつつ そう言って、突然発砲した。
ボッ―
「…!?」
飛んでくるのは銃弾ではなく、紅い炎だ。
少年の扱う銃が、普通の銃ではないと理解したミリーシャは、
常人離れした脚力で、一発目の攻撃を見事に避わす。
相手が、どういうタイプの攻撃をしてくるのか。
それを見抜く準備をしようとするミリーシャ。
けれど、少年は、そんな暇を与えない。
「んー!イイ動き!」
満足気に微笑んで、銃を乱射していく。
少年が称えるように、ミリーシャの動きは見事なものだ。
飛んでくる炎を、全て避けている。
それだけではない。
回避しながら、チラチラと少年を見やって、隙を伺っている。
隙を伺われていることに気付かないほど、少年は間抜けじゃない。
背筋に走るゾクゾクとした感覚。
それは、少年が現状を楽しんでいる証拠。
余裕を浮かべる少年に、むぅ、と不愉快そうな表情のミリーシャ。
隙は、見当たらない。
(闘い…慣れてるのね…どうしようかな…)
平行線を辿る一方的な攻めの中、思案するミリーシャ。
(あ…)
ふっ、とミリーシャが、とあることに気付く。
少年が扱う一風変わった銃について。
飛んでくるのは、銃弾ではなく炎。
おそらく、自身の能力を銃に込めて放っているのだろう。
魔法の類に関しては、あまり詳しくないけれど…。
『魔法ってのはなぁ、自身の精神力を消費して放つものなんだぁよ』
いつかの打ち上げで、酔った団長が言っていた。
それを思い出したミリーシャは、炎を回避しつつ少しずつ少年に近寄っていく。
(もしも…あれが本当なら…)
じわりじわりと近づいてくるミリーシャに、少年はニッと笑う。
「おっ。いよいよ、反撃開始か?」
一方的な攻撃に、少々飽きてきていた少年は、
ミリーシャの反撃を心待ちにしていた。
けれど…ミリーシャの目的は反撃ではない。
相手の表情が、はっきりと見える距離のまま。
それ以上、少年に近寄ろうとはしないのだ。
「えぇ〜?」
苦笑する少年。
取り尽くした、回避能力のデータ。
(もう、いいよ。回避は〜。攻撃能力が知りたいんだっつ〜の〜)
少年の望み通りには、いかない。
けれど、ミリーシャがとっている行動は、攻撃能力に繋がるものでもあった。
ボボッ…ボッ…―
「あっ」
少年の放つ炎に生じる異変。
先ほどまでは赤々と美しく燃えていたのだが、
赤みも、スピードもガクンと落ちてしまった。
ミリーシャの読みどおり。精神力は、無尽蔵ではない。
休みなく炎を放っていた少年の魔力は、底をついたのだ。
「やべぇ」
笑いながらペロッと舌を出す少年。
その瞬間。少年は気付く。
(これ狙いか)
気付いたと同時に、手遅れ。
ミリーシャは、ススッと少年の背後に回り、腕をグイッと掴み上げる。
カシャン―
少年の手から落ちる銃。
ググググッと力を込めていくミリーシャ。
関節技、炸裂。
「いっ、いたたたたたたたたた!!ちょ、ちょっと待って!ちょ、ちょ…!」
痛みに歪む少年の表情。笑ってはいるものの、涙目だ。
ミリーシャは力を弱めることなく、少年の顔をジッと見やる。
「キ、キミってSなの?Mっぽいのに…いったたたたたたたた!!」

関節技で落としにかかる。
その一歩手前で寸止めするミリーシャ。
少年は、生き地獄だ。
「い〜〜た〜〜い〜〜〜!!も〜〜勘弁!勘弁〜〜〜!」
子供のようにジタバタと暴れる少年。
けれど、暴れることで関節に激痛が走る。逆効果だ。
(そろそろ…いいかな…)
存分に仕返しをしたところで。
ミリーシャは、グッと力を強める。
「ちょっ…!許すんじゃなくて!?とどめっ!?それはないっしょ!?」
離してくれるものだと思っていた少年は、ギャーギャーと文句を上げる。
(元気ね…この人…)
常人なら痛みに失神してもおかしくないのに、
元気いっぱいで文句を言う少年に感心するミリーシャ。
と、その時。
パシャッ―
「!」
ミリーシャの頬に、冷たい水。
緩んだ技から、少年はバッと逃げだす。
(………?)
頬を濡らす水を拭い、顔を上げるミリーシャ。
すると、そこには自身と同じ歳くらいであろう少女がいた。
少女の手には、少年が持つ銃と同じ型のものが。
銃口から溢れるように出ている、綺麗な水から察するに、
少年が炎を放つのなら、彼女は水を放つのだろう。
先ほど、頬に当たった水も、おそらく彼女の仕業。
少女の元へ駆け寄る少年を見て、ミリーシャは溜息を吐いた。
(二対一は…反則だと思う…)
少女は、加勢に来たのだろう。そう思ったミリーシャだったが、不正解。
パコンッ―
「いて」
駆け寄ってきた少年の頭を殴り、少女はミリーシャにツカツカと歩み寄って。
「ごめんなさい」
ペコリと頭を下げて、そう言った。
「………?」
キョトンとするミリーシャ。
少女は、苦笑しつつ、ミリーシャに告げた。
「私達はイノセンスのエージェント。あなたをスカウトに来ました」
「スカウト…?」
「こいつが手荒な真似をして、ごめんなさい」
礼儀正しく詫びる少女と、その隣でプゥ〜と頬を膨らませる少年。
「どういう…こと…?」
困惑するミリーシャ。
そんな彼女の元へ、騒ぎを聞きつけた一匹の狼が駆け寄ってきた。
「あ…ミグ…」
寄ってきた狼を撫でるミリーシャ。
「グルル…(訳:何事だ)」
「なんかね…スカウト…らしいよ…」
「グルル…?(訳:スカウトだと?)」
「うん…」
突如現れた大きな狼と会話を成すミリーシャに、
少年と少女は驚きを隠せない。
「狼と喋ってるぞ」
「変わった能力ね…」
ボソボソと耳打ちしあう二人に、ミリーシャは問う。
「ねぇ…スカウトって…どういうこと…?」
スカウトに関して、関心・興味があるようだ。
そう悟った少年は、ニッと笑って、ミリーシャの手を掴んで言う。
「ここじゃ〜何だからさ。詳しいことは、俺達のアジトで話すよ」
少年の態度に、狼のミグは不快を露わにする。
「グルル…(訳:何だ、こいつは。馴れ馴れしい奴だな)」
ミグの言葉に、ミリーシャはクスッと笑って、返す。
「ちょっとだけ…話を聞くだけだから…」
ミリーシャの言葉に、ミグは呆れて言う。
「グルル…(訳:やれやれ…どうなっても知らんぞ)」
ミリーシャが襲われている、そう聞いて慌てて駆けつけたものの。
当のミリーシャは、警戒心がまるでない。
先ほどまで、襲われていたというのに。
(まったく…困ったものだ…)
常人離れした戦闘能力を持ってはいても、
十七歳の好奇心旺盛な少女であることに変わりはない。
ミリーシャの総てを理解しているミグは、
"呆れ"ではない溜息を落とした。


「すげー でっけぇなぁ。おぉ、尻尾フサフサ」
「グルル…(訳:触るな)」
「触るなって言ってる…噛まれるよ…」
名前も知らない少年と少女に連れられ、
ミリーシャとミグは、廃墟が並ぶ不気味な地域の更に奥。深い森の中へ。
そこで待つものとは、一体…?

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

6814 / ミリーシャ・ゾルレグスキー (みりーしゃ・ぞるれぐすきー) / ♀ / 17歳 / サーカスの団員・元特殊工作員

7274 / ー・ミグ (ー・みぐ) / ♂ / 5歳 / 元・動物型霊鬼兵

NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / Innocence:エージェント

NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / Innocence:エージェント


■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは。いつも、どうもです^^
ゲームノベル”Innocence”への参加・発注ありがとうございます。
心から感謝申し上げます。 気に入って頂ければ幸いです。
Innocenceには、まだまだ続編・関連シナリオがありますので、
是非。また御参加下さいませ^^ お待ちしております。

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2007.12.06 / 椎葉 あずま(Azma Siiba)
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