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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


狼男の恋(前編)

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OPENING

「はぁ〜…またかよ」
呟くように言い、コーヒーを飲み干す武彦。
武彦のボヤきを聞いた零は、
窓を閉めながら不安そうな表情で言った。
「怖いですよねぇ…」
「怖いっつーか何つーか…呆れるわ」
空になったコーヒーカップをテーブルに置き、苦笑する武彦。
武彦が呆れ、零が不安がるもの。
それは、ストーカー事件。
近頃、都内で大騒ぎになっている事件だ。
毎朝毎晩、ニュースで聞く速報。
新聞や雑誌にデカデカと掲載される見出し。
あまりにも同じ事が繰り返されて、感覚は、まるでタイムループ。
武彦は、その現状にイラついている。
彼の性格からして、まぁ、無理もない。

だがしかし、残念な事に。
武彦の苛立ちは、五分後を境に、募る一方のようだ。

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ピンポーン―
興信所に響くチャイム。
書類の整理をしていたシュラインは、
掃除の途中で、玄関に向かおうとした零を止め、
"私が出るから"と微笑んで、スタスタと玄関へ向かう。
「はいはい…っと」
ガチャ―
開いた扉の先にいたのは、とても可憐な少女だった。
男が、放っておかないだろう…そう真っ先に思うほどに。
ペコリと頭を下げる少女。少女は、辺りを警戒しつつ言った。
「あの…調査依頼に来たんですが…」
シュラインは優しく微笑み、少女を所内へ招き入れる。
「どうぞ」

リビングソファに座り、深刻な表情の少女。
武彦は煙草に火を点けて、少女に尋ねた。
「で?何を調べて欲しいんだ?」
武彦の言葉に、少女は少し躊躇いつつ、小さな声で言う。
「付き纏われてるんです…」
少女の言葉に、ピクリと動く武彦の眉。
武彦が、予感するとおり。
少女は、今都内を騒がせているストーカー事件の被害者の一人だった。
「初めのうちは…気のせいかな、と思ってたんです」
目を伏せ、声を震わせて言う少女。
シュラインは、少女の隣に座り優しく背中を撫でやる。
(可哀相に…怖かったでしょうね…)
「けれど、気のせいじゃないと気付かされて…」
「何か、変化が生じたわけだな?」
武彦が問うと、少女は鞄から黒い封筒を出し、
それをテーブルの上に置いて言った。
「三日前から、毎日…これが届くんです」
煙草を咥えたまま、出された封筒の中身を確認する武彦。
「何だこりゃ。気持ちわりぃな」
「何?」
シュラインが言うと、武彦は封筒の中から不気味なものを取り出して見せた。
それは、獣の牙。
不思議な装飾が施されていて、それが不気味さを引き立てている。
「………」
眉を寄せ、牙を手に取り観察するシュライン。
紅茶を持ってきた零が、牙を見て言った。
「あの事件と同じですね…手口っていうか、内容が」
テレビや新聞で公開されているストーカー事件の情報。
それらには "妙な装飾が施された獣の牙が届く" という共通点があった。
「同一犯だな。間違いなく」
煙草を消しつつ、溜息まじりに言う武彦。
シュラインは牙の観察を続けつつ、少女に尋ねた。
「これが届くのは、いつごろ?」
「就寝前にはなく、毎朝、郵便受けに入っているので深夜から早朝にかけての間だと思います…」
「見られてるっていう感じは、いつも?」
「そうですね…でも、仕事から帰宅して眠るまでが特に…」
「そう…心細かったでしょう」
少女の頭を撫でやるシュライン。
すると少女は目に涙を浮かべ、具合が悪いことを訴えた。
「零。お前のベッド貸してやれ」
「はい」
武彦の指示に従い、少女を部屋へ連れて行く零。


得た少女の情報をノートに書き留めるシュライン。
武彦は大きな溜息を吐いて、頭をガシガシと掻いた。
「ほんと、腹立つなぁ…」
シュラインは、そうねと頷き、書き留めた情報を見直す。
少女の名前は、佐久間・亜由美。十九歳。血液型はA。
身長、百六十センチ。細身で、スタイルの良い女性。
ロングヘアで、服装は清楚。愛用の香水は、リラ・リッチ。
将来有望な、デザイナーの卵。都内のアパートに、一人暮らし。
恋人はナシ。被害に遭っていると、はっきりと自覚したのは三日前から。
「ねぇ、武彦さん。この牙なんだけど…」
「ん?」
「この装飾ね、異国の民族特有のものなの」
「へぇ」
「ここに文字があるでしょう?これも、民族特有の文字で…アルサ文字っていうのよ」
「何て書いてあるんだ?」
「…永遠の愛を、って」
「気持ち悪っ…」
密閉された透明袋に保管された牙に、不快な表情を浮かべる武彦。
シュラインは続けて言った。
「もうひとつ…この民族ね、二百年前に滅んだとされてるの」
「…ってことは何だ。犯人は亡霊とか、そんな感じか」
「うん。…そっち方面で考えるのが妥当ね」
「はぁ〜…ったく…」
結局、怪奇現象の解決に結びつく。
自分に舞い込む仕事は、ほとんどコレだと思っていて間違いはなさそうだ。
事実にゲンナリとする武彦は、シュラインが書き留めた情報に目を通しつつ言った。
「今晩、彼女の部屋で張り込もう」
いつもよりも迅速な対応。
シュラインは苦笑して言った。
「今回は、対応が早いわね」
「そりゃあ、そうだ。もし、お前に…」
「え?」
「や。何でもない。彼女が目を覚ましたら、すぐ出るぞ。準備しとけ」
「…うん?」



武彦とシュラインを引きつれ、自宅へ戻る亜由美。
零は、興信所で留守番中だ。
「郵便受けに、カメラ設置してもいいかしら?」
シュラインが問うと、亜由美はコクリと頷いた。
周囲の気配を気にしつつ、死角に小型カメラを設置するシュライン。
武彦はアパートの外観や亜由美の部屋の位置をメモに書きとめつつ言う。
「この三日間、部屋にはずっと一人でいたのか?」
武彦の問いに、亜由美はフルフルと首を振って答える。
「いえ。一昨日は、同僚が遊びに来てました」
「男か?」
「いえ。女性です」
「その時も、気配は感じたか?」
「はい…」
「なるほど。他人がいても構わないらしいな」
武彦が言うと、シュラインは頷いて言った。
「姿を隠す必要はなさそうね」

亜由美の部屋は八畳のワンルームで、
まさに女性の部屋、という可愛らしい部屋。
甘い、バニラの香りが漂っている。
武彦はソファに、シュラインと亜由美はベッドの上に腰を下ろし、
時刻を確認。現在、午後十一時半。
亜由美は、いつも零時頃に就寝するらしい。
「零時になったら、電気消して様子を見よう」
武彦の言葉に、頷くシュラインと亜由美。
零時に近付く度、亜由美の表情が不安に曇る。

(後編に続く)

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

NPC / 草間・武彦 (くさま・たけひこ) / ♂ / 30歳 / 草間興信所所長、探偵

NPC / 草間・零 (くさま・れい) / ♀ / --歳 / 草間興信所の探偵見習い

NPC / 佐久間・亜由美 (さくま・あゆみ) / ♀ / 19歳 / デザイナーの卵


■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは。いつも、発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
気に入って頂ければ幸いです。続きは、後編で。また、どうぞ宜しく御願いします。

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2007.12.08 / 椎葉 あずま(Azma Siiba)
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