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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE 02 白亜の館

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OPENING

何とも満足そうな笑みを浮かべる、海斗。
無表情ではあるものの、梨乃も、内心は非常に満足しているようだ。
二人は、見つけた”逸材”を、とある場所へと連れて行く。
半ば、強引に。

海斗に手を引かれる逸材は、状況が飲み込めずに不可解な表情をしている。
まぁ、無理もない。
事態を把握しようと、どういうことなのかと尋ねても、
海斗と梨乃は、微笑むばかりで、一向に説明してくれないのだから。
説明不足な二人の所為で、逸材の不安や不満は膨らむばかり。

廃墟が並ぶ、不気味な地に踏み入り、逸材の不安が頂点に達した時。
海斗と梨乃は、アイコンタクトをとり、揃って前方を指差す。

彼等が示した先には、美しい白亜の館があった。

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「はぁ…ここが、あなたたちのアジトですか」
少年と少女が示す館を見やり、他人事のように言う あやこ。
少年との戦闘(?)で、髪はボサボサ、着用しているジャージもボロボロ。
膝のあたりに、血が滲んでいる。…どうやら、擦り剥いているようだ。
何というか…女性に、このような例えを用いるのは如何なものかと思うが…。
”ボロ雑巾” そんな表現が、今の あやこには一番しっくりくる。
「とりあえずマスターに会ってもらうから」
ニコニコしながら扉に触れる少年。
すると、扉がボンヤリと光り、消える。
どういう仕掛け、仕組みなのか…。
気になってはいるあやこだが、それ以上に気にかかることがある。
気にかかる、というか…寧ろ、不満といったほうが正しいだろうか。
「ちょっと」
小さな声で、あやこは、少女に声をかけた。
「はい?」
ポーカーフェイスで、言葉を返す少女。
少年は、一人先に、館の中だ。
「何なの、あのこ。自分勝手すぎるんじゃないかしら」
少年の背中を指差しつつ言うあやこ。
確かに、少年の言動は非常に突飛だ。
軽く説明は受けたものの、
こちらの意見を尊重する気が、まったく感じられない。
気の向くまま。自分がしたいように。
そんな奔放すぎる少年に、あやこはムカムカしていた。
(急に襲ってきたことだって謝らないし、大丈夫かの一言もないし…それに…)
不満や怒りは、とどまることなく心を埋めていく。
「すみません。私も、手を焼いてるんですよ」
苦笑しながら、少女が言った。
あやこは頬を膨らませ、乱れた髪を整えながら返す。
「こんな方法じゃ成功しないわよ。普通に考えればね」
「…そうですね。私も、そう思います」
「いつも、こうやってスカウトしてるのかしら?」
「そう、ですね。あいつが勝手に…ですけど」
申し訳なさそうに言う少女を見やりつつ、
あやこはハァと大きな溜息を落とす。
「すみません…」
頭を下げ、謝罪を述べる少女。
あやこはフイッと顔を背け、言った。
「いいわよ。もう。とっとと案内して頂戴。監督のところに」
「…え?監督?」
あやこが発した”監督”という言葉に首を傾げる少女。
おそらくマスターのことを言っているのだろう。
(どうして監督…?)
少女は疑問を抱きつつも、
あやこの機嫌を、これ以上損ねるわけにはいかないと判断し、
言われるまま、館の中へ案内した。
ここで一つ、説明を。
あやこは、大きな勘違いをしている。
このスカウトを、AV女優のスカウトだと思っているのだ。
少年と少女は、自身の組織に、あやこを所属させたい、と説明した。
簡素で、突飛な説明だったが、確かに二人は説明した。
けれど、それを鵜呑みには出来ない。
なぜなら、先日も似たような手口で襲われているからだ。
魔物を討伐する新鋭組織、そこに加入しないかと声をかけられ、
話を聞くだけなら、とついていけば…そこは組織でも何でもなかった。
AV撮影の現場だったのだ。
女優をスカウトするための手口。
最近、異界では、こんな犯行が頻発している。
魔物の巣窟で、事件の絶えない異界ならではの手口。
まぁ、あやこは事実を悟った途端、
現場にいた青年らを殴り飛ばして逃げてきたわけだが。
(まったく…こんな子供を使うなんて、卑劣極まりないわ)
どうせ、今回も同じことだろう、そう思っているあやこは、
マスター…いや、監督をブッ飛ばして制裁を下してやろうと目論んでいる。


「マスター。新人、連れてきたぜ!」
勝ち誇った表情で言う少年。
たどり着いた部屋は、真っ白な空間。
ここだけでなく、館の中は外観と同じく、どこもかしこも真っ白だった。
延々と同じところを歩いているかのような感覚に、何度も眩暈を覚えた。
(…この人が)
空間の真ん中、ソファに座る老人をフラつく足と虚ろな目で捉えるあやこ。
思っていたよりも、随分と老け込んでいる。
こんな老人がAV撮影をするのか、と疑問に思いながらも、
あやこは精神を集中させ、氷の刃を自身の周りに出現させる。
「ちょ、何やってんだよ、あんた!」
ギョッとし、近付く少年だったが、
あやこの冷たい視線に、思わず立ちすくむ。
傍にいる少女も、また同じく。動けずにいた。
ピンと張り詰める空気の中。
「…ふぁっふぁっ」
老人が笑う。
「無駄よ。私の刃からは逃れられない」
老人をキッと見据えて言うあやこ。
すると老人は、持っていた杖で、コツンと床を鳴らした。
カシャン―
杖鳴りの音と同時に、砕け散る氷の刃。
「………」
自身の周りで粉と化す氷に、あやこはムッと眉を寄せる。
(…まずいわ)
まさか、監督が、ここまでの能力者だとは思っていなかった。
そうか、そういう玄人を監督に雇うことだって考えられることではないか。
ここまでか。まさか自分が脱ぐ羽目になるなんて。
妖精の皇女ともあろう、私が…。
あやこの脳内は、万事休す。
AVのことで頭がいっぱいだ。
どんな内容の撮影なのか…相手は、どんな男性なのか。
どうにか、逃げ出す方法はないか…。そんなことばかりを考える。
「気持ち良いほどの誤解じゃなぁ」
クックッと笑いながら、老人が言う。
「おいおい。何なんだ、いったい?」
理解できずに混乱している少年に、老人は説明した。
「卑猥なビデオ撮影だと思っとるぞ。その娘っこは」
「はぁ!?」
「おぬしら…きちんと説明したのか?まったく…」
老人は、読心術を心得ているようで。
あやこの脳内・心中は、丸見えだった模様だ。
「…ちが、うの?」
今だに警戒しながらも、聞くあやこ。
老人は、そんなあやこを見ながらケラケラと笑った。
途端に解ける緊張と誤解。
老人の笑い声に、すっかり毒気を抜かれてしまった あやこは、
ヘナヘナと、その場に座り込んでしまった。
「何ちゅー勘違いしてんだ。あんた」
苦笑しながら、あやこの肩にポンを手を乗せる少年。
その様を見て、少女は溜息混じりに呟いた。
「…海斗のせいよ。何もかも」




「まぁ、一階は、こんな感じだな。二階は、さっき言ったとおりエージェント達の部屋があるから」
テクテクと歩きながら説明する少年。
少年は、あっ、と気付き補足をする。
「そうだ。忘れてた。俺の名前!俺、海斗。よろしくな。で、こっちは梨乃」
少年に指差されて不愉快そうにしながらも、少女は頭を下げた。
誤解が解け、状況を理解した あやこは、二人に館内を案内されている。
「私の部屋もあるの?」
壁に掛けられた意味不明な絵を眺めながら言うあやこ。
「もちろん。はい、これ鍵ね」
少年…海斗は、ポケットから銀色の鍵を取り出すと、それをあやこに渡す。
「…お風呂は?」
鍵を受け取り、不機嫌そうに言うあやこ。
「部屋にあるよ。着替えとかも」
「そう。じゃあ、シャワー浴びてくるわ」
「わかった、渡したいもんがあるから、あとで部屋行くよ。どんくらいで上がる?」
「一時間後」
「りょーかーい」

まくしたてるような説明の後、ようやく休息の時。
(まぁまぁね)
与えられた自室に、そこそこ満足しつつ、あやこはシャワーを浴びる。
疲れて、落下して、襲われて、スカウトされて、誤解。
そして、今は優雅にバスタイム。
人生、何が起こるか、わからないものだ。
(この先、どうなるのかしらねぇ)
他人事のように思いながら、傷を魔法で治癒。
白い翼を、丁寧に毛づくろい。
湯浴みを終え、綺麗に化粧を施し、真新しい服へ着替え、ちょうど一時間後。
ベッドの寝心地のよさを確認している あやこの元に、海斗と梨乃がやって来た。
「お。くつろいでるね」
ケラッと笑って言う海斗。
あやこはムクリと起き上がり、要求を飛ばす。
「お腹すいてるの。何か食べさせて」
「あぁ、今準備させてるよ。その間に、コレの説明させて」
言いつつ、テーブルの上にコトリと黒い箱を置く海斗。
「…?」
首を傾げるあやこに、海斗はニマリと笑って。
箱から銃を取り出すと、それを、あやこに差し出した。
それは、海斗が使っていた銃と同じもの。
手に取り見やると、イノセンスの刻印があることがわかる。
「…支給品ってことかしら?」
銃を、あらゆる角度から眺めつつあやこが言うと、
海斗と梨乃は、揃ってコクリと頷いた。
「まぁ、さっき使ってたの見たから わかると思うけど。普通の銃じゃないから、それ」
「炎を放つのね?」
「俺はね」
「?」
「持つ人の能力に応じて、宿る魔力が違うんだ」
「…じゃあ、私は?」
「使ってみればわかるよ」
「ここで?」
「いやいやいや。外で」
「…ふぅん。まぁ、理解はしたわ」
「今から外行って撃ってみてもいいけど。腹へってんだろ?」
「そうね」
「じゃあ、やめといたほうがいいな。そういうの影響するから」
「ふぅん…」
まじまじと銃を見ながら返すあやこに、梨乃が告げる。
「しばらくは、私達と一緒に仕事することになると思います」
「わかったわ。いつから仕事?」
「お任せします。私達は、その都度サポートに付きますので」
「そう。じゃあ…明日からで良いかしら」
「はい。構いません」

ようやく見つかった就職先。
これで、不安定な生活から抜け出せるだろう。
用意された食事を短時間で平らげ、
安心感から、あやこはベッドでグッスリと眠りについた。
豪快に響く鼾に、海斗と梨乃は笑う。
「面白いよなぁ。こいつ」
「…まぁ、ね」
「マスターも気に入ったみたいだし、大成功だな。スカウト」
「大成功…では、ないと思うけど」

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

7061 / 藤田・あやこ (ふじた・あやこ) / ♀ / 24歳 / 現:IO2オカルティックサイエンティスト

NPC / 黒崎・海斗 / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント

NPC / 白尾・梨乃 / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント

NPC / イノセンス・マスター / ♂ / ??歳 / INNOCENCE:マスター(ボス)

■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは。
ゲームノベル”INNOCENCE”への参加・発注ありがとうございます。
少し納品が遅れてしまいました。申し訳ございません。
発注・参加 心から感謝申し上げます。 気に入って頂ければ幸いです。

※アイテム「魔銃」を贈呈しました。宿る魔力ですが、お任せします。
宿らせたい魔力があれば、以降プレイングで教えて下さいませ。

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2007.12.25 / 椎葉 あずま(Azma Siiba)
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