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<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>


ヴァルカの魔書

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OPENING

その魔書は、とある作家の書庫に眠っていて。
長らく光を浴びず、人の目に留まる事もなく。
深き眠りの中にいた。
手に取ると、鼓動のような振動が伝わってくる、不気味な魔書。
作家の死後、その魔書を手に入れた者がいる。
物好きな、その人物の名は、碧摩・蓮。

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”面白いものを手に入れたんだよ、ちょっと来ないかい?”
目覚めて確認した携帯に届いていたメール。
それは、アンティークショップ・レンの店主、蓮からのメールで。
冥月は、ふわぁと欠伸をしつつ、
モーニングコーヒーの準備を始めた。
(懲りないな、あいつも)
いつもいつも面白いものを手に入れたと自慢気にアピールしてくるが、
手放しで凄いなぁと褒めれた品は一つもない。
蓮のセンスが一風変わっているというのもあるが、
それよりも何よりも、面倒なのだ。
仕入れた品は、大抵曰く付きで…厄介事を潜めている。
ちょっと来てよ、と言われて行ってみれば、その問題を解決する羽目になるのだ。
今回もおそらく…そうなるのであろう。
冥月は、そう思っている。確信さえ抱いて。
けれど、コーヒーを飲み終えて着替えを済ませてしまう辺りが…。
冥月の気の良いところだ。
何だかんだで邪険にしない。扱わない。
うっとおしいとは思っているものの…妙な関係だ。


「これか…」
カウンターに置かれた本を見やって言う冥月。
蓮は、素敵だろう?と自慢気に本を手に取ると、愛おしそうに表紙を撫でた。
「さっぱり理解らん。ただの古書にしか見えん」
淡々と言う冥月。
冥月の言うことは、もっともだ。
素敵だろう?と言われても、ちっともピンとこない。
ただの、古びた書物にしか見えないのだ。
冥月の冷たい反応に蓮はヤレヤレと肩を竦めて説明した。
どうやら、この書物は”ヴァルカの魔書”という代物で、
異国に出現した魔物がビッシリと掲載された魅力溢れるものらしい。
昔、競売で売りに出されたものを異国の作家が大金を費やして入手、
以降、その作家の書庫で大切に保管されていたらしい。
数日前、作家が寿命で死亡し、
蓮は独自ルートで、この魔書を自分のものにした…とのこと。
「こんなものに大金はたくとは…お前も、どうかしてるな。今更だが」
呆れ笑いを浮かべる冥月。
すると、その時。
冥月の影から夜色の可愛らしい小鳥が現れ、冥月の頭の上に留まった。
「…こら、ノエル。勝手に出るな」
小鳥を優しく叱る冥月。
蓮はクスクス笑って言った。
「名前まで付けたのかい。随分と可愛がってるじゃないか」
「…うるさい」
冥月が照れ隠しに冷たい言葉を放つと、
蓮は淡い笑みを浮かべ、おもむろにパラパラと魔書をめくった。
魔書には、蓮が説明したとおり、様々な魔物の情報が記されている。
冥月は頭に小鳥を乗せたまま、ある意味便利かもしれんなぁ…などと思いつつ、
蓮と共に魔書をボーッと眺めていた。
そこで、事件は起こる。
バシュッ―
「…!?」
突然、眩く輝きだす書物。
光に目を細める蓮と冥月。
やがて、何事もなかったかのように光はおさまったのだが…。
カウンター上に、不気味な鳥が出現していた。
「おい…」
嫌な予感にピクリと眉を揺らす冥月。
蓮はサッとカウンター下に身を潜めると、
開いていたページ、百三十五ページを確認して告げた。
「カーズ。西洋の魔物…らしいね」
「らしいね、じゃないだろう。どういうことだ」
溜息混じりに言う冥月。
「よくわからないけど…実際に魔物を封じた書物…なのかもしれないねぇ」
「だとしたら、何で出てきてるんだ」
「さぁねぇ…」
チッと舌打ちする冥月。
そして、同時に悟る。蓮の目的は、これだ。
おそらく封印されていたのであろう魔物が、
長い時間を経て、書物から飛び出す。
その可能性があった為に、自分を呼んだのだ…と。
「いつもいつも…貴様には呆れるばかりだ」
冥月は呆れつつも、カウンター上で不気味な鳴き声を上げる魔鳥を睨み付けた。

戦闘開始。
魔鳥カーズは、弾丸のように店内を飛び回る。
陳列された商品は床に落ち、店内は改装したばかりだというのに滅茶苦茶だ。
「早く何とかしとくれよ」
カウンターに身を潜めつつ言う蓮にムッとしつつも、
冥月は、さっさと終わらせてしまおうと、腕をまくる。
どんなに猛スピードであろうと、冥月にとっては生温い。
目を瞑っていても、捉えることができる。
自分に向かってきたところを、手刀で落とす。
何のことはない、容易いことだ。
冥月がスッと腕を上げたとき。
「ピィィィィィ!!」
甲高い鳴き声を上げながら、夜色の小鳥が魔鳥カーズへ飛び掛っていく。
「な…」
自分の頭に留まり、愛くるしく首を傾げていた小鳥の変貌振りに驚く冥月。
夜色の小鳥は、カーズに何度も吹き飛ばされるが、めげずに向かっていく。
「ノエル!戻れ!何やってる!」
小鳥に声をかける冥月だが、聞く耳持たず。
小鳥は、必死にカーズに向かっていく。
だが、力の差は歴然。敵うわけもなく。
小鳥はボロボロになり、ポテッと床に落ちた。
「馬鹿っ」
小鳥を拾い抱き上げ、叱る冥月。
そこで蓮は言う。
「ご主人様を守ろうとするとはねぇ…いいこじゃないか」
蓮の言葉にハッとする冥月。
(何やってんだ…お前は)
ボロボロになった小鳥を優しく撫で、冥月はキッとカーズを睨む。
依然、店内を猛スピードで飛び回るカーズ。
「スピードだけが取り柄のクズ鳥めが」
冥月はそう言うと、自身に向かってくるカーズに制裁を下した。




「で…?これは、どういうことだ?」
腕組みしながら、不愉快極まりない表情を浮かべる冥月。
冥月の頭の上には、夜色の小鳥と魔鳥カーズが乗っている。
蓮はアッハッハッと楽しそうに笑って言う。
「鳥に好かれるのかい、あんたは」
「知るか」
手刀で落とされ、地に落ちたところをグッと踏みつけられ…。
魔鳥は、あっという間に冥月に懲らしめられた。
敵わないと悟ってからのカーズは、不気味なほど豹変し、
冥月に懐いてしまったのだ。
それだけではない。夜色の小鳥とも和解し、仲良くつつき合う始末。
自身の頭の上でピィピィチュンチュンと鳴く二匹の鳥。
冥月は大きな溜息を落とし、
「助けてやったんだ。報酬、用意しとけよ」
そう言い捨てると、逃げるように店を出て行く。
クールに決めてはいるものの、頭の上には愛くるしい鳥が二匹。
蓮はクックッと肩を揺らしつつ、冥月の後姿を見送った。

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

2778 / 黒・冥月 (ヘイ・ミンユェ) / ♀ / 20歳 / 元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒

NPC / 碧摩・蓮 (へきま・れん) / ♀ / 26歳 / アンティークショップ・レンの店主


■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは。いつも、発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします。

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2007.12.26 / 椎葉 あずま(Azma Siiba)
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