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<WhiteChristmas・聖なる夜の物語>


プレホワイト


●プレ・ホワイト
ひらり ひら ひら
クリスマス色に染まる街に、新たに白が舞い落ちる。
ひらり ひらり
ホワイトクリスマス…ではなく、その前触れ。
ひら ひらり
雪の白ではない。
ひらり
アルバイト募集の、白いチラシ。
たくさんの、量産されたそれが、街中に散らばっていく。
「どんな人が来てくれるかなっ?」
空の上から街を見下ろしていたのは、サンタの少女。
夢の世界から飛び出した彼女は、まだ見ぬ同行者を待つため、自ら指定した場所へと向かうのだった。

●それぞれの理由 〜あやこ〜
「へぇ〜っ、雪降らしなんて粋な仕事があるものねっ」
チラシを見ての開口一言で感心していたのは藤田・あやこ(ふじた・あやこ)。
そのチラシに書かれていた募集内容にも、台詞回しにも何の不思議を感じることも無い。なぜなら彼女自身が、能力に限らずその存在、肉体自体が魔法的なもので構成されていて、そうした非日常にあやこは慣れて…いや、あたりまえであることこそが彼女の日常であるからだ。

少しの沈黙。なにやら考え事をしていたようなのだが、すぐに笑顔になるあやこ。
「さぁって、そうと決まれば特別衣装に着替えなくっちゃ」
どうやら、このイベントに参加することはとっくの昔に決定事項で、今の思案はどのような衣装に身を包むか、その一点のためだったようである。
やっぱりクリスマスなんだからサンタ服よね、それなら下着もクリスマス仕様にしないと…などと一人慌しく、自室の衣装を引っ掻き回している。
自室に無いならないで、自分が経営するブティックに向かい揃えてくるのだろう。非日常の化身は不可能を可能にする力も秘めているに違いないのだ。

●サンタクロースは見習い娘
「今日はみんな、集まってくれてありがとーっ♪」
集まった三人に向かいぺこり、とお辞儀をしたのはサンタ服の少女、エファナだ。
「よかったぁ、人が集まってくれるか分からなかったから、とりあえずは6人乗りの橇を用意しておいたんだけど…全員乗れそうだねっ」
にこにこと続けたと思えば、すぐにはっと慌てた様子になり手をばたばたと動かす。
「いっけない、自己紹介がまだだったよね、あたしはサンタのエファナ! まだ見習いだけど、今年のクリスマス次第では本物のサンタに昇格する…予定っ! お姉さん達は、何て呼ばせてもらえばいいのかなっ?」
「藤田・あやこよっ、エファナちゃん、いざ尋常にミニスカで勝負、勝負〜っ!」
びしぃっ! と人差し指をエファナに突きつけたあやこの風体は、自分でも言っているとおりにミニスカート。シンプルなエファナの衣装よりもリボンやレースが多かったりして、かなりフリフリ。ポーズを決めた時にちらりと見えた下着の柄も、トナカイだったようである。
「ミオは式野・未織って言います…良かったらミオって呼んでください」
遅ればせに答えた、白で統一した衣装が眩しいのは未織。彼女もスカートではあるがミニではない。雪が降ったら、彼女の姿はとてもよく雪景色に映えるだろう。
よく見ると、三人の中で一番荷物が多いようだが…その理由はきっと後ほど明かされる。
「…黒崎・吉良乃、呼び方は任せるわ」
サンタは老人であるべしと思っていた吉良乃は、エファナの登場に少なからず驚いていたようで自己紹介が最後になった。彼女は他の面子と違いスカートではなくズボン着用だ。今はあやこの勢いに圧倒されているが、まだ彼女はエファナがサンタであることを信じ切れていないようだった。声の調子が、低い。
「あやこおねーさんに、ミオおねーさんに、吉良乃おねーさんだねっ、それじゃ、今日はよろしくお願いしまっす♪」

●未経験者歓迎♪
「細かい作業って、実際はどんなことなんですか…?」
顔の横に小さく手を挙げて、質問をしたのは未織だ。
「それは、『雪のモト』を…実際に見てもらったほうが早いよね、雪の精さん達、トナカイさん呼んできてっお願いっ!」
エファナが虚空に呼びかけると、はぁーいっ! と何かの声がいくつか重なり、更にしばらくして聞こえる物音。
しゃんしゃんしゃん…しゃんしゃんしゃん…
トナカイの橇に付き物とも言われている、鈴の音だ。勿論、空から。
「きゃ〜、待ってたの待ってたのよこれを〜♪」
空飛ぶ橇とそれを引くトナカイ、トナカイの上空でどうやらトナカイに指示を出して居るらしい、白く光るいくつかの球体は多分雪の精。
あやこはとにかく黄色い声を上げてはりきり、二回同じ言葉を繰り返したことにも気づいていない。更には衣装にも無いのに袖を捲り上げる仕草。彼女は寒さにめっぽう強いためか、なんと素肌をおしげなく晒していたりするのである!

エファナが指差し、実際に中身を見せながら説明していく。
あやこだが、エファナの説明を尻目に、雪の精のほうに話しかけていた。サンタであるエファナを通してしか上手く会話をできないはずの彼らだが、語学堪能で精霊の会話にも通じているあやこにはその心配も無用であるようだ。
「精霊でもいいの、どこかにいい男っていない? 誰か紹介して欲しいのよね」
実はあのトナカイが人間にも変身できて、その容姿がすこぶる良かったりしない? 等と聞いてもいる。
実際のところ、あやこが話しかけている雪の精、目を凝らしてみれば光の中に人型が見えて、それが彼女の求める『イイ男』だったりするのだが…多分、体の大きさで却下されているのだろう。

●いざ空の旅へ!
ひとまずの説明を終えたところで、一行は橇の座席に座った。
「おねーさんたち、最初だけちょっと捕まっててね?」
少しだけ勢いが必要だから、そう言われて三人はめいめい、思うところにつかまり態勢を整える。
「それじゃ、いっくよ〜!」
ビュウンッ!!!
エファナの掛け声の後に続いたのは強い風の音。
寒くも無く、強くもないように感じたのはきっと、それだけ不思議な力が働いたせいなのか、ただ信じがたい出来事過ぎて認識ができなかっただけなのか…わからないまま、三人がいつのまにか閉じてしまっていた目を開けるとそこは満天の星空の下。
橇の端からそっと見下ろせば、先ほどいたはずの大きなイルミネーションで飾られたツリーのある広場と思われる場所が、どこかも特定できないほど。
見えるのは、クリスマスのイルミネーションの光だけ。

全てに見とれる皆の意識を戻したのは、あやこ。
「さぁ〜てっ、私の出番はこれからね?」
見ると彼女は橇の座席に立ち上がり、端から見れば危なげで、見せ下着もおしげなく晒しながら何かの呪文を唱えた。詠唱の際、すでに仕事を始めていた雪の精達が少しだけ行動を鈍らせていたから、きっと精霊等の霊的な存在に関する魔法なのだろう。
詠唱が終わると同時に彼女の周りに現れたのは、白い着物を纏い、頭には三角頭巾をつけた…そう、俗に居る幽霊という奴だ。ただ恐ろしげなところが無いのはきっと、あやこの魔力が不安定なせいだろう、結果として本来は人と同じほどの大きさであるはずが、可愛らしくデフォルメされた状態になっており、雪の精たちとほぼ同じくらいの大きさとしてこの場に現れている。
「ちょっと小さいけど、きっと丁度いいわよね。あなた達、雪の精達を手伝いなさいな。で、私自身はと…」
ふと視線をめぐらせると、未織の荷物が目に入った。
「それの中身って、何?」
「ミオ、お菓子が好きで…たくさん持ってきたんです」
にっこり笑う未織につられて、あやこも笑った。
「いいわね、それ」
他の皆が『雪のモト』を降らせる横で、あやこがおからやらマシュマロやらを撒きだしたのは…ここだけの内密の話にさせてもらおう。

●格別な時間 〜あやこ〜
作業を始めてからどれほどの時間がたったのかは分からない。それぞれが仕事に熱中していたからだ。
気がつけば雲もなかったはずの空に雲が出来ており、少しずつではあるが雪も降り…場所によっては積もり始めているところもある様子。
「遊ぶしかないわよねっ」
思い立ったら一直線。あやこは誰かに止める隙も与えず橇からダイブ。目指すは積もった雪だ。落下しながら翼を広げて飛翔し、無事に着地した。
とにかく、遊ぶべし! 雪玉を作っての玉乗りに始まって、寒さが足りないと、海を自らの魔法で凍らせてスケートをしてみたり。まだ誰も踏んでいない雪をキュッキュッと踏みしめては、その音を真似て歌ってみたり。時には振り付けも付いている。
橇には彼女が償還した幽霊達がまだ作業をしていて、彼らの頑張りもあるからか雪は順調に降り積もる。そこで遊ぶのを中断して雪かき。
「いっぺんやってみたかったのよねー」
そうして雪かきで集めた雪を山にして、今度はそれをお風呂に見立てて埋もれてみた。
「極楽極楽〜♪」
頭にタオルまで乗っていた。
寒さに強いとはいえこれほどまでとは…これだけ雪を楽しんでもらえるなら、エファナも満足だろう。

●ホワイトクリスマス
ひらり
はじめのひとひらを見つけたのは、誰だっただろう?
ひら ひらり
舞い落ちるそれは、時を追うごとに数を増し。
ひらり ひらり
イルミネーションの光に優しく照らされ、舞い落ちる。
ひらり ひら ひら
静かに、街に積もっていく…

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【7061 / 藤田・あやこ (ふじた・あやこ) / 女性 / 24歳 / IO2オカルティックサイエンティスト】
【7293 / 黒崎・吉良乃 (くろさき・きらの) / 女性 / 23歳 / 暗殺者】
【7321 / 式野・未織 (しきの・みおり) / 女性 / 15歳 / 高校生】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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メリークリスマス♪ 桐島めのうです。
納期ギリギリまでお待たせしてしまい申し訳ありませんでした。
お口に合う仕上がりになっていれば幸いです。
今回のご参加、本当にありがとうございました!