コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>


ヴァルカの魔書

------------------------------------------------------

OPENING

その魔書は、とある作家の書庫に眠っていて。
長らく光を浴びず、人の目に留まる事もなく。
深き眠りの中にいた。
手に取ると、鼓動のような振動が伝わってくる、不気味な魔書。
作家の死後、その魔書を手に入れた者がいる。
物好きな、その人物の名は、碧摩・蓮。

------------------------------------------------------

「へぇ…これが、その魔書?」
カウンターに置かれた本を見やって興味深そうに尋ねるシュライン。
蓮は自慢気に頷き、そうともさと笑みを浮かべている。
素敵な本を手に入れたんだよ、見に来ないかい?
蓮から、そう連絡を受け、シュラインは買い物がてら蓮の店を訪れた。
シュラインも、職業柄、本好きな人種だ。
蓮からの連絡に、ピクリと反応してしまった。
「興味深い書物ね。書体の具合も素敵だわ」
パラパラと魔書をめくる蓮の隣で、一緒に覗き込むシュライン。
蓮が入手したのは、まぁ…例によって、いわくつきのもので。
異国の魔物の情報が詳細に記されている。
小説のように綴られていて、各魔物にストーリーがあるのだ。
内容もさることながら、凝った作りにシュラインは夢中。
蓮に、この魔物…どこかで見たことがあるわねーとか、
この本の著者って、一体どんな方?とか…様々なことを尋ねながら、
蓮と一緒に魔書に見入っている。
けれど楽しい反面、モヤモヤしていたりもするのだ。
(こういうのに のめりこむと、また武彦さんがふてくされちゃうのよねぇ)
そんなことを思いつつ、シュラインは苦笑する。
シュラインの趣味にのめりこむ度合いは、それはそれは凄まじいものだ。
本人も自覚しているが、いざハマると 抜け出すのは大変。
(どうしよう。この本、借りたいなぁ)
貸してと言えば、蓮は快く応じてくれるだろう。
シュラインには、その確信があった。
なぜなら、いつも、そうだから。
けれど、シュラインは躊躇している。
武彦のことを思うと、スパッと言い出せないのだ。
どうしようか…と悩むシュライン。
蓮は、そんなシュラインを見ながらクスクスと笑う。
シュラインが、何を考えているのか、丸わかりゆえに。
微笑みつつ、パラパラと魔書をめくる蓮。
静かな店内には、ページをめくる音だけが響く。
のんびりとした空間。
ところが、それは突然 何の前触れもなく崩れ去ってしまう。

バシュッ―
「きゃあ!」
突然、眩い光を放つ魔書。
シュラインと蓮は咄嗟に魔書から離れ、眩しさに目を閉じた。
次第に消えていく光と戻っていく視力。
「何だったの今の…って」
目をパチクリさせながら、魔書を見やるシュライン。
驚いて当然だ。そこには、不気味な鳥が出現していたのだから。
チラリと見やれば、開かれたページの魔物の写真が消えている。
「ねぇ、蓮さん。もしかして…」
シュラインが恐る恐る聞くと、蓮は肩を竦めて返した。
「封印が解けてしまったみたいだねぇ」
蓮が発した言葉から、シュラインは、すぐに事態を把握した。
いわくつきなのに、何となく不気味なだけで何の害もないなんて おかしいと思ってた。
どうやら、この書物は魔物を直接本の中へ”封”じたもののようだ。
出現している鳥は、ページに記されている情報によると、
カーズという魔物で、人を襲う肉食の魔鳥らしい。
カーズは見た目どおりの不気味な鳴き声を放ちつつ、バサリと飛び上がった。
その動きの速さは異常。
店内を弾丸のように飛び回るカーズ。
蓮はカウンターに身を潜めて、さて困ったねと他人事のような表情を浮かべている。
次々と床に落ち、壊れてしまう商品。
シュラインは身をかがめて様子を伺っていたが。
何と、カーズがシュラインめがけて飛んでくるではないか。
シュラインは咄嗟に、悲鳴をあげた。
「きゃああああああ!!」
悲鳴をあげつつ、シュラインはハッと思いつく。
(このまま、声を最高音域まで…!)
シュラインの悲鳴は、そのまま甲高く伸び、やがて超音波と化す。
用意周到に耳栓をはめた蓮は何食わぬ顔をしているが、
カーズは、そうもいかない。
「キィッ」
シュラインの目前で、カーズは失神しボトリと床に落ちた。


「びっくりした…」
肩を揺らしながら、床に落ちたカーズを拾い上げて言うシュライン。
カーズは完全に気を失っていて、目を覚ます気配はない。
蓮は、はめていた耳栓を外しながら、シュラインに拍手を送った。
拍手されても嬉しくなんてない、本当に驚いたんだから…と呆れるシュライン。
店は滅茶苦茶になってしまったが、怪我を負うことはなかった。
まぁ、その辺りは不幸中の幸いか。
さて…カーズを気絶させ暴れないようにしたはいいが、
これから、どうするべきか。カーズを、魔書に戻すことは出来るのだろうか。
「戻す方法って…書いてるの?」
カーズを掌で包み込むように抱きながら問うシュライン。
蓮は、開いていたページに目を通し、微笑んで言った。
「このページに乗せるだけで良いみたいだね」
「え。そんなに簡単なの?封印なのに?」
「著者の能力の賜物さ」
「…凄い人だったのね」
感心しつつカーズを置こうとするシュライン。
置けば、すぐに魔書の中にカーズは戻る。
危険は、なくなる。
けれど、何だか心苦しい。
(また狭い空間に戻すのも…どうなんだろうなぁ)
シュラインはそう思いつつ、蓮に尋ねた。
「ねぇ、この書物に載ってる魔物って…絶滅種ばかり?」
「そうだよ。だから手に入れたんだ」
「…そっか」
蓮の言葉を聞き、シュラインはホッとした表情を浮かべる。
(本の中にたくさんの仲間がいるなら、寂しくないわよね)
ここで自由にしてやったところで、孤独だろう。
そう思ったシュラインは、そっとカーズを魔書に乗せた。
すぐさま、魔書の中へ戻っていくカーズ。
元通りになったカーズのページにシュラインは微笑み、蓮に御願いした。
「ねぇ、蓮さん。この本、貸してくれないかな?」
「あぁ、構わないよ」
「また封印が解けるなんてことには…ならないわよね?」
「さぁねぇ」
「えぇ〜…もう、勘弁してよ」
「探偵と一緒に見りゃいいさ。いざとなったら頼りになるんだろう?」
「…んー」
「そうすりゃ、あいつがふてくされることもないだろうさ」
「あら。その辺、お見通しですか」
「ふふ…。そりゃあねぇ」

------------------------------------------------------


■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

NPC / 碧摩・蓮 (へきま・れん) / ♀ / 26歳 / アンティークショップ・レンの店主


■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは。いつも、発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします。

------------------------------------------------
2007.12.27 / 椎葉 あずま(Azma Siiba)
------------------------------------------------