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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


悪戯な関係

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OPENING

「…あのやろう」
窓の外、疾走する少年を見やって呟く草間・武彦(ディテクター)
全身から”呆れ”の気を放ちながら、
彼はジャケットを羽織り、足早に部屋を出る。

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異界散策。
それは、シュラインの趣味の一つである。
とはいえ、散策だけを目的に異界を訪れることはない。
事のついで。何か別の用事で異界に赴き、
その帰り道にフラリと色々なところへ行ってみる。そんな感じだ。
本人は楽しんでいるのだが、
実際、一緒に暮らしている武彦と零は、
シュラインの帰りが遅くなると心配したりしている。
困った趣味でもあるのだ。
今日も、シュラインは異界を散策。
以前から気になっていた小さな森の中へ踏み入った。
時間がなく、また危険かもしれないと警戒していたのだが、
可愛らしい動物が森へ帰っていく姿を、偶々見かけて、すっかり警戒心が薄れた。
まぁ、何かあればすぐに対応する注意力は、
シュラインには常時備わっているため、問題ないだろう。

森は、うっすらと光が差し込み、神秘的な雰囲気。
丁度、森の中心部辺りだろうか。
そこで、シュラインは「わぁ」と感激の言葉を漏らした。
吸い込まれそうなほど美しい泉が在ったのだ。
泉の周りでは、鳥や動物たちがノンビリと気を休めている。
こういう雰囲気・場所は、シュラインの大好物…いや、とても好みだ。
(夏に水浴びとかしたら…気持ち良さそうねぇ)
そんなことを考えながら、風に揺れる水面と、
そこに映る美しい景色をボンヤリと眺めていると…。
ガサッ―
物音。シュラインは、咄嗟にパッと立ち上がり、振り返った。
泉の周りにいた動物たちも、皆揃って逃げ出す。
見やった先には、見覚えのある少年の姿。
後ろを警戒しながら、ここに向かってきている。
シュラインは、サッと木の陰に隠れた。
別に隠れる必要なんて、ないのかもしれないけれど。
何となく。こんにちは、と普通に挨拶できる状況ではなさそうだと悟ったのだ。
見覚えのある少年…それは、先月シュラインを組織イノセンスにスカウトした海斗だ。
海斗は、少し乱れた呼吸を整えるために、泉の前で大きく深呼吸。
そして、ふところから銃を取り出して、ニヤリと笑った。
海斗が持っている銃は、彼の扱う魔銃とは異なるもの。
けれど、見覚えのあるものだ。
(ん…?あれって、武彦さんのじゃ…)
木の陰から海斗を見つつ、首を傾げるシュライン。
なぜ、彼が武彦の銃を持っているのだろう。
シュラインの疑問は、すぐに解けることになる。


「はっ…逃げ足だけは速ぇな。相変わらず…」
海斗が泉に到着して、およそ五分後。
武彦…いや、ディテクターも泉にやって来た。
シャツのボタンを、掛け違えているところを見ると、
慌てて、海斗を追ってきた…という感じだろうか。
シュラインは、木の陰から、二人の遣り取りを見やる。
「息切れすげーな。煙草、やめればぁ?」
ケラケラと笑いながら言う海斗。
ディテクターは、海斗の言葉に大きな溜息を落として、返した。
「生憎、禁煙失敗したばっかりでな」
「あっはは!禁煙?無理に決まってんじゃん」
「うるせぇよ。いいから、それ返せ」
海斗の手にある自身の銃を指差して言うディテクター。
「条件を飲んでくれたら、いーよ」
フフン、と鼻で笑い言う海斗。何とも生意気だ。
(条件…?)
海斗の言う”条件”とは一体何なのか。
まったくわからないシュラインは、ますます首を傾げる。
当のディテクターは、海斗の言う”条件”が、聞かずとも理解るようで。
「あ〜。何て名前だっけな。あの嬢ちゃんは元気か?」
話を、思い切り逸らした。
海斗は不愉快そうな顔で、ディテクターに歩み寄って答える。
「アイツの名前は梨乃だ。人の名前くらい、ちゃんと覚えとけ」
「あぁ。梨乃。そうそう、そんな名前だったな。で、元気なのか?」
「ふん…元気だよ」
「そか。そりゃあ何よりだ」
「…話を逸らすんじゃねーよ」
ズイッとディテクターに詰め寄り言う海斗。
表情からは、イラ立ちが伺える。
「うるさいなぁ。お前は」
苦笑しながら、海斗をグイッと押しのけて、そう返した時、
ディテクターは木の陰に隠れてこちらを見やるシュラインを発見。
バチリと交わる視線。
シュラインは、ディテクターをジッと見つめながら首を傾げて尋ねた。
(行ってもいい?)
シュラインの尋ねに、ディテクターは頷く。
木を離れ、タタッと二人に駆け寄るシュライン。
海斗は、突然後ろから人が出現したことで、少々驚いているようだ。
けれど、すぐに その人物がシュラインだと気付く。
「何やってんの。こんなとこで」
ポケッと尋ねる海斗。
「ん〜。それは、こっちが聞きたいな」
シュラインはクスクス笑いながら、そう返した。
海斗は頭を掻き、参ったなぁと言う表情を浮かべて言う。
「男同士の真剣な話してるんだよねー。今」
「銃を盗んで真剣な御話?」
手を差し伸べ、ニコリと微笑み言うシュラインに、海斗はピタリと一瞬動きを止めた。
銃を盗ったことがバレてると気付いた海斗は、
悔しそうにしながらも、シュラインへ盗ったディテクターの銃を渡す。
受け取った銃をディテクターに返しながら、シュラインは二人に尋ねた。
「この場所に…何かあるの?っていうか、お二人の関係は?」


「俺はね、別に助けてくれなんて言わなかったんだ。こいつが勝手にさ…」
ディテクターを見やって言う海斗。
「嘘つけ。怖くて泣いてたくせに」
煙草をふかしながら、ディテクターが言う。
「な、泣いてねぇよ!!」
聞いた話によると、二人の出会いは五年前。
この森で、海斗が魔物に襲われていたところをディテクターが助けたのがキッカケ。
当時、海斗は十四歳。
イノセンスのエージェントとして、精力的に仕事をし始めた時期だった。
類稀な才能と自信。組織の主力に数えられ、海斗は調子に乗っていたのだろう。
討伐が難しいとされる”森を喰らう魔物”に、一人で挑んだのだ。
結果、彼は窮地に。絶体絶命、もう駄目だ…そう死を覚悟したとき、
たまたま近くを通りかかったディテクターが、魔物を瞬殺。
海斗は、命を救われた。
海斗は否定しているが、事件当時、海斗は本当に泣いていた。
その場に居合わせた、たった一人…ディテクターが言うのだから間違いない。
「ふぅん、なるほどね。でも何で銃を盗ったの?」
ディテクターに携帯灰皿を渡しつつ尋ねるシュライン。
海斗は、笑いながらシュラインの問いに答えた。
「こうでもしねーと、構ってくんねーんだよ。こいつ」
海斗が放った”構ってくれない”という言葉にシュラインは気付く。
(懐いてるわね。随分)
気付いたことを小声でディテクターへ告げるシュライン。
ディテクターは灰皿に煙草の灰を落としつつヤレヤレと肩を竦めた。
「ところで…さっき言ってた、条件って なぁに?」
ニコリと微笑んでシュラインは、もう一つ問う。
海斗は頭をガシガシと掻くと、スクッと立ち上がり、
「秘密〜」
そう言って、逃げるように その場を去っていった。
走り去っていく海斗の後姿を見ながら、シュラインはキョトン。
「…んー。はぐらかされちゃった?」
ディテクターは、そんなシュラインの頭にポンと手を乗せると、苦笑して言った。
「腕比べが したいんだと。しつこくてな」
あぁ、なるほど…!とシュラインは、ポンと手を叩く。

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

NPC / ディテクター(草間・武彦) / ♂ / 30歳 / IO2:エージェント(草間興信所の所長)

NPC / 黒崎・海斗 / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント


■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは。毎度、どうもです^^ 参加・発注ありがとうございます。
心から感謝申し上げます。 気に入って頂ければ幸いです。
是非。また御参加下さいませ。 お待ちしております。

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2008.01.01 / 椎葉 あずま(Azma Siiba)
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