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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE 02 白亜の館

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OPENING

何とも満足そうな笑みを浮かべる、海斗。
無表情ではあるものの、梨乃も、内心は非常に満足しているようだ。
二人は、見つけた”逸材”を、とある場所へと連れて行く。
半ば、強引に。

海斗に手を引かれる逸材は、状況が飲み込めずに不可解な表情をしている。
まぁ、無理もない。
事態を把握しようと、どういうことなのかと尋ねても、
海斗と梨乃は、微笑むばかりで、一向に説明してくれないのだから。
説明不足な二人の所為で、逸材の不安や不満は膨らむばかり。

廃墟が並ぶ、不気味な地に踏み入り、逸材の不安が頂点に達した時。
海斗と梨乃は、アイコンタクトをとり、揃って前方を指差す。

彼等が示した先には、美しい白亜の館があった。

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「へぇ…そうですか」
少年が誇らしげに”アレが俺達のアジトだ!”と言ったことに対して、
無関心そうに淡々と答える夏穂。
内心は、結構大きな館だなぁとか色々思ってはいるのだが、
口にすることでもないので、声にはしていない。
少年は肩透かしを食らったようで、残念そうに言った。
「もうちょい…イイ反応してよ」
「あぁ、ごめんなさい。綺麗な御屋敷ね」
「…どうもありがとう」
仕方なく付き合ってやった感がビシビシ伝わる夏穂の言葉に、
少年は苦笑しつつ礼を述べ、夏穂を館の中へ案内した。

館の外にもたくさんいたが、中にもたくさん…コウモリがいる。
壁も床も何もかもが真っ白な館の中を飛び交う黒いコウモリは、
一見不気味だが…夏穂は特に何も感じない。
夏穂を気に入り、コウモリ達が夏穂の周りを飛び回っても…気にしない。
加えて、館内でも日傘は差したまま。
(不思議ちゃんだなぁ…)
少年は大人しくついてくる夏穂を見て、何度も そう思った。
しばらく進み、突き当たり。巨大な扉の前。
少年と少女の顔が、それまでとは一変した。
真面目な表情というか…強張った表情になったのだ。
夏穂は二人の様子に何かを感じ悟り、日傘をパタンと閉じた。
彼女の肩に乗る九尾の子も、ソワソワと落ち着かない様子だ。
(うん…確かに、凄いオーラね)
扉の向こうにいるであろう人物を心の中で称える夏穂。
「んじゃ…行くぞっ」
少年は意を決して、扉を開けた。

扉の中は、何もない…真っ白な空間。
唯一、部屋の中心にソファがあるくらいだ。
そのソファに凭れている人物こそが…。
少年と少女いわく、マスターという彼等の上司にあたる人物らしい。
「マスター。新人、連れてきたぜ」
夏穂の背中をポンと叩いて言う少年。
すると、ソファに凭れていた人物がスッと顔を上げた。
灰色のローブを纏い、フードを深く被った その人物は、
表情は、よくわからないが…男性で、老人であることがわかる。
夏穂はペコリと頭を下げた。
「ふむ…?お主の名は何と?」
静かな…それでいて深い声で老人が問う。
夏穂は淡々と答えた。
「白樺・夏穂です。はじめまして」
「ふむ…どれどれ…」
ソファに凭れたまま、ジッと夏穂を見やる老人。
(うーん。動けないわ)
老人の眼差しは優しくも鋭く、夏穂は身動きが出来ない。
かといって恐怖や危機を感じるものではないので、夏穂は冷静だ。
同時に、老人が、かなりの実力者であることが、十分理解できる。
「うむ。よかろう。申し分ない。合格じゃ」
ニコリと微笑み言う老人。
とはいえ、口元で微笑んでいることが理解るだけだが。
「はぁ、どうも…」
合格と言われ、理解に苦しみながらも言う夏穂。
少年は嬉しそうに笑って言った。
「よぉっしゃ!!これから、よろしくな!!」
手を差し出され、一応…握手に応じる夏穂。
夏穂は首を傾げたまま少年に尋ねた。
「合格って、何かしら」
「良かったな!これでキミも晴れてイノセンスの一員だっ」
「…一員って」
少年は相変わらず。人の話を聞かないようで。
夏穂が聞きたいことをスルーして、自分の喜びを真っ先に口にした。
今だに理解できずにいる夏穂に、少女が説明する。
「すみません。マスターとの面会でチェックが入るんです」
「チェック?」
「はい。こう言ってはアレですが…使いものになるかどうかを」
「はぁ、なるほど」
先程見つめられていたのは、潜在能力やら何やらを調べられていたのだと理解する夏穂。
夏穂は首を傾げたまま、少年・少女・そしてマスター…三人に告げた。
「館の御掃除とかの手伝いなら、するけど…?」
「え…?」
「いえ、あの…」
夏穂の言葉にキョトンとする少年と、少々たじろぐ少女。
マスターは何も言わず、微笑んだままだ。
夏穂は目を伏せ、続けた。
「…冗談よ」




二人の遅い自己紹介により、
少年の名は海斗。少女の名は梨乃だと、ようやく知る夏穂。
夏穂は海斗と梨乃に案内され、館をグルリと回る。
館の中は広く、一階には食堂や書庫、そしてマスタールームがあり、
二階には、巨大浴場やジム、購買などが完備。
三階から五階までは、各エージェント達の個室があるらしい。
「で。ここが、キミの部屋ね。はい、鍵」
銀色の鍵を夏穂に渡す海斗。
「どうも。でも私、ちゃんと自宅があるから…」
「あぁ、いーのいーの。必要な時だけ使えば」
「…そうなの?」
「うん。俺達は、ここしか帰る場所ないから」
「…そう」
無邪気に言ってはいるものの、海斗の言葉に何だか寂しさを感じてしまい、ふっと俯く夏穂。
そんな夏穂に、梨乃はニコッと微笑んで言った。
「着替えのときは、ちゃんと鍵かけて下さいね。覗くバカがいるので」
「おい。それ、俺のことじゃねーよな?」
梨乃の言葉に反応する海斗。
「あんた以外、誰がいるのよ」
「覗かねーよ!」
「気をつけて下さいね。夏穂さん」
「…えぇ。気をつけるわ」
「覗かねーって!!」


一通り説明を聞き終え、理解した夏穂。
夏穂は、与えられた自室で、気になっていたことを二人に尋ねた。
「二人が持ってる…あの銃は、何なの?」
海斗に襲われた際、目の当たりにした不思議な武器。
銃弾ではなく、炎を放った銃に夏穂は興味があった。
夏穂の問いに、海斗はニッと笑って、
「魔銃っていうんだ。ウチのエージェントだけが持つ武器だよ」
そう言うと、梨乃に合図をした。
合図を受け、梨乃は棚の上に置いてあった黒い箱を取り、夏穂に差し出す。
「…?」
差し出された箱を受け取り、蓋を開けてみる夏穂。
中には、彼等が持つものと同じ銃が入っていた。
「どういう魔力を宿すか…自分で決めれるからさ、好きなように使いなよ」
ニコリと笑って言う海斗。
どうやら、銃に宿せる魔法・魔力は自身で決めることができるらしい。
自分にあった属性を宿すのが一番、効率が良いらしいが、
適正がわからない場合は、とりあえず試しに一発撃ってみるといいらしい。
そうすると、その時、自分にあった属性が勝手に宿るそうだ。
宿した属性を、あとから変更することも出来るらしいが、
それは、またの機会に、と海斗と梨乃は言った。
夏穂は銃を手に取り、思う。
(自分の銃、あるんだけど…まぁ、いいか)
何はともあれ。
今ここに、イノセンス新エージェントが誕生した。
喜ぶ海斗と梨乃だが、夏穂は至ってクール。
三人のコンビネーションや、如何に?

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

7182 / 白樺・夏穂 (しらかば・なつほ) / ♀ / 12歳 / 学生・スナイパー

NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント

NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント

NPC / イノセンス・マスター / ♂ / ??歳 / INNOCENCE:マスター(ボス)


■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは。
ゲームノベル”INNOCENCE”への参加・発注ありがとうございます。
発注・参加 心から感謝申し上げます。 気に入って頂ければ幸いです。

※アイテム「魔銃」を贈呈しました。宿す魔力ですが、作中のとおり、お任せします。
宿したい魔力があれば、以降プレイングで教えて下さいませ。

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2008.01.05 / 椎葉 あずま(Azma Siiba)
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