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<WhiteChristmas・聖なる夜の物語>


プレホワイト


●プレ・ホワイト
ひらり ひら ひら
クリスマス色に染まる街に、新たに白が舞い落ちる。
ひらり ひらり
ホワイトクリスマス…ではなく、その前触れ。
ひら ひらり
雪の白ではない。
ひらり
アルバイト募集の、白いチラシ。
たくさんの、量産されたそれが、街中に散らばっていく。
「どんな人が来てくれるかなっ?」
空の上から街を見下ろしていたのは、サンタの少女。
夢の世界から飛び出した彼女は、まだ見ぬ同行者を待つため、自ら指定した場所へと向かうのだった。

●それぞれの理由 〜未織〜
式野・未織(しきの・みおり)がそのチラシを見つけた場所は、少し変わっていたかもしれない。
その日彼女が目を覚まし、朝日を部屋に呼び込もうとカーテンを開けたその瞬間、はじめに目に飛び込んできたのがその文章だったからだ。そう、チラシは窓の外に張り付いていたのである。
「うーん、雪を降らせるお仕事って寒くないのでしょうか…」
じぃっと、寝起きの姿のままにその文章を目で追っての感想をこぼす。そのまま窓を開けて手を伸ばし、きれいに保たれたままのそれをはがせば、遅ればせの朝日が未織の頬にもかかる。
「大変そうなお仕事ですが、細かい作業は好きですし、夢を作るお手伝いなんて素敵ですよね!」
この陽気だとホワイトクリスマスは難しいって、昨日の天気予報でも言っていたような、そう小さく続けながら窓を閉める。本当に雪が降らせられるなら、素敵だ。

朝の支度と出かける支度を終えた後、未織はキッチンにいた。
「折角ですから、お菓子も作って持って行きましょう…♪」
たくさんは無理だけれど、少しなら、出かける前にも作っていける時間がある。

●サンタクロースは見習い娘
「今日はみんな、集まってくれてありがとーっ♪」
集まった三人に向かいぺこり、とお辞儀をしたのはサンタ服の少女、エファナだ。
「よかったぁ、人が集まってくれるか分からなかったから、とりあえずは6人乗りの橇を用意しておいたんだけど…全員乗れそうだねっ」
にこにこと続けたと思えば、すぐにはっと慌てた様子になり手をばたばたと動かす。
「いっけない、自己紹介がまだだったよね、あたしはサンタのエファナ! まだ見習いだけど、今年のクリスマス次第では本物のサンタに昇格する…予定っ! お姉さん達は、何て呼ばせてもらえばいいのかなっ?」
「藤田・あやこよっ、エファナちゃん、いざ尋常にミニスカで勝負、勝負〜っ!」
びしぃっ! と人差し指をエファナに突きつけたあやこの風体は、自分でも言っているとおりにミニスカート。
「ミオは式野・未織って言います…良かったらミオって呼んでください」
遅ればせに答えた、白で統一した衣装が眩しいのは未織。彼女もスカートではあるがミニではない。雪が降ったら、彼女の姿はとてもよく雪景色に映えるだろう。
よく見ると、三人の中で一番荷物が多いようだが…その理由はきっと後ほど明かされる。
「…黒崎・吉良乃、呼び方は任せるわ」
サンタは老人であるべしと思っていた吉良乃は、エファナの登場に少なからず驚いていたようで自己紹介が最後になった。
「あやこおねーさんに、ミオおねーさんに、吉良乃おねーさんだねっ、それじゃ、今日はよろしくお願いしまっす♪」

●未経験者歓迎♪
「細かい作業って、実際はどんなことなんですか…?」
顔の横に小さく手を挙げて、質問をしたのは未織だ。さっそく仕事の質問に入るあたり、真面目な方なのだろう。
(どうして雪の精さん達が眠ってしまったのかも気になりますが、雪を降らせるお仕事をするほうが先ですね!)
そんな、実際に言ったら体調が危険になるようなことを考えてはいたようだが、実際は他の誰にも気づかれていない。
「それは、『雪のモト』を…実際に見てもらったほうが早いよね、雪の精さん達、トナカイさん呼んできてっお願いっ!」
エファナが虚空に呼びかけると、はぁーいっ! と何かの声がいくつか重なり、更にしばらくして聞こえる物音。
しゃんしゃんしゃん…しゃんしゃんしゃん…
トナカイの橇に付き物とも言われている、鈴の音だ。勿論、空から。
「きゃ〜、待ってたの待ってたのよこれを〜♪」
「………っ!!!」
空飛ぶ橇とそれを引くトナカイ、トナカイの上空でどうやらトナカイに指示を出して居るらしい、白く光るいくつかの球体は多分雪の精。
あやこはとにかく黄色い声を上げてはりきり、吉良乃はトナカイの登場に驚きを隠せないで居る。
未織はといえば、空飛ぶトナカイという幻想的な生き物との対面に、ただ目を輝かせるのだった。

「ここに袋入りの『雪のモト』と、袋に入れる前の『雪のモト』があるんだよ。基本的には袋入りになって居る細かいのを空から撒けばいいんだけど…ちょっと人手が足りなくて、大きい分から細かく砕いて、ばら撒く分も増やさないといけないってことなんだ」
エファナが指差し、実際に中身を見せながら説明していく。
未織はそれを丁寧にメモに取り、砕く道具も見せてもらったりしている。
横に居た吉良乃はメモこそ取っていないが、さりげなくエファナと未織の会話を補助する等気を配って居るようだ。そこは年上のお姉さんといったところか。
ところであやこだが、エファナの説明を尻目に、雪の精のほうに話しかけていた。サンタであるエファナを通してしか上手く会話をできないはずの彼らだが、語学堪能で精霊の会話にも通じているあやこにはその心配も無用であるようだ。

●いざ空の旅へ!
ひとまずの説明を終えたところで、一行は橇の座席に座った。
「おねーさんたち、最初だけちょっと捕まっててね?」
少しだけ勢いが必要だから、そう言われて三人はめいめい、思うところにつかまり態勢を整える。
「それじゃ、いっくよ〜!」
ビュウンッ!!!
エファナの掛け声の後に続いたのは強い風の音。
寒くも無く、強くもないように感じたのはきっと、それだけ不思議な力が働いたせいなのか、ただ信じがたい出来事過ぎて認識ができなかっただけなのか…わからないまま、三人がいつのまにか閉じてしまっていた目を開けるとそこは満天の星空の下。
橇の端からそっと見下ろせば、先ほどいたはずの大きなイルミネーションで飾られたツリーのある広場と思われる場所が、どこかも特定できないほど。
見えるのは、クリスマスのイルミネーションの光だけ。
「空の星空と、地の星空…どちらも綺麗ですね…」
そう未織が零せば、吉良乃がそっと頷く。
星とイルミネーション、色の多さや輝きの感覚に際はいくらかあるものの…雲もない空に居る一行を中心に、全てが光で構成されているかのようだった。

あやこの声で我に返った未織は、たった今の急飛翔に胸をどきどきとさせていた。風が強く当たることはなかったけれど、未織は敏感にスピードを感じてしまっていたのだ。
(高所恐怖症ではないので大丈夫ですが…でも、スピードがたくさん出ると、ちょっと…)
「あの、エファナさん…安全運転でお願いします」
先頭の御者席で、手綱引きを担当しているエファナに懇願する。
「あっ、ごめんごめん、本当に、空を飛ぶその瞬間だけだから、一度降りたりしなければ、大丈夫だよ♪」
「それなら、いいのですけど…」
ほっと気を取り直して、未織も『雪のモト』をばら撒く作業に入る。隣ではすでに吉良乃が黙々と作業を進めている。
「星も綺麗ですけど、このモトも、なんだか光っているようで綺麗ですね…」
星明りに照らされて、きらりと照り返すその『モト』がプレゼントで、自分はサンタクロースのお手伝いで…撒きながら、未織は考える。
(プレゼントを配るサンタクロースのお仕事は大変そうだって思っていましたが…楽しいからこそ、続けていられるんですね)

●格別な時間 〜未織〜
雪がある程度積もるまではと作業を続け、丁度いいだろうとエファナが判断したところで、あとは空の散歩を楽しむのみとなった。
「雪が振る前も綺麗でしたけど…雪が降った上で、夜景が綺麗なところを上から見てみたいなーと思います。空から見下ろしたら凄く綺麗でしょうね…!」
未織の希望を聞いたエファナは、手綱を引き迷わずといった様子で橇を走らせる。
辿り着いたのは展望台の、さらに上空。展望台自体にもイルミネーションが施されていて、その頂には先ほど皆で降らせた雪が白く積もっている。もちろん、その下にはずっと遠くまで広がっているイルミネーションの波。
夜景が綺麗だと謳われる展望台を、さらに景色として見下ろすその優越感もあわさり、ただ単純に綺麗、とする以上の美しい景色がそこにあった。

「今日はありがとうございました…お菓子、よかったらどうぞ」
朝に未織自身が作ったお菓子も含め、持ってきたたくさんのお菓子の包みをエファナ達に渡す。
ありがとう、と笑ったエファナは、サンタクロースである以前に一人の少女で。未織もつられて微笑んだ。

●ホワイトクリスマス
ひらり
はじめのひとひらを見つけたのは、誰だっただろう?
ひら ひらり
舞い落ちるそれは、時を追うごとに数を増し。
ひらり ひらり
イルミネーションの光に優しく照らされ、舞い落ちる。
ひらり ひら ひら
静かに、街に積もっていく…

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【7061 / 藤田・あやこ (ふじた・あやこ) / 女性 / 24歳 / IO2オカルティックサイエンティスト】
【7293 / 黒崎・吉良乃 (くろさき・きらの) / 女性 / 23歳 / 暗殺者】
【7321 / 式野・未織 (しきの・みおり) / 女性 / 15歳 / 高校生】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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メリークリスマス♪ 桐島めのうです。
当日のお届けに間に合わせることが出来ました。お口に合う仕上がりになっていれば幸いです。
今回のご参加、本当にありがとうございました!