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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE 01 スカウト

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OPENING

異界の辺境、廃墟が並ぶ不気味な地域。
魔物の出現が頻繁な、物騒地。
異界の住人でも、好き好んで寄り付く者はいないであろう、この地に存在する、
美しき白亜の館。
その館から、今。
一人の少年が、姿を現した。
「はぁ〜。ひっさしぶりだよな。スカウト!腕が鳴るぜ〜」
伸びをしながら、サクサクと歩く、何とも楽しそうな表情の少年。
そんな少年の後ろを、小柄な少女が、ゆっくりと付いて行く。
少女は、少年の背中に忠告を突き刺した。
「…誰でも良いわけじゃないんだからね」
「わ〜かってるよ」
ケラケラと笑いつつ返す少年。
無邪気な少年に、少女は溜息を落とす。

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絶版古書。
それは、一輝の大好物だ。
人伝に、長い時間と大金をはたいて、ようやく入手した。
手に持つ古書をチラリと見やっては、一輝は笑んだ。
自宅へ戻るまで、およそ二十分。
どんなに急いでも、それが限界だ。
せめて近道に、と普段は絶対に通らない廃墟が並ぶ道を急ぎ足で進む。
もう少し、もう少し。そう自分を抑えるものの、欲望には勝てない。
(無理だ)
一輝はピタリと立ち止まり、辺りを見回して、
適当な瓦礫に腰を下ろし、古書をパラリとめくった。
我慢できずに、読み出す。読み耽る。
そこには、何とも興味深い…素晴らしい知識が綴られていた。
学者、イリー・クロノス。
実在していたのかと疑われるまでに博識だった人物。
一輝が、偉人と認める数少ない一人だ。
イリー論。それは、世界を根底から覆す、禁断の論。
(おいおい。こんなこと考えるなんて、ほんと…イカれてんなぁ)
一輝は綴られている文に、クッと肩を揺らして笑う。
馬鹿にしているわけではない。むしろ、称えているのだ。
自分では思いつきもしない考え。
どこから捻り出されるのか、その過程。
一輝は、我を忘れて没頭した。
いつしか、周りに対する警戒を怠るほどに。

「おーい。お兄さん」
「………」
「お兄さーん。もしもーし?」
「………」
「聞こえてるー?おぉーいってばー」
「…うるせぇな」
何度も背後から声をかけられ、ようやく応じる一輝。
振り返ると、そこには見知らぬ少年と少女。
「今、忙しいんだ。邪魔」
冷たくあしらって、再び古書に目を落とす一輝。
少年と少女は耳打ち合う。
「機嫌悪ィな」
「…本読んでる時に話しかけられたらウザいわよ」
「どうしよっか。とりあえずイッとく?」
「あんた…本気?」
「すごい本気」
「…どうなっても知らないから」
「ヘーキヘーキ。お前は、どっか隠れてろよ」
「…馬鹿」
耳打ち合いのあと、パタパタと木の陰に隠れる少女。
少女は不安そうな顔で、少年を見やっている。
少年はスッと腰元から黒い銃を抜くと、
それを一輝の こめかみに宛がって言った。
「ちょっと遊ばない?」
「………」
依然、古書に夢中な一輝。
少年はアッハッハと笑うと、突然、撃った。
ゴッ―
頬を掠めた炎。
一輝は溜息混じりに立ち上がり、少年から離れて行く。
あくまでも、相手にしない構えだ。
そんな一輝にムッとしたのか、少年は発砲を続けた。
飛んでくる炎。銃弾ではなく、炎が飛んでくることに、
少し不思議だと感じつつも、一輝は気にしない。
自分が目で追っている、偉人の生きた証の方が、断然気になるからだ。
銃から放たれる炎を、すべて見事に避けていく一輝。
少年は一輝の身のこなしに口笛を吹いて喜んだ。
「すげー、すげー」
「………」
真剣に読書しているというのに、何たる邪魔。
いくら離れても、少年は追ってくる。発砲を続けながら。
一輝は我慢の限界。舌打ちの後、
「おまえ、いい加減に…」
呆れながら言おうとした。だが…。
ゴオッ―
「!!!!!」
少年の放った炎が、見事。古書に直撃。
古書は火柱を上げる。
「………」
熱さに手放し、地で消し炭となっていく古書を見やる一輝。
「…あ」
少年はピタリと動きを止め、苦笑する。
まずい、と感じたのだろう。
「どうしてくれる…」
暫しの沈黙の後、一輝は呟いた。
「あ〜…っと。ごめん。ワザとじゃないよ」
一歩退いて謝罪と言い訳を述べる少年。
すると一輝は予備動作なしに発煙手榴弾を地に放った。
「うわっ!?」
突然、辺りを包む白煙。
少年は戸惑い、たじろぐ。
そんな少年に一輝は近付き、拳で制裁を与えようとした。
ガッ―
「っわ!!」
ロクに何も見えない状況で、少年は一輝の攻撃を防御。
だが、一発で終わるほど一輝の怒りは浅くない。
次々と放つ。連続攻撃。
少年は、それらを全て防御しているが、
一輝は能力で、少年の肉体強度を徐々に弱めている。
一つ防御する度、明らかに痛みが増していく。
一輝の攻撃力も半端ないものだが、それだけじゃないと少年は悟るが…。
「いっ、いてっ!」
ガッ―
「ちょ…」
ガッ―
「ちょっと、待っ…」
ガッ―
「うっ…」
悟っても、どうにもならない。
一輝の攻撃は、とどまることなく続く。
このままではマズイ。そう思った少年は、
空中に浮かせていた自身の銃を手に取り、
再び炎で、一輝に攻撃しようと試みる。
それに気付いた一輝は、すぐさま対応。
辺りに漂っている発煙手榴弾の煙を可燃性の塵へ変化させ、
パチンと指を弾いた。
これから、何が起こるか。
一輝が指を鳴らす直前にヤバイ!と判断した少年は、
手に取った銃を再び手放し、身を屈めた。
ゴッ―
粉塵爆発。
「っ…!!」
爆風に吹き飛ばされる、少年と銃。
一輝は少年の手を離れ地に落ちた銃を蹴り飛ばし、
吹き飛んだ少年にタッと駆け寄って、
そのまま少年を地に押さえつけた。
ドシャァッ―
「いっ…てぇぇー!!」
一輝に押さえつけられ、砂を口にしつつ痛みを訴える少年。
一輝はスッと少年の喉元にナイフをあてがうと、
自身の背後に立つ人物へ告げた。
「下手に動くと、こいつの首…落とすぞ」
一輝の背中に蹴りを入れようとしていた少女は、
その言葉にピタリと動きを止めた。
「待った待った待った!ごめん、謝るから!勝手にテストして、ごめん!!」
押さえつけられつつ、叫ぶ少年。
一輝は、ナイフを少年の首にあてがったまま言う。
「何だ。テストって」
「俺達、イノセンスのエージェントでさ。あんたをスカウトしに来たんだよ」
「…スカウト?」
「そーそー。マスターから命じられてね」
「…イノセンス」
「そーそー!知ってるだろ?」
「あぁ。最近、調子に乗ってる組織か」
一輝は少年を解放し、目を伏せて言った。


「うわぁ…焦げてるし」
一輝の粉塵爆発により、焦げてしまった銃を切なく見つめる少年。
悲しそうにするも、少年は何やらブツブツと呪文のようなものを唱え、
焦げた銃を、あっという間に元に戻した。
銃を腰に収め、少年は言う。
「ま、悪いのは こっちだからな」
まったくだ、といわんばかりに揃って頷く一樹と少女。
揃った動作に一輝と少女は顔を見合わせる。
バチリと交わる視線。
少女は頬を赤らめ、パッと顔を背けた。
「とりあえずさ、マスターに会わせたいんだけど」
頬を掻きつつ言う少年。一輝は不愉快そうに返す。
「何だ。さっきから…その、マスターってのは」
「俺達のボス。イノセンス・マスターだよ」
「…会ってどうしろってんだ」
「話を聞いてくれればいいよ。まずはね」
「…本の」
「ん?」
「本の弁償はしてくれるんだろうな?」
「え?あー…うん。どーかな」
曖昧な返事をする少年の腕をガッと掴み、
骨が軋むほど力を込めて、一輝は再度言う。
「弁償は、してくれるんだろうな?」
「いったたたたたたたた!する!するよ!多分!!」
「…ふん」
一輝はパッと手を離し、少年に告げる。
「とっとと案内しろ」
一輝の背中を見つつ、少年は少女に耳打ちした。
「…あいつ、確かに強いけど性格が、ちょっとヤバくね?」
少女はポーッと一輝の背中を見やったまま、何も返さない。
「…おい。梨乃?」
「………」
少女の様子と、一輝の一癖ある性格。
少年は、ガシガシと頭を掻いた。

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

7307 / 黒澤・一輝 (くろさわ・かずき) / ♂ / 23歳 / 請負人

NPC / 黒崎・海斗 / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント

NPC / 白尾・梨乃 / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント


■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは。 はじめまして。
ゲームノベル”INNOCENCE”への参加・発注ありがとうございます。
発注・参加 心から感謝申し上げます。 気に入って頂ければ幸いです。
INNOCENCEは、関連シナリオが幾つもありますので、
是非。また、ご参加下さいませ。

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2008.01.05 / 椎葉 あずま(Azma Siiba)
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