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にゃんこ捕り
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OPENING
「きゃあ〜…コロコロしてますよ。ほら!可愛いぃぃ〜…」
何ともタマラナイ!という表情で、
レイレイが見やるのは、二匹の猫。
一匹は白く、もう一匹は黒い猫だ。
キャピキャピしているレイレイに、
ディテクターは呆れて呟く。
「…いや、もう わかったから。さっさと済ませちまおう」
「えー。もう少し見てたいです…」
「十分見ただろ。もう一時間経ってんだぞ」
「…お兄さまも、猫好きでしたよね?」
「好きだよ。好きだけどな。今は仕事中だ」
「うー。もう少しだけ」
「駄目。さぁ、やるぞ」
溜息混じりに腕をまくるディテクター。
レイレイは名残惜しそうに、スッと立ち上がる。
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しょぼんとしているレイレイの頭を軽く撫でて、
シュラインはディテクターに尋ねた。
「ねぇ。その…研究って、変なものじゃないのよね?」
「ん?」
欠伸をしながら返すディテクター。
二人の任務に協力することになったものの、
シュラインは気がかりなことが、一つある。
それは”研究”の内容。
動物を研究サンプルにして…一体何をしようとしているのか。
それが気になって仕方ないのだ。
もしも酷い…残酷な実験に使われるのなら、
いっそ…このまま逃がしてあげても…と思っている。
ディテクターは苦笑し、シュラインの問いに答える。
「完璧な愛玩動物を作りてぇのさ。お偉いさん方はな」
「愛玩…?」
「そう。ライフアニマルっつう名前らしい」
「どういうこと?」
「従順…いや、従順すぎるペットを作るってことだ」
「それって…いいの?」
「さぁな。まぁ、こいつらに危害を加えることはないだろうけど」
「うーん…そっか…」
ライフアニマル。
それは、異界にある動物研究施設が最近着手したプロジェクトで、
様々な動物を、人間に従順になるようプログラムすること。
元々は、異界で魔物と化してしまった普通の動物を、
元に戻すために計画されたものだったのだが、
これに極度の動物愛好家が食いついてしまい、
近頃は、飼うことを許されない凶暴な動物を、
従順にさせ、自らのペットとして愛でる為に…というのが主になっている。
動物からしてみれば、勝手にプログラムされ、
人間に死ぬまで従順に尽くし媚びなければならないという、
酷く迷惑な話かもしれないが…。
「人間ってのは、本当…強欲だよなぁ」
目を伏せ苦笑しながら呟くディテクター。
ディテクターとて、決して乗り気ではない。
彼も、動物好きだ。
いいように使われる動物を不憫に思う。
けれど、どうしようもないのだ。
ここで任務を放棄し、動物達を逃がしてしまえば、
IO2上司から叱咤され、研究所からも文句を言われる。
組織の名に傷をつける上に、金も入らない。
仕方のないこと。組織に属する者の、辛いところだ。
「…うん」
シュラインはディテクターの横顔を見つめつつ、切なく呟いた。
彼の立場と責任感を感じているのだろう。
暫く猫達を見つめ、シュラインは意を決する。
「道具持ってきたの。役に立つかな」
ゴソゴソと鞄を漁り、シュラインは中から道具を取り出した。
持ってきたのは、猫じゃらし。
普通の猫と何ら変わりないと聞いていたシュラインは、
効果テキメンなはず…と迷うことなく、これらを持ってきた。
猫じゃらしを二人に渡し、シュラインはニコリと微笑んで言う。
「じゃ。任務開始」
意を決したシュラインの表情。
まだ疑問や戸惑いが拭いきれていない感はあるが、
シュラインもまた、責任感の強い女性だ。
ディテクターとレイレイは、シュラインに背中を押され、任務遂行へ。
(あぁ…やっぱり、毛玉って…イイわねぇ)
屈託なく、毛づくろいをしたり、コロンと寝転がったりする猫を見つつ、
シュラインは、ポッと頬を染め、うっとり。
色々とゴチャゴチャ考えていたのに、うっかり和みモード。
動物の癒し効果って…やっぱり、凄い。
シュラインは微笑みつつ、二匹の猫に、ゆっくりと近付いていく。
ピクリと反応し動く猫の耳。
猫達は立ち上がり、警戒を始めた。
(うんうん…そうね。怖いわよね)
シュラインは微笑んだまま、猫じゃらしを使う。
背中に隠して…パッと出現させ、また背中に隠して…パッと出現させる。
その繰り返しで、猫達を十分に引き付けることが可能だ。
お尻を振り、ウズウズと動く猫達。
タイミングを計って、突撃。
ズサー。
(可愛い…)
じゃれている猫達にシュラインは微笑む。
「猫じゃらしって凄いですねぇ」
効果に驚くレイレイ。
猫じゃらしを実際、手にするのは始めての為、ビックリしているようだ。
シュラインは猫じゃらしを巧みに扱い、二匹の猫を虜にさせる。
端から見れば、ただ猫と遊んでいるだけに見えるが…。
シュラインはディテクターとレイレイにも、
同じように、猫じゃらしを使って猫達の警戒心を払うよう促す。
レイレイは喜んで参加するも、
ディテクターは、少し躊躇いがちだ。
恥ずかしいのもあるのだろうが…実際、参加してみると、
これがまた、なかなか面白い。
本当に、猫を夢中にさせてしまうのだから。
まさに猫じゃらし、だなぁ…などと思いつつ、
ディテクターは、しゃがんでパタパタと猫じゃらしを振った。
すっかり警戒心の薄れた猫達は、
シュライン達に気を許し、自ら寄ってきては寝転がり、
腹を見せて、もっと遊んでと催促する。
その愛くるしい姿に、キューンとなる心。
いつまでも、遊んでいたい。
もう、いっそ出来ることなら家に連れて帰りたい。
シュラインとレイレイは、心から そう思う。
けれど、そうもいかない。
猫達を捕らえて、研究所に戻すという仕事なのだから。
名残惜しそうに、シュラインは準備していたゲージに猫達を入れる。
何の躊躇いも疑いもなく、素直にゲージの中に入り、
どこか連れて行ってくれるの?という期待の眼差しで見つめる猫達。
シュラインは、キュッと唇を噛んで、猫達に挨拶をした。
「怪我しないように…元気でね」
「ニャ?」
屈託ない声で鳴く猫達。
シュラインは俯き、ゲージをディテクターに預けた。
ションボリとしているシュラインとレイレイを見て、
ディテクターは思う。
(はぁ〜…。だから着いて来なくていいっつったんだよ)
研究所に猫を引き渡し、謝礼を貰う。
ただ、猫を捕らえるだけなのに、破格の報酬だ。
高い報酬の代わりに、寂しくなる。
何て、切ない達成感。
シュラインとレイレイは、
右と左で、それぞれディテクターの腕をガシッと掴んで、
何とも言えぬ、しんみりとした表情。
そんな二人に挟まれて、ディテクターはポリポリと頭を掻いた。
シュラインは、ポツリと呟く。
「ねぇ。探偵さん…」
「ん?」
「帰ったら…頭、撫で回していいかな…」
「撫で回すって、お前」
「…じゃ、撫で倒していいかな…」
「大して変わらんだろ」
苦笑するディテクター。
レイレイが、二人の会話に乗っかる。
「あ、お兄様…私も。あ、私は逆にナデナデして欲しいです」
「あ、私も、そっちがいいなぁ」
レイレイの言葉を聞き、言い直すシュライン。
「…わかったわかった」
ディテクターは呆れ笑いを浮かべつつ、二人を両腕に吊るして歩く。
ほんのり寂しく任務完了。
IO2本部へ連絡を済ませ、
自宅である興信所に戻った後、仰せのままに。
ディテクターは、姫二人の頭を優しく撫でた。
(猫みてぇ…)
そんなことを、思いながら。
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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】
0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
NPC / ディテクター(草間・武彦) / ♂ / 30歳 / IO2:エージェント(草間興信所の所長)
NPC / レイレイ(草間・零) / ♀ / ??歳 / IO2:エージェント (草間興信所の探偵見習い・武彦の妹)
■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
こんにちは。毎度、どうもです^^ 参加・発注ありがとうございます。
心から感謝申し上げます。 気に入って頂ければ幸いです。
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2008.01.08 / 椎葉 あずま(Azma Siiba)
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