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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


にゃんこ捕り

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OPENING

「きゃあ〜…コロコロしてますよ。ほら!可愛いぃぃ〜…」
何ともタマラナイ!という表情で、
レイレイが見やるのは、二匹の猫。
一匹は白く、もう一匹は黒い猫だ。
キャピキャピしているレイレイに、
ディテクターは呆れて呟く。
「…いや、もう わかったから。さっさと済ませちまおう」
「えー。もう少し見てたいです…」
「十分見ただろ。もう一時間経ってんだぞ」
「…お兄さまも、猫好きでしたよね?」
「好きだよ。好きだけどな。今は仕事中だ」
「うー。もう少しだけ」
「駄目。さぁ、やるぞ」
溜息混じりに腕をまくるディテクター。
レイレイは名残惜しそうに、スッと立ち上がる。

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「うぉおお、待ちやがれっ。このっ」
「お兄様!乱暴は駄目ですっ」
「うっさい!お前も手伝えっ!ほら、そっち行ったぞ!」
「きゃー!可愛いー!のに、速いー!」
「きゃー可愛い〜じゃねぇよ!!」
狭い倉庫の中、猫二匹を追いかけているディテクターとレイレイ。
応援を頼まれ、現場にやって来た冥月は唖然とする。
追いかけている、というか何というか。完全に遊ばれている。
翻弄されているとしか、言いようがない。
「おい…まさか、そいつらを捕まえるのに協力しろと?」
腕を組み、ボソリと言う冥月。
冥月の姿を見て、レイレイはニコリと微笑み、
「あっ、冥月さ…」
そう言い掛けて、ハッとし、パッと口を塞いだ。
ディテクターは一旦、猫を追うことを止め、冥月を歓迎する。
「おぅ。遅かったな」
肩で息をするディテクター。
冥月は、ハァと大きな溜息を落とし、呆れて言った。
「私は、忙しいんだが」
「知ってる。でも呼んだら来るだろ、お前は」
フッと笑って言うディテクター。
冥月はムッとした表情を浮かべる。
事実、そうだから…というのもあるが、
二匹の猫を捕らえるのに応援を呼ぶこともあるまい…と呆れているのだ。
たかが、猫を捕らえることに。そう思っている冥月に、
ディテクターは詳細を話した。
彼等が捕獲しようとしているのは、ライフアニマルのサンプル。
ライフアニマルとは、異界にある動物研究施設が最近開発したもので、
人間に従順になるようプログラムされた動物のこと。
捕獲対象の猫二匹は、まだプログラムを組まれる前で、
普通の猫と何ら変わりはない。ただ、異界に住まう動物ゆえに、
脚力が現実世界の猫とは比べ物にならないほど優れている。
ディテクター達が手こずっている原因は、そこだ。
何でもかんでも自分達の思うがまま、
言いなりにさせようとする人間の強欲さにも呆れるが、
冥月は、それより気になって仕方ないことがある。
ピッとレイレイを示し、冥月はディテクターに、
その”気になって仕方ないこと”を尋ねる。
「彼女は誰だ」
冥月の問いに、ディテクターはクッと笑い、レイレイに目配せをした。
その合図に、レイレイは小さく頷くと、
ペコリと頭を下げて、自己紹介をした。
「はじめまして。レイレイです。お兄様が、いつも御世話になってます」
「…冥月だ。よろしくな」
冥月はレイレイをジッと見やって、名乗る。
「そいつもIO2エージェントさ」
「お前を、お兄様と呼んでいたが…お前、妹なんぞおらんだろう」
不可解な表情で、ディテクターに問う冥月。
ディテクターは、肩を竦めて、はぐらかす。
「そうか…お前に、そんな趣味があったとはな」
溜息混じりに言う冥月。
目を伏せて言う冥月を見ながら、レイレイはドキドキハラハラ。
ディテクター同様、正体がバレぬよう、彼女も数珠を持ってはいるが、
冥月は、感の鋭い女だ。バレてもおかしくないと不安になってしまう。
けれど、それは要らぬ心配だったようで。
やはり、冥月は二人の正体に気付かない。
今彼女にとって、最も身近な人物なのに。数珠の効果は、見事なものだ。
「まぁ、俺の大そうな趣味は置いといて、だ。協力してくれ」
ソワソワしているレイレイの背中をさり気なく叩き、言うディテクター。
レイレイはハッとし、続けて言う。
「よ、よろしくお願いします」
二人の申し出に、冥月は一言。
「断る」
ええっ、という表情を浮かべるレイレイと、
頬を掻いて溜息を落とすディテクター。


冥月は、断じて手伝おうとはしないが、その場を去ることもせず。
腕を組み、猫に翻弄されるディテクターとレイレイを見物している。
「そいつの世話は大変だろう」
時折、他愛ないことをレイレイに尋ねながら。
「て、手伝ってくれないみたいですよ」
ボソボソとディテクターに言うレイレイ。
「最後まで手伝わないと思うか?あいつが」
クッと笑い言うディテクター。
その言葉に、レイレイはクスリと笑って首を振った。
必死に追いかけるも、一向に捕まえることの出来ない猫。
猫達は、身動きせずに二人を見やっている冥月に気付き、
一匹は冥月の肩にピョンと飛び乗り、もう一匹は冥月の足に尻尾を絡ませた。
「「あ」」
声を揃えて言うディテクターとレイレイ。
どういうわけか、猫が揃って冥月に懐いた。
今なら、抱きかかえて捕獲は容易い。
まぁ、抱きかかえるのは冥月でなくてはならないが。
「捕まえてくれよ、そいつら」
「御願いします〜」
二人に乞われ、冥月はフッと鼻で笑うと、
足に尻尾を絡ませる猫を抱きかかえて、彼等の耳に自身の耳を近づけた。
ニャアニャアと鳴く猫達。
「そうか、助けて欲しいと。報酬は?」
「ニャア」
「ふむ。まぁ、いいだろう。請けてやる」
猫と会話する冥月。実際は小芝居なのだが…。
ディテクターはハァと大きな溜息を落として呟く。
「卑怯だな…」
「お、お兄様。どうしましょうか」
苦笑しながら尋ねるレイレイ。
ディテクターは腕まくりをし、キッと冥月を見据えて言った。
「捕まえる対象、追加」
鬼ごっこ、開始。

猫を抱きかかえたまま、二人から逃げる冥月。
決して広いとはいえない倉庫の中、繰り広げられる鬼ごっこ。
「おま、お前な。依頼したのは俺が先だろうが…よっ!」
ディテクターの伸ばした腕をヒラリと避けて、冥月は言う。
「貴様には、ハッキリと請負拒否しただろう」
「だー!くそ!何でだよ!」
一向に捕まえることのできない事態に、
ディテクターとレイレイは揃って息を切らす。
疲弊から、しゃがんでグッタリする二人を見て、
冥月はクックと笑うと、影を操り、それを箱状にすると、
”すまないな”と謝罪しながら、猫達を、その箱の中へ入れた。
キョトンとしている猫達。
妙な感情が湧きそうになるのを堪え、
冥月は、猫達をディテクターに差し出した。
「…お疲れ」
苦笑しながら言うディテクター。
「お前がな」
冥月は、そう言って、その場を後にする。
スタスタと歩いて行く冥月の背中に、
レイレイが、ありがとうございましたと感謝を述べると、
冥月は振り返ることなく、ヒラヒラと手を振った。



冥月が去り、任務完了の報告を済ませた帰り道。
レイレイはディテクターに問う。
「ねぇ、お兄様」
「ん?」
「どうして、隠すんですか」
「何を」
「私達の正体っていうか…その…」
レイレイは困った笑顔を浮かべる。
現実世界で面識があり、家族のように絆が深く仲も良いのに、
こちらでは、ただの知人でしかない、というのが、
レイレイは心苦しいというか、寂しいようだ。
レイレイの気持ちを聞かずとも理解るディテクターは、
煙草に火を点けながら、笑って言った。
「こういうのも、楽しいだろ。気の持ちようさ」

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

2778 / 黒・冥月 (ヘイ・ミンユェ) / ♀ / 20歳 / 元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒

NPC / ディテクター(草間・武彦) / ♂ / 30歳 / IO2:エージェント(草間興信所の所長)

NPC / レイレイ(草間・零) / ♀ / ??歳 / IO2:エージェント (草間興信所の探偵見習い・武彦の妹)


■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは。毎度、どうもです^^ 参加・発注ありがとうございます。
心から感謝申し上げます。 気に入って頂ければ幸いです。

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2008.02.02 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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