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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


幼馴染

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OPENING

「お兄さん。お電話です」
受話器の通話口を手で押さえながら言う零。
内容が仕事の場合は、仕事です、と伝える為、
そうではなく、私用の電話だと気付く。
「誰?」
煙草を消しながら武彦が言うと、零はニコリと微笑んで言った。
「藤二さんです」
ピタリと止まる武彦の動き。
三秒ほど硬直した後、武彦は零に受話器を寄こせと促しながら溜息を吐いた。
「何だ急に」
『何だはないだろ』
「いつ帰ってきた?」
『つい、さっき』
「あーそう。おかえりおかえり」
『何その言い方。冷たいにもほどがあるんじゃない?』
「うっせーよ」
『っていうかさ、今日、興信所行くから。お土産アリだよ』
「別にいいけど。何時くらいだよ」
『うん?もうすぐ着くよ』
「はぁ〜〜〜???」

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特に何の用もなく、いつものように興信所を尋ねた冥月。
その玄関先で、冥月は、見知らぬ男と会う。
扉の前で首を傾げている男に、冥月は怪しい奴だな…と思いつつも、尋ねた。
「客か?」
冥月の声にハッとし、振り返る男。
男はニコリと微笑むと、こう返した。
「えぇ、まぁ。っていうか、すみませんけど…ここ、草間興信所ですよね?」
「看板を見れば理解るだろう。間違いない」
「あ〜。そうですね。いや、ちょっと変貌しすぎてて混乱してしまいまして」
「…まぁ、入れ」
男の言葉から、以前、改装前の興信所を知っているということが理解る。
冥月は自分が言うのも何だが…と思いつつ、男を所内へ案内した。
リビングへ向かう途中、男は冥月に尋ねる。
「あなたは、どちらさま?」
「…ただの手伝いだ」
冥月は、そう言ってリビングの扉を開けた。
ガチャッ―
「おい、客だぞ」
冥月の言葉に、ソファに凭れていた武彦が振り返る。
「お久しぶり〜」
ヒラヒラと手を振る男。
武彦は、ハァ〜〜と大きな溜息を落とした。
キッチンで洗い物をしていた零は、男の顔を見るなり嬉しそうに言った。
「藤二さん、おかえりなさい〜」
(………?)
冥月は、何が何やらサッパリだ。


男の名前は、赤坂・藤二。
武彦の幼馴染で、各国を放浪する旅人兼作家…らしい。
藤二の風貌は、まぁ何の変哲もない。
だがしかし、黙っているだけで、変わり者だと理解できる。
放つオーラというか雰囲気が、異質なのだ。
出されたコーヒーを美味そうに飲む藤二を見つつ、
冥月は影で彼をサッと探ってみる。
ふと気に留まるのは、懐に眠る銃。
どこかで見たことのある、その妙な銃に冥月は苦笑して言った。
「変わった銃を持ってるな」
「ん?あらら…覗いたの?えっち☆」
ハハッと笑いつつ言う藤二に、冥月は一瞬呆けた。
(馬鹿っぽい…)
零に頼まれて買ってきた夕飯の材料を冷蔵庫にしまいつつ、
冥月はボソリと呟いた。
「客も変なら友人も変だな」
地獄耳の武彦は ”聞こえましたよ、冥月さん” と笑う。
和やかな雰囲気の中、藤二はジッと冥月を見やり、武彦に問う。
「なぁ、あの子…もしかして彼女?」
ボトッ―
まぁ、冥月も地獄耳だ。聞こえたのだろう。
キャベツをボトリと落としてしまった。
零はクスクス笑いながら落ちたキャベツを拾って冥月に渡す。
「お前には関係ないだろ」
不敵な笑みを浮かべつつ返す武彦。
確かにそうかもしれないが、先ず否定しろ…と思うも、
ここで喚くと、余計にからかわれてしまうと悟った冥月は、沈黙を決め込んだ。

ソファに向かい合って座る武彦・冥月と藤二。
零は楽しそうに鼻歌しつつ、食事の支度をしている。
(…顔は、それなりに端正なんだがな)
藤二を見つつ、そんなことを思う冥月。
冥月の熱い眼差し(勘違い)に藤二は照れて笑ってみせたりした。
「で…どうなの。最近。仕事っつーか…」
煙草に火を点けながら武彦が問うと、藤二はガサゴソと荷物を漁りながら返す。
「まぁまぁだよ。けど資金が尽きたから、しばらくは こっちにいるよ」
「あぁ、そう」
「また、手伝いに来てあげるからさ。嬉しい?」
「ありがた迷惑だな」
「酷いなぁ。…はい、これ。お土産ね」
コトリとテーブルの上に箱を置く藤二。
武彦は、とりあえず箱を手に取り中身を確認するも、
ヤレヤレといった表情で、箱を冥月に渡した。
ん?と首を傾げつつ箱を受け取り、中を確認してみる冥月。
中には、満面の笑顔が逆に気持ち悪いコケシの置物がビッシリと詰められていた。
(気持ち悪っ)
咄嗟に、パタンと蓋を閉じる冥月。
二人の態度に、藤二は不満そうな顔をしつつ、
そのコケシが、どれほど貴重で神々しいものかを詳しく説明した。
異国の少数民族が神と崇める代物らしい。
長々と楽しそうに説明する藤二に、冥月は再び呆けた。



「幼馴染…ということは、学生時代も一緒に過ごしたのか?」
冥月の問いに、藤二と武彦は揃って ”一応ね”と返す。
武彦の学生時代…人の過去に興味など滅多に湧かないが、
対象が武彦となると、ちょっと別だ。気になるらしい。
冥月は、少しずつ彼の過去を探り出す。
「学生時代から、ずっと、こんな感じか。こいつは」
「うん。そうだねぇ。カッコつけるのが趣味だったね」
「カッコつける…?」
「うん。人と違う所をアピールしてモテようと必死だったよ」
「………」
チラリと武彦を見やる冥月。
武彦は目を伏せ苦笑して返す。
「鵜呑みにすんなよ。んなワケねぇだろ」
「…どうだかな」
「あ〜でもね、そのくせ女の子に付き纏われると冷たく あしらうの、こいつってば」
「…何だ、それは」
「ワイルドな感じでありたかったんじゃないかな?」
「………」
再びチラリと武彦を見やる冥月。
武彦は煙草を消しつつ返す。
「鵜呑みにすんなって」
「…変わってないんだな。お前」
「それって、良い意味?悪い意味?」
「両方だ」
武彦と冥月の遣り取りに微笑みながら、零にコーヒーのおかわりを要求する藤二。
「特定の女はいなかったのか?」
冥月の問いに、藤二はミルクポーションのツメをパキンと折りながら返す。
「彼女ってことかな?」
「まぁ、そんな感じの」
「いなかったねぇ。っていうか、俺達の傍に美人サンがいたからね」
「…美人サン?」
「そうそう。千華っていう…あれ。っていうか、千華 元気かな?」
コーヒーにミルクを入れつつ問う藤二。
武彦は灰皿をテーブルに置いて笑う。
「知らね。忙しいだろ、あいつ」
「あらら。連絡とってないの?」
「とってねぇな」
「まぁ、スーパーモデルさんだしね。今や」
「だな」
二人の会話から察するに、どうやら学生時代というか、
幼馴染だといえる人物は、もう一人存在するようだ。
名前と職業から察するに、女らしい。
初めて聞く名前に、冥月は若干、表情を曇らせる。
そんな冥月を見て、武彦は苦笑して藤二に言った。
「千華の話は止めよう。こいつ、やきもち妬くから」
「や、妬いてない!」
ハッと我に返り否定する冥月。
藤二はニヤニヤしながら二人を見やった。
「あ〜らら。お熱いんですねぇ〜」
「…あ、熱くないっ!」



久しぶりの帰国、そして幼馴染宅を訪問。
夕食を共に食し、他愛ない話に華を咲かせ、妙な土産を贈呈。
突然の藤二来訪は、同日二十時半に終了を迎えた。
「じゃ、また来るよ」
ニコリと優しい笑みを浮かべて言う藤二。
いつでもどうぞ、と微笑み返す零に反して、
武彦は、シッシッと追い払うような素振りを見せる。
武彦の酷い扱いに文句や不満を述べることなく、
藤二はヒラヒラと手を振り、興信所を去っていった。
「は〜〜〜。うるさいのが消えるとスッキリするな」
伸びをしながら所内へ戻っていく武彦。
「お兄さん、冷たすぎですよ。いつもいつも…」
「あー?いいんだよ。あいつなんだから」
「も〜〜」
零に背中を叩かれる武彦を見やりつつ、冥月は溜息。
今まで以上に ”面倒事” が増えるのだろうな…思うが故に。

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

2778 / 黒・冥月 (ヘイ・ミンユェ) / ♀ / 20歳 / 元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒

NPC / 草間・武彦 (くさま・たけひこ) / ♂ / 30歳 / 草間興信所所長、探偵

NPC / 草間・零 (くさま・れい) / ♀ / --歳 / 草間興信所の探偵見習い

NPC / 赤坂・藤二 (あかさか・とうじ) / ♂ / 30歳 / 作家兼旅人・武彦の幼馴染


■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは。いつも、発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします。

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2008.02.01 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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