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<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>


カップル・マッチング

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OPENING

(面倒だねぇ…)
送られてきた手紙と招待状を手に、溜息を落とす蓮。
蓮が持っているのは、カップル・マッチングの招待状。
さて、カップル・マッチングとは何か。
まぁ…簡単に言えば”合コン”だ。
友人が主催者らしく、是非参加してくれと招待状を送りつけてきたらしい。
何だかんだで古くからの付き合いだ。
無下に断るわけにもいかない。
蓮は渋々、準備を始めた。
カップル・マッチングは今宵、二十時より開催される。

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「え、ちょっと…駄目だって。蓮さん、私…って、きゃぁぁぁ〜」
いつものように、フラリと店を訪ねたシュライン。
彼女は、今まさに被害に遭っている最中だ。
何でも蓮は、友人主催のパーティに渋々参加することになったらしく、
パーティとは名ばかりで、その実態は”合コン”とのこと。
乗り気なわけがない蓮だが、友人の面子もあるので拒否できず。
準備をしていたところに、フラッとシュラインが現れたものだから、蓮はハッと思いついた。
”この子も連れて行こう”
では、シュラインの被害とは何ぞや?
簡単に言うなれば、彼女は今、蓮に服を脱がされている。
脱がされている、というよりは剥がされているという感じか。
うん、とてもセクシーな光景だ。
ここに男性が来れば、大興奮してしまうだろう。
詳しく説明を…!と鼻息を荒くして待つ男性もいるだろうが、ここは割愛。
シュラインも、レディですから。恥ずかしいのですよ。
剥がされつつ、シュラインは必死に携帯でメールを打つ。
相手は武彦。ところが、蓮をそれを許すはずがない。
携帯は、没収。
武彦には『蓮さんに…助けt』という、
明らかに打ってる最中だったメールが辛うじて届いていることだろう。

というわけで、蓮に身包み剥がされ、パーティスタイルに変貌したシュライン。
紺色のスリップドレスに、髪はアップで、化粧は控えめ且つ上品に…。
仕上がりを一言で述べるなら”良家のお嬢様”そんな感じだ。
鏡に映る自分の変貌ぶりに、うっかり感心してしまうシュライン。
(…わぁ)
蓮は、こうして人を変貌させるのが上手い。
化粧も彼女が施したのだが、プロ顔負けの仕上がりだ。
だが、ありがとうなんて言葉は出るわけもなく。
シュラインは我に返り、蓮に頬を膨らませて告げた。
「後で返してね。私物一式…」
蓮はクスクス笑いつつ「勿論さ」と頷いた。



パーティ会場は、豪華な屋敷。
主催者…蓮の友人の自宅だ。
こんな立派な屋敷に住まう人物が友人というのも、何というか…蓮らしい。
屋敷に入ると、すぐに受付カウンターがあり、
蓮は受付に招待状を渡して手続きを済ませる。
「…そちらの女性は?」
シュラインを見ながら微笑み言う受付。
シュラインは、ジッと蓮を見やる。
すると蓮は淡く微笑んで言った。
「私が勝手に連れてきたんだけど、駄目かい?」
「い、いえ。問題ないです。どうぞ、中へ」
蓮の笑顔に悩殺されたのか、受付は俯き招待状ナシのシュラインの参加を認めた。
(上手ねぇ)
そんなことを思いつつ、シュラインはクスクス笑って、蓮の後を着いて行く。

本会場は、実に多種多様な男女で溢れかえっている。
見るからに”ジェントル”な男性から、ストリート系の男性。
オホホホホと自然に笑えそうな”お嬢”な女性から、ロリータ系の女性まで…。
来るもの拒まず。そんな姿勢が伺える。
「ふぅ…」
溜息を漏らすシュライン。仕方のないこと。
嫌だと何度も言ったのに、無理矢理連れて来られたのだから。
けれど、シュラインは気立てのよい女。
いつまでも不貞腐れていては、蓮さんと、その友人の面子が立たない。
シュラインは気持ちを切り替え、グルリと屋敷内を見回す。
「すごい御屋敷ねー…どんな方なの?その友人って…」
給仕ワインを二つ受け取り、一つをシュラインに差し出しつつ蓮は答える。
「デザイナーをしてる御婦人さ。ほら、あそこにいるよ」
ヒラヒラと手を振る蓮の視線を辿ると、
そこには、とても上品な婦人がいた。割と歳は重ねているようだが、
そんなことを気にとめさせない、美しい婦人だ。
「なるほど…納得」
婦人にペコリと頭を下げつつ呟くシュライン。

振舞われるワインは、かなり上等なもので、思わず微笑んでしまう。
食事も見事で、立食故に気軽に手を出せる。
「わぁ、これ美味しい」
食事とワインを存分に堪能するシュラインと蓮。
だがしかし、パーティの本分は”出逢い”だ。
二人は、遠目でも目立つ。男が放っておくわけがない。
「失礼します。お名前、宜しいですか?」
「いやぁ…美しい」
「こんばんは。良い夜ですね」
「見惚れてしまいましたよ」
二人の周りには、次々と男が群がってくる。
誰も彼も似たり寄ったりな台詞で、口説き落とそうと必死だ。
シュラインと蓮は必殺営業スマイルで、それらを華麗にかわし続けながら、
食事とワインを、あくまでも食事とワインを楽しむ。
「さっきの男、かなり良かっただろうに。勿体ないねぇ」
笑って言う蓮。シュラインに言い寄ってきた男について述べているようだ。
「んー。気持ちだけ受け取っておく感じで…」
シュラインはワインを飲みつつ、微笑んで返す。
(言い寄られるのは有難いことなんだけど…駄目なのよねぇ、どうしても)
気持ちは有難い、自分を気に入ってくれたという気持ちは、素直に有難い。
けれど、その男と仲良く親しくなろうという気には全くならない。
シュラインは、そういう女だ。彼女にナンパを試みても無駄。
ただ一人、成功する男はいるけれど…まぁ、今日のところは伏せておこう。
「お堅いねぇ」
「蓮さんもでしょ」
「まぁ、そうだけどね。でも必要な男もいるさ。人生のスパイスにね」
「あぁ、それはあるかもね」
クスクスと笑いあう二人。
二人の言う”人生のスパイス”とは、言い方を悪くすれば”道具”
生きていく上、或いは伸上がる為に必要な繋がりを意味する。
事務所や本業上、パイプを繋げておくと後々良い方向に事が転びそうな相手も、
中にはいる…かもしれない。シュラインは、そう思いつつ男性達を見やる。
まぁ、だからといって自分から接触することは断じてしないが。



パーティも終盤。
そこらじゅうでカップルが成立している中、
トイレから戻ったシュラインは蓮を探す。
(あれ…?)
ここで待ってる、と言っていたはずなのに。蓮がいない。
一瞬戸惑ったシュラインだが、すぐに戻ってくるだろうと思い、
シュラインは、その場を動かず、壁に凭れて目を伏せた。
と、その時。
「すみません。ちょっと御話しませんか」
またしても、シュラインに声がかかる。
蓮がいないと少し心細い気もするが、一人でも十分。
言い寄る男性を自然にあしらうのは、もう手馴れている。
シュラインは目を開きつつ微笑み、告げた。
「すみません、私…」
その途中で、シュラインは目を丸くする。
当然だ。自分に声をかけた男が、見慣れた人物なのだから。
「たっ、武彦さん。何してるの」
驚き慌てふためくシュラインに、武彦はクックッと笑う。
何でも、藤二に誘われて無理矢理連れて来られたらしい。
で、藤二はというと…女性に囲まれて、てんてこまいの御様子。
楽しそうだから、と軽い気持ちで参加したのが仇になっている。
「馬鹿だな。あいつは本当に」
次々と言い寄ってくる女性の相手に必死な藤二を見つつ、武彦は言う。
隣で、シュラインは何も言わず、ジッと彼を見つめているだけ。
「ん。何だ。何かついてる?」
シュラインを見やって言う武彦。
ハッと我に返り、シュラインは思わず顔を背けてしまう。
見慣れぬスーツ姿が、とても新鮮なのだろう。
頬を染めるシュラインを見て、武彦は満足そうに微笑むと、彼女の手をとって言った。
「帰るか」
「え?」
「っていうか、帰りたい」
「えぇ?でも、蓮さんが…」
「蓮は二階で主催者と話してるよ」
「えぇぇ?」
「ほら、帰るぞ」
シュラインの手を引き、歩き出す武彦。
チラッと上を見やると、蓮と主催者の婦人がヒラヒラと手を振っている。
シュラインは、溜息と淡い微笑みで彼女達に手を振り返す。

「お前って、モテるのな」
帰り道、武彦がポツリと呟く。
シュラインと蓮が何人もの男に言い寄られているのを藤二と二人で見ていたらしい。
「お、お断りしてたのよ?」
少し慌てて言うシュライン。
武彦はクスクス笑いつつ、シュラインの頭を撫でて言った。
「お断りしてくれないと困るっつーの」
意外な人物に”お持ち帰り”されて、パーティは終了。
(来て良かったかも…?)
武彦と手を繋ぎ、興信所へ帰るシュラインは、結末に大満足の御様子だ。
で。藤二は、すっかり忘れられてるわけだが…まぁ、いいか。ドンマイ、藤二。

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

NPC / 碧摩・蓮 (へきま・れん) / ♀ / 26歳 / アンティークショップ・レンの店主

NPC / 草間・武彦 (くさま・たけひこ) / ♂ / 30歳 / 草間興信所所長、探偵

NPC / 赤坂・藤二 (あかさか・とうじ) / ♂ / 30歳 / 作家兼旅人・武彦の幼馴染


■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは。いつも、発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします。

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2008.02.01 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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