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滅せ!ハッカー!
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OPENING
「うっわぁ…まただ。ほんっと、ウザいなぁ」
紙パックの苺牛乳をズズッと飲みながらゲンナリする雫。
雫の悩みの種。それは、ハッカー。
昨晩から、大切なホームページが荒らされて酷いことになっている。
管理パスワードを勝手に変えられていたり、
デザインをセンス皆無なものにされたり…。
イラつきプンスカする雫だが、
彼女の力を持ってしても、犯人像が一向に掴めない。
「うむぅ〜…これは、もしかすると〜…」
ムムッと真剣な表情でモニターを見つめる雫。
雫は、もしかすると怪奇現象かもしれない…と疑いだした。
何でもかんでも怪奇現象に結び付けてしまう彼女の悪い癖だ。
だがしかし、それは見事に的中していた…。
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自宅のパソコンから、雫のホームページの異変に気付いたシュライン。
シュラインは、滅茶苦茶になった雫のホームページのコンテンツを、
一通り確認して、すぐさま彼女の元へ向かった。
(斬新な更新…ってわけじゃないわよねぇ)
そんなことを考えながら。
シュラインが目の当たりにしたのは、ホームページデザインの一新。
今までの、不思議とミステリアスで、おしゃれなデザインとは違い、
何というか、非常に目に痛いデザインに変わっていたのだ。
どこぞの秀逸アーティストのホームページかと思うほどに。
一般的に見れば、明らかな異変で案ずるところだが、
シュラインの場合、そのデザインが彼女の好みにそぐうので、
おかしいな…と思うより先ず、あら、素敵。と思ってしまったようで。
けれど、コンテンツを一通り確認して、シュラインは異変に気付いた。
表示されている文字というか言葉遣いが、明らかに変なのだ。
”ギャル文字”と呼ばれるもので表記されている。
雫は現役女子学生だ。この文字を扱えないこともないだろう。
けれど、世界に公表するホームページ…ましてや、
欲しい情報を得る為の大切なホームページで、
万人に理解されない文字を使うとは考えにくい。
雫の本拠地であるインターネットカフェに到着し、
シュラインは、不愉快そうにマウスでスクロールをかける雫の後姿を確認。
何やらブツブツと文句を言っている雫に歩み寄り、
シュラインは、彼女の肩に手を乗せて言った。
「何か、手伝おうか」
突然声を掛けられ雫はビクッと肩を揺らしたが、
声でシュラインだと理解し、振り返って、くたびれた笑顔を見せた。
「も〜…ほんっと、勘弁して欲しいよ〜」
雫曰く、ホームページに異変が起きたのは一週間ほど前から。
始めは、所々にギャル文字が出現する程度だったが、
日が経つと、事態はどんどん悪化。
ちょっとした修正では追いつかなくなるほどの迷惑行為が続いたそうだ。
心ない輩の仕業と考えるのが妥当な気もするが、雫は断言した。
”これは、怪奇現象だ” と。
シュラインは出されたコーヒーにミルクを入れつつ問う。
「うーん?ね、どうして怪奇現象だと思うの?」
元々、雫は怪奇マニア。それゆえに、そっち系には鼻が利く。
けれど、今回の事件を怪奇現象だと言うには、何の根拠もないような気がするのだ。
雫は、何やら呪符のようなものを懐から取り出して、
「勘だよ」
一言そう言うと、テーブルの上に呪符を丁寧に並べ出した。
(うん。やっぱり根拠はないのね)
クスクスと笑うシュライン。
シュラインは、コーヒーを飲みながら雫に問う。
「…何してるの?それ」
シュラインの問いかけに、雫はフッと不敵な笑みを浮かべると、呪文を唱え出した。
「サルサルビッチサルビッチ〜〜〜」
「…ぶ」
思わずコーヒーを吹き出すシュライン。
両手を広げ、目を伏せて謎の呪文を唱える雫。
何それ?と尋ねても、真剣なようで、返答はない。
「ウマウマビッチウマビッチ〜〜〜」
(…猿の次は馬?)
「ネコネコビッチネコビッチ〜〜〜」
(猫)
「ブサ…ブタブタビッチブタビッチ〜〜」
(あ、噛んだ)
動物の名を挙げる謎の呪文は延々と続く。
雫の顔を見る限り、とても真剣なようだが、それが逆に可笑しくて仕方がない。
シュラインは俯き笑いを堪え、雫の隣で肩を震わせた。
詠唱を終えて、雫はフゥーッと息を吐きながら目を開く。
終わったのね、とシュラインは微笑み、改めて雫に尋ねた。
「ねぇ、それ…なぁに?」
「ん?退魔の呪文だよ」
「…ふぅん?」
「あ、何その顔!信じてないな!これはね、有名な祈祷師に…」
シュラインの態度に、馬鹿にされていると思いムキになる雫。
と、その時。
ポンッとパソコンのモニターから”何か”が飛び出した。
ピタリと動作を止めて、飛び出したその”何か”に釘付けになる二人。
モニターから出現したそれは、掌サイズの…毛玉だった。
「すご〜い…ここまでハッキリ見えるなんて初めてだよ〜」
毛玉を指先でツンツンと突きながら言う雫。
毛玉はピクピクと震えているかのように見える。
毛玉といっても、本当に只の毛玉というわけではない。
つぶらな瞳が三つあるのだ。小さいが、手足もある。
キーボードの上で雫に弄ばれる毛玉を見つつ、シュラインは思う。
(ウチの子と似てるわね…)
興信所の電話に住んでいる妖 ”電鬼” と瓜二つの風貌。
おそらく、同じタイプの妖と見て間違いないだろう。
(冬だからかしらねぇ。電気系の妖が多いのは)
ピクピクと震える毛玉の妖を見ながら、そんなことを思うシュライン。
「でも、アタシって凄いかも。祈祷の才能あるのかな」
自分の詠唱で、妖が勘弁してくれ〜と出現したのだと思い込んでいる雫。
「震えちゃってるし。怖いの?うりうり〜〜」
ツンツンと毛玉の妖を突きながら満足そうに言う雫。
シュラインは雫の頭にポン、と手を乗せて、
「違う違う。ウケてるのよ」
クスクス笑いながら、そう言った。
さて、妖は出現したわけだが。
ホームページを荒らしたのが、この妖だという証拠はない。
どうしたものか…と思案するシュライン。そこで、フッと気付く。
雫の詠唱が可笑しくて出現したのだとしたら、人語を少しは理解できているのではないか。
「この子の宝物を滅茶苦茶になったのは、あなたの仕業?」
テーブルに頬杖をついて、毛玉の妖に尋ねてみるシュライン。
すると妖は、もきゃもきゃと動き、小さな足でキーボードを叩き出した。
ジッとモニターを見やれば、そこには”ごめんなさい”の文字。
やはり、人語を理解できるらしい。
シュラインは淡く微笑み、雫に言う。
「犯人発見…ね」
雫は申し訳なさそうな目で自分を見上げる毛玉の妖をジッと見やる。
「お仕置きする?」
クスクス笑いながらシュラインが言うと、
毛玉の妖はビクッと揺れて、ササッとモニターの裏に隠れてしまった。
そろーっと、こちらの様子を伺う妖。
シュラインと雫は、顔を見合わせて笑う。
その後、犯人はどうなったかというと…。
雫の”相方”として大活躍しているようだ。
あの妖は、パソコンを弄るのが好きで、
パソコンモニターに潜んでは、あらゆる被害をもたらしてきた。
その中で、雫のホームページを気に入り、
自分も参加したいと思ったらしい。
まぁ、勝手が理解らず、荒らしてしまうという結果になってしまったが…。
シュラインの提案で、雫は妖に自分の相方として働かないかと尋ねる。
結果、承諾。妖は喜んで、と応じた。
雫のホームページには、妖専用のコンテンツが開通。
怪奇現象に関するコラムを掲載しているのだが、
これがまた…毎回毎回、出来が良い。
今では、すっかり人気コンテンツになっている。
妖は、今日も雫の傍でキーボードを叩き、
自分に任されたコンテンツの更新に奮闘していることだろう。
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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】
0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
NPC / 瀬名・雫 (せな・しずく) / ♀ / 14歳 / 女子中学生兼ホームページ管理人
NPC / モニタウル / ♀ / ??歳 / 毛玉の妖 → 昇格 → 雫の相方
■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
こんにちは。 参加・発注ありがとうございます。
心から感謝申し上げます。 気に入って頂ければ幸いです^^
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2008.02.01 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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