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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


レイレイの意地

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OPENING

不気味な森の中、レイレイは一人、とある魔物を探す。
探しているのは、ブセダという兎の魔物。
とても凶暴で、捕獲するのは困難だ。
どうしてレイレイが一人で、こんな任務にあたっているのか。
きっかけは、些細なこと。
先日、IO2のトップ会議で、レイレイが話題に上がった。
無理はさせるべきではない、まだまだ未熟だ。
トップ層達は、口を揃えて、そう言った。
それを、たまたまレイレイは聞いてしまったのだ。
トップ層達は、ただレイレイの身を案じているだけなのだが、
レイレイは、自分が役に立っていないと思ってしまったらしい。
そこで、誰にも言わず、一人難しい任務に挑戦しているのだ。
さて…どうなることやら。

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「あれ…レイちゃん…?」
IO2本部から、さほど離れていない小さな森の中。
この森にしかない果実を手に入れようと森を散策していたシュラインは、
森の中、ナイフを持って神妙な面持ちのレイレイを発見する。
(?何か…妙ね)
レイレイの真剣な表情から、異変を察知するシュライン。
と、その時、彼女の耳に聞き慣れた足音が届く。
それは、ディテクターの足音。
フッと足音を辿り見やれば、ディテクターが茂みに隠れている。
シュラインは極力、音を立てぬように彼に歩み寄った。
「何してるの」
小さな声で問うシュライン。
ディテクターは振り返り、シュラインを確認すると淡く笑う。
「兄の役目っつーか、何つーか?」
「?」
キョトンをしているシュラインに、ディテクターは説明した。
レイレイが、何故こんなところに一人で来て、
ナイフ片手にウロついているのか。
何でも、組織の会議でレイレイが未熟だという話になったらしく、
それを聞いてしまったレイレイは、意地になっているとのこと。
未熟だというのは、役に立たないという意味合いではなく、
大きな力を秘めている以上、今は無理難題に放り込むべきではないという意味で。
IO2のトップ層達は、レイレイを高く評価している。
けれど、「あの子は未熟だ」とだけ聞いてしまえば、
誤解というか、ショックを受けてしまうのは無理もない。
私は、未熟じゃない。ちゃんと、仕事ができる。
レイレイは、それを一人で証明する為に、
この森に生息している凶暴な悪兎”ブセダ”を捕獲しようとしているのだという。
「なるほど…」
状況を把握したシュラインは、不安そうにレイレイを見やる。
ブセダは、実力のあるエージェントでも捕獲には、それなりの時間を要する悪兎。
それをレイレイが一人で捕獲できるとは…考えにくいのだ。
案の定、そのシュラインの不安は、三分後、見事に的中することになる。


三分後、ブセダが出現。
レイレイはビクッと肩を揺らすも、
キッとブセダを見据えて、ナイフを構える。
ブセダは自分に向けられる敵意に敏感な妖だ。
敵意なく不意に遭遇した場合は何の危害も加えてこないが、
自分を獲ろうとする人物には、すぐさま牙を剥く。
兎とは思えぬ鋭い牙を剥き出し、レイレイに飛び掛るブセダ。
その素早い動きに反応が遅れ、レイレイは足がもつれる。
「きゃ……」
キュッと固く目を閉じるレイレイ。
駄目、失敗だ…!そう思ったとき。
ドッ―
銃弾が、ブセダの鼻を掠める。
「ギィッ!?」
驚き、レイレイへの攻撃を躊躇して辺りを見回すブセダ。
ガサゴソと茂みから姿を現すディテクターとシュライン。
銃口をフッと吹きながら歩くディテクターに、
シュラインは「撃つなら撃つって言ってよ」とクスクス笑う。
「お兄様…シュラインさん…」
二人の姿にキョトンとすると同時に安心から力が抜けるレイレイ。
そんなレイレイにディテクターは目を伏せて告げる。
「おい、集中しろ。油断すんなよ」
ディテクターの言葉でハッとし、再びブセダを見据えるレイレイ。
ブセダは先程よりも恐ろしい形相で毛を逆立て、唸り声をあげている。
身構えるレイレイを確認すると、
シュラインは人の耳には届かない超音波を発した。
フラつくブセダ。そこに、ディテクターの銃撃。
ブセダは身動きがとれず、一定範囲をグルグルと回るばかり。
ディテクターとシュラインは、揃ってレイレイを見やって頷く。
レイレイはコクリと頷き返すと、ブセダに飛びつき…捕獲。

用意していた結界篭にブセダを入れ、任務は完了。
「………」
篭の中で唸り声をあげるブセダを見つつ、レイレイは顔をしかめている。
一人で捕獲しなくては、意味がないのに。そんなことを考えているのだろう。
シュラインはレイレイの頭に、ぱふっと手を置いて告げる。
「ねぇ、レイちゃん。皆、あなたに期待してるのよ」
「………」
レイレイの表情は、曇ったまま。
慰めてくれなくても結構です…そんな表情だ。
シュラインはクスッと笑って、続ける。
「単純にね、戦闘力だけなら。レイちゃんに敵う人なんて本当、少数よ」
「………」
「私も、探偵さんだって敵わないもの。でもね…経験や、それによる応用力では…どうかしら?」
「経験と応用…」
シュラインをジッと見つめて呟くレイレイ。
確かに、シュラインの言うとおり。
単に戦闘能力だけを取り上げれば、レイレイに敵う者は、
IO2内部にも外部にも、そうそういない。
けれど、レイレイと一対一で戦った場合、レイレイが勝つ確立は低い。
それは何故か。
力に長けるが故に、レイレイは戦闘時、力任せに事を運ぶことが多い。
それを知りえている人物が相手なら、いくらでも対処が出来てしまう。
少し頭を使えば、力を殺ぐことが容易いこともある。
腕力だけで勝負!というルールがあれば、
レイレイは恐らく、誰にも負けない。
けれど、戦闘において、そんなルールを適用するのは、よっぽどの戦闘馬鹿くらいだ。
ましてや組織の性質上、相手が妖のケースが多いのだから、尚更。
IO2のトップ層も、それを知っている。
だからこそ、レイレイに”力”以外の戦闘法を学んでもらわねばと思っているのだ。
実際、レイレイは一人でこの森に来て、
ブセダに襲い掛かられる前まで、捕獲できると自負していた。
けれどブセダは何の前触れもなく、素早くレイレイに襲い掛かった。
「今から、攻撃を開始します」なんて言うわけもないし、
「手加減しますね」と遠慮するわけもない。
事前に、ブセダがどういう妖で、どんな攻撃スタイルなのか。
それを調べていれば、少し、結果は違ったかもしれない。
ディテクターとシュラインに手助けしてもらわなくても、
一人でキッチリと捕獲できたかもしれない。もしかしたら…の話だが。


「ありがとうございました。二人とも…」
シュラインの言葉に、反省というか誤解を解いたレイレイは、
ブセダが入っている結界篭を持ちつつ言った。
ディテクターは欠伸をしつつ、笑うだけ。
シュラインも、優しく微笑むだけで、
どういたしまして、とは決して言わない。
悩むのは、向上心の表れ。
ムキになるのは、負けず嫌いの証拠。
その二つを持ち合わせているのは、成長する余地の在る者だけ。
今回の事は、レイレイにとって、良い経験となったはずだ。
ディテクターとシュラインの手助けにより、
不足している自分の能力に気付けたのだから。

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

NPC / ディテクター(草間・武彦) / ♂ / 30歳 / IO2:エージェント(草間興信所の所長)

NPC / レイレイ(草間・零) / ♀ / ??歳 / IO2:エージェント (草間興信所の探偵見習い・武彦の妹)


■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは。毎度、どうもです^^ 参加・発注ありがとうございます。
心から感謝申し上げます。 気に入って頂ければ幸いです。
是非。また御参加下さいませ。 お待ちしております。

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2008.02.05 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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