コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


ロスト・ボイス(後編)

------------------------------------------------------

OPENING

零の喉に潜む妖を除去し、
一刻も早く、苦痛を取り除いてあげるべく。
武彦達は、学者を訪ねた。
学者の家は、古びた一軒家。
こんなところに、人が住んでいるのかと疑うほど、不気味な家だ。
武彦は、ソワソワしながら何度も呼び鈴を鳴らす。

------------------------------------------------------

学者宅に入って早々、冥月は影内から零を出すと、ソファに横たわらせた。
零の表情や、喉の腫れ具合を確認していく学者。
ミニスカートに白衣を纏った、その姿は何というか…厭らしい女医といった感じだ。
零を看てもらっている間、冥月は武彦に問う。
「何物だ。あの女は。ただの学者じゃあるまい?」
冥月がそう言うのには、理由がある。
それも当然だ。学者には、猫耳と尻尾がついているのだから。
そういう趣味がある頭のイカれた学者なのかとも思ったが、
影で探ったところ、どうやら耳と尻尾は本物のようだ。
武彦は頭を掻きつつ答える。
「半獣の学者なんだよ。ソワカは。別に珍しくもねぇだろ。今となっちゃあ」
「…まぁな」
冥月は確かに、と頷き続ける。
「半獣にしても、相変わらずだな」
「何がだ?」
「美人の知り合いが多いことで」
「…何それ」
クックッと笑う武彦。
その態度にムカッときたのか、冥月はギュッと武彦の足を踏んだ。

「間違いなく、吸妖ね。はい、これ。飲ませれば…すぐ良くなるわ」
棚から取り出した小瓶を武彦に渡しながら言う学者、ソワカ。
武彦はサンキューとソワカの肩をポンと叩く。
「どうすっかな。ここで飲ませても良いか?」
武彦の問いに、ソワカは返す。
「どうぞ。早いほうが良いわ」
承諾を得て、武彦は貰った薬を飲ませようと零に歩み寄る。
(…大丈夫なのか)
信憑性は…と不安に思う冥月だが、武彦は何の迷いもなく、薬を零に飲ませた。
少し咳き込むものの、零の呼吸はすぐさま安定。
それまでの苦しそうな表情は消え、零はパチクリと瞬きをした。
「草間・零さん?」
微笑みつつ問う武彦。
零はキョトンとしつつ返す。
「…はい」
声が、元に戻っている。発せている。
どうやら、薬は見事に効いたようだ。
「さすが、ソワカ。助かった。ありがとな」
ニコリと微笑んで言う武彦。
武彦の隣で、零は何度も頭を下げて御礼を述べる。
元に戻って何より…と冥月も、フゥと安堵の溜息を漏らした。

ソワカの家を去る前、冥月は慎重に確認を重ねた。
薬に副作用はないのか、これで本当に完治したのか…などなど。
慎重な冥月の態度に、ソワカは、終始優しく微笑みつつ応える。
「大切に思っているのね」
時々、そんなことを言いながら。


帰り道、零が元に戻り安心したのか、
武彦は鼻歌をしながら余裕をかまして運転していた。
零と並んで後部座席に座る冥月は、そんな武彦の態度に不安を覚える。
「おい、あんまり飛ばすな。今夜は道が凍って…」
そう忠告した直後。
キュルッ―
お約束、とばかりに車がスリップ。
「きゃ…!」
驚き冥月に思わず抱きつく零。
冥月は慌てることなく影を操って車の軌道を修正した。
「ぶはぁ。ビビッた」
ケラッと笑う武彦。
冥月は武彦の後頭部にグーでパンチを打ち込み怒りを露にする。
「安・全・運・転」
「…はい」
武彦は姿勢を正し、安全運転に勤めた。

興信所に着いてからも、零の口からは御礼の言葉が絶えない。
武彦と冥月は「聞き飽きたよ」と笑って、零の頭を撫でた。
自分の所為で、色々と迷惑をかけた。
事務所の仕事も、溜まってしまった。
それらを本当に心から申し訳ないと思う零は、
病み上がりの身体で、早々に事務所の掃除を始めようとする。
「おいおい。いいから。もう遅いし、今日はゆっくり休めよ」
ゴミ袋を持つ零の腕を掴み、笑って言う武彦。
その隣で、冥月は携帯をカチカチと弄っている。
そして、携帯を零に投げやって、こう告げた。
「ほら。声、聞かせてやれ」
携帯を受け取り、ディスプレイを確認する零。
そこには、見慣れた番号が表示されていた。
零の彼氏、浩太の番号だ。
「心配してたぞ」
冥月は微笑むと、零はゴミ袋を棚に戻し、パタパタと自室へ向かって行く。
キュッと携帯を胸に抱き、嬉しそうに自室へ向かう零の背中を見て、
武彦はムッと眉を寄せて不愉快そうな表情。相変わらずだ。
そんな武彦に冥月は笑い、
「ほら。邪魔しない。回復祝いに何か上手い料理でも作ろう。手伝えよ」
そう言って武彦の手を引き、キッチンへ向かう。
冥月に手を引かれつつ、武彦はポツリと呟く。
「…何で、お前、あいつの番号知ってんだ?」
冥月はクスクス笑いつつ「秘密だ」と返した。

一時は、どうなることかと思ったが。
ソワカに貰った薬を飲んだ以降、零の身体に副作用の類が現れることはなく、
何事もなかったかのように、元気になった。
今日も、零は興信所内でバタバタを走り回っている。
掃除、洗濯、炊事…ご苦労様。
一生懸命家事をこなす零の手伝いをしつつ、
冥月は、ソファで新聞を読む武彦に告げる。
「手伝おうとしないな。貴様は」
武彦は煙草をふかしつつ、新聞に夢中。
元気になった途端、これだ。
まったく…困ったものだ。
冥月は、武彦の頭に雑巾を投げつけた。
「手伝え」
「くさっ!おま…雑巾投げんなっ!」

------------------------------------------------------


■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

2778 / 黒・冥月 (ヘイ・ミンユェ) / ♀ / 20歳 / 元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒

NPC / 草間・武彦 (くさま・たけひこ) / ♂ / 30歳 / 草間興信所所長、探偵

NPC / 草間・零 (くさま・れい) / ♀ / --歳 / 草間興信所の探偵見習い

NPC / ソワカ・L・マージャリー (そわか・える・まーじゃりー) / ♀ / 28歳 / 学者


■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは。いつも、発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします。

-----------------------------------------------------
2008.02.02 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
-----------------------------------------------------