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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


レイレイの意地

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OPENING

不気味な森の中、レイレイは一人、とある魔物を探す。
探しているのは、ブセダという兎の魔物。
とても凶暴で、捕獲するのは困難だ。
どうしてレイレイが一人で、こんな任務にあたっているのか。
きっかけは、些細なこと。
先日、IO2のトップ会議で、レイレイが話題に上がった。
無理はさせるべきではない、まだまだ未熟だ。
トップ層達は、口を揃えて、そう言った。
それを、たまたまレイレイは聞いてしまったのだ。
トップ層達は、ただレイレイの身を案じているだけなのだが、
レイレイは、自分が役に立っていないと思ってしまったらしい。
そこで、誰にも言わず、一人難しい任務に挑戦しているのだ。
さて…どうなることやら。

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IO2本部から、さほど離れていない森の中。
気分転換に森林浴でも…と森へ踏み入った冥月は、
茂みに隠れて何かをジッと見つめているディテクターを発見。
(…怪しい)
こんなところで息を潜めて、何をやってるんだか。
そう思いつつ冥月は完全に気配を絶ってディテクターの背後へ。
「おい、何してる」
突然背後からかかる声にディテクターはビクと肩を揺らす。
そっと振り返ると、そこには冥月の姿。
「何だ。お前か…ビックリするだろ…」
小声で溜息混じりに言うディテクター。
ディテクターの隣にしゃがみ、冥月はディテクターが見やっていた方向を見やる。
そこには、レイレイの姿。
ナイフを持ち、辺りを警戒している。
この間会った時とは、まるで別人。真剣な表情だ。
「何してるんだ。あいつもお前も」
レイレイを見ながら問う冥月。
ディテクターは目を伏せて返す。
「ブセダの討伐任務中なんだよ。単独でな」
「ブセダって…あの悪兎か」
「あぁ」
「一人じゃ無理だろう」
「だな」
「…なるほど。で、お前は助けたくて仕方ないわけだ」
「まぁ、な」
心配性というか何というか。
誰かさんを彷彿させるな、とクスクス笑う冥月。
と、その時。レイレイの前に、ブセダが出現。
サッと身構えるレイレイ。
「やべ」
ディテクターは慌てて飛び出し加勢しようとするが、
冥月は、ディテクターの腕を掴んで、それを阻止する。
「おま、離せって。やべぇだろ」
小声ながら叫んで慌てるディテクター。
冥月はレイレイを見やり、小さく呟く。
「彼女が自分の限界を知る良い機会だ。ギリギリまで耐えろ」
「耐えろったって…」
「大丈夫。すぐさま返り討ちにあうほどフヌケではあるまい?」
「…まぁ、そうだろうけど」

ブセダと対峙したレイレイは慎重に間合いを計るものの、
攻撃のチャンスを幾度となく棒に振ってしまう。
タイミングの悪さが、酷い。
ブセダは動きが俊敏な為、それもあるだろうが、
それにしても、酷い。
このままでは、捕獲なんて夢のまた夢だ。
レイレイが攻撃のチャンスを、ことごとく棒に振る為、
ブセダは完全に調子に乗っている。元々賢い妖なのだ。
自分と相手の力量を悟ることが出来る為、
勝ち目がないと思ったら、即座に逃げ出す。
けれど、ブセダは逃げることはなく。
ジリジリとレイレイに近寄っては離れることを繰り返し、
その度にビクッと警戒するレイレイの反応を楽しんでいる。
「やれやれ…」
これでは埒が明かない。
最悪の場合、喉に噛み付かれて終了ということも十分に有り得る。
五分ほど様子を伺い、冥月は呆れつつ、右腕を伸ばす。
操る影は、ブセダの影。
槍のように鋭く変形した自身の影に驚き飛びのくブセダ。
けれど、影に気付いても、もう遅い。
槍へと変貌した影は、主であるブセダを貫いた。
バタリとその場に倒れこみピクピクと痙攣するブセダ。
極度の緊張から放たれたレイレイは、そのばにヘタッと座り込んでしまう。

茂みから姿を現したディテクターと冥月に、
レイレイは何とも複雑な表情を向ける。
助かった…というのが一番素直な思いだろうが、
一人で捕獲しなくては意味がない。
とはいえ、一人で捕獲出来たとは思えない。
様々な感情が行き交い、レイレイはシュンと俯く。
そんなレイレイの隣にしゃがみ、
ディテクターはレイレイの頭をクシャクシャと撫でた。
「大丈夫か?」
身を案ずる優しい言葉に、張り詰めた心が解かれる。
レイレイはディテクターに抱きつき、声を殺して泣いた。
「私…役に立ちたいんです…」
ディテクターの胸を涙で滲ませつつ言うレイレイ。
ディテクターはレイレイの頭を優しく撫でつつ、
「十分だよ」
そう呟いた。



ディテクターと手を繋ぎ、未だにスンスンと鼻をすするレイレイ。
IO2本部へ戻る途中、冥月はレイレイにハンカチを渡して言った。
「誰でも最初はあんなもんだ。私も、そうだった」
「…冥月さん、も?」
ハンカチを受け取り、赤い目で冥月を見上げるレイレイ。
「あぁ。…お前は、料理出来るか?」
「料理…ですか?はい…それなりに」
「素人、初心者にいきなりフランス料理を作れと言っても無理だろう?」
「…そう、ですね」
「それに向き不向きもある。戦闘においても、それは同じだ」
「私は…」
「こいつ(ディテクター)は前衛向きだ。馬鹿だからな」
「意味わかんねぇよ」
クックッと笑いつつ、さりげなくツッこみを入れるディテクター。まぁ、事実なのだが。
「お前にも、向いていることがあるはずだ。仕事は幾らでもある」
「私に向いてること…」
「そうだ。直接標的を潰す奴ばかりでは組織として成り立たんだろう?」
「んんと…」
「後方支援や情報収集。そういう担当がいるから、組織は成り立つ」
「あ…。そう、ですね。そう、ですよね」
「ゆっくりでいい。お前の役目を見つけるのは」
「…はい」
「私も、こいつも、手伝ってやるから」
「ありがとうございます…」

ディテクターとペアで活動することが多いレイレイ。
IO2内でトップクラスのエージェントとして評価されているディテクター。
それが、レイレイにとって少し重荷になっていた部分もあるようだ。
それまで、ディテクターの支援を自然とこなしていたのに、
役に立っていないと思われていること(誤解なのだが)に焦り、
彼と同じように、力で立場と存在を誇示しようとしてしまったのだろう。
支援を自然にこなすというのは、一朝一夕で出来ることではない。
気立ての良さや判断力が必要になる。重要な役割だ。
自分が重要な役割を既に果たしているとレイレイが理解するのは、
いつのことだろう。

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

2778 / 黒・冥月 (ヘイ・ミンユェ) / ♀ / 20歳 / 元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒

NPC / ディテクター(草間・武彦) / ♂ / 30歳 / IO2:エージェント(草間興信所の所長)

NPC / レイレイ(草間・零) / ♀ / ??歳 / IO2:エージェント (草間興信所の探偵見習い・武彦の妹)


■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは。毎度、どうもです^^ 参加・発注ありがとうございます。
心から感謝申し上げます。 気に入って頂ければ幸いです。
是非。また御参加下さいませ。 お待ちしております。

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2008.02.05 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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