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<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>


カップル・マッチング

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OPENING

(面倒だねぇ…)
送られてきた手紙と招待状を手に、溜息を落とす蓮。
蓮が持っているのは、カップル・マッチングの招待状。
さて、カップル・マッチングとは何か。
まぁ…簡単に言えば”合コン”だ。
友人が主催者らしく、是非参加してくれと招待状を送りつけてきたらしい。
何だかんだで古くからの付き合いだ。
無下に断るわけにもいかない。
蓮は渋々、準備を始めた。
カップル・マッチングは今宵、二十時より開催される。

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「ふむ、成程。事情は理解った。だが、断る」
腕を組み、キッパリと断る冥月。
フラッと店に立ち寄ったのが不運。
蓮に、今夜のパーティに同席してくれと頼まれたようだ。
冥月は断り続けるが、蓮は、仕方ないねと諦める女じゃない。
結局、押しに負けて、同席することに。
こんなときに店に来た、自分も自分。
冥月は己の不運さを呪いつつ、
影から真っ赤なチャイナドレスと扇子を取り出して、迅速に着替えを済ませる。
チャイナドレスは黒龍が体を這う様に昇る刺繍で、とても高価なもののようだ。
化粧は薄く、唇には紅を。あっという間にパーティスタイル。
「いいねぇ。間違いなくモテるよ、あんた」
笑う蓮に、長い黒髪を結い上げつつ冥月は返す。
「五月蝿い。この恩は高くつくからな」
「はいはい。わかってるよ」



二十時。パーティ開始。
会場である屋敷は、とても広く立派だ。
蓮の交友関係の広さに感心しつつ、冥月は会場をグルリと見回す。
会場には、多種多様な男女がたくさんおり、
あちこちで口説き文句が飛び交っている。
「上品なようで卑しいパーティだな」
苦笑しつつ言う冥月。蓮はクスクス笑う。
冥月と蓮。二人が並んで立っている光景は、
何というか…別格の雰囲気だ。嫌でも目立つ。
二人に魅了されている男性参加者は、もはや数え切れない。
「見られてるな…三十六人に」
「ふ。あんた、こんなところで昔の技能を発揮するんじゃないよ」
「…癖なんだ。仕方ないだろう」
「さて、どうする?一人、こちらに向かって来ているけど」
「…失礼のないように、だろ?」
「わかってるねぇ」
ワイングラスを手に、冥月と蓮に歩み寄ってきた男性参加者。
三十代前半、といったところか。
礼服の効果もあるのだろうが、パッと見の印象は悪くない。
男性の口説き文句が始まる。さぁ、冥月の腕の見せ所だ。
「いやぁ、驚きましたよ。あまりの美しさに」
ニコリと微笑んで言う男性。冥月は少し首を傾げ、微笑み返して言う。
「勿体無い御言葉です」
「いや、本当に。女性に見惚れるなんて初めてですよ」
「ふふ。お上手ですね」
「あ。笑顔は可愛らしいんですね」
「まぁ。そんな…」
俯き、恥らってみせる冥月。
冥月は昔、潜入の仕事でよくパーティに参加していた。
この手のパーティにも、たくさん参加している。
故に、立ち振る舞いやマナー、話術に困ることはない。
普段の殺伐とした感じとは真逆な冥月の態度。
蓮は笑いを堪えるのに必死だ。
パーティの主催者が蓮の友人ということは、
パーティを盛り上げれば任務完了なわけで。
冥月は以降も、さり気なく胸元を強調し、
男性の興奮…テンションを高めたり、
スリットから見える美脚が一層美しくあるよう立ち振る舞ったり、
ダンスに快く応じ、見事な舞で会場全体を虜にしたり…。
ごく自然に、パーティの中心人物となって場を盛り上げた。


(無駄に頑張りすぎたかもな)
愛嬌良く振舞うことに疲れた冥月は、
屋敷の中庭で、フゥと息を吐き、気分転換。
興味のない男の相手をするのは疲れる。
自分に惑わされる男を見るのは楽しいのだが…。
早く帰れるものなら、帰りたい。
そんなことを思いつつ夜空を見上げる冥月。
そこに、声が掛かる。
「今夜は月が綺麗ですね」
ハッと我に返り振り返ると…そこには、武彦の幼馴染、藤二がいた。
「…何してるんだ。こんな所で」
呆れて言う冥月。藤二は冥月にワインを差し出しつつ返す。
「頼まれて仕方なく、ね」
「そうか…」
ワインを受け取り、再び夜空を見上げる冥月。
藤二はクスクス笑って言った。
「ずっと見てたんだけどさ、楽しかったよ」
「…何がだ」
「冥月ちゃんの猫被り」
「………」
「あいつの前でも、やってやみれば?」
「冗談じゃない」
目を伏せ苦笑する冥月。
グラスで揺れるワインを見つめ、冥月は思ったことを素直に口にした。
「あいつらには…こんな高価なワインや食事は無縁だろうな」
「はは。そうだね。誘ったけど、キッパリ断られたし」
「…誘ったのか、あいつを」
「うん。今日は一日中ダラダラしたいから、って断られた」
「ふ。いつもダラダラしているくせに」
「ははっ。だよね」
藤二と他愛ない会話を交わしているうちに、
冥月は、何だか妙に切なくなってしまう。
フルフルと首を振り、空になったワイングラスを藤二に渡して、
冥月は小さな声で呟いた。
「疲れた。帰る」
スタスタと歩いていく冥月の背中を見て、藤二は微笑み問う。
「どこに?」
「…うるさい」


「ちょっと、何だい急に。パーティはまだ終わってないよ?」
帰るから、と報告してきた冥月にギョッとする蓮。
冥月は、フイッと顔を背けたまま、帰ると言って聞かない。
まるで、駄々っ子だ。
まぁ、蓮が冥月の表情というか、異変に気付かないわけがない。
蓮はヤレヤレと肩を竦め、仕方ないね、と折れた。
「ワインでもお土産に持って行くかい?」
蓮が言うと、冥月は暫く考えこんだ後、
「要らないだろうな」と一言呟き、スタスタと歩いて行く。
帰路につく冥月には、相変わらず幾つもの声が掛かるが、
冥月は、それらを軽くあしらって突き進む。
先程までの令嬢ぶりは、どこへやら。
蓮はクスクスと笑った。

とある場所に向かった冥月が、
「何だ、その格好」とツッこまれたのは…午後二十三時頃。

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

2778 / 黒・冥月 (ヘイ・ミンユェ) / ♀ / 20歳 / 元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒

NPC / 碧摩・蓮 (へきま・れん) / ♀ / 26歳 / アンティークショップ・レンの店主

NPC / 赤坂・藤二 (あかさか・とうじ) / ♂ / 30歳 / 作家兼旅人・武彦の幼馴染


■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは。いつも、発注ありがとうございます。
心から感謝申し上げます。 納品が遅れてしまい、大変申し訳御座いません。
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします。

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2008.02.26 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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