コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


勇者、誕生…?


○オープニング


「殺せ、血族のものは全て殺せ!
 我が魔王軍への反抗の芽は全て摘み取ってしまえ!!」

 怒号、悲鳴、嗚咽――。
 それらが全て混じりあい、一つの地響きとなって大地を揺らしていた。

 揺れる大地は赤く濡れ、青いはずの空さえも赤い炎に染められていた。
 抵抗できぬものから冷たくなり、逃げようとしたものも程なく同じ運命を辿る。
 地獄などという言葉では表しきれないほど、凄惨で悲惨なその光景。



 それでも、大地には新たな命が芽吹き立ち上がる。
 血の海の中、一人立ち上がるものがいた。その者の名は――。





◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「…とまぁ、こんな感じでやりたいわけじゃん? 俺っちってばストーリーテラーっぽーい♪
 正直なところ勇者がほしいのよ俺っち。でもどうすりゃいいのかよくわかんねーってばよ」
「で。どうしろってんだあたしに。序に言うとベタすぎてつまんねぇ」

 この世界には魔王がいる。ならば彼が君臨するのは王宮ということになるのだろうか。
 何処からどう見たってただのライブハウスにしか見えないのだが、その辺は深く気にしたら負けなのだろう。
 一応魔王の住まう城ということにしておいて、その一画。その中に底抜けに明るい声と何処か疲れたような声が響く。
「うそーん。アスカちんってば、い・け・ずぅ」
「キモいわ!」
 気色悪い声の後に間髪いれずに飛んでいく拳。まるでマンガのように男が派手に吹っ飛んだ。
「うぅぅ、魔王さまに手を上げるなんて…わたくしそんな子に育てた覚えはありませんわよ!?」
「あたしだっててめぇに育てられた覚えはねぇ!! ったく…なんであたしがこんなやつの手下なんだ…」
 ぶつぶつと呟く声は無視される。所詮この世界において彼女は下っ端なのだ。
 へらへらと笑う大魔王とその手下となった彼女。ある意味この世界で一番不幸なのは彼女ではないだろうか。

「ぶっちゃけ俺たち二人じゃ出てくる意見なんて知れてるじゃん?」
「あたしはそもそも意見言ってねぇ」
「まぁそういうわけで、勇者についてとか意見色々欲しいから手下を集めてくるのだ下っ端一号よ!」
「下っ端一号じゃねー!?」
「アスカちんうっさいからさっさと行くっぺー」

 そうして魔王に蹴り出された下っ端一号。彼女は果たして無事に手下を集めることが出来るのだろうか?
 そして、まだ見ぬ勇者とは一体どのような人物なのだろうか…?





○そこに集いしは猛者たちよ?



 魔王の元に、その手下ともいえる者達が集まってくるのは必然である。
 無駄に背景で雷落としたりしつつ、その城門の前に四人が立っていた。

 ピシャーンバリバリ!
 響くのはけたたましい雷鳴、雷光に照らし出された者達には只者ではない雰囲気が漂う。
 ちなみに雷鳴、雷光ともに下っ端アスカの仕事である。雷鳴にいたっては地声とエフェクターを使用。本当にご苦労様。
 勿論この場にいる者たちもアスカが呼んできた。それはもう大変なことで、声をかけては断られ、何日も繰り返してふらふらになってやっと三人。
 ちなみに最後のほうは手下が全然いなくてあたしの体はボロボロだとかほぼ泣き落としになっていたらしい。割と人気がないのかもしれない、魔王様。

「苦労話は置いておいて…どう見てもク・メルよね」
「ク・メルですよね」
 魔王の城に対してなんとも失礼な物言いをするのは少女二人。具体的な名前を言えば綾峰透華と海原みなも。二人とも可愛い見た目をしていても、そこは魔王の手下。とてつもない化け物であったりなかったり。
 なお、アスカ含めて女性メンバーはちょっと足りていない、主に胸囲的な意味で。魔王軍のスタンダードなのだろうか?
「好き勝手言われてるネ」
「年齢的な問題もあると思います」
 みなものそんな言葉に苦笑を浮かべる。独特のイントネーションは悪者の証、そんなことはきっとないとは言えない男もいたりする。
 デリク・オーロフ、誰が呼んだか通称猟犬デリク。どんな隠し事も、色んな意味で数万倍も鋭い嗅覚にかかればバレバレだ!
「私はソコまでバケモノじゃないデス」
「誰に言ってるんですか?」
 ツッコミは何処までも虚しい。

「あー…悪いけど早く入ってくれねぇか? 寒ぃ…序に疲れた…」
「下っ端の癖に生意気ー」
「デスネ」
 アスカは既に彼女たちにも下っ端として認識されてしまったらしい。何も言わずにちょっと苦笑を浮かべているみなもには多少の情もあるのだろうか。
 まぁそんなこんなで、賑やかでちょっと変な四人組はク・メル…魔王城へと足を踏み入れるのだった。



 カツンカツンと、乾く硬い音が薄暗い廊下に響き渡る。
 何故か光はなく、雨が降り出した天気と相まって正に悪の城といった趣になっていた。
 しかし足元に広がるのは大理石の廊下ではなく、いたって普通なコンクリートにタイルの組み合わせ。微妙に雰囲気が出ない。
「魔王様のお城の割には普通の建物ですね」
「しょうがねぇよ、大体ここ洪陽じゃなくて里緒がオーナーだし勝手に改築できねぇし」
 そういう裏話は遠慮していただきたい。

 まぁそんなどうでもいい話は兎も角、長い長い(実際にはかなり短い)廊下から階段を下りると、そこには巨大な二枚の扉。重厚に鎮座するそれは、まるでその奥にあるものを表すかのよう。
 でも門番はいない。
「…本当に手下ってまだまだ少ないんだね」
「人件費削減ですネ」
 魔王様だってお金には勝てないらしい。

 鈍い音を立て…ることもなく、扉がすんなりと開く。足を踏み込んでみれば、そこから漂うのは何か異様な空気。若干美味しそうな匂いつき。
「この安っぽいけどお腹を直撃する匂いは…カップラーメン!」
「随分庶民的ナ」
「お金がにゃーんデス。魔王様だって必死なのよ!」
 中央に鎮座する玉座。そこに座るのは、カップラーメン片手に泣き崩れる奇怪な大男。名は道上洪陽、一応この世界の魔王様。
 こんな姿を見せられてしまっては威厳も何もあったものではなく、そりゃ手下だって出来ないわな。そんな微妙な空気を放ちまくっていた。
 どうでもいいが、透華は一々反応が大げさで割とノリノリ(割と死語)なのかもしれない。

 ともあれ、魔王の元にその右腕となるべき者たちが集ったのは事実である。あまり魔王様は活躍してないが。
 そんなわけで、早速会談の場が設けられた。しかし、
「…なんか調子狂うなぁ」
 そんなぼやきが聞こえる。あまり広くないホール内に置かれたのは三つのパイプ椅子、勿論中古品。
 ちなみにアスカの分はない。だって下っ端だから。

「何故か引っ張り込まれました、海原みなもです。魔王様、宜しくお願いしますね」
「ふむり、ちょっとろりーで真面目な悪魔っ娘ってポジションやね」
「何時も元気に16歳綾峰透華です!」
「ドジっ娘参謀のポジション宜しく」
「何か間違えて勇者の仲間になったりするのはあり?」
「もちありじゃーん」
「デリク・オーロフデス」
「わんこ、わんこ!」
「幾ら魔王様でも怒りますヨ?」
「サーセンハウンドデリク」

 駆け足で自己紹介は終了。所々おかしいのはこの魔王にしてこの手下ありということで納得していただこう。
 しかし、こうやって並べてみると、
「色気が足りない!!」
 どうでもよかった。
「何よー他の二人は兎も角私はこんなにも色っぽいのに」
 ちなみに透華の声は速攻で皆に無視された。
「だってさ、だってさ! 悪側にはこーもっとバイーンでウフーンでアハーンな幹部一人くらいいるじゃん!?
 アスカちんの馬鹿ーなんで引きずってでも連れてこなかったのさ!」
 さておき魔王様にとってはどうでもよくなかったらしいが、それを見て手下たちは溜息を漏らす。
「やっていけるんでしょうか…」
「既に心配デスネ…」
「まー洪陽さんだし…」
 お先真っ暗な気分だった。





◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 魔王様が叫んでいたころ、一人の幽霊が気ままに空の散歩を楽しんでいた。
 幽霊なのに楽しむとか、既に何かが間違っているような気もするがあまり気にしてはいけない。幽霊だもの、なんだって常識の外でいいのだ。
「ん…?」
 そんな幽霊ゴーストミセスポルターガイストな彼女が、何か変な空気を感じ取る。眼下にはク・メルもとい魔王様のお城。
「何か面白そうな予感ー♪」
 いいのかいほいほい下りてきちまって、俺は幽霊だって仲間にしちまう男なんだぜ?
 勿論そんな声が聞こえるはずもなく、幽霊さんはほよほよと空を下りていくのだった。



 そうしてまた城内へと場面は移る。相も変わらずぎゃーすかうるさい魔王様と呆れ返る手下たち。
 そんな彼らの前に、
「こんにちはー」
 やたらと明るい声が『天井から』かけられた。
 一同の視線が一斉に天井へと向けられる。薄暗い中に、はっきりと映し出された顔一つ。
「そんなに見つめられたら恥ずかしい♪」
 一同絶句。幽霊の癖に何を言ってるのだろうか。

 それは兎も角、
「通りかかったらなんか面白そうな話してるし、私も交〜ぜて〜♪」
「…いや、まぁそれはいいんだけど」
 そんなことを言うのは紛れもない幽霊なのだが、明るい声も相まって驚きは既になくなっていた。
「ちょっ、こ、洪陽なんだよあれ、ゆ、ゆゆゆ幽霊!?」
「アスカちんうっさい」
 アスカが一人パニクっていたりもしたが。

 まぁここは魔王の住まう城なのだ、幽霊の一つや二つはいてもおかしくないだろう。
 大体、
「あ、大丈夫大丈夫ー確かに幽霊だけどこうやって実体化できるし」
 当の不法侵入者は既に自分の分の椅子を用意して座っていたりする。ゲームなら、多分『この者既に死した者にして不法侵入罪を犯した豪の者よ!』なんてテロップが流れたりするんだろう。

 そして、そんな彼女を見て喜んだのは他でもない魔王様であったりする。
 何故なら、彼女には他の者にはないものを持っていたからだ。
「来たわ、お色気担当!!」
「ん?」
 そう、他の三人に比べて出るところはドーンと出ているし、何よりも大人の色香というのが明らかに感じられるのだ。
「これは、ずばり人妻スメル! 年齢で言うと若干年増気味」
「なんか言った?」
 満面の花が咲くその顔からは、何故か殺気が漲っている。
「サーセンマダム」
 魔王様弱かった。

「話は聞かせてもらったわよー。あ、私悪の女幹部に立候補ー。いたいけな勇者クンを困らせてはその顔見て悦に浸るの、やーねぇ演技だってば、え・ん・ぎ♪
 名前はベタだけどー『黄昏の魔女』とか『不可視の悪意』とか?
 昔は『鬼』だの『悪魔』だの『魔王』だの言われたこともあったけどねー。失礼しちゃうじゃない?」
 幽霊さん絶好調。語りだしたらもう止まらない止まれないノンストップブレーキブレイク。
「あー…おb…けふん、姐さん、なんでもいいから名前教えてくれよ。あたしたち名前すらまだ聞いてねぇよ」
「あら…ごめんなさいねー」
 そしてケラケラ。この人生前は一体どういう生き方をしていたのだろうか。
 色々裏話があるらしいが、案外このままかもしれない。
「水上瑞穂よ、宜しくねー♪」





◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 そんなこんなで、四人の手下と一人の下っ端が集ったのだった。これだけいれば、それなりの戦略とも言えるのではないだろうか。
 何せ全員この摩訶不思議な世界に住まう住民たちである。唯の人間であるわけもない。そもそも一人死んでるし。
 そんな中、何故か魔王様に向かって透華が何かを突き出していた。
「洪陽さんは魔王様なのにシャツとジーパンってーのは威厳がないので、服装を変えちゃいましょう!
 っていうか真冬なのに寒くないんですか。そんなわけで黒いマント進呈します、返品不可!」
 寧ろ黒いマント一枚だけだった。どうせなら他のものもあげればいいのに。
「おほ、透華ちんサンクスー♪」
 そしてそれを嬉々として羽織る魔王様洪陽。シャツとジーンズの上にマントというのはいかにもアンバランスでかなり微妙だった。
 そんな魔王様を満足気に見やり、今度は下っ端アスカのほうへと振り返る。
「んでアスカさんは〜やっぱ魔王様の手下一号だし〜…」
「な、なんだよ…」
 その手には一枚の黒い布地。
「ここは悪の手先っぽく、黒くてキワどいハイレグレオタードを着てもらい…駄目?」
 思わず透華の言葉が止まった。何故ならアスカが物凄い形相で睨んでいたから。
「それ、採用」
「てめぇ洪陽ふざけんな、なんであたしがこんなものを!!」
 でも逆らえないんです、下っ端だから。
 世界の流れは魔王様の一言で決定する、だから無理。
「ッッ…こうなったら透華、死なばもろともてめぇもだ!!」
「なっ、あたしは絶対に着ないわよ!?」
「それも採用」
「いやーーーー!?」

「…で」
「私たちもデスカ」
 何故か気付けば他の者たちもそれっぽい格好になっていた。
 デリクは漆黒のスーツに漆黒のロングコート。全身真っ黒、街を歩いていたら漏れなく職質されそうな出たち。うん、悪っぽい。
 みなもはそんなデリクとは違い、純白のローブを纏う。清純そうな顔も相まって、どちらかと勇者側にいそうな感じが背徳感を増しているような。
「あら、これいいわね。折角だし部下もほしいなー細いのと太いの。『やぁっておしまいッ!』…なぁんてね」
 そして最後に瑞穂は、大胆に胸元と背中が大きく開いた紫基調のゴシックドレス。これぞ悪の女幹部、色気もむんむんだ!
 なんでもいいが、その子分二人の組み合わせは色々な意味で危ないと思うのだがどうか。
 さらにどうでもいいけど魔王様は何処にこんなのを置いていたのだろうか? 色々謎は尽きない。
「さ、さむっ…」
「なんで私までぇぇぇ…」
 わいわいきゃいきゃいと騒ぐ外で、レオタード二人組は寒さで震えていた。





○勇者ってどんなやつ?



 さて、彼らが集まった最大の理由。それは、彼らの最大の敵になるであろう者のリサーチである。
 魔王の敵。すなわち勇者と呼ばれし者。
 だがしかし、未だその者は彼らの前にその正体を現していない。
 そこで一体彼がどんな人物なのか? そんな話し合いがなされていた。
「あ、ジュースとってー」
「これでいいデスカ?」
 どうでもいいが、会議中に堂々とお菓子やジュースを取らないでいただきたい。やっぱりパイプ椅子が基本だし。

 えらく和やかな雰囲気の中、まず手を上げたのはみなも。
 引っ張り込まれただのと言っておいて、なんだかんだで真面目な彼女はこういうことでも真面目にやってくれる。ある意味魔王軍唯一の良心(?)と言ってもいい。
 ともあれ、彼女の意見はこうだ。
「妹曰く、勇者とは【血筋】か【選ばれし者】がなりやすいそうです」
 妹って誰?とかそういうことは置いておいて、彼女は言葉を続ける。
「血筋とはそう…例えば、先祖に偉大なる人物をもつ者や転生者、といったものですね」
「あぁ、中二病」
「続いて選ばれし者。歴史上で言えば、アーサー王のような『特別』となった人物などでしょうか」
 途中で入ったいらない魔王様の合いの手は軽くスルー。若いのに頼れる女子である。
「なるほどー王道だね。『聖剣によって選ばれた、実は遥か昔に魔王を倒した勇者の末裔』みたいな感じ?」
「透華さんの言う感じですね。あまり奇を衒い過ぎると該当する人物がいなさそうというのもありますが…。
 あぁそれと、最初から人間型モンスターというのは色々な意味で勇者側としては倒しづらいかと。最初はやはりスライムなどが分かり易い悪っぽいモンスターではないでしょうか。
 モチベーション等も重要になるでしょうし、事件に巻き込む際きちんとした動機付けも必要になるのではないかと」
 それは確かにもっともな話でもあった。

 デリクがそれに続けて手を上げる。
「その逆ノパターンもありですネ」
 逆ってどういうこと? 興味津々な一同の視線が集まる。
「ソウ、必ずしも人でアル必要もないと思いマス。例えば…実は勇者ハ魔王軍に逆らう、争いを好まナイ魔族の生き残りデ、人間を助けるタメに戦ウ。
 でも彼は人間ではナイので人間はの事は理解セズ、デキズ…という感じで」
 それもまた、ある意味では王道のパターンであった。人類の敵の敵は必ずしも同類ではない、というのもあるといえばある。これはこれで面白そうなのだ。
 ただ、果たしてそう都合のいい人物がいるのだろうか?

「はいはい!」
 次に透華が手を上げる。レオタード姿での寒さには、暖房が入ったおかげで慣れたらしい。
 ちなみに暖房は石油ストーブ。お湯が沸いて薬缶がぴーぴーうるさかったりする。傍らにカップラーメンは欠かせない。
「生まれ云々は置いておいて、勇者にはどんな時にも神様の加護がついているモノ」
「おぉ、確かに!」
 魔王様がラーメンを啜りながら相槌を打つ。確かにそういう設定は使いやすい。
「っつー事で勇者は女神『高峰沙耶』の名の下において誕生します…ってゆーのはどーでござりましょう」
 意外なところで意外な人物が登場してきた。高峰沙耶、あの変わり者…もといあの高峰心霊学研究所の所長として有名な人物である。
「あの人の場合、女神っていうより魔女って感じだよな」
 下っ端、命知らず発言。本人が聞いていたらどうなることか。
 だがしかしこの設定は実にいい。ほぼ採用だろう。

「んー生まれとかはみんなの言う感じで問題ないんじゃないかなー?
 で、勇者クンはねー可愛い男の子がいいなー。純で弄りがいのありそうな子。で、精神的にも肉体的にもタフじゃないとね♪」
 かなり趣味の入ってる瑞穂さん。流石マダム、言うことが違う。ショタコンとか言っちゃいけないのだろうか。
「あ、それと物語の進行をスムーズにする為に前向きな性格がいいよねー…。んで決める時にはビシっ! と決められないと駄目かなやっぱ」
「加えて基本的に優しくナイとお話が進まないと思いマス。
 アト、反応してくれナイと立場的に困るノデ…感情を表に出してくれる方ガ助かりマス」
 勇者の性格の話となると、さらに会議は盛り上がった。
 彼らなりの勇者像というのは様々ながら、ある程度根底の部分は共通している部分もあるから面白い。

 そんなこんなで会議は続き、気付けば数時間。
「さぁここで纏めてみるわよ、下っ端書きなさい!」
「だから下っ端じゃねぇっての!!」
 文句を言いながらもホワイトボードに書き込んでいく姿はどこか虚しい。





☆男子三日会わずば刮目して見よ、これが憎き勇者だ!!☆

・見た目は可愛い男の子。年齢は10代前半(悪の大幹部ミズホーン(仮)熱烈希望)
・実は魔王様と同じ魔族。争いを好まず純粋で優しい。それでいて根は熱く、精神的にも肉体的にもタフで逞しい。感情を表に出しやすく、ころっと騙されたりからかわれたりもする(馬鹿? 初心?)。ただ人間のことは今一理解できない。
・実はかつて魔王を倒したという人間を祖先に持つ。この魔王は現魔王様とは関係なし、多分。
・ある日彼は聖なる剣を見つけ、その剣に選ばれた。
・その剣に宿りし女神(高峰沙耶←むしろ魔女っぽい)に祝福され、その加護を受けている。
・出発、約束の地は高峰心霊学研究所。





「……」
「……えぇっと、こんな人いるの?」
 纏めてみたら、まともに見えて割とカオスだった。
「大丈夫! この60億が住まう地球、人外をあわせれば100億だってくだらない!
 そんな中に、きっと、かろうじて、多分一人くらいはその条件があうものもいるはず、寧ろいたらそれこそ奇跡的な確率だから勇者に違いない!」
 魔王様は言い切った。兎も角いるらしい。いるんだったらいるんだってば。
「まず見つけ出すコト自体大変すぎてクラクラしそうデスネ」
「…ま、まぁ魔王様ならきっとなんとかしてくださいますよ」
 若干げっそりとした感があるデリクを支えつつ、苦笑交じりにみなもが呟いた。
 でも彼女だって内心はかなりどうかなぁと思っているに違いない。



 こんなことでいいのか魔王軍!
 果たして勇者は見つかるのか、次回に続く!!





☆☆☆次回予告☆☆☆(ナレーション:下っ端一号ことアスカ・クロイス)



 空を多い尽くす災厄。天が落ちるとき、地上に新たな星が誕生するであろう。

 全てはたった一人の者を滅ぼすため。ただそれだけのために、魔王がその腰を上げた。
 自らを滅ぼすというその予言。魔王はただそれを恐れ、そして人間たちを恐怖の坩堝へと叩き落す。
 天が焼け、地は割れ、海が消える。
 全てを犯し蹂躙していく魔王軍。かつて繁栄を極めた人類にもはやその影はない。

 だがしかし、魔王は知らない。敵が自らの同胞であるということを。
 魔界で一人の者が立ち上がる。その手に一本の剣を携えて。

 ――あなたに祝福を与えましょう――

 女神がその憐れみをたれる時、全てを浄化する光が放たれる。


 その名は――……あ、名前決めるの忘れてた…もういいや、次回、『立ち上がれ勇者!!』





<→Go to the Next Level!→>



□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□



【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【1252/海原・みなも (うなばら・みなも)/女性/13歳/中学生】
【3432/デリク・オーロフ (でりく・おーろふ)/男性/31歳/魔術師】
【3464/綾峰・透華 (あやみね・とうか)/女性/16歳/高校生】
【5227/水上・瑞穂 (みなかみ・みずほ)/女性/25歳/浮遊霊】



□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□



 久々の依頼は中々大変だったもののとても楽しめました。何時もお世話になっておりますEEEです。
 設定はもっとカオスになると思っていたんですがさにあらず。やはりある程度の像というのは共通しているんでしょうか?
 今回のプレイングは次回のOPなどにも活かさせていただきます。次回がどうなるか、それはまだ秘密ですが。

 今回は本当に参加していただきありがとうございました。また次回、機会があれば宜しくお願いいたします。
 そうそう、次回は勇者の名前を決定します。それを済ませたらNPC登録される予定ですのでお楽しみに。