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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE 白亜の館

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OPENING

何とも満足そうな笑みを浮かべる、海斗。
無表情ではあるものの、梨乃も、内心は非常に満足しているようだ。
二人は、見つけた”逸材”を、とある場所へと連れて行く。
半ば、強引に。

海斗に手を引かれる逸材は、状況が飲み込めずに不可解な表情をしている。
まぁ、無理もない。
事態を把握しようと、どういうことなのかと尋ねても、
海斗と梨乃は、微笑むばかりで、一向に説明してくれないのだから。
説明不足な二人の所為で、逸材の不安や不満は膨らむばかり。

廃墟が並ぶ、不気味な地に踏み入り、逸材の不安が頂点に達した時。
海斗と梨乃は、アイコンタクトをとり、揃って前方を指差す。

彼等が示した先には、美しい白亜の館があった。

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「とりあえず、マスターと面会な」
館の扉を開きながらニコニコと微笑んで言う少年。
明日菜は少年に大人しく着いて行きつつポツリと呟く。
「本当にスカウトするつもりなのね…」
「当然っ。じゃないと、ここに連れてこないよっ」
満面の笑み。余程嬉しいのだろう。
明日菜は参ったなぁ…と思いつつも、少年の後を着いて行く。
(そこまで期待というか満足されちゃあ、何て断れば良いか…)
内容によっては、断らざるをえない事態も有り得る。
けれど、目の前でニコニコと無邪気に微笑まれては…それも、どうだろうと思ってしまう。
(こういう時って、少年の笑顔は凶器っていうか反則よねぇ)

「マースターぁぁ!連れてきたー!めっちゃイイよー。逸品ー」
バターンと激しく扉を開け放ち言う少年。
逸品って…明日菜はモノじゃないというに…。
「うるさいっ」
少年の騒々しさに、少女が喝を入れる。
どこもかしこも真っ白な館の中、長い通路の突き当たり。
扉の中には、これまた真っ白で広々とした空間が広がっていた。
空間の中心には大きなソファがあり、そこにローブを纏った老人が座っている。
フードを深く被っている為、表情はよくわからないが、男性のようだ。
彼が、マスター…組織のトップらしい。
明日菜はツカツカとマスターに歩み寄ると、
「はじめまして。隠岐・明日菜です」
そう告げて、ペコリと頭を下げた。
マスターはフッと顔を上げ、ジッと明日菜を見やる。
そして、放たれる第一声。
「スタイル良いのぅ」
「…はぃ?」
キョトンとする明日菜。
マスターはオホンと一つ咳払いをすると、
「いや。確かに、素晴らしい能力を持っておるな。合格としよう」
そう言って、少年と少女に「ご苦労」と述べる。
あっさりと加入が正式に認められ、
これで、立派なイノセンスエージェントに…というわけにもいかない。
明日菜には、告げておかねばならぬことがある。
「ちょっと、おじいさんと二人で話したいんだけど。イイかな?」
チラリと少年少女を見やる明日菜。
少年と少女は、マスターを見やった。
マスターは微笑み、コクリと頷く。
「わかった。外にいるから」
「失礼します」
素直にマスタールームを出て行く二人。
気にはなる。話したいこと、とは何なのか。
めっちゃ気になる。当然だ。
けれど、詮索するわけにもいかない。
マスターの目が、そう告げていたから。

二人きりになり、明日菜はすぐに懐を漁る。
取り出したのは、身分証。
その身分証には顔写真と生年月日。
そして『IO2特別捜査官』の印字がされていた。
手渡された身分証を見やり、ほほぅと頷くマスター。
明日菜の義母はIO2の特別顧問。
故に必然的に、明日菜もIO2捜査官として組織に関わっている。
とはいえ明日菜も義母も非公式なエージェント。
大っぴらに所属していると言える立場ではない。
だが、明日菜がIO2に関わっている人物であることは確かなこと。
INNOCENCEは、IO2のライバル組織だ。
本当か嘘かはわからないが、そういう噂は異界各所で耳にする。
隠していて、いつかそれがバレたら。
色々と面倒なことになるかもしれない。
そのときの為に、と明日菜は事前に身分を明かしたのだ。
「そういう者なんだけど。大丈夫なのかしらね?」
クスッと微笑み尋ねる明日菜。
するとマスターはファッファッと笑い、
身分証と一緒に、明日菜へ携帯電話を差し出した。
いつ出現させたのか、わからないが…おそらく魔法で出したものだろう。
(…?)
明日菜は眉を寄せつつ身分証と携帯を受け取る。
見やれば、携帯の液晶には『通話時間』が表示されていた。
誰かと繋がっているらしい。
明日菜は携帯を耳に宛がい「もしもし?」と小さな声で言った。
『ふふ。ご苦労さま』
「………えっ」
目を丸くし、驚く明日菜。
電話から聞こえてきた声は…聞き覚えのありすぎるものだった。
「か、母さん…?どうして…」
そう、聞こえてきた声は、義母の声だったのだ。
義母はクスクス笑い、驚きを隠せない明日菜に告げる。
『特別出張ってことでね、明日菜ちゃんを、お貸しすることになってたのよ』
「えぇぇ…?聞いてないわよ、そんなこと」
『そうね、うん。言ってないもの。ふふふ』
「そういう大事なこと、どうして言ってくれないのよ〜」
『面白いかな?と思って。ふふ、ごめんね。明日菜ちゃん』
「はぁぁ〜〜〜〜……」
ガックリと肩を落とす明日菜。
事前に、マスターと義母の間で密約が交わされていた。
特別出張という形で、明日菜をイノセンスに所属させることになっていたのだ。
この密約を知っているのはマスターと義母だけ。
少年と少女は知らされていなかった。
丁度良いタイミングで接触したものだ。
アドリブ的とはいえ、こうして明日菜を本部に連れてきたのだから。
偶々彼等の目に明日菜が留まったことなど、
様々な偶然が重なり合い、そしてまた偶然にも台本どおりに事は進んでいたのだ。
通話を終え、携帯をマスターに返しつつ苦笑する明日菜。
マスターはファッファッと笑いつつ、
「ようこそ、イノセンスへ。ゲストさん」
そう言って明日菜の所属を、心から喜んだ。


「お。終わったー?」
マスタールームから出てきた明日菜に駆け寄る少年と少女。
二人の無垢な表情を見て、明日菜はハァ…と改めて脱力した。
(私…いつまで母さんの掌の上で転がされるんだろ)
嬉しい反面、何だか情けないようで。
明日菜は、その場にしゃがんで大きな溜息を落とした。
少年と少女は顔を見合わせ、同時に肩を竦める。
何があったのかはわからないが…。
とりあえず、明日菜に本部案内をしてあげなくては。
「今更だけどさ。俺、海斗。こっちは梨乃な」
「あ〜。うん…?」
フゥ〜と息を吐きつつ言う明日菜。
「元気ねーぞー!ほらっ、行くぞ。立ってっ」
「行くって…どこに?」
「本部を御案内〜〜」
「あ〜。うん…って、ちょっ待って、引っ張らないでよ」
グイグイと明日菜の腕を引き、満面の笑みの少年。
新しいエージェントが決まり、少女も嬉しそうだ。
特別出張で組織に所属。台本の上で踊らざるをえなくなった明日菜。
さてはて…これから、どうなることやら…?

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

2922 / 隠岐・明日菜 (おき・あすな) / ♀ / 26歳 / 何でも屋
NPC / 黒崎・海斗 / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 白尾・梨乃 / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / イノセンス・マスター / ♂ / ??歳 / INNOCENCE:マスター(ボス)  

■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

こんにちは。
ゲームノベル”INNOCENCE”への参加・発注ありがとうございます。
発注・参加 心から感謝申し上げます。 気に入って頂ければ幸いです。

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2008.03.28 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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