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<東京怪談・PCゲームノベル>


桜媛奇譚――飽贄の章・壱――



■ 露月王 ― 初秋 ―  ■

 夏を経て、少しづつ秋の気配が漂い始める。
 依然日差しの強さは変わらないものの、そこにうだるような暑さは無く。傍らを掠めてゆく風は冷涼で、随分と過ごしやすくなっていた。
 まだ紅葉には早いが、秋特有の陽光を受けた木々は、夏とは違った艶やかな色彩を帯び始めている。
 その光の中で、一人の女が静かに呂の鳥居を見上げていた。
 赤とも黒ともつかない不思議な色合いの長い髪に、紅の瞳。均等の取れた顔立ちは、ややきつい印象を受ける。だが、女の身の内から出る圧倒的な存在感の方が、より周囲に畏怖の念を抱かせた。
 参道に植えられた木々がざわめいている。
 木々が葉を揺らし枝を枝垂らせる様は、まるで女に敬意をはらい、頭を垂れているようにも見える。だが女はそれをまるで意に介さず、不愉快そうに表情を歪ませた。
「嫌な土地だこと……」
 吐き捨てるように女が呟く。
「この私が春の眷属を助けるなど……そうは思わなくて? 蔓王」
 煩わしげに鳥居から視線を背けると、女は蔓王の名を呼びながら、参道の一点を見据えた。
 程なくして、女が視線を向けた場の空気が歪み始める。歪みは次第に大きさを増し、波紋の形状を成してゆく。
 女が無言でそれを見つめていると、やがて波紋の中央から一筋の風と共に蔓王が姿を現した。
「……お久しぶりです。露月王姉さま」
 蔓王は真顔のまま女へと静かに頭を下げる。だが、露月王(つゆつき)と呼ばれた女は不機嫌なまま端的に言葉を放った。
「一体これは何なの?」
 露月王の射抜くような視線に、蔓王が思わず閉口する。

 村の中核を成す三つの鳥居と神社。そしてその最奥に在る神木桜。
 呂の鳥居とそこに張られた注連縄を一目見ただけで、露月王はそれが何を意味しているのかを理解していた。
「人間に関わると、ろくな事にならないという典型を見ているようね」
 蔓王に呼ばれて来てみれば、とんでもない災厄が自分を待ち構えていたものだと、露月王は鼻で笑う。対して、蔓王は切実に露月王へと嘆願する。
「夢の外は夏のままですが、夢内には秋が訪れます。姉さまの支配下に入りますので、僕はこの夢の中には留まれません。お嫌かもしれませんが……」
「解っているのなら、何故この私を呼んだの」
「…………」
 蔓王が人間に親しみを抱き、自ら近づこうとするのに対し、露月王は必ず一線を引いて接した。
 人間は常に二つの事物を比較し、物事に優劣をつけることを好む。力を有するものに迎合し依存もするが、事が及んで集団化すると途端に手のひらを返して敵意をむき出しにする。そんな人間の性質を、露月王は酷く嫌っていた。
 だから、蔓王が神木桜に宿る神を助けたいと思い、村人たちの苦しみに心を痛めていると解っていても、露月王がそれに感化される事は決してない。
 神と人間は決して相容れない存在(もの)だと、露月王は心のどこかで割り切っていた。
 露月王は一度深い溜息を吐くと、俯いている蔓王の顎に人差し指を当てて己の方へ顔を向かせた。
「いいこと? 夢へ入り込んだ人間達に危険が及ぶようであれば助けてあげる。でもそれだけ。私は一切関わらない」
「……はい。皆さんには、僕から姉さまの事を伝えておきます」
 蔓王の言葉を聞くと、露月王は再び溜息をつきながら空を仰いだ。
 木々の合間から覗く空は何処までも青く澄み渡り、木漏れ日が揺らいで大地に細やかな陰影を作っている。あと数ヶ月もすれば、この世界は艶やかな錦の色に染め上げられるだろう。
「本当に……嫌な土地だこと」
 美しいのは表面上だけだと告げる露月王に、蔓王は返す言葉を見い出せなかった。



■ 承前 ― 晩秋 ― ■

 御流神社の御縄結いが終わった後、夢を渡った五人は雄滝村にある一軒の空き家へと身を寄せていた。
 三室しかない平屋ではあるが、呂の鳥居のすぐ近くに建てられている所為か、屋根や土壁に綻びもなく、他の民家と比べればまだましな造りだ。
 そんな平屋の土間にある連子窓から、芳賀百合子は随分と長い間外の光景を眺めていた。

 村の木々が艶美な色合いを呈し始める、晩秋。
 秋の深まりと共に風は冷たさを増し、それに揺られて、色づいた木々が葉を参道へと落としている。その所為か、質素極まりない村の雰囲気が一転し、どこか華やいでいるようにも見えた。
「紅葉はきれい。でも……冬が来るの、嫌だな」
 ぽつりと呟き、百合子は微かに視線を落とした。
 夏に川辺で水遊びをした。それをつい昨日の事のように思い出せるのに、季節は音もなく過ぎ去ってゆく。
 殊に秋から冬へと移り変わる時期は、自分一人が取り残されているような心持になって、漠然とした焦燥感に苛まれる。百合子はそれが好きではなかった。
 百合子は瞳を閉じると、心の中に在る感情の一切を払拭するかのように、一度大きく深呼吸をした。その時。
「百合子さんじゃないですか。こんな所でどうかしたんですか?」
 そんな穏やかな声が聞こえて思わず振り返ると、そこには、きょとんとした様子で百合子を見つめる樋口真帆の姿があった。


 水を飲む為に土間へ足を運んだ真帆は、障子戸を開けた先に百合子の姿を見つけると笑顔を向けた。
 ふらりと部屋を出たまま戻ってくる様子もなかったから、てっきり百合子は外へ出たのだとばかり思っていた。一体何をしていたのだろうと不思議に思いながら、真帆は靴を履いて土間へ降り立つと、百合子の傍らまで歩み寄った。
 百合子は曖昧な微笑みを浮かべながら、連子窓の向こうに見える景色を指差してくる。
「何となくね、秋だなぁって……思ってたの」
 土間の連子窓は参道に面している。そこから臨めるのは御流神社へと続く道筋だ。
 紅葉の舞い散る中、村の子供達が参道を走って神社へ向う姿が視界に入り込む。雨歌の元へ遊びにいくのだろうか。
 木枠に細い枝を差し込んでいるだけの連子窓からは、当然のように外気が流れ込んできて、真帆は思わず己の頬に両手を当てた。
「随分と寒くなりましたよね」
「うん。夢の外はまだ夏だなんて、嘘みたいだね」
「……そういえば、蔓王さんはもうこの夢の世界には居ないんでしょうか」
「夏の気配はもう無いから、多分」
 真帆の言葉に、百合子が頷く。

 夏から秋へと移り変わる頃、蔓王が全員の前に姿を現した事があった。
 夢とはいえ、夏が去ればこの場に留まる事は出来ない。そう言って自分達に頭を下げる蔓王の姿はとても痛々しく見えた。だからこそ、心配しないでと笑顔で蔓王を見送ったが、やはり不安が無いといえば嘘になる。
 そんな気持ちを察したのか、百合子が真帆へと笑顔を見せた。
「でも蔓王のかわりに秋の神様が私たちを護ってくれてるって、言ってたし」
「露月王さん、でしたっけ。まだ一度も姿を見せてくれませんよね。どんな方なんでしょうか」
 飽贄の祭りが執り行なわれるのは明後日だ。けれど依然として露月王が自分達五人の前に姿を現す事は無かった。
「……露月王も神木桜の神さまも、どこにいるのかな」
 何事も無く、ただ静かに時が流れてゆく。
 この静寂が一体いつまで続くのか。誰もがそれを思いつつ、口に出せずにいた。

 百合子と真帆の間に沈黙が流れた時。
「二人とも、ここに居たのか」
 背後からそう声をかけてくる者があった。
 二人が同時に振り返ると、開け放たれた障子戸の奥から、榊紗耶がこちらへ向って歩いてくるのが見えた。紗耶は静かな口調で二人を促してくる。
「奥に、皆揃っている。そろそろ始めるから……」
「あ、はい! 百合子さん行きましょう」
 真帆の呼びかけに、百合子も慌てて頷いた。

 飽贄の祭りの前に一度全員で集い、互いが持ちうる情報を交換し合おうと言ったのは紗耶だった。
 蔓王が居らず、露月王も自分達の前に姿を現さない今、頼れるのは同じ境遇にある五人だけだ。
 夢見の力で「自分達はこの村の住人だ」と村人や夢主に思い込ませてはいるものの、実際は御縄の儀で村の在りようを垣間見たに過ぎない。
 この先何が起こっても柔軟に対応する術を持つ為には、何より互いが協力し合う事を考えなければならないと紗耶は考えていた。
「少しでも、見えないものが見えてくるといいけれど……」
 何かを為せるのならと、蔓王と約束した。その思いが紗耶を駆り立てていた。
 百合子と真帆が土間からこちらへ上がってくるのを見届けると、紗耶はそのままゆっくりと踵を返して奥の部屋へと歩き出した。


*


 始まりは『伊の鳥居』。
 そこから長い参道を経て御流神社の『呂の鳥居』へ辿り着く。
 鳥居を抜けた奥には拝殿が置かれ、拝殿から橋を渡った先に在るのが神楽殿。
 神楽殿から本殿までは山道になっており、蛇行しながら山を登っていかなければならない。
 御縄結いの儀式で山を登った時は、道の両脇に置かれた石灯籠に火を灯しながら向ったからかなりの時間を要したけれど、実際の距離はどれくらいだろう。
 やがて『波の鳥居』と本殿を抜けると、その先には御神体である桜の木が祀られている――。


 奥の部屋に集った五人は、藤宮永を中心にして円陣を組むように座り込んでいた。
 藤宮永と冷泉院蓮生の二人もまた、男子禁制のきまりを反故に、蔓王の力を借りて御神木のもとへ行った。だが、実際に拝殿を抜けて波の鳥居までを歩いたわけではないから、その道程を知らない。だからこそ、まずは村の地図を紙に書き出し、その全貌を掴もうということになったのだ。
 簡略化した地図だが、漠然と頭の中で捉えるよりも視覚的に捉えた方が、全体像を掴みやすい。
 やがて、一通り村の地図を書き終えた頃、蓮生が地図を眺めながら呟いた。
「……拝殿から神木桜まで、随分長い道程だったんだな」
 永は筆を置くと、蓮生の言葉に頷いて返す。
「そのようですね。私達は夏神様の力をお借りしましたから、神木桜まで一瞬で辿り着けたのですが……」
 改めて地図に視線を落とした永は、ふとあることに気付いて顔をしかめた。
 その様子に、紗耶が首を傾げる。
「永さん、どうかしたのか?」
「いえ。奇妙な村だと思ってはいましたが、こうして地図にしてみると、それがいっそう際立つと思いまして」
 永に言われて、全員が半紙に描かれた地図へと視線を落とす。
 永が再び口を開いた。
「まず『伊の鳥居』から神楽殿までの道程ですが、建物を除外すると一直線上に道が出来ています」
 永は、半紙に記された地図をゆっくりと指し示しながら話を続ける。
「ですが神楽殿を抜けた途端、急激に道が蛇行し始める。この境が極端過ぎるのですよ。どこか、違和感を感じてなりません」
 確かに神楽殿を境にして、それまで直線だった参道が歪みを帯びる。
「そういうものだ」と言ってしまえばそれまでの事だが、ともすれば見過ごしてしまいがちな村の構造に、永は疑問を抱いた。
 そんな永に対し、真帆が顔を上げて一つの推測を呈してくる。
「神楽殿から奥は山に入るからじゃないですか? 流石に、山道に逆らって真っ直ぐにご神木のある場所まで登って行くのは難しいと思います」
 地形上やむを得ないのではないかと言う真帆の言葉に、永は考え込むように沈黙した。


「道は別として、ご神木である桜……不思議な桜だったな。声が聞こえないといっていたか」
 そう言ったのは紗耶だった。
 真夏であるにも拘らず、神木桜は満開に咲き誇っていた。だが、一緒に行った百合子がどんなに呼びかけても神木が言葉を返してくれる事は無く、そこに神の不在を知ったのだ。
 本来あるべき場所から離れた神は無事で居るのだろうか。

 室内に、束の間の沈黙が訪れた。
 ややあって、永は村の地図を眺めながら思案げに腕を組むと、その沈黙を破った。
「桜さんが仰るには、この村では、あえて姫神の力を神社の内に封じ込めているそうです。ですが蓮生さんが村長(むらおさ)から聞いた話と、桜さんの話は些か食い違うのです」
「食い違い、ですか?」
 真帆の問いかけに、蓮生は全員を見渡しながら村長から言われた事を口にする。
「大昔、神木桜の根元で村の男が殺されたと聞いた。血の穢れに触れた神木姫神がそれを怒って村に旱魃を招いていて、村人達は姫神の怒りを静めるために、神木桜を祀っているって……」
 神の力を故意に封じているという桜。
 怒りに駆られて雨を降らせない神に祈りを捧げているという村長。
 何故二人の話が食い違っているのか。
 元々村に住んでいるわけでもない五人が、それを考えたところで答えなど出るはずもない。

 永は組んでいた腕を緩めると、やがて全員へとこう告げた。
「とりあえず飽贄の祀りは明後日ですし、短い期間ですが各自で色々と調べてみましょう。神木桜から離れてしまった姫神の事。三つの祀りの真に意図するところ。ほんの些細な事でも、知りえた情報は共有しておいた方が良いでしょう」
 永の言葉に、全員が同意を込めて頷いた。
「私と真帆さんは神楽の練習もあるし……自由に動ける時間は少ないけれど」
「はい。でも少しでも合間を見つけて、村の方々から情報を得てみます」
 紗耶と真帆が交互にそう告げる。
 次いで言葉を発したのは蓮生と百合子。
「俺は、神楽を見せてもらおうと思うけど、直接参加するわけではないから、何か手掛かりになるようなことが分らないか、巫女の桜やこの村の自然と話してみようと思う」
「うん。私は神楽に参加しないし、時間もあるから……」
 ここに来た理由は、祭りを楽しむ為ではない。哀しみの念に捉われ続けている神木桜の神を救い出す事だ。
 限りある時間の中で少しでもこの夢をよい方向へ持って行きたいと思う気持ちは、全員同じだった。
「飽贄の祀り……神の心を癒す為という話ですが、果たして本当に神の心は癒されるのか。囚われの姫の御機嫌伺いにしか思えません。捕らえた側の自己満足ですか、ね」
 永は独り言のように呟くと瞳を閉じた。

 村の祀り神。
 旱魃から逃れる為に神へ縋る村人達。
 その神の言葉を聞き、神哭の祀りで神の力を解き放つ役割を担う巫女。
 それぞれがどのようにして動き、何を為そうとしているのか。
 見えそうで見えない真実を見定める為に、夢を渡った五人が動こうとしていた。



■ 狂花 ■

 飽贄祭前日。
 早朝から続いていた神楽の練習が終わる頃、既に周囲は夕闇に包まれ、空には弦月が姿を現していた。
 女達はみな自宅へと帰り、桜も社殿へと戻ったのだろう。今、舞殿に居るのは榊紗耶と樋口真帆の二人だけだった。

 拝殿に劣らない程広大な敷地面積を誇る神楽殿。
 四方いずれからでも神楽を眺望できる仕組みなのだろう。参道を塞ぐように建てられた舞殿には壁がない。重厚な支柱に高欄を取り付け、屋根には水引幕が張られていた。
 舞殿の四隅には松明(たいまつ)が置かれ、炎を勢いよく上空へと舞い上がらせている。炎はゆらめきながら舞殿を明るく照らし、深い陰影をつくり出していた。
 時折パチンという大きな音とともに火の粉が飛び、それは夏の蛍の残像のように宙を彷徨い、やがてに空気に溶けて消えて行く。
 紗耶は高欄にもたれ掛かりながらその光景を見つめ、やがて微かな溜息を零した。
「明日か……」
 飽贄を目前に控えている所為か、紗耶の心は晴れなかった。
 子供も大人も、村中が力を合わせて祈雨の祀りを乗り越えようとしている。
 そんな彼らに、祀りの事を聞いて水を差すような事はしたくないと思う反面、結局なんの手掛かりを掴むことが出来なかったという焦燥感が、紗耶の心に影を落としているのだ。
 自分達はこの村の住人だと周囲に思い込ませている以上、祀りには絶対に参加しなければならない。紗耶も神楽を舞う事になってはいるが、ここへ来た本来の目的は神木桜に宿る姫神を救うことだ。
 もっと他に為すべき事があるのではないか。
 こんな風に、時の流れに身を任せていて良いのだろうか。
 思えば思うほど、足踏み状態の現状に不安が募る。
「変えようとしても変えられない過去……決められた未来」
 ぽつりと、独り言のように紗耶が呟く。
 この『夢』は過去に実際起こった出来事だ。自分達は今、その軌跡を追っているに過ぎない。
 抗っても抗いきれない未来への道筋をただひたすら歩んでいるだけ。
 では、姫神が繰り返し繰り返し同じ夢を見続けている理由は何だろうか。
 姫神は夢の中で何を成したいのだろう。
 救いの手を差し伸べたいと思いはすれど、どうしたらよいかわからない。
「せめて、直接姫神と話が出来たらいいのに……」
 紗耶は漠然とした不安を振り払うかのように、一度大きく深呼吸をした。
 その時。
 静寂の中を一筋の音が響き渡った。
 それは夜の闇に溶け込むような、優しさを抱いた音。
 紗耶は顔を上げると、自分の斜め後ろに座していた真帆を見遣った。



 紗耶とは少し離れたところで、真帆は篠笛(しのぶえ)――横笛――を奏でていた。
 何処となく沈んでいるように見えた紗耶に、言葉ではなく音で励ましを与えたかったからだ。
 里神楽は宮廷神楽とは異なり、それを受け継ぐ村の独自性が強い。
 神楽舞を正式に学んだ事のない自分が、今から舞を習得するのは難しいと判断した真帆は、舞よりもむしろ楽器を弾くことを望んだ。
 篠笛は初めてだったが、幼い頃から楽器には慣れ親しんでいる。三ヶ月という期間の中で練習さえ怠らなければ、弾きこなす自信はあった。

 夜半の空気は冴え冴えとしていたが、その分昼間よりも澄みわたり、音は透明度を増す。
 真帆の奏でる音色はどこまでも深く穏やかで、闇を照らす月光のように優しく周囲を包み込んだ。

 飽贄祭で姫神へ献上するに相応しい音色――。

 その場に村人達がいれば、誰もがそう思っただろう。
 やがて、真帆の奏でる曲調が、子守唄のような旋律から凛とした強さを感じさせるものへと変わった。
 大気中を伝播し、神木桜から抜け出した姫神の心にも届けば良い。
 自分の奏でる篠笛で、悲しみに囚われたままの姫神に、何ものにも立ち向かえる勇気を少しでも与えることが出来たら。それと同時に、飢えや不安を抱えている人達にも――。
 真帆はただそれだけを願い、篠笛を吹き続けた。


*


 やがて夜も深まり、月光が強みを帯び始めた頃。篠笛を奏でていた真帆は、ふと人の気配を感じて視線を舞殿の階へと向けた。
 四方を照らす松明のおかげで、階を上ってくる者の姿を明確に捉えることが出来る。遠慮がちに姿を現した相手を見留めると、真帆は篠笛を口元から離してその名を呼んだ。
「桜さん? まだ帰っていなかったんですか?」
 音色が途切れた途端、周囲に静寂が訪れる。
 桜は階を上がると、真帆が笛を止めてしまった事に少しだけばつの悪そうな表情を浮かべた。
「ごめんなさい。社殿の方まで音色が聞こえてきたものだから……まだここに居るのかと思って来てみたの」
 邪魔をしてしまった? と桜が首を傾げる。それに対し、真帆は笑顔を浮かべた。
「そんな事ないですよ。練習していただけですから、気にしないでくださいね」
 桜はホッとした表情を見せると、やがて紗耶の隣に腰を下ろした。
「二人とも、あまり根をつめると明日が大変よ?」
「はい。でもこのまま帰っても、何だか寝付けないような気がして」
 真帆は手にしていた篠笛を膝の上に置くと、紗耶と桜を交互に見つめた。
「もう、明日なんですよね」
「……そうね。まだ先のことだと思っていたけれど、時が流れるのは本当にあっという間」
 つい先日御縄の儀式を終えたばかりなのに、季節は確実に移ろい行く。
 飽贄の祀りが終われば、次に待つのは神哭の祀りだ。わずか半年の間に、立て続けに三つもの祀りを行うのは、かなりの労力を要する。
 真帆は神楽の練習に明け暮れた三ヶ月間を思い出すと、感慨深くため息を吐いた。

 その傍らで、紗耶が微かに視線を落とす。
「……きちんと舞うことが出来るか、少し不安」
 明日のことを想像したのだろう。紗耶が、か細い声でそう呟いた。
 紗耶の瞳は周囲の景色を映さない。
 視力と引き換えに夢見の能力と第三の瞳を得たが、本番でふらついてしまわないか、皆に迷惑をかけてしまわないか、心配でならないようだった。
「大丈夫ですよ。紗耶さんもずっと頑張っていたんですから。ね、桜さん」
 真帆は紗耶を励ますように屈託の無い笑顔を見せる。桜も真帆に同意するように頷くと、紗耶の手に己の手を軽く乗せた。
「基礎的な所作は、意識しなくても身についているものよ。もっと自信を持って」
 万が一にも何かあった時は私が支えるからと、桜が紗耶へと告げる。
 紗耶が舞うのは、桜との二人舞だ。
 普段は儚げな桜だが、ひとたび舞殿に上がると誰よりも存在感を増した。
 流麗な所作には寸部の狂いもなく、袖を振るだけで他者を魅了する。きっと御鈴を鳴らす意味も、振りの一つ一つも、全てを解しているのだろう。
 紗耶はその様子を思い出すと、少しだけ不安が払拭されたのか、やがて静かに微笑んだ。


 束の間の沈黙が三人の間に流れた。
 神楽殿を取り巻く木々が柔らかな葉擦れの音を奏でている。そのおかげで、会話が途切れたにもかかわらず、周囲には穏やかな空気が満ちていた。

 そんな中、真帆はふと桜の方へ視線を向けた。
 桜は高欄に片手を置き、ぼんやりとした表情で月を眺めている。その姿からは、明日の祀りに対する気負いが全く感じられない。
 普通ならこういう時、明日の段取りを何度も確認してしまうくらい心が高ぶったり、緊張して眠れなかったりしそうなものだ。でも桜はそういった不安を全く持ちえていないかのように、ゆったりと構えている。
 思えば初めて会った時から、桜はどこか他人事のように村の在りようを眺めていた気がする。
 巫女として村人達から崇められても、桜自身が直接村人に話かけたり、笑顔を向けることは一度も無かった。
 ではどうして桜は、雨歌や自分達五人には笑いかけてくれるのだろう。
 自分達が桜に巫女である事を強要していないからだろうか。
 きちんと一人の人間として桜に接しているから。だから桜は、自分達にだけ素の部分を見せてくれるのだろうか。
 だとしたら、桜に祈雨の祭りの事を聞けば、少しでも何かを教えてくれるかもしれない。
 真帆がそんな事を考えていた時だった。
「……どうしたの?」
 月を眺めていた桜が、不意に真帆へと顔を向けてきた。
 視線が合い、真帆は慌てて桜から顔をそらして俯く。だが、束の間逡巡した後、真帆は恐る恐る桜へ向き直ると口を開いた。
「あの、このお祭りって本当に雨をもたらすんでしょうか?」
 突拍子の無い問いかけだったように思う。
 桜も、何を問われているのか解らないといった風に瞳を瞬かせている。
 真帆は一度頭の中で言葉を整理すると、話を続けた。
「川で水遊びをした時に言ってましたよね。三つの祀りを無事に為し終えて、はじめて祈雨が成立するって」
「……そうね」
「もうずっと雨が降っていないのに……本当に三つの祀りを終えたら、神さまは雨を降らせてくれるんでしょうか」
 もし、神木に宿る姫神が雨を降らせてくれなかったら?
 三つの祀りが何らかの形で成立しなかったら?
 その時は一体誰に願えば良いのか。
 桜は無表情のまま、真帆へと力強く言い放った。
「雨は、降るわ。少なくとも私が記憶する限りでは、雨が降ったもの」
 その時。風もないのに松明が一度大きく揺らいだ。
 紗耶だけがそれに気づき、周囲へ視線を走らせる。だが神楽殿には自分達以外に人の気配はない。
「絶対に、三つの祀りを行わないと駄目なんですか? 村の皆で神様にお願いすれば、すぐにでも降らせてくれるんじゃないでしょうか」
 真帆の問いかけに、桜が静かに首を横へ振ってくる。
「駄目なの。三つの祀りを……神哭を成さなければ雨は降らない」
「どうして?」
 だが桜は困ったように微笑むだけで、それ以上は何も返してくれなかった。


 直感とでも言うのだろうか。
 松明の揺らぎ方に違和感を覚えた紗耶は、暫くの間舞殿の周辺に注意を払っていた。
 弦月は柔らかな光を地上に降り注ぎ、空には無数の星が瞬いている。だが月の光は微弱で、一歩舞殿を出ればその先には漆黒の闇が広がっていた。
 拝殿と神楽殿の間を横切る御流川の水音が、昼間よりも大きく聞こえる。
 元々は上流に位置する土地だ。度重なる日照りで水かさこそないものの、岩場に叩きつけられた水音が不協和音のように耳に届き、それは夜の闇の中で、紗耶の不安を増長させた。
 暗闇は自分の父を髣髴とさせる。
 まるで自分めがけて闇が襲い掛かってくるような錯覚を覚えて、紗耶は思わず己の両腕を抱きしめた。
「ここの神は何を望むのか。そしてどの様な神なのか……」
 恐怖を振り払うように、紗耶が口を開く。
「神は真実、贄を望むものだろうか……でなければ降らせないものでもあるのだろうか。古い注連縄でさえ、ああも切り落とさせる神なのに……」
 独り言とも思える口調だった。だが、その声が桜に届いたのだろう。桜は暫くの間それを咀嚼した後で、否定してくる。
「『飽贄』の本来の意味は、その年に実った食料を神様にお見せして、これから先も飢える事無く糧を得ることが出来るようにと祈ること。決して姫神が贄を望んでいるわけではないわ」

 贄とは即ち人間の食糧を指す。
 子供達が飢える事の無いように、来年こそは豊かであれと願う人間達が作り出した祀り。
 そこに神の意志はなく、また絶対的なものでもない。
「御縄を張り替えるのもそう。古い注連縄は、以前に行われた祈雨の為に張られたものでしょう? それを切り落として新しい注連縄を張るのは、以前の祀りと今回の祀りとを区切る為のもの。私達人間が自ら作り出した決まりごとよ」
 御縄の張り替えも、やはり神に無理強いされているわけではないと桜が告げてくる。
 紗耶は己の肩を抱いたまま、昨日五人で話し合った事を口にした。
「けれどこの村では注連縄を利用して、あえて姫神を呂の鳥居の奥に閉じ込めていると、永さんから聞いた。蓮生さんは、神木を血で汚されたことに怒った姫神が雨を降らせないと、村長から言われたと……」
 ふと、桜の顔から笑顔が消えた。
「……村長が、そんなことを?」
 怪訝そうに眉をひそめ、軽く身を乗り出してくる。そんな桜の様子に驚きながらも、紗耶は頷くと話を続けた。
「どちらが本当なのか、私達には解らない。でも、手助けが出来るなら、何でも言って欲しい」
 紗耶がそう言い終えた時だった。
 突然何かが弾けたような、大きな音が神楽殿全体に響き渡った。
 同時に舞殿の四隅で燃え盛っていた松明の炎が、一瞬にして掻き消える。
「……え!?」
 全てが暗闇に閉ざされ、驚いた真帆が小さな声を上げた。
 風は無かったはずだ。もし強風が吹いたとしても、偶然四つの松明が同時に消えるなど考え難い。
 紗耶は思わず中腰になると、周囲を見渡した。
 やはり先ほどの違和感は気のせいではなかったようだ。明らかに様子がおかしい。
「一体……」
 心細そうな真帆の声が聞こえてくる。だが、真帆の言葉はもう一つの声によって遮られた。


『私の怒りに触れたのではない――』


 女の声だった。
 それは明確な音を持たず、紗耶と真帆の脳裏に直接響いてくる。
 地の底から這い上がってくるような声音に、身体中が総毛立つ。
 傍らで、桜が息を呑むのが解った。


『人間が御流川を血で穢し、川の神の怒りに触れた。自分達の罪悪によって水神に見捨てられたというのに……何処まで真実を捻じ曲げれば気が済むのか――』


 声から感じ取れるのは怒り。明確な不快感。だがそれが何処から聞こえてくるのか解らない。
 次第に目が暗闇に慣れてくる。紗耶は傍らに居る桜へ視線を向けた。桜ならこの異様な事態を収束してくれるかもしれないという期待からだった。
 だが桜は、真っ直ぐ一点を見つめたまま微動だにしない。
 紗耶は桜の見つめている方――御流川に掛けられた橋の方を振り返ると、思わず驚愕に目を見開いた。

 舞殿から少し離れたところに、一人の女が忽然と姿を現していた。
 闇の中、女は青白い燐光を発しながら、不機嫌さを露骨に出してこちらを見据えている。
 女の姿を見留めた真帆が目を凝らす。
「…………雨歌、さん?」
 普段とはかけ離れた様相に、一見しただけでは解らなかった。けれど長い黒髪も顔立ちも、淡い桜色の和服までもが、雨歌のそれと同じだ。
 だが桜は、真っ直ぐに女を見つめながら真帆の言葉を否定した。
「違うわ。雨歌じゃない」
「だって……」
「雨歌じゃない。あれは雨歌に依り坐している、姫神」
 桜の口から飛び出した名前に、真帆が信じられないといった風に瞳を見開く。
「姫……神? 神木桜に宿っていた?」
 外見は確かに雨歌だ。だが、桜は今「依り坐し(よりまし)」と言った。
 ではあそこに居るのは、雨歌の身体に憑依した姫神なのか。

 注連縄で呂の鳥居より内側に封じられ、村内から出る事のかなわない姫神。
 身体が弱く、拝殿より外へ出られない雨歌。

 姫神の置かれている現状と雨歌の体質とを考え合わせた上で、依り代という結論を導き出せば、確かに辻褄は合う。
「……鳥居から外に出られないのは雨歌自身ではなく、雨歌の身体に憑いた姫神……?」
 紗耶が呟く。
 姫神はこちらの驚きなどまるで意に介さないといった風に、双眸を細めながら紗耶へ問いを投げかけてきた。

『私の怒りに触れたと、そう言ったのはあの男か――』
 これまでの雨歌からは想像もつかない程威圧的な物言いに、紗耶が思わず尻込みする。即座に、紗耶のかわりに桜が口を開いた。
「聞いてどうするというのですか?」
『この娘の願いを叶える為に、為すべきことを……それは同時に、私の望みでもある――』
「この娘」とは雨歌のことをさしているのか。姫神の口調が少しだけ柔らかくなった気がした。
 それに対し、姫神の口から雨歌の話が出た途端、桜が血相を抱えて高欄から身を乗り出す。
「雨歌の願いとは何ですか? 雨歌は貴方に何をさせようとしているの!?」
 悲痛な叫び声だった。だが姫神は桜の叫びに一切答えず、再び紗耶へと視線を向ける。
『沈黙は肯定と捉えよう――』
 姫神の身体から発せられる燐光が揺らいだ。
 少しづつ、青白い光が薄れてゆくのが解る。姫神の身体が闇の中へと消え始めている。
「待って! お願いですから雨歌の身体にこれ以上負担を掛けないで!!」
 なおも食い下がろうとする桜に、姫神はふと笑顔を浮かべた。その表情だけは姫神のものではなく、普段雨歌が見せる屈託の無い笑顔のように見えた。
『終わらせるの、全て。安心して、貴方達に害は為さない』

 その言葉を最後に燐光が消え、再び周囲は暗闇に閉ざされた。
 どんなに目を凝らしても雨歌の姿はそこに無く、ただ御流川の川音だけが耳に届いた。


*


 暫くの間、三人は呆然と雨歌の消えた方向を見つめていた。
 一体何が起きたのか、即座に判断することができなかった。
「……どうして、姫神が雨歌さんに?」
 真帆は膝に乗せた篠笛を握り締めながら、疑問を桜へ投げかけた。
 雨の日に生まれた巫女を御縄で封じ、贄をもって祀り、そして神木に捧げる。それが祀りの内容なら、巫女に名前をつけて俗世に戻せば、この夢の結末を変える事が出来ると真帆は思っていた。
 けれど実際は違う。名前をつけて俗世に戻されたはずの雨歌に、姫神が依り坐している。
 何故姫神は巫女である桜を依代とせず、巫女の役目を解かれた雨歌に憑いたのか。
「教えてください」
 真帆がもう一度桜へ問いかける。だが、桜は項垂れたまま首を横へ大きく振った。
「わからない。雨歌は私にさえそれを教えてくれないし、村の皆は雨歌に姫神が降りている事自体を知らない。でも雨歌の身体の中で、姫神と雨歌の意識は共存している……強引に姫神が依り坐したわけではないと思う……」
「……雨歌が望んで身体を貸している可能性も、あるということ?」
 紗耶の疑問に、桜が微かに頷いてくる。
「雨の日に生まれた子供が巫女として選ばれる。でもそれは、特別な能力を持って生まれて来たからではないの。ただ雨の日に生まれたというだけで祀り上げられた、普通の人間。でも雨歌は違った。子供の頃から村の誰にも見えないものを見て、対話する事が出来る力を持っていた。ただ身体が、その力を支えるだけの強さを持たなかった……弱くて、命さえ落としかねない……だけど……」

 普通の人間にはない能力を与えられたものは、それと引き換えに相応の代償を求められる。それは肉体的な疲弊であったり、時に異端として迫害されたり。雨歌の場合、それは命に関わる程のものなのなのだろう。
 だが、自分の大切な人が苦しんでいる姿を見続けなければならない桜もまた辛いはずだ。
 真帆はそっと桜の顔を覗き込んだ。今にも泣き出してしまいそうな表情で、それでも必死に堪えている桜の様子が、真帆にはたまらなく悲しかった。
「……私はみんなの笑顔を守りたいっていつも思っているんです。桜さんにはそういうのありますか?」
 この世に生きる全ての人達が、常に幸せで何の悩みも持たずに生活して行くのは難しい。時に苦しみ、嘆き、それでもその困難を乗り越えて笑いあう事が出来たら。その為に、自分達に何かできる事があるなら、少しでも手助けをしたかった。
「……助けて」
 桜が振り絞るようにそう言った。心の底から懇願しているのが、痛いほどに伝わってくる。
「雨歌を助けて」
「…………」
「思いつめては駄目とあれほど言ったのに……あの子、姫神の力を使って、きっと何かよくない事をしようとしている……」
 具体的に何をするつもりなのか、雨歌が沈黙している以上わかりようもない。桜にさえ伝えていない事なら尚更、雨歌が自分達に口を開く可能性はゼロに等しい。
「姫神がこの村から出る事が出来れば……雨歌の身体からも離れてくれる。そうすれば、雨歌は開放されて自由になれる」
「どうすればいい?」
 紗耶が、桜へと問いかける。桜は一度言葉を置いた後で、意を決したようにこう告げた。
「……呂の御縄を切って」
「御縄を、切る?」
 何故呂の御縄を切る必要があるのかわからず、紗耶と真帆は困惑しながら顔を見合わせる。
「御縄を張り替えるのは確かに儀礼的なもの。でも御縄自体は、姫神を内に閉じ込める枷でもあるから……」
「……枷」
「呂の鳥居は常に村長達に監視されている。三の祀り……神哭の祀りの日、村の住人全員が神木桜の元へ赴くわ。三の祀りは巫女が神の力を解き放つもの。私が村の人達をひきつけているうちに……」
 そこまで話すと、桜は深々と二人に頭を下げた。
「私では無理なの。だからお願いします……鳥居の御縄を切って」

 あの巨大な鳥居にかけられた注連縄を切るのは、並大抵の事ではない。第一それを成したところで、本当に全てがうまくいくのだろうか。
 神哭の祀りで、桜や村人達は何をするのか――。
 欠けたパズルのピースが少しづつ埋まって行く。
 最後の一つをはめ込んだ時、待っている未来はこれまでのものとは違う結末になるのだろうか。
 先の見えない道を歩く事に、一抹の不安が過ぎっていく。
 しばらくの間、紗耶と真帆は無言のまま、桜の言葉を反芻していた。




<飽贄の章 ―壱― 了>



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号/PC名/性別/年齢/職業】


【1711/榊・紗耶(さかき・さや)/女性/16歳/夢見】
【3626/冷泉院・蓮生(れいぜいいん・れんしょう)/男性/13歳/少年】
【5976/芳賀・百合子(ほうが・ゆりこ)/女性/15歳/中学生兼神事の巫女】
【6458/樋口・真帆(ひぐち・まほ)/女性/17歳/高校生*見習い魔女】
【6638/藤宮・永(ふじみや・えい)/男性/25歳/書家】



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■         ライター通信          ■
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 こんにちは、綾塚です。この度は『桜媛奇譚――飽贄の章・壱――』をご発注くださいまして、まことに有難うございました。 そして、またもや私事で恐ろしいほど遅延してしまい……深くお詫び申し上げます。

 三連作の二話目前半になります。本来ならこのノベルで飽贄全てを終わらせるはずだったのですが、私の体調不良及び頂いたプレイングから判断して、飽贄に入る前にワンクッション置かせて頂きました。飽贄の祀り前日の出来事です。
 祀りに直接参加する方と、見学なさる方・参加しない方とで大別しております。一本の筋を軸に、雨歌寄りの話と桜寄りの話で作り上げていますので、前回同様、他のPC様のノベルをお読みいただくと大体の全貌がつかめるのではないかと。
 ただこれは毎回思うことなのですが……書き手は全てを把握して書いているものなので、真っ白な状態のプレイヤー様にお読み頂いて、果たして理解して頂けるかどうかという不安が頭の中に渦巻いています…(すみません。私の文章力の問題です…)ご不明な点や不可解な点がありましたら、遠慮なくご一報くださいませ。
 それでは、少しでもお気に召して頂けましたら幸いです。