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INNOCENCE 初任務
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OPENING
「うへぇ。ガルカスの討伐かぁ…キツいんじゃねぇか?」
渡された依頼書を見つつ、頭を掻いて笑う海斗。
梨乃も依頼書を覗き込み、神妙な面持ちだ。
不安がる二人を見つつ、マスターはファッファと笑い言う。
「何の。このくらい余裕じゃろうて」
「そーかなぁ」
「寧ろ、余裕じゃないと困るわい」
「んー。まぁ、そーだけどな」
笑いながら依頼書を懐にしまうと、海斗は時計を確認。
そして梨乃と顔を見合わせ頷き、マスタールームを後にする。
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「ガルカス…どっかで聞いたことあるような気がするのよね…」
ボソボソと呟きつつ、湿地帯を歩くシュライン。
彼女の手には、一枚の書類。任務詳細が記された書類だ。
書類は、INNOCENCE本部から、前夜にファックスで送られてきたもの。
最下部には、海斗のサインが入っている(汚い字で)
集合場所は、湿地帯にある洞窟の前。時刻は、もうすぐ零時。
現場に到着するやいなや、海斗が駆け寄ってきた。
「遅いよー!来ないかと思ったじゃんかー」
懐っこく、腕にガシッとしがみつく海斗に、
シュラインはクスクス笑いつつ「ごめんごめん」と告げた。
「そろそろ…零時ですね」
そう言って読んでいた本を閉じ、スッと立ち上がるのは梨乃。
シュラインがINNOCENCEに関与して初の任務となる今回の内容は、
洞窟に棲む魔獣、ガルカスの討伐。
ガルカスは深夜零時になると同時に洞窟から出てきて、
見境なしに、目に留まった人間を襲う。
元々はIO2に入った任務らしいのだが、
マスターがIO2トップに願い、譲ってもらった任務だという。
シュラインの持つ力と能力、才能を確認する為に譲ってもらったそうだが、
海斗と梨乃は、いきなりガルカス討伐をブチ当てるなんて過酷だと言った。
二人の言うとおり、ガルカス討伐は、
そこそこ腕が立つ…程度では遂行が難しい。
難易度は、かなり高い任務と言える。
「えーと、忘れ物は…ないわね」
荷物を確認しているシュライン。
任務の為に、色々と準備してきたようだ。
ガサゴソと荷物を漁るシュラインの傍には、タシとエク。
お手伝いしてもらおうと、彼等も連れてきた。準備万端だ。
「すげー。妖を飼ってるなんて珍しいよな」
タシとエクを撫でながら、興味深そうに言う海斗。
梨乃は少し、動物が苦手なようで、一歩退いている。
「そう?最近は珍しくもないと思うけど。…よしっ、そろそろ行きましょうか」
シュラインは荷物を持ち上げ、洞窟を示す。
ガルカスが棲んでいる洞窟は湿地帯にあるだけに、中もジメジメと…薄気味悪い。
歩く度、静かな洞窟内に足音がこだまする。
時刻は二十三時五十五分。
ガルカスは零時にならないと活動を開始しない。
それまでは、どんなことをしても目覚めない、深い眠りの中にいるという。
「見っけ」
先頭を歩く海斗が、ポツリと言った。
海斗が示す方向を見やると、そこには眠っているガルカスが一匹。
「仲間は…いないみたいね」
辺りを伺いながら梨乃が言う。
シュラインはコクリと頷き、荷物を漁ると、
起きる前に下準備をしておかなくちゃ…と小声で呟き、
一人、ガルカスが眠る開けた場所へ歩き出す。
「度胸あるなー」
「姐さんって感じ…?」
「あははっ。それいいな。ピッタリ」
一人ガルカスの元へ向かったシュラインの背中を見つつ話している海斗と梨乃。
(それ、ちょっと嫌かも)
二人の会話を背中越しに聞いていたシュラインは、
そう思いクスクス笑いつつ下準備を始めた。
持ってきた油を、眠るガルカスを囲うよう円状に撒く。
炎に弱いという情報は依頼書で確認済みだ。
幸いにも、今回の任務には炎のエキスパートが同行している。
加えて、鎮火を任せることのできる水のエキスパートも。
この二人が同行しているのは、実に心強い。
前衛というか攻撃は、ほぼ二人に任せて問題ないだろう。
シュラインは元々、戦闘タイプではなく、
どちらかといえば能力的に援護タイプ。
それを把握しているシュラインは、
出来うる限りの手段で、効率よく討伐が出来るよう工夫をこらす。
油を撒き終わると同時に、シュラインは海斗と梨乃を手招きして呼んだ。
「重たそうだなーと思ってたけど、油入ってたのか。それ」
空になった無数のケースを見て感心する海斗。
シュラインは時刻を確認し、キッとガルカスを見据えると、
海斗と梨乃、そしてタシとエクの頭を順番に撫でて言った。
「いくわよ」
零時。
ゆっくりと目を開くガルカス。
目覚めて早々、目の前に人間がいることに不快感を覚えたガルカスは、
手始めに不気味な唸り声をあげて、威嚇する。
「うるせー」
耳を押さえつつ嫌な顔をする海斗。
「目、伏せてっ」
先手必勝。シュラインは、そう言ってタシの背中をポンと叩く。
合図に応じて、眩い光を放つタシ。
歩いている小さな虫を確認できるほどに洞窟内が白く明るく灯る。
突然の閃光に怯むガルカス。今だ、とばかりに攻撃をしかけていく。
シュラインの合図に応じて、ガルカスに飛びつきピンポイントで目玉を引っ掻くエク。
これには堪らず、ガルカスは大きな悲鳴をあげた。
「まだまだ」
シュラインは不敵に笑うと、海斗に炎を放てと指示を飛ばす。
魔銃にボッと炎を灯し、海斗は痛みに悶えるガルカスの周りへ次々と発砲。
シュラインの撒いた油に触れることで、
海斗が放った炎は、赤々と高く燃え上がる。
ガルカスを囲う炎。壁のように燃える炎で、ガルカスの姿は見えない。
ただ、燃え盛る炎の轟音に混じって、不気味な声のみが聞こえてくる。
「わーい。でっけーキャンプファイヤー♪」
ピョンピョンと飛び跳ねながら楽しそうに言う海斗。
シュラインは、そんな海斗に笑いつつ、次いで梨乃に指示を飛ばす。
悲鳴が治まった頃を見計らい、鎮火を開始。
梨乃の魔銃から放たれる清らかな水は、
炎を包み込むように踊り、やがて、炎を鎮めていく。
こんがりと焼けたガルカスを前に、フゥと息を吐くシュライン。
「すげー!カリッカリー!」
もはや炭と化したガルカスをつつきながらケラケラ笑う海斗。
梨乃は魔銃を腰元に収めつつ、満足そうに微笑んだ。
だが、討伐は、これで完了ではない。
万が一の事態を想定して、完全に悪妖の根は絶たねばならない。
洞窟から出たシュラインは梨乃に尋ねる。
「梨乃ちゃん。氷もいける?」
「はい。もちろん」
ニコリと微笑んで即答した梨乃。
シュラインはウンウンと頷くと、
洞窟全体を覆うように氷を張って欲しいと梨乃に頼んだ。
それに応じて梨乃が魔銃から氷を放つと、洞窟はみるみる凍っていく。
「凍らせてもさ、溶けるじゃん」
凍っていく洞窟を見ながら海斗は言った。
確かに、そのとおり。氷を張ったところで、溶けてしまえば、元通り。
炭と化したガルカスが再び動き出すことはないだろうけれど、
もしかしたら。万が一の可能性はゼロじゃない。
シュラインはクスリと笑うと、目を伏せて得意の超音波を放つ。
いつも放つ超音波じゃなく、今日はちょっと鋭く…危険な超音波で。
放たれた超音波が洞窟と接触した瞬間。
キンッ―
甲高い音が辺りに響き渡り…。
ガシャァンッ―
丸ごと握りつぶされたかのように洞窟は粉々に砕け散った。
「はい。任務完了っ」
フゥッと息を吐いて満足そうに言うシュライン。
海斗は苦笑しつつ小さな声で呟いた。
「おっかねー…」
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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】
0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
こんにちは! 毎度さまです。納品が遅れてしまい、申し訳ございません。
ゲームノベル”INNOCENCE”への参加・発注ありがとうございます。
発注・参加 心から感謝申し上げます。 気に入って頂ければ幸いです。
INNOCENCEは、関連シナリオが幾つもありますので、
是非。また、ご参加下さいませ^^
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2008.03.06 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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