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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE ラボに住まうエージェント

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OPENING

イノセンス本部、白亜の館。
この館の地下には巨大なラボが在る。
魔物のデータや、エージェントの情報が保管されている そこには、
常に、とあるエージェントが滞在している。
エージェントの名は、赤坂・藤二。
海斗と梨乃にとって、兄のような存在である彼は、
情報収集と武器の改造能力に長ける。

今日も藤二はラボで一人。
読書をしながら、ゆったりと過ごしている。
優雅な空間へ、突然の来客。
騒々しい来訪者。それは、無論…海斗だ。
藤二は読んでいた本をパタンと閉じて、優しい笑顔を浮かべた。

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タシとエクの散歩中、近くを通りかかったので本部へ顔を出したシュライン。
二匹を連れて、本部をブラブラしていると、海斗に突然呼び止められた。
会わせたい奴がいるから、ちょっとついて来いと言われ、
シュラインは元気いっぱいに先を行く海斗について行った。
途中で同行した梨乃は「こんにちは」と微笑み挨拶。
シュラインは相変わらずな海斗の後姿に微笑み、
「海斗くんは、いつも一直線ね」と梨乃に言った。
今日は美味しい仕事がないらしく、二人は退屈で仕方なかったのだという。
暇潰しに、と地下ラボにいるエージェントのところへ行こうとしていたところ、
タシとエクを連れたシュラインを発見し、ついでだーと海斗はシュラインを同行させた。
料理が得意だという梨乃とレシピの話などをしつつ、地下ラボへと向かうシュライン。
道中、海斗も梨乃も名前というかファミリーネームに色がついているから、
ラボにいるというエージェントも、そうなのかな?などと思いを巡らす。
と同時にポンッと…武彦の幼馴染である藤二が頭に浮かぶ。
彼もまた、ファミリーネームに色を持つ人物だ。

ラボに到着するやいなや、大声で叫ぶ海斗。
「お〜〜〜〜〜〜い!!!」
突然の大声についビクッと反応してしまうタシとエク。
海斗の声に応じるかのように、ラボの奥から声が返ってきた。
「海斗くーん。うるさいですよー」
笑いながら言っているであろう、その人物の声…。
(ん…?)
聞き覚えのある声に首を傾げるシュライン。
海斗と梨乃についていきラボ奥に到着して、シュラインはビックリ。
「あらっ…?」
そこにいたのは、藤二だった。まさか、本当に藤二だったとは…。
シュラインと藤二は顔を見合わせてクスクスと笑う。
「ん?あれ?知り合い…?」
親しげな二人にキョトンとする海斗。
「向こう(東京)で、ちょっとな」
読んでいた本をテーブルの上にバサリと置いて微笑む藤二。
そうだったのかぁ、と海斗は納得した。
「えぇと、じゃ改めて…。お手伝い要員です、どうぞよろしく」
タシとエクと揃ってペコリと頭を下げるシュライン。
藤二はクスクス笑い「エージェントやってます」と返した。
楽しげに言葉を交わすシュラインと藤二を見て、海斗は梨乃に言う。
「俺達も行くか、トーキョー」
「…手続き面倒だよ?」
「そこは、ほら。お前の仕事でしょ」
「何それ…」
藤二と違い、海斗と梨乃は元々異界の住人だ。
彼等は東京には存在していない人物である。
とはいえ手続きを済ませれば、行き来することが可能になる。
海斗の表情から察するに…近いうちに行くのではないだろうか。


紅茶を飲みつつ談笑する一行。
シュラインはふと、気になったことを尋ねてみる。
「赤坂さん、ここに常在してるってことは…後方支援なの?」
「んー。まぁ、そうかな。情報収集とかがメインだよ」
「へぇ…」
コクコクと紅茶を飲みつつ、頷くシュライン。
海斗は「藤二は武器作る技術もすげーんだぜ!」と自分のことのように言った。
藤二のエージェントとしての仕事は前線で魔物討伐するよりも、
圧倒的にこのラボで情報収集をしていたり武器を作ったりしていることのほうが多い。
意外だが、これでもかなり手先が器用なのだ。
シュラインは、藤二が女の扱いに手馴れていることから、
データというか気配りというか、そういう意味で情報力に長けるのでは、と思っていたが、実際、そのとおりだった。
具体的に、どのような方法で情報収集をしているのかとか、
こっちでも、あちこち手ぇ出してるの?とか…他愛ない話に花咲く。
シュラインは途中で、海斗に聞こえぬよう小声で藤二に、
どうしてわざわざ武彦と違う組織に所属したのかを尋ねた。
藤二いわく、武彦と別の組織に所属したのは、ただ単に面白そうだったから。
実際は仲が良いが、IO2とINNOCENCEは不仲だと噂されている。
幼馴染同士が対する組織に所属しているっていうのが、
ちょっとした漫画や映画みたいなシチュエーションでしょ?と藤二は笑う。
要するに、大した意味はないのだ。
東京でも愛想よく、色々な人から信頼を得ている藤二だが、それはこちらでも同様らしい。
特にマスターとは気心知れた仲で、しょっちゅう一緒に酒を飲んだりしているらしい。
海斗と梨乃にとっては兄のような存在であり、
二人のことを実の弟、妹のように可愛がっている。
海斗も梨乃も、藤二に懐いているようで、
暇になると退屈凌ぎでラボに降りてきて藤二の作業の邪魔をする。
藤二はそれを疎ましく思っておらず、逆に彼等が可愛くて仕方ないようだ。
ちょっと頭には浮かんでいたものの、まさかここで藤二と会うとは。
世間は狭いなぁ…なんて思いつつ、シュラインは会話を楽しんだ。
東京での藤二とは、ちょっと違って、落ち着いているような気が…しないでもない。

存分に話して満足した頃、グゥ〜と海斗のお仲が元気に鳴いた。
「ハラ減った。梨乃、何か作ってー」
足をパタパタさせつつ海斗が言うと、
梨乃は笑い、シュラインと藤二に、お腹は空いていないかと尋ねた。
昼食をとったばかりのシュラインと藤二は大丈夫だよ、と返す。
お仲が空いたとウルサイ海斗を黙らせる為、
梨乃は海斗を引きずり、二人で食堂へと向かった。
ラボに残され二人っきりになるシュラインと藤二。
海斗と梨乃の元気な姿にシュラインはふふふ、と微笑んだ。
「可愛いわよね、あのコ達」
「そうだね。たまぁ〜に、うっとおしいけど」
「そんなこと言って…溺愛してる感じじゃない?」
「いやいや、手のかかる奴等でねぇ〜…」
「ふふ。お父さんみたい」
「うわ。勘弁してよ。まだまだ現役でいさせて?」
「あははっ」
ゆったりとくつろぎ、紅茶を飲みつつ他愛ない話をする二人。
話をしながら、シュラインは自然にチラチラと辺りを見回してしまう。
ラボは広く、本来メカメカしい。
二人が話している空間は、ちょっとしたカフェのような雰囲気だが、
そこから一歩外に出れば、電子音で溢れる空間だ。
「凄い情報量なんじゃない?これ…」
「あぁ、うん。管理大変だよ。今度手伝ってよ。徹夜覚悟でね」
「ふふ。ねぇ、ちょっと見て回っても良いかしら?」
「どうぞ」
承諾を得て、シュラインは紅茶を飲み干し、
テクテク歩いて膨大な数の情報の中へ。
空間に一歩踏み入っただけで、次々と頭の中に、あらゆる情報が流れ込んでくるようだ。
(マズイなぁ…耽っちゃいそう)
興味深い情報が次々と目に留まる中、時間を忘れて耽ってしまいそうな予感。
シュラインは興信所に連絡を入れておかなくちゃ…と携帯を取り出した。
そんなシュラインを見やりつつ、藤二は笑う。
(どこにいても、あいつのことで頭いっぱいか。羨ましいぞ、あのやろー…)

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■

0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 赤坂・藤二 (あかさか・とうじ) / ♂ / 30歳 / INNOCENCE:エージェント

■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度さまです。納品が遅れてしまい、申し訳ございません。
ゲームノベル”INNOCENCE”への参加・発注ありがとうございます。
ウェブゲームの方で武彦と喧嘩する前に納品できれば良かったのですが、
間に合いませんでした…申し訳ないです;
ちょっと順番が狂ってますが…御了承下さい。
発注・参加 心から感謝申し上げます。 気に入って頂ければ幸いです。

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2008.03.14 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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