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<東京怪談・PCゲームノベル>


ネコの進む先に
 波多野・由宇(はたの・ゆう)は中学3年生だが、学校には行っていない。
それで所属している、「超常組織スピリッターズ」の事務所に入り、
私服に着替え、出て行った。今時不登校生なんて、
クラスに1〜2人はいるのだから、めずらしくもない。

 ふと住宅街の真ん中にネコをみつけた。

 由宇はネコが大好きである。本当に心を許した相手にしか
好意を見せず、自由気ままなところが大好きだ。

 ネコに目線を下げて、無言のコンタクトを取ってみる。
しかしネコは尻尾をくるりと曲げ、住宅の間に入っていった。
由宇もまた、その後に続いて進んでいく。

 結構狭いので、由宇も身体を横にして、ネコの追いかけていった。
行き止まりには異次元への扉がある。ネコはそこに入っていったようだ。
真っ黒な道にきらきら光るネコの毛。
その先を行けばどこに出られるんだろう?

 すると、空き地みたいなところに出た。
ネコが1、2、3、4匹集まって、じゃれあいをしている。

 そこには1つの看板があり、読んでみると、

「売り物件」

と書かれていた。由宇はネコの安息場がなくなると知り、
危機感を感じた。自分になにかできないだろうか?

 なにも思いつかなかったので、由宇は事務所に帰ることにした。

「ねぇ、エル、あずさ、ネコの遊び場が破壊されようとしているんだ
どうすればいい?」

エルはタバコを吸いながら答えた。
「時にあきらめなければいけないことだってあるのよ」

あずさは、
「そりゃあきらめるしかないでしょ? 子供になにができるのよ」

その言葉を聞き、
「もういいよ」
と由宇は言い放ち、テレビゲームのスイッチをオンにした。

 それでもあきらめたくない由宇。もう一度あの場所に行ってみた。
するとそこでは数人の大人がなにかをしゃべってた。

「明日にでも工事を始めるか」
「まずは地面をなんとかしなくてはな」

 それを聞いた由宇は怒りを覚えた。由宇は大人たちの前に出て、

「あんたたちか? ここに物件を立てるのは」
「あぁ、そうだが」
「それなら許さない!」

そう言って、由宇は北海道の吹雪のひどい地域を直接つなぎ、
大人たちに吹きかけた。

「寒い、寒い! 何者だコイツ」
「とりあえず打ち合わせは後日だ!」

大人たちはそうして走り去っていった。

 やがてプレハブ組織に戻ってきた時、エルがそこにいた。
エルの右手で由宇の頬をパチンと叩いた。

「能力はそんな自己満足のために使うもんじゃないでしょ」

どうやらあずさが気になって由宇を透視してたようだ。

「今日はもう遅いから、家に帰りなさい」

どうにもならない思いが由宇の涙へと形を変えた。


 日曜日。それでもなんとなく工事現場に来てしまった。
まだ工事は行われておらず、最後の晩餐のごとく
ネコたちはのんびりと過ごしていた。

 そこに1人の女の子が微笑ましそうに見ていた。

茶色の髪と青い瞳。そして透き通る白い肌。ハーフ? 由宇はそんな想像をしていた。
それでいて可愛い。背が小さい部分がまた可愛いと思わせる。

 由宇は意外と消極的で、いいなと思ってもこちらからは決して声をかけない。
すると向こうから由宇の方へ向かってくるではないか。
由宇は緊張しながらも、なにを話そうか、なにを言われるのか、
頭がぐるぐるになっていった。

「こんにちは」

至って普通の反応だった。

「ここももう工事を開始するから、ネコの遊び場ももう終わりね」

由宇はそこでムっときて、
「そんな他人ごとみたいに言うなよ」

女の子はあわてて、
「そういうつもりはなかったの。ただこの光景が好きだったから、寂しいなって」

……。

しばらく無言の時を共有していた。

「ミオは式野・未織(しきの・みおり)って言います。君はなんて名前?」
「波多野」
「波多野さん? 高校生くらい?」
「違う。いつか有名になる不登校生」
「そうじゃなくて、年齢を聞いてるんです」
「14歳」
「じゃあミオより年下だね。波多野くんって呼んでいい?」
「別にいいよ」

そこで由宇はもう一度未織に話しかけた。
「ここさ、なんとかする方法、浮かばね? 俺の力じゃ無理で」
「波多野くん、まずここのネコちゃんはどこから来てると思う?」
「それは、狭い道から空間移動で……?」
「じゃあまずはその周辺へ行ってみよ。あ、波多野くん。ネコたち持ってきてね」
「……って、俺1人でかい!」
「連れてくるよう誘導するだけでいいから」
とはいっても難しいものがあるので、首巻きネコ、頭にネコ、両脇にネコ
由宇は未織の言う通り異空間へ行き、元に戻ってきた。

 そこで未織は由宇に話しかけた。
「ミオね、ダウジングできるんだ。知ってる?ダウジング」
「知ってるよ。振り子のようなものを使って、行くべき場所に導いてくれるやつだろ」
「そう。ミオもネコさん大好きだから、波多野くんの気持ちも分かるの。
ネコさん達の大事な場所を、人が奪って良い訳はないと思うの。
でも、悲しいことに、そこはもう新しい何かが建つ場所、
ネコさんたちの安息の場所ではなくなっちゃう。
だから新しいネコさんの場所をみつけるの」

そう言うと未織は首にぶら下げていたペンデュラムを外し、
垂らしてみた。振り子がほんのりと揺れて、とりあえず左に進んでみる。
振り子は全く動かなくなった。

「じゃあこっちじゃないみたい。右行こ」

 ダウジングによるネコの居場所を探す旅。
その記録は日記帳の見開きいっぱいに、書き連ねられるほどであった。

 そのうち1匹は由宇の傍から離れ、とある家のドアまで行き、ガリガリと
引っ掻いている。とりあえずチャイムを鳴らさなければ。しかしその前に
扉が開いてしまった。

「ミケちゃんどこに行ってたの〜。そうやってすぐ逃げ出すんだから。
届けてくれてありがとうね」
「いえいえ。当然のことですから」

未織はそう言ってご挨拶をして、さー次!と言って振り子を揺らしていく。

 あと3匹のネコに絡まれている由宇は早く終わりたいなーと思うまま、
未織のダウジングに付き合っていた。

 次もまた誰かの家に辿り着いた。すると扉がタイミングよく開いたのだ。

「わーい。ネコが買える!」
と喜ぶ男の子の目の前に、ネコ。

「あ……えっと、あの……」
未織が戸惑っている間に、

「俺たちはこの3匹のネコを引き取ってくれる人、探してるんだけど」
由宇は未織のかわりに説明した。

「そうなんです。このちっちゃい子はまだ成人、いや成ネコになってないんです。
よろしくお願いします!」

男の子の父親らしき人物は
「とは言ってもなぁ」とやや難しい顔をしていたが、
「パパ、僕あれがいい!」
と男の子が言った。

その後も得体の知れない奴の物をもらうなとか、でも欲しいとか、
野良ネコをもらうのはいいことだという母親の言葉に、
この小さいドア周辺のところで家族サミットが行われていた。

その結果は、「ありがたくいただきます」


「今日はもう疲れたね。帰ろうっか。あ、ネコ預かれる?」
「……まぁ、アテはあるかな」

――スピリッターズアジト(プレハブ)

「何よーーこのネコ」
と大一声をあげたのはエルだった。

「エルだったらここで一夜を共にしてネコを守ってくれるんじゃないかと」
「嫌よ。大体シャワーもないのに、ここから次の日出勤するなんて」
「そんなのわかんねーって。外国人は毎日風呂入んねーんだろ」

とにかく由宇とあずさは保護者がいるため、もう充分遅くなった家路を
瞬間移動して帰って行った。

「……どうしよう? 動物苦手なんだけど」

神聖都学園高等部の1年生、未織は平日は学校があるので土日しか探せないのだ。

「さー今日も頑張るぞ!」
「はーい」
元気いっぱい未織に気だるい返事をする由宇。
両手にネコを持ち、ダウジングを開始した。
すると最寄の駅にたどり着く。

「乗れってことかな?」

 ダウジングでどこ行きの電車かを把握して、乗り換えもしつつ、
最後は山奥の終点にまでたどり着いた。

歩きながら未織が話しかけてきた。

「波多野くんは、ネコさんを思いやることのできる、優しい心の持ち主だな
って思います。ミオ、波多野くんみたいな真っ直ぐな人、嫌いじゃないです」
「あぁ、うん。ありがとう」
と由宇はぶっきらぼうに答えていた。

 未織は弱気になりながらもダウジングの導く方向へ進んでいった。
すると古ぼけた立札があり、今にも消えそうな文字で、

「ネコの家」

と書かれていた。
 そこには古ぼけた家が一軒、立っていた。
そこでチャイムを鳴らす。すると頭のくしゃくしゃなおじさんが出てきた。
髪の毛の通り清潔感がなく、動物の毛を洋服にたくさんつけている。

「あの……すみません。ここはどういう場所ですかぁ?」

未織のその声を聞いたおじさんは、

「立札の通り、ネコの家だよ。
保健所で死のうとしているネコを預かってる貧乏おじさんさ」

未織は言いにくそうに、
「……いえ、ネコを預かって欲しい方です」

 家の中にも入れてもらったが、本当にネコにあふれている。
未織も由宇もこの状況をなんとかしたくなった。

「おじさんはパソコンとか使いますか?」
「いや、機械は苦手でね」
「じゃあミオ、ここのネコを宣伝したり、ホームページ作ったりします!」

ホームページの部分を話す時、ちらりと由宇を見たのは気のせいだろうか?

 それから数日間、スピリッターズのパソコンを使って、
由宇と未織の共同作業でホームページを作っていた。

「あーーこんなデザイン可愛くなーい!」

デザイン面はほぼ未織の好みになり、
由宇はプログラマー状態だった。

 そうやってホームページができあがり、掲示板にもちょくちょく投稿している。
やはり簡単に飼い主さんはみつからないが、ちょっとした貢献にはなったようである。

ネコの家から遠くの街並みを未織は由宇と見ていた。

「やれるだけのことはやったよね?」
「あぁ」
由宇はぶっきらぼうな返事をした。
「そういえば波多野くんの下の名前聞いてなかったね。なんていうの?」
「優輝(ゆうき)」
「いい名前じゃない」
「嘘。絶対教えない」


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【7321 / 式野・未織 / 女性 / 15歳 / 高校生】

【NPC / エル・レイニーズ / 女性 / 32歳 / 女刑事】
【NPC / 故河・あずさ  / 女性 / 15歳 / 女子高生】
【NPC / 波多野・由宇 / 男性 / 14歳 / 男子中学生(不登校)】

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■         ライター通信          ■
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初めまして。真咲翼と申します。出来上がった文章は規定の文字数より
多くなってしまったため、かなり展開の早いストーリーになったかもしれません。
申し訳ありません。ご依頼ありがとうございます。また会えるといいですね。