コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


パズル/卒業式の……

□Opening
 パズル好きの皆様へ。
 次号掲載予定のパズルです。この問題、チェックも兼ねて解いてくださる方を募集しております。パズルの回答は、メール、FAXにて受け付けております。また編集部へ直接訪問していただいても構いません。
 このパズルは本当に解けるのか。その場合の答えは?
 パズルの難易度は?
 ご意見などもお聞かせください。
 よろしくお願いします。
 
 パズル雑誌『机上の』編集部・水戸ススム

 次号掲載予定パズル
<ここから>
 私立徳川パズル学園の卒業式は少し変わっています。卒業生が一組から五組まで順番に出し物を披露するのです。その際、舞台に花を飾るのですが、薔薇・コスモス・ガーベラ・スイートピー・チューリップとクラスによってばらばらです。
 今年も、卒業式の季節です。
 徳川パズル学園では、今年、どの組がどんな出し物を披露するのか、またその際の舞台に飾る花はそれぞれどう言うものか、考えてみてください。
 なお、分かっているのは以下の通りです。

・出し物は合唱・寸劇・漫談・仮装・踊り。
・二組は合唱をする。
・五組はコスモスを舞台に飾る。仮装ではない。
・三組はガーベラを舞台に飾る。
・チューリップは奇数組の演目で飾る。
・踊りは寸劇のすぐ後の演目で薔薇を飾る。
<ここまで>

■01
 黒・冥月は、その日偶然花屋を訪ねた。
 すると、珍しくカウンターで店員の鈴木エアが雑誌をめくっている。花達も今日は大人しい。
「冥月さん、いらっしゃい」
 冥月の姿を見て立ち上がるエアに軽く挨拶をすると、視界にちらりと雑誌が入った。あまり見た事の無い雑誌だったが、エアが大切そうに抱えているのが印象的だ。
「あ、この雑誌ね、うちの店も広告を出しているんですよ」
 エアはそう言って雑誌をめくり、あるページを指差して、嬉しそうに微笑んだ。
 覗いて見ると、指差されたページの一番最後に『Flower shop K』の文字が並んでいる。
「ああ、なるほどな」
 小さな文字だったが、それが印刷されて市販されている雑誌に載るとなると感慨もひとしおなのだろう。
 そう考え冥月が頷くと、エアは嬉しそうに笑った。
「そうそう、そう言えば、見てくださいよここ」
 エアは、そう言って、カウンターに雑誌を広げる。
 まためくられたページには、次号掲載予定のパズルについて意見を求めるチラシがはさんであった。
「編集部の水戸さんですね。冥月さん、このパズル分かりますか? 良かったら、解いてみません?」
 冥月は、つらつらと並んだ文字と、きらきらと期待の目で見上げてくるエアを見比べ、誰にも気づかれないように少しだけため息をついた。

■02
 何と言うか、微妙に自分の領分ではないような気がするが、期待に満ち溢れたエアの瞳を裏切る事ができようか?
 仕方が無いな、と、冥月はもう一度良く問題文を読んだ。
 そして、一呼吸置き、すらすらと回答を述べる。
「一組は仮装とチューリップ、二組は合唱とスイートピー、三組は寸劇とガーベラ、四組は踊りと薔薇、五組は漫談とコスモスだな」
 冥月がそう語り終えた後、エアは一秒くらい間を空けてから、小首を傾げた。
「? あれ?」
 またしばらく間を空けて、エアは違う方向へ首を傾げなおし、疑問を呟く。
 それから、のろのろと鉛筆を取り出して、何故か鉛筆をタクトに見立てて指揮者のようにそれを振って見せた。
「どうした?」
 エアの様子に冥月は短く問う。
 するとエアはようやく言わんとする事の整理がついたと頷き、鉛筆を握り締めた。
「いやいやいや。アレですよ、そう、突然答が出たから、びっくりしたんです。何と言うか、えっとこの手のパズルって、紙に書いて整理して行くのが常套手段じゃないですか。あーと、道筋が大切と言うか、はい」
 冥月は、そんなエアの主張を黙って聞いていた。
「だから、えっと、きっと何故そうなったのか、も、あれば水戸さんも助かると思うんですよね」
 そして、説明は面倒くさいからパスだと冥月が手を振りかけた時、またもエアの期待を込めた眼差しに捕らえられる。
「とおっても、助かる、と思うんですよ」
「……、仕方が無いな」
 結局、冥月は嘆息して、問題文を指でなぞった。
「だからこれがな、ヒントの二番三番四番は、記述通りだろう? 五組が仮装で無いとすれば残る可能性は寸劇か漫談か踊り。三組がガーベラ五組がコスモスなら、奇数組と言うチューリップは一組で確定だ」
「ほうほう」
 本当に分かっているのだろうか?
 エアは冥月に言われるがままメモを取っている。

 一組→( )→チューリップ
 二組→合唱→( )
 三組→( )→ガーベラ
 四組→( )→( )
 五組→(寸劇 or 漫談 or 踊り)→コスモス

「”踊りは寸劇のすぐ後の演目で薔薇を飾る”と言う条件から、最後のクラスの五組が寸劇と言うわけはないし、踊りか漫談なら、薔薇を飾らないのだから漫談で決まる」
「む、この辺がちょっとややこしいですよね」
 エアは、冥月の淀みの無い説明を聞き漏らすまいと、必死に鉛筆を動かした。

 一組→( )→チューリップ
 二組→合唱→( )
 三組→( )→ガーベラ
 四組→( )→( )
 五組→漫談→コスモス

「そうか? ここまで来れば、踊りと薔薇がセットで入るのは四組しかないから四組は決定するし、踊りの直前は寸劇だから自動的に三組が寸劇だろう」

 一組→( )→チューリップ
 二組→合唱→( )
 三組→寸劇→ガーベラ
 四組→踊り→薔薇
 五組→漫談→コスモス

 冥月は、出来上がったメモをちらりと見て、頷く。
「後は、残りを埋めるだけだな」
「そう、ですね。いつの間にか、埋まってしまいました」
 そうして、エアのメモも完成した。答えは最初に冥月が語ったそのまま。

 一組→仮装→チューリップ
 二組→合唱→スイートピー
 三組→寸劇→ガーベラ
 四組→踊り→薔薇
 五組→漫談→コスモス

「まぁ、この手のパズルとしては易しい部類だな」
 冥月がそう感想を述べると、エアは、ははぁなるほどと、ようやく頷いた。
 せっかくだからと、パズルについて幾つか意見も盛り込み、エアに編集部へのメールを任せる。
 エアは、きっと編集部は凄く喜んでくれますよと、大はしゃぎだった。

□Ending
「おー、来た来た。頼みますよぉ」
 ある日の夕方、パズル雑誌『机上の』編集部のデスクのパソコン前で、水戸ススムは手もみをしながら嬉しそうに呟いた。
 電子メール受信数(2)の文字に、期待を膨らませてダブルクリックする。
「何何? 水戸クン、面白い事あった?」
「あ、編集長、おはようございます。次の号のパズル、試し解きしてくれた人からメールが届いたんですよ」
 パズルを作ったのは、編集長である徳川タカシなので、水戸の後ろから声をかけた徳川もなるほどと興味深くメールを読んだ。
「最初は、シュラインさんからですね。きちんと表にして解いてくれたようですよ。あ、順番について戸惑った……?」
「なるほど、どのクラスがどのタイミングで披露するか、順番まであてると言う印象」
「これは、ある意味面白そうですね。一組が何番に出し物を披露するかまであてるとなると、良い感じに頭が混乱するんじゃないでしょうか」
 シュラインから送られてきたメールを読みながら、その可能性について検討を重ねる。今回のパズル難易度は変えられないので、次回以降のネタに繋がるかもしれない。
「こちらの、えーとこれは、『Flower shop K』の鈴木さんからも来てますよ。あ、お客様が解いてくださいました、と。あはは。鈴木さん自身の回答は無しですか。こちらも、面白いですよ」
 水戸の言葉に、徳川も頷く。
「五組の出し物は途中まで複数の可能性があるが、これが別の組や花も複数可能性を持たす事ができれば、か。うん、それは難易度が跳ね上がるな」
 そうですよねと、満足げに唸っていた水戸だが、画面を少しスクロールしてぴたりと固まった。
「あ、追伸、正解なら粗品でもあるんでしょうか、ですって」
「水戸クン、丁度良いじゃないか、アレ、送ってあげなよ。お礼も兼ねてさ」
 徳川の後押しに、水戸はほっと笑顔を覗かせる。パズルの難易度は、易しいと表記して問題ないだろう。また、回答を送ってくれた両名ともきちんと正解を言い当ててくれた事で、パズルに破綻が無かったのだと胸をなでおろす。
 編集者二人は、届いたメールの内容を吟味し、次号へ向けて編集を開始した。
 後日、『机上の』編集部から郵便が、シュライン宛の封筒は興信所に、冥月宛の封筒は『Flower shop K』に届けられる事になる。
 その中には簡単な礼状とパズラーの証と書かれたブルーのカードが封入されていた。
<End>

□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【0086 / シュライン・エマ / 女性 / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【2778 / 黒・冥月 / 女性 / 20歳 / 元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒】

□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□

 この度は、ノベルへのご参加有難うございます。久しぶりのパズルの依頼でしたので、答が届くまでどきどきしながら待っていました。回答も解き筋もほぼ同じなのにやはり少し違うと言うところもありますので、他の方の解き方も是非見てみてください。
 □部分は集合描写、■部分は個別描写になります。
 今回は、明確に繋がる時間ではないので、■部分の時系列数字が複数存在します。

■黒・冥月様
 こんにちは、いつもご参加有難うございます。正解おめでとうございます。
 すらすらとパズルを解く様も綺麗なんだろうなーと思いながら書かせていただきました。面白いご意見も有難うございました。
 それでは、また機会がありましたらよろしくお願いします。