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<東京怪談・PCゲームノベル>


スピリッターズ、資金がピンチ!
 立派な住宅街の中に、そのプレハブ小屋があった。
明らかに景観を損ねている。一応これでも事務所なのだ。
平和に過ぎるこの日常……。

「ねぇー。なんか電灯がつかなくなった気がするんだけど」

故河・あずさは電気のスイッチをカチカチ鳴らしながら、エル・レイニーズに聞いた。

「電球変えなきゃね」

あずさの声に無視を重ね、新聞を読むフリをするエル。

「あれ? テレビの電源がつかない」

ゲームをしようとしてた波多野・由宇は、

「……まさか……」

 あずさはエルをじっと睨みつけた。その後、思い立ったように郵便受けの所に行った。
郵便物入れに手を突っ込んで、一枚の紙をみつけた。
その紙を握りしめ、急いであずさはエルのところに向かった。

「電気代払ってないじゃないのー!」
「それだけじゃないわ。家賃も滞納してるから、そのうち追い出されるかも」
「だからテレビの電源も入んなかったんだ」

「あの…その…仕事がないわけなのよ。草間興信所も最近平和みたいだし、
IO2にはかなりの腕前が揃っているから、ウチに依頼することはないのよね」

 それは嘘だった。エルの元にはあずさや由宇を引き取りたいとIO2は言っている。

しかしあそこに一旦入ってしまうと、もう普通の生活には戻れない。
もちろんどの道を選ぶのか、最終的に決めるのはあの子たちだ。
でも、もう少し……もう少し青春を味わってほしい。

 「ネカフェ行こうよ」

そう言ったのはあずさだった。

「ゴーストネットOFFって知ってる?あそこの怪奇事件を解決してさ、お金をふんだくるのよ」
「……あそこ管理してるの中学生の瀬名雫だよ。俺と同じクラスだから」

これではお金の取り用が……

あった!

「『ゴーストネットOFFに怪奇事件解決します(有料)』と書けばなんとかなるかも」

 とそのアイディアを考えた時、甘ロリ街道を直進する、
白樺・夏穂(しらかば・なつほ)が事務所に現れた。

「あのー、すみません。知り合いに聞いて寄りましたけど……
なんだか私はお邪魔のようですね。それでは失礼……」
「失礼させません!」
とあずさは何気なくドアを閉めて、逃げ出せないようにした。

「あなたさんには、ちょーーっとお願いしたいことがあるのよね〜」
にまにまと相手を見るあずさ。
「お名前は?」とあずさが尋ねると、
「私は白樺夏穂」
という言葉だけ、返ってきた。


 夜のネットカフェに現れたのは、白い甘ロリの女の子。当然受付がぎょっとした。

「機械箱デビューが依頼の代筆ならぬ代打ちにになるなんて……」

夏穂はこう依頼されていた。ゴーストネットOFFの掲示板に有料での解決募集を書くこと。
夏穂は機械にめっぽう弱いので、書き込み1つにものすごく神経を使うのだ。

結局こう書いた。
「送信者:なつ 内容:不思議なトラブル解決します(有料)」

 それを書くのが精一杯で、すぐネカフェから後にしようとしたが、受付の男が、
「これ、俺のケータイ番号とメルアドだから」
と無理やり夏穂に渡してきた。もう一人の受付の女は、
「ちょっと!私の男でありながら、どーいうことよ!」
「じゃあ別れよう。俺はあの子に惚れた」
「何ですって!」

夏穂は自分に火の粉が降りかかる前に、店を出た。
これじゃあネカフェにも、堂々と行けないことになるなぁ、と思いながら。

 夜遅くに由宇が戻ってきた。
「ウチのホームページ、作った。どれくらい収入があるかわからないけど」
それを聞いたあずさは、
「やるじゃん! 私のビラ撒きなんかより、ずっと効果あるよ」
「あんたも書き込したみたいじゃん」
由宇が夏穂にそう言った。夏穂は何も言わず、うなづいた。

 そして数日が経った。家賃滞納も大家さんがあきれているらしく、
請求にも来ない。今度はガスが使えなくなった。でもまだ水は出る、といったところか。
日没し、空が不気味な青色と、焼きつく赤色の妙なグラデーションが気持ち悪かった。
その日は、なにか起こりそうな、そんな夕焼けであった。

 あずさが、「こんばんにゃー」と訳のわからない挨拶をした。
事務所には由宇と夏穂がゆったりとすごしている。

「あずさ、依頼が1つあった。超能力絡みだからあずさが行けば?」
「超能力ねぇ。そりゃぁあたしが行く番だね」
あずさは寒いのに腕まくりをしてやる気満々だ。

「それと夏穂。あんたにもあった。かまいたちの発生。返事は夏穂自身が書いて」
「ごめん。ネカフェでトラブルに合うの嫌だから」
あずさはそこに乗り出して、
「瀬名雫もたまに使う全自動ロボット型ネカフェ知ってるよ。今日案内してあげる」

 そして夏穂とあずさは夜な夜なロボット型ネットカフェに足を運んだ。
「じゃ、私はお仕事があるからこの辺で!がんばれ夏穂」
「ありがとう、あずさ」

中に入ると本当にロボットがカウンターにいた。
会員カードがないと入れないらしく、会員登録終了。
そして移動型ロボットに場所を案内させる。
フリードリンクがないのが痛いが、安心して来れる場所だ。

そして掲示板を開き、相変わらずたどたどしく、

『その依頼、お受けします』

 それで逃げるようにネカフェを後にした。
その時に気づいたのは、かまいたちが何処にいるのかなど、
情報を聞かずに飛び出してしまったことだ。

 もう一度ネカフェに足を運ぶことにした。
すると、ゴーストネットOFF用に作ったフリーメールボックスに
一通のメールが来たので開いてみた。

『場所は有巣町の辺りを周回してる。それと私は有巣町1丁目の自治会長だ。
表札に山田と書いている家が私の家。それでもわからない場合、
その辺の人に聞けば私のことはきっとわかるだろう。もちろん報酬付きだ』

よし! この情報があればなんとかなりそうだ。……とその前にお返事。
『人に道を聞きながらなんとかしてお邪魔させていただきます』

朝。

 夏穂はハイヤーに乗りながら、1つとして同じ住宅はなく、
シックな色と白い壁だらけの一帯を眺めながら、表札のチェックも同時にしていた。
入り組んだ住宅街では、ハイヤーが通れないので、
夏穂とボディガードの砂原が歩いて探していた。

夏穂が歩いて行った先に、瓦屋根のかなり古ぼけた家をみつけた。

「山田」

 あった! 自治会長の家だ。
夏穂はチャイムを鳴らし、しばらく待つと年を取ったおじいさんが迎えてくれた。

 座敷に案内され、煎茶を作って、夏穂の前に置かれた。和のいい匂いがする。
「かまいたち。それはいつ発生するの?」
「夜が多いかのぅ。ああいうのは寒いところに多く出るらしいからねぇ」

 夏穂は煎茶をすすりながら、テーブルに置いた。間違いない。出がらしだ。
「私にまかせて。必ずかまいたちを捕獲してみせる」
「ありがとうよ。もちろんそれなりの報酬も用意してるからの」
「……ありがとう」

 そこで夏穂は夜に張り込むことにした。
夜風が冷たく、ファー付きのジャンバーを着ても相当凍える。
もちろんお嬢様ということもあって、ボディガードがついている。
夏穂は住宅街を歩きまわることにした。待ってても見つからないし、
じっとしていると余計に寒いからだ。

 ここは住宅街というだけあって、街灯設備は充実していた。
家の前にも光が灯っている。しかし人気のないこの住宅街に
能力者でもない人が通ると、危ないことはよくわかる。

 そこで妙な音がした。

ヒュン!

「砂原さん(ボディガード)、逃げて!」

 その音がこちらに迫ってくるのを感じ、自分がやられる前に
後ろへ大きく反回転して、見事に着地した。そして風の防御魔法を唱え、
かまいたちと冷静に話すことにした。

 夏穂の会話の仕方はこうであった。質問を手旗信号でする。それを伝えるために
旗を上下に動かした。夏穂が手を上げて大きく円を描いた。
これはつむじ風が大きく動いたらYesのつもり。次は小さくなった夏穂。
逆に小さくなっていったらNo。そういうことで会話を試みた。

「あ・な・た・は・こ・こ・の・じ・ゅ・う・に・ん・?」
……何も動かない。夏穂はやり方を間違えたのだろうか?
いや、小さく動いた。Noだ。
「あ・な・た・は・ゆ・き・ぐ・に・し・ゅ・っ・し・ん・?」
すると大きく動いた。Yesだ。

更に詳しく出身地を聞きたかったが、とりあえず捕獲して帰ることにした。

 後日、自治会長宅で報酬を受け取った。
「こんなにもらってもいいの?」
「あぁ。普通の人にはできないことをしたんじゃ。当然のことじゃよ」
「ありがとう。決して無駄にはしない」

 そう言った後、スピリッターズの事務所に報酬金を持っていった。
事務所にはエルと由宇だけがいた。

「はい、これが報酬金」
エルはお札の枚数を数えて、
「ちょっとこんなに……夏穂ちゃんにも一部あげるわ」
「いらない。楽しかったし、なんか悪いし。そういうわけで、帰る」

「また遊びにいらっしゃい。そのころはもう少しましになってると思うから」
「来たけりゃ遠慮なく来いよ」

2人に挨拶され、夏穂は事務所のドアを閉めた。



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【7182 / 白樺・夏穂 / 女性 / 12歳 / 学生・スナイパー】

【NPC4783 / エル・レイニーズ / 女性 / 32歳 / 女刑事】
【NPC4829 / 故河・あずさ / 女性 / 15歳 / 女子高生】
【NPC4852 / 波多野・由宇 / 男性 / 14歳 / 中学生(不登校)】



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■         ライター通信          ■
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まずは申し訳ありません。おそらくお望みの展開になってしまってる部分も
あるかもしれません。どうもすみませんでした<(_ _)> コメディって難しいですね。