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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


眠れぬ少女

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OPENING

組織(IO2)から指令を受け、尋ねた一軒家。
すこし古びた洋館には、少女が一人で暮らしている。
少女の目は虚ろで、足取りもフラつき危なっかしい。
ディテクターとレイレイは、顔を見合わせて神妙な面持ちだ。

「どうぞ」
二人に紅茶を差し出す少女。
栗色セミロングの髪を一つに束ね、黒いワンピースを纏う少女。
紅茶を差し出す手は、フルフルと震えている。
「…大変だな。これは」
紅茶を飲みつつ、不憫そうに言うディテクター。
レイレイも隣で悲しそうな表情をしている。
少女は淡く微笑み、軽く首を左右に振るが、
無理しているのが見え見えだ。

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「ごめんなさい、遅れちゃった」
翻訳の仕事の納品に手間取り、遅れて合流したシュライン。
依頼人である少女は、シュラインに紅茶を差し出した。
少女の震えている手を見て、シュラインは悲しそうな表情。
笑顔ではあるものの、あまりにも不憫だ。
こんなに可愛らしい少女なのに、目の下にはクマが…。
シュラインは出された紅茶を一口飲んでから、
ソファへと駆け寄り、少女に横になるよう促す。
情報量の多い視覚を遮断すると、脳は休まる。
目を伏せた状態で、依頼内容を話して欲しいが故の気配りだ。
失礼ですから、とそれを拒んでいた少女だが、
シュラインの「胸が痛いから、御願い」という心からの言葉に感激し、
促されたとおり、ソファに体を横たえてスッと目を伏せた。
少女は呟くように、依頼内容を三人へ告げる。
一週間ほど眠ることが出来ず、体力が限界だという。
少女の依頼を聞く前から、三人は気付いていた。
少女が、何かに憑かれていることに。
「辛いわね…可哀相に。えぇとね、驚かずに聞いて欲しいんだけれど…」
少女の手を優しく撫でながら言うシュライン。
少女は小さな声で「はい」と頷いた。
「あなたの体に、妖が憑いているの。眠れないのは、その所為だと思う」
「えっ…」
「大丈夫。その妖を外へ出せば、元通り眠れるようになるわ」
「どうやって、外に…?」
少女の問いに、シュラインはレイレイを見やって尋ねる。
「レイちゃん。どう?見える?」
レイレイは常人では捉えることのできない妖も、肉眼で確認できる。
少女を見つめつつ、レイレイは言った。
「はい。夢魔ですね。まだ幼いですけど」
夢魔とは、憑いた生物の眠りを妨げる妖だ。
ただ、悪妖というわけではない。
レイレイの言葉を聞いて、シュラインは切なげな表情で少女に尋ねた。
「ねぇ…眠れなくなる前は、ぐっすり眠れてた?」
シュラインの問いに、少女の肩がピクリと揺れる。
少し間を空けて、少女はフルフルと首を振った。

少女の両親は二ヶ月前に事故で死亡し、
少女は、以降、この広い屋敷で一人で生活している。
そんな中、少女がぐっすりと眠れるはずもなかった。
少女は毎夜、枕を涙で濡らしていたそうだ。
眠れる日があっても、悪夢をみて目が覚めたり、
どうしても、ぐっすりと眠ることが出来なかったという。
少女の話を聞いて、シュラインは一つの仮説を立てた。
「もしかしたら…妖は、あなたの為を思って憑いたのかもしれないわ」



仮説が事実であるかどうか、
それを確かめるには、妖と接触する必要がある。
レイレイが言うには、夢魔は砂糖を嫌うとのこと。
どうやって砂糖を使って、少女から離れさせるかを考えるシュラインだが、
ディテクターは「ぶっかけちまえばいい」と言って、
ザッと少女に砂糖を振り掛けた。
「きゃあ!」
「ち、ちょっと探偵さんっ!ひどいじゃないっ」
少女についた砂糖を払いつつ、ディテクターを叱るシュライン。
「こんくらいしねぇと、出てきやしねぇよ」
苦笑しつつ言うディテクター。
彼の言うとおり、夢魔は、かなり我慢強い性格で、
少し砂糖をかけたところで、どうにもならない。
けれど、いきなり ぶっかけるとは…シュラインの言うとおり酷い男だ。
「出ましたね」
ピッと指差して言うレイレイ。
レイレイが示す指を辿ると、
そこには砂糖を浴びてフラフラになった夢魔がいた。
憑いている状態でなければ、
ボンヤリとだが、誰でも肉眼で確認できる。
夢魔は小人のような姿で、パッと見は、かなり可愛らしい。
シュラインは、フラフラしている夢魔に尋ねてみる。
「ねぇ、あなた…どういうつもりで、彼女に憑いたの?」
フラつきながらも逃亡しようとする夢魔。
けれど、事前にレイレイが怨霊網を張っていた為、夢魔は逃げることが出来ない。
逃亡が不可能だと理解した夢魔は、しょぼんと観念し、
そして、シュラインの問いに答えようと、何やらワキャワキャと動き出す。
「あっ、もしかして、喋れない?」
シュラインが尋ねると、レイレイは、
「そうですね。でも言葉は理解するので、筆談は可能だと思います」
そう言って紙とペンを夢魔の前に置いた。
身の丈以上のペンを持ち、夢魔は ゆっくりと紙に文字を綴る。
表記されたのは [泣] [辛] [助] という三文字のみ。
けれど、十分理解できる。
夢魔が伝えようとしているのは、
”いつも泣いて辛そうで、それならいっそ眠れない体にしてあげればいい”
おそらく、そういうことだろう。
「やっぱり…」
仮説どおりの結果に、淡く微笑むシュライン。
ディテクターは苦笑しつつ呟いた。
「小さな親切、大きな御世話…ってやつだな」

少女がIO2へ依頼することを邪魔しなかったのも、夢魔が、少女を思うが故。
助けてあげたつもりが、余計に少女を苦しめていたことを知った夢魔は、
しょんぼりとして、小さくうずくまってしまった。
自分の為に、憑いてくれた夢魔だ。
少女に不快な思いは微塵もない。
そっと夢魔を撫でて、少女は「ありがとう」と呟く。
すると夢魔は、フルフルと震えて、一層うずくまってしまった。
シュラインはクスクス笑いつつ、夢魔に提案する。
「彼女と一緒に住んだらどう?」
ピクッと動く夢魔。ゆっくりと顔を上げて、夢魔は少女を見やる。
「彼女が良ければ、の話だけどね…?」
クスッと笑ってシュラインが言うと、
少女は夢魔にニコリと微笑みかけ、コクリと頷いてみせた。
夢魔はスッと立ち上がり、少女にペコペコと何度も頭を下げる。
少女は笑いながら、夢魔を抱き上げた。



「素敵な御友達ができたわね」
任務完了の報告をしに、IO2本部へ向かう道中、シュラインが言った。
「もう、寂しくないですね」
嬉しそうに言うレイレイ。
顔を見合わせて頷き合い、微笑むシュラインとレイレイを見て、
ディテクターは呟くように言った。
「始末した方が良かったんじゃねぇか。妖だぞ」
ディテクターの言葉に、シュラインとレイレイはムッとした表情。
「冗談だって…。おっかねぇなぁ。お前ら」
ディテクターは肩を揺らして、クックッと笑う。

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

NPC / ディテクター(草間・武彦) / ♂ / 30歳 / IO2:エージェント(草間興信所の所長)

NPC / レイレイ(草間・零) / ♀ / ??歳 / IO2:エージェント (草間興信所の探偵見習い・武彦の妹)

NPC / ラクリス・フェルナ / ♀ / 16歳 / 依頼人・夢魔に憑かれていた少女

NPC / 夢魔 / ? / ??歳 / ラクリスに憑いていた妖


■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは。毎度、どうもです^^ 参加・発注ありがとうございます。
心から感謝申し上げます。 気に入って頂ければ幸いです。
是非。また御参加下さいませ。 お待ちしております。

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2008.02.27 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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