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<東京怪談・PCゲームノベル>


→ 手頃な肴

 綾和泉匡乃は自分の部屋でつらつらと考える。
 聞いた話。妹のこと。

 それはまぁ、面白そうな方を選んだな、と思ってはいましたが。
 漸く、幾らか話が進んだとの事で。

 …なかなかに複雑な気分です。
 そんなに簡単に手放せないなと言う気もするし、別に構わないかなと言う気もする。
 面白くないような、逆に面白いような。
 是非とも彼と会って話してみたいような、逆に彼の顔を見たくもないような。
 …どうも、僕は同時に正反対の気分になっているようです。
 ならばそれはやっぱり、『複雑な気分』である、と言う事になりそうです。

 …そういえば、真咲さんと言えば以前お兄さんの方の――画商の方の真咲さんに言われた件もありましたっけ。

 ふと思い出す。
 そうなると、もう一つ会う理由も作れる。
 収納スペースの戸に目を遣ってみる。
 中にある物に想いを馳せる。
 そのまま少し考え込む。
 中にある『とある物』の中から『手頃な物』がないか、まずは自分の記憶の中から見繕ってみる。

 ………………『あれ』くらいなら、いいでしょう。

 決めて、今度は時計の針をちらり。これからどうするか――考えながら。
 現在時刻を確認する。
 ふむ。
 …そうしよう。
 次の行動があっさり決まった。

 ………………折角ですから、彼の居る店まで飲みに行ってみましょう、と。



 赤みを帯びた暖かい色の証明が照らす店内。
 今宵の目的になるバー『暁闇』。
 …ここが、彼――真咲御言の居る店。
 からんころんとドアベルを鳴らして匡乃が入店すると、一拍置いた自然なタイミングで、当の御言からいらっしゃいませと迎えられた。
 勿論、カウンターの中の御言はこちらが――今訪れた客が誰かはわかっている。わかっているにも拘らず、特に変わらず物腰柔らかな落ち着いたまま。まぁ、仕事中でもあるし普段からそうでもあるらしいが、少しは何か面白い反応が欲しいなぁとも思う訳で。
 何故なら、匡乃は御言が今お付き合いしている娘さんの実の兄な訳だから。…それも、その件が判明してからは、今日が初めての対面になる訳だから。
「こんばんは。真咲さん」
「カウンター席で宜しいですか?」
「ええ」
 にこりと微笑みつつ頷き、匡乃はカウンターのスツールに席を取る。どうやらカウンターの中は御言しか居ない。都合がいいのか悪いのか店のオーナーでマスターの紫藤暁は不在であるらしい。他は――今、『暁闇』店内にはボックス席に一組客が居るだけのよう。
 余裕はあるなと判断し、匡乃は少し意地悪な注文を試みた。
「そうですね、取り敢えず、何か日本酒を頂けますか。…出来れば御燗をつけてもらいたいなと」
 …ここは酒場は酒場でも居酒屋では無く洋酒がメインなバーである。
 しかも燗と言う無茶。…まず酒も道具も置いてあるまい。
 案の定、カウンターの中のバーテンダーは少し困ったように苦笑する。
 …まぁ、頼んだ匡乃からして当然の反応だとは思っているが。けれどそれでこちらにどう応対してくるか。そちらに興味が湧く。
「申し訳ありません。日本酒は純米吟醸酒の銘柄しか置いてないのですよ」
 少し意外。
 一応、日本酒は置いてあるらしい。
 但し――燗には向かない日本酒である。…香りが飛ぶ。
 しかも発言からしてバーテンダー側もそれを承知らしい。
「…それで御燗は嫌ですね」
「オン・ザ・ロックのスタイルにするのはいかがでしょうか?」
「この店ではそうやって出す為に日本酒が置いてある、って事ですか?」
「日本酒だけをお出しする場合は、オン・ザ・ロックをお勧めする事が多いですね。ライムを添えて」
「じゃあそれで」
「畏まりました」
 卒無く慇懃に受け応えると、御言は注文のオン・ザ・ロックを作り始める。
 匡乃はその様子をじーっと眺めている。
 御言はボトル――瓶を用意する。冷やしたグラス。氷。ライム。
「――…ところで、僕が誰の兄なのかは勿論御承知ですよね?」
 おもむろに、にこやかに訊いてみる。
 ライムの薄切りを作る御言の手許を見ながら。…手許が狂ったりしないかなと。
 …狂わない。
「ええ。勿論存じ上げておりますよ」
「なら、どうして今日僕が来たのかとか、思いません? それもわざわざバーであるこちらに伺っていながらこんな意地悪な注文付けてますし?」
 気になりはしませんか?
「…気にならないと言っては嘘になってしまいますね。ですが店のお客様として訪れて下さった以上、匡乃さんを御不快な気分にさせる訳には参りませんから。難しい注文でも応えられる限りは応えるつもりです」
「おや。兄としての僕なら御不快な気分になってもいいって事ですか?」
「いいえ。勿論どちらの立場であろうと御不快な気分にさせてしまうのは本意ではありません。…ですがこればかりは」
 仕方無い事だとも思いますので。
 と、緩く頭を振りつつ答えては来ても、御言の態度は本質的には全然変わっていない。
 その答えを聞きながら、匡乃はカウンター内の御言の様子を暫し伺ってみる。
 御言はオン・ザ・ロックを作りながらも、匡乃からの反応をごくごく自然に待つ態度を取っている。…どうも、この方向に攻めても面白い反応は得られそうにない。
 …諦めてぶっちゃける事にした。
「実は『妹はやらん』とか花嫁の父やろうかと思って今日来たんですが」
 貴方の態度を見てると、ちょっとその気が失せました。
 でも折角伺った訳なので。
 代わりに忠告もどきを幾つかしておこうかと。
 …と、匡乃がそこまで言ったところでちょうどオン・ザ・ロックが完成し、グラスが目の前にそっと供された。
「それはわざわざ。お気遣い有難う御座います」
 オン・ザ・ロックのグラスを匡乃の前に出した後、御言は微苦笑しながら頷くように軽く会釈。…やっぱり態度は特に変わらない。匡乃は出されたオン・ザ・ロックのグラスを手に取ってみる。戴きますねと口を付け、ちびりとグラスの中身を放り込んでみる――花冷えの冷やに、ライムの酸味が絶妙に合っている。
 …この日本酒だけ置かれている理由がわかった。こうやればこれだけで飲んでも悪くないし、恐らくはカクテルの材料としても合わせ易いのだろう。
 出された酒の方はそれなりに満足した匡乃はグラスを置くと、今度は内緒話をするようにカウンターに上体を乗り出してみる。肘を天板に置いて、悪戯っぽく御言に向けてにやりと微笑んでみる。
 さて。
「………………そうですね、どの話からしましょうか?」
 貴方に言っておいた方が良さそうな事、結構、色々とありますのでね。



 それくらい、僕の妹と付き合うのは難関だらけな訳で。
 まぁ、有り触れた話なんでしょうけどね。
「…先程言った通り、僕はその気が失せたので、取り敢えず邪魔する気はありません」
 邪魔しても、何だか貴方の反応がつまらなそうですから。
 まぁ、もっと色々と動揺してくれるようでしたら突付き甲斐もあったんですけど…こうやって直に対面してみますと、どうもそれは期待出来そうにないので。
 ですが。
「僕はともかく、他の家族は…色々と難しいと思いますよ」
 例えば。
 母ですね。
「…娘とのデートを邪魔されたと拗ねてるんですよ」
「デートの邪魔、ですか?」
「ま、要はお見合いなんですけどね。娘の見合いをセッティングしてそれを娘とのデートと称している訳で」
 なので、もし仮に貴方が実家に行っても、話も何もする余地無く母第一主義の父に門前払いされる事は目に見えてます。
「そんな訳で、母だけじゃなく必然的に父の方も難しいでしょうね」
「…そういう理由になりますか」
「なるんです。だから僕が代わりに花嫁の父やろうかと考えてみたりする訳で」
「御両親から見れば俺のような者は娘さんの相手として快い相手ではないとは思っているんですが」
 …匡乃さんの口振りからすると、どうもそういう意味では無いように聞こえます。
 御言は言葉の裏にそう含ませると、匡乃もそれを読んで、ええ、とあっさり頷く。
「この場合、貴方の人品骨柄は案外どうでもいいんですよね」
 純粋に両親の…と言うより母の問題でしかないような。
 だからこそ貴方の努力でどうこうなる話でもないと言うか。…僕から見ても結構勝手な親ですから。
 まぁ、どちらにしても乗り越えなければならない壁ではありますけどね。色々と。
「…ところで」
「はい」
「花嫁の父、ですか」
「ええ」
「…幾ら何でもお気が早いですよ? そこまで行くと」
「ですから仮にの話です。お付き合いするのなら後々責任を取る事まで予め考えに入れておいて頂かないと」
 それともそんな気更々無いですか。
 大事な妹を弄ばれるとなると…幾ら僕でも良い顔ばかりはしてられませんけどねぇ?
「それは。その時が来たなら、確りと御挨拶に伺う気は当然ありますよ」
「ならよかった。では父母についてはその時まで良いと言う事にして。ただそうは言っても…それをさておいてもまだあるんですよ」
 にこり。
 思わせ振りに微笑んで、暫し沈黙。
 御言は先程匡乃に日本酒のオン・ザ・ロックを供した後から、手が空いたようでずっとグラスを磨いている。
 …そのまま、暫し。
 暫しの後、漸く御言が止まる。匡乃の思わせ振りな沈黙を受け、問うようにグラスを磨く手を止める。
 それを認めてから匡乃は続けた。
「最大の難関は、両親と僕ではなく別に居ますよ」
 嬉々として、とっておきの情報のように御言に教えてみる。
「難関」
「そうです。取り敢えず妹の姉的存在の難関はクリアしてるようですけど…それ以外にもまだ、ね」
 やっぱり思わせ振りに言ってみる。
 と、御言はまた微笑んだ。
「仕方無いでしょう。それなりの覚悟はしてますよ」
「おや、自信ありそうですね」
「開き直ってるだけですよ。俺を選んで頂いた以上は、それ程自分を卑下する訳にも行きませんしね。それより俺としては――貴方が今のような態度で俺に接して下さる事こそがとても有難いと思っているのですが」
 色々、教えて下さっていると言うだけではなく。
 貴方が今、俺の前でその態度――何処か気まぐれ猫のような棘のある、けれど気安い態度で居て下さる事自体が。
「あ、初めてでしたっけ?」
 …鉄壁の猫被り撤回。
 思い出したように匡乃は訊いてみる。…あまり気にしていなかった。
 また微苦笑混じりで、御言は首肯。
「以前お会いした時は、もっと間を置かれている気がしました。ですから、貴方が今その態度で居て下さる時点で、ある程度は俺の事も認めて頂けている気がするので」
「………………やっぱり花嫁の父やろうかな、って気がして来ました」
「お手柔らかにお願いします」
「…まぁ、今更それは冗談です。予め本人に宣言してしまってはやってもつまりません。…と。そうそう、どうやら貴方には貸しがあるようですね?」
「貸しですか?」
「心当たりありませんか?」
「…。ええ。特に」
「誠名さんから何か聞いてませんか?」
「…。…誠名さんに俺の名前が使われた事で、匡乃さんにとって何かいい結果が出たと言う事でしょうか?」
「まぁ、そんなところですね。と言う訳で」
 と、匡乃は平べったい四角の包みをカウンターの上に出して持ち上げ見せてみる。…確かに匡乃はその包みを来店時から持っていた。持っていたがそれは単に来店するに当たり持ち合わせているだけの荷物なのだとバーテンダーは思っていた。だが改めて言われるとなると。
 何の包みか――どうやら紙だか板の類らしい。B4程度のサイズ。何か書類の束と言うより、もっと確りした固い板が一枚入っているもののようで。
「差し上げます」
「俺に、ですか」
「ええ。開いてみて下さい」
「…今ですか」
「無理ですかね?」
 御言の様子を窺いつつ、匡乃はちらりと訊いてみる。それまでにも色々と困りそうな事を話してはいた筈なのだが、何やら御言はここに来て一番困ったような態度になっている。
 仕方無く匡乃は小さく肩を竦め、包みを自ら開く事にした。
 後で、ではなく渡す今ここで見せて反応が見たいから。
 包みを解いて、中身の板――イラストボードを出す。カウンターの内側、御言に見えるようにイラストが描かれたボードの表面を立てかける。
 そのボードに描かれていたのは、眠っている少女と黒猫のイラスト。
 ――…某覆面作家なイラストレーター作になる『お昼寝してる少女と黒猫』の未発表イラスト原画である。
 その絵を視界に入れるなり、御言の動きが俄かに停止した。見せられたそのイラストに、明らかに心当たりと動揺が見えるその態度。…この少女、まぁつまりは妹がモデルである訳で。そこまで一目で見抜いたらしい。
 やっと溜飲が下がった。…この手土産は当たりでしたかと匡乃は漸く満足する。
 その反応を見てから、匡乃はボードを再び元通りに梱包。
 それでも御言はまだ止まったまま動かない。
「あ、それから言い忘れてました。僕は今まで通りご飯食べに妹のところにお邪魔しますので」
 お含み置き下さい。
 にこり。
 駄目押しのようににこやかに言ってみる。
 まぁ元々、妹が誰と付き合おうがそこは変えるつもりなど――遠慮する気など更々無いので。
 と。
 駄目押しに対してのその反応を見る前に、チェックお願いしまーすと別の声がした。匡乃の後ろ、匡乃より先にボックス席に一組だけ居た客。…帰るところらしい。
 こちらの都合でお仕事の邪魔するのも何なので、匡乃はバーテンダーとそちらの客とのやりとりを取り敢えず黙って見ていてみる。…と言うか御言が停止状態からどう復活するかが見たいと言う理由もあるのだが。
 と。
 チェックお願いしますの声を聞くなり、バーテンダーは何事もなかったようにそちらの客の要望に応じている。たった今、バーテンダーは匡乃の持参したイラストを見て明らかに動揺していたように見えたのだが。…それがまるで嘘のよう。ここはプロと言うべきかそれとも元々の性格故なのか、バーテンダー――御言は匡乃とのやりとりなど忘れたように、平然と物腰柔らかな態度に戻っている。
 そしてそちらの客を見送ってから、再び匡乃の方に戻って来た。
「すみません、いきなり黙り込んでしまって」
「…構いませんが。ところで真咲さん、変わり身早いですね?」
「ああ、それは…条件反射なだけですよ。七年もやってれば型くらいは身に染み付きますから」
「…。…この絵のモデル、気付いてますよね?」
「わかります」
「…それでも心当たりはない?」
 貸しがあるようで、の件。
「…ないですね。繊細な筆致だと思いますが…どなたの作ですか?」
「…。…その反応と言う事は本当に心当たりはないようですね? では見当違いなんでしょうかねぇ…ですが貴方の名前が一番効いたとの事ですからやっぱり貸しの対象は貴方だと思うんですよ。…そうですね、折角包んできてしまった訳でもありますので、詳細さて置き、欲しいと思いませんかこれ?」
「…よくわかりませんけど。頂けるのなら欲しいと思いますよ」
「おや素直ですね。意外です」
「そうですか? この場合、こちらの気持ちを隠したり誤魔化したりした方が失礼だと思ったのですが」
「では決まりと言う事で」
「有難う御座います」
 あっさり。
 素直に嬉しそうな顔まで見せて、御言は匡乃に軽く会釈。オン・ザ・ロックがそろそろ飲み終わり、他に何かお作りしましょうかと声も掛けられる。そう言えばここはバーだったと今更思い直し、今度は素直に何かカクテル頼んでみようかと匡乃は思う。
 思いながら改めてカウンターの中の御言の様子を伺う。
 御言はもう元通りの物腰柔らかそうな低姿勢な態度に戻って、こちらの反応を待っている。

 折角ですから、飲みましょうか。
 ………………手頃な肴は目の前に居て下さる事ですし。

【了】



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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)
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 ■整理番号/PC名
 性別/年齢/職業

■PC
 ■1537/綾和泉・匡乃(あやいずみ・きょうの)
 男/27歳/予備校講師

■指定NPC
 ■真咲・御言

■名前だけ出たNPC
 ■紫藤・暁
 ■真咲・誠名

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       ライター通信…改めNPCより
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 以下、誠名も何故か出てます。

御言:「この度は発注有難う御座いました。毎度の如く(…)ゆっくりとしたお届けになっております。お待たせ致しました」
誠名:「今回は…ついにお兄さんの方から挨拶参りされちまったかー」
御言:「こちらから伺わなければならないところを、先回りされてしまったようですね(爽)」
誠名:「…何だか御言が心にも無い事を言っている気がしてならない…」
御言:「それより誠名さん、匡乃さんが俺に貸しがあるって何なんでしょう?」
誠名:「なんで本文で名前しか登場してない俺がここに呼ばれたのかと思ったら…直球で来たな。…仕事の方の守秘義務に掛かるから黙秘」
御言:「某クライアントって碧ママですか? と書かれていますが(発注文見ている模様)」
誠名:「(おもむろに御言の見ている発注文引っ手繰り)違う」
御言:「守秘義務じゃなかったんですか? 『違う』と答えてますけど」
誠名:「…あー…まぁそうなんだが思わず…。…言っちまったもんは仕方がねぇか。碧ママじゃないってのは確かだとだけは教えとくわ。でもそれ以上は黙秘」
御言:「どういう状況で俺の名が使われたのかくらいは訊いてもいいですか?」
誠名:「駄目」
御言:「…そこ守秘義務になりますかね?」
誠名:「…つか守秘義務とかさて置きお前にだけは絶対言えねぇ話になるんだな」
御言:「…どういう意味です? そういう相手に俺の名出すんですか」
誠名:「…や、IO2の連中じゃないからそこは安心しろ。お前が生きてる事は向こうにはまだバレてない」
御言:「守秘義務と言いつつ結局ヒントになりそうな部分は幾らか答えてる気がしますが」
誠名:「いや、今言った程度なら何のヒントにもならないから大丈夫。…つか頼むからその辺の事についてはわざわざ手繰ろうとしないで時間に任せてくれよ御言…。…いやそれよりお前、匡乃の旦那が言ってた最大の難関とやらの方が気になるモンなんじゃねえの?」
御言:「特には気になりませんが」
誠名:「…そうか?」
御言:「俺と会う以前から、家族の方以外にも彼女の事を大切に思っている方がいらっしゃるって事でしょう。それなら言われるまでもなく当然の事でしょうから」
誠名:「そりゃそうなんだろうけど…普通その相手の事気にならねぇか?」
御言:「気にしても仕方ありませんので努めて気にしないようにしてます。実際にお会いする事があれば、その時に考えますよ。今回の匡乃さんに対したようにね。…それより気になるのはあの絵ですよ。ほら先日誠名さんも居た時に幼い姿になってらっしゃった事があったでしょう、あの時の姿から猫化を引いた姿がどう見てもモデルだったんですよ。それにあの線描の繊細さ…どなたが描かれたのか。それはモデル御本人なら御存知でしょうが…ああ、匡乃さんも御存知なんでしょうね」
誠名:「………………血は争えないって事なんだろーな(他に聞こえないくらいの小声でぼそり)」
御言:「何か仰いましたか?」
誠名:「いーや何も。じゃ、ライターからの伝言な。『少なくとも対価分は満足して頂けば幸いです。ではお気が向かれましたらまたその時は』っていつも書いてるなこれ。まぁとにかくそういう訳で、この辺りで失礼」

 …無理矢理幕。