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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


藤二さんの恋愛遍歴

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OPENING

「宜しくね、本当、良い子だから」
「ははは」
「じゃあ、また後日ね」
「はい、どうも〜」
手をヒラヒラ振り、少し奇抜な婦人の姿が見えなくなると、
藤二はハァ〜〜〜〜と大きな溜息を落とす。
彼の手には、綺麗な紙袋。
その中には、お見合い写真が入っている。

藤二は頭を掻きつつ、当然のように興信所へ向かった。
いや、非難した…というべきか。

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「はぁー。美味しい。シュラインちゃんの淹れる珈琲は格別だね」
珈琲カップを持ったまま、ウットリとしてみせる藤二。
武彦は煙草の空き箱を藤二に投げつけて言った。
「毎度毎度、うちに非難して来んなや」
「あ。酷いなぁ。親友が困ってるっていうのに」
「大して困ってねぇだろ、実際」
「ははは〜」
藤二が突然興信所を尋ねてきたのには、理由がある。
御見合いを持ちかけられたからだ。
藤二はマンション住まいだが、
お隣に住む独身婦人が、藤二にやたらと御見合いを勧めてくるのだ。
しばらく外国にいた分、
婦人の御見合いさせたい欲(何だそれ)は限界まで蓄積してしまったようで、
藤二が戻ってきたことを知るや否や、
御見合い写真を持って部屋を尋ねてくる。
婦人は、健気な性格ではない。
ただ単に、お節介なのだ。
自宅にいると、一時間置きに「どう?」と尋ねてくる為、
それを回避しようと藤二は興信所に逃げ込んだ。

「へー。まぁまぁだな。顔は」
藤二が持ってきた御見合い写真を見て、感想を述べる武彦。
武彦のいうとおり、御見合い写真の女性は、
特別美人でもなく、かといって不細工でもない。普通の女性だ。
空になった藤二の珈琲カップに珈琲を注ぎつつ、シュラインは言う。
「彼女も、その御婦人に迷惑している一人かもしれないわよね」
シュラインの仮説に、藤二は「ありえるー」とケラケラ笑った。
お節介な婦人が、結婚を望んでいない女性に結婚をすすめている…。
もしくは、婦人が一人勝手に事を進めている…十分ありえる話だ。
「レベルは高くないけど、次々と女を紹介してもらえるなんて、羨ましい限りだ」
そう言って、藤二をからかう武彦。勿論、冗談なのだが。
シュラインは、冗談でも、そういうのが嫌。
とっておきの笑顔を浮かべつつ、シュラインは武彦の背中を抓った。
「いてぇ…」
苦笑しつつ、御見合い写真を藤二に返す武彦。
微笑ましい武彦とシュラインの遣り取りにニヤつきつつ、
藤二は御見合い写真を再度眺め、フゥと溜息を落とした。
「藤二さんは、結婚願望ないの?」
シュラインが尋ねる。藤二は即答。
「ないよ」
「したいと思える女性と、まだ巡り会ってないだけ、とか?」
「いや。まったく興味ないね」
藤二には結婚願望が皆無。
そこそこの歳なのだから、少しは考えても良さそうだが、皆無。
婦人だけでなく、友人・知人から結婚を持ちかけられることは多いが、全て拒否しているそうだ。
「恋愛が苦手、とか…?」
ポツリと呟くシュライン。
すると武彦はブハッと吹き出し「それはナイ!」と声を張り上げた。
「え?どういうこと?」
「女っタラシだよ、こいつは。間違いなく」
「えぇ?」
「こらこら、そこ。変なこと言わないように」
「事実だろ」
クックッと笑う武彦。
話を聞いてみると、藤二は恋愛嫌いということは全くなく、
むしろ女の子は大好きだという。
デートに誘われれば応じるし、自分から誘うこともある。
キスを強請られればするし、抱いてと強請られれば応じる。
けれど、どの女性も、そこまで。
永遠を誓い合うとか、そういうことには絶対ならないらしい。
「………」
むぅ〜と首を傾げるシュライン。
何だか印象が悪くなってる気がした藤二は、苦笑しつつ弁解した。
「軽い気持ちじゃないんだよ。いつも、女の子の要望には、真剣に応じてる」
「むー…」
「使い捨てだろ、全員」
「こら!そこ!いい加減にしなさいよ!」
「………」
「あぁぁぁ〜ほらぁ〜〜すんごい冷たい視線〜…」
ソファに寝そべり、ふてくされる藤二。
まぁ、当然だ。
今の話を聞いたら、シュラインに限らず、
大半の女性は顔をしかめるであろう。

以降も続く、恋愛談議(というか藤二の恋愛遍歴)
藤二はシュラインの機嫌を取ろうと、終始ニコニコだ。
実際、藤二が思っているほど、
シュラインの藤二に対する印象は悪くない。
恋愛なんて、人それぞれだし、正解も不正解もない。
気さくで優しい性格の藤二がモテるのも当然のことだと思う。
「どう?シュラインちゃん、今度俺とデートしてみない?楽しいよ?」
ニコッと微笑んで言う藤二。
武彦は持っていたライターを藤二に投げつけて、
「おい、何言ってんだ。OKするわけねぇだろ。馬鹿」
そう言ってクックッと笑った。
そんな武彦を見て、シュラインはワザと「うーん」と悩んでみせる。
「こら、何悩んでんだ」
少し慌ててシュラインの頬をペシペシする武彦。
シュラインはクスクス笑って、藤二に尋ねる。
「ワザとなんでしょ?特別、を作らないのは」
シュラインの言葉に、藤二は目を丸くした後、
参ったなぁ、と頭を掻いた。どうやら、図星らしい。
藤二の恋愛は、とてもフランクなもので、
それ故に反感を買うこともあるが、
今まで、関わった女性は皆、後腐れがない。
どういうことよ!と詰め寄られたこともなければ、
ひどいわ…と泣かれたこともない。
デート中に、他の女性と鉢合わせることも多々あるが、
別にドロドロな展開にもならず、いつも笑顔ですれ違う。
中には「今度は、私とデートしてよね」と笑って言う女性もいる。
要するに、お互い納得の上での付き合いなのだ。
藤二が、そういう恋愛を好むことを、女性達も理解している。
逆にいえば、それを理解してくれない女性は、藤二も誘ったりしない。
真剣にお付き合いして、将来を誓って…といった、
真面目で健全なお付き合いをするなら、藤二は向いていないというだけの話。

その辺を理解していないが故に、
婦人は懲りずに御見合いを勧めてくるわけだ。
じゃあ、説明すればいい、と思うだろう。
けれど、通じないのだ。
この婦人には、通じない。
始めは丁寧に説明と断りをしていた藤二だが、
理解できない奴には、どんだけ話しても無駄だと悟り、
いつしか、こうして興信所に逃げ込んで、事を回避するようになった。
自宅であり職場である興信所を、避難所として使われることに、
いつもウザイと文句を言う武彦だが、
”藤二の恋愛”というものを理解しているので、
口では文句を言っても、結局いつも、かくまってやる。
「あ、そろそろ、ご飯の支度しなくちゃ。藤二さん、どうする?」
話の途中でスッと立ち上がり、微笑んで問うシュライン。
藤二はニコリと微笑み返して「ご一緒させて下さいな」と言った。
シュラインは喜んで、と頷き夕食の準備へ。
優しく気が利くシュラインに、藤二は懲りずに言ってみる。
「ね。デートしようよ?今度」
「てめぇ、はっ倒すぞ」
苦笑しつつ武彦は言う。
痛い目にあいたくなければ、
悪ふざけは、やめましょう。ね。

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

NPC / 草間・武彦 (くさま・たけひこ) / ♂ / 30歳 / 草間興信所所長、探偵

NPC / 赤坂・藤二 (あかさか・とうじ) / ♂ / 30歳 / 作家兼旅人・武彦の幼馴染


■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは。いつも、発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします^^

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2008.02.27 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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