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<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>


珠中の指輪

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OPENING

「はぁ…疲れた」
店内に一人、蓮は疲労を口にする。
蓮を、ここまで疲労に追い込んだもの。
それは、この…水晶玉だ。
占い師が手をかざしているような、あれと同じもの。
淡い紫色の水晶玉。蓮は、これに苦戦している。
水晶玉の中には、美しい指輪が入っている。
とある人物に依頼され、
この指輪を、水晶を砕くことなく取り出して欲しいと頼まれたのだ。
午前中に頼まれ、今は夕方。
蓮は、ずっとあれこれ考え実践してきた。
けれど、一向に掴めない。
どうやって、指輪を取り出すべきか。

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「へぇ、面白い依頼ね」
蓮から事情を聞いたシュラインは、水晶を眺めて微笑む。
水晶の中には、確かに…指輪が入っている。
中心部にあるそれは、どこにでもありそうなシンプルデザインだ。
シュラインは、うーんと首を傾げつつ、水晶をあらゆる方向から見やって言う。
「依頼主が依頼主だからなぁ…」
「そうなんだよね」頷き、ハァと溜息を落とす蓮。
水晶から指輪を取り出してくれと依頼してきた人物は、都内で有名な曲者だ。
名を、小野田・晴美という。
晴美は人の困った顔や泣き顔を見るのが好きなドSで、
都内各所であらゆる人物を困り顔、泣き顔にさせている。
相当な変わり者だが、何故か疎まれていない。不思議な人物だ。
この依頼を解決できないと、晴美は喜ぶ。
逆に解決してしまったら、かなり悔しがるであろう。
負けず嫌いな性格の蓮は、晴美を喜ばせるのが嫌で、
あれこれ試して、指輪を中から取り出そうと試みた。
水晶を叩いてみたり、撫でてみたり、
これを言うと本人は恥ずかしがるが、開けゴマ的な呪文も唱えていた。
だが、どうやっても取り出せない。
晴美の依頼だ、そう簡単に解決できるわけもないのだが。
蓮は眉を寄せ、不愉快そうな表情でカウンターに頬杖をついている。
悔しそうな蓮に、シュラインは笑いつつ尋ねた。
「ね、ガラスケースある?」

シュラインは、まず指輪を詳しく調べてみることにした。
ガラスケースに張った水の中に、紫の染料を投入。
紫色の水の中に、そっと水晶を沈めてみる。
水晶も紫色だ。こうすれば、中の指輪だけが鮮明に見える。
水と同化し、存在が曖昧になる水晶。
「………」
「………」
シュラインと蓮は、じーっとケースを見つめた。
ハッキリと確認できる指輪。おそらく、シルバー製…。
表側に装飾はないが、内側に花らしき模様が刻まれている。
シュラインは、ハッと気付き、水の中に手を入れてみる。
今、水晶は水と同化して存在が曖昧だ。
この状態になって初めて、指輪に触れることができるのでは…との判断。
だが、そう上手くはいかない。
曖昧にはなっているものの、水晶は実際、水の中にあるのだ。
手を入れても、水晶に触れるだけで、指輪には届かない。
「うーん…」
タオルで手を拭きながら首を傾げるシュライン。
蓮は、相当イライラしているようで、
頬杖をついたまま、不愉快を露わにして言う。
「もう面倒だから割っちまおうかねぇ」
「駄目よ。それじゃあ負けでしょ?」
依頼人・晴美は、依頼の際「絶対に水晶は割っちゃダメ」と言っていた。
事情を聞いた際に、そのことも聞いていたシュラインは、
割ってしまおうかと言う蓮にストップをかけた。
こう見えて、シュラインも結構な負けず嫌いだ。
放棄したくなる気持ちは理解るが、諦めるのは、まだ早い。



あれこれ試すものの、どれも失敗。
時間だけが、どんどん過ぎていく。
さすがのシュラインも疲れたようで、
カウンターに突っ伏し、はふぅ…と息を漏らす。
カウンター周りには、使った あらゆる道具が散らばっている。
カウンターに突っ伏したまま、シュラインは水晶を見やって、また溜息。
「難しいなぁ」
ボソリと呟いたシュライン。
と、その時、シュラインはハッと何かに気付く。
バッと顔を上げて、蓮を見つめるシュライン。
その表情は、どこか…自信に満ちている。
「何だい。何か思いついたのかい」
目を伏せて言う蓮。
どうせ、何をやっても無駄…と諦めているからか、とても素っ気ない言い方だ。
シュラインはズイッと身を乗り出して、蓮に尋ねる。
「蓮さん、この指輪。見覚えない?」
「…見覚え?」
「うん。私は、あるんだけど。見覚え」
「何だい、回りくどいね…」
前髪をかき上げて言う蓮に、
シュラインは、とある方向を指差してみせた。
シュラインが指差したのは…店内にある商品棚。
蓮は、棚を暫く見つめた後、ハッと気付き、タタッと棚に駆け寄った。
そこには、水晶の中にある指輪と同じものが、商品として並んでいたのだ。
「まさか…」
半信半疑ながらも、棚に飾られた指輪を手に取ってみる蓮。
すると、水晶から、パッと指輪が消えた。
「やったぁ!」
シュラインは、高々とバンザイをして喜んだ。



からくりというか、トリックは、何のことはない、単純明快なもの。
店に水晶を持ってきた依頼人は”能力”で、
店の商品である、この指輪に魔法をかけた。
水晶の中にあるかのように映る魔法を。
そう、依頼人・晴美は変わり者であると同時に、
優れた魔法使いでもあるのだ。
取れ、と言われて取ることに夢中になってしまい、
彼女の職業を忘れてしまっていた。
店によく足を運ぶシュラインは、
いつも店内にある商品をチェックする。
新しいもの、もしくは使えそうなものはないか…そうする内に、
自然と商品に詳しくなっていたのだ。
「もう少し、早く気付くべきだったなぁ。まだまだね」
微笑みつつも、自分に厳しく言い放つシュライン。
蓮は肩を竦めて「まったくだね」と言って苦笑した。

翌日、蓮は誇らしげに、指輪の入っていない水晶を依頼人・晴美に見せた。
晴美は「つまんない」と悔しそうに言うと、
カウンターにトン、とコインの入った麻袋を置いて、
棚に飾られていた例の指輪を手に取り、スタスタと店を去って行った。
晴美の背中を見つつ、蓮は呟く。
「気に入ったなら、普通に買っていきゃあイイのに。迷惑な客だよ、まったく…」

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

NPC / 碧摩・蓮 (へきま・れん) / ♀ / 26歳 / アンティークショップ・レンの店主


■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは! 毎度さまです。
発注・参加 心から感謝申し上げます。 気に入って頂ければ幸いです^^

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2008.02.27 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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